薄暗いダンジョンの中、二人分の靴音が響く。
それ以外の音は一切なく、辺りは静まり返っていた。
「…もう、モンスターの気配はないね」
「…あぁ」
油断なく目配せをする瑠璃の言葉に、私は安堵する。
彼の戦闘に関する勘は、信頼に値するものだった。
「はぁ〜。やっと一息ついたー」
ぐっと腕を伸ばして伸びをする私を、瑠璃が咎める。
「お前な…。まだ完全に油断して良いってワケじゃ…」
「でも、ずっと緊張しっぱなしってワケにもいかないでしょ?」
「そりゃ、そうだが…」
ガラっ。
遥か頭上遠くの方で、何かが崩れる音がした。
「え…」
ガラガラっ!!
瞬間、脆くなった天井が、一気に崩れてきた。
既に警戒を解き切っていた私は、それに反応できるわけがない。
「う…わ…っ!」
反射的に目を閉じ、身をかがめる。
「ファルス!」
遠くで瑠璃の声。
それから、何かにのしかかられたような衝撃。
――もしかして、埋まった…?


パラパラと瓦礫の粉が煙る中、うっすらと目を開ける。
はっきり言って、痛みは全くない。
強いて言えば、尻餅をついたお尻がちょっと痛いかも。
視界がやけに暗いのだけが気になって、目線を上げる。
と。
「…大丈夫か?」
すぐ目の前に、瑠璃の顔。
その余りの近さに、一瞬で頬に熱が集まってくるのがわかった。
どうやら、私の体に覆いかぶさる形で、彼が庇ってくれたらしい。
さっきの衝撃は、瑠璃に押し倒されたときのモノだったようだ。
こくこくと頷くと、瑠璃はほぅっと一息ついた。
「そうか…」
いや、目の前でそんな嬉しそうな顔されましても。
「全く、こういう所で気を抜くなっていつも言ってるだろう」
だから、目の前でそんなしかめっ面されましても。
「瑠璃…あの…その…」
動揺してあわあわと言いよどんでいると、
「ん?」
彼は更に一層顔を近づけて、こちらを覗き込んできた。
(ち、近いーーーー!!!!!!)
更に私が動揺してると、ようやく瑠璃は合点が言ったような顔をした。
「あぁ、悪い。立ちたいんだな?」
…微妙に違うし。
私の心の葛藤などどこ吹く風、
瑠璃はひょいと立ち上がり、私に手を差し伸べた。
私は仏頂面を作って、仕方なくそれに掴まり立ち上がる。
「な、なに怒ってるんだよ」
「別に、何も。ただ悔しかっただけ」
淡々と述べて、改めて目の前の彼を見て。
「…!瑠璃、腕のところ怪我してるよ!」
「あ?あぁ…かすり傷だろ」
「そんな、かすり傷ったって…」
思わず言葉に詰まって、俯く。
「……どうして私なんか庇うの?大怪我するかもしれないのに…」
その言葉に、瑠璃は不思議そうに首をかしげた。
「……お前が怪我するよりマシだろ」
ぼっ。
体中の熱が、頬に集まったようだった。
「…どこか痛いのか?」
更に俯く私の顔を敢えて覗き込もうとする瑠璃を、片手で押さえつけ。

(この――鈍感!!)

いつかこの一言を、耳元で思い切り叫んでやろうと思う。
でも今は。

「…ありがとう」
それだけ。




オワル。







⇒700HITを踏んでくださった夕星さんのリクエストにお応えして、
珍しく瑠璃に主導権がある瑠璃主です。
…果たしてこれは瑠璃上位なんだろうか…?
瑠璃に主導権と言うか、瑠璃が鈍感なだけですね(遠い目)
す、すいません夕星さん;
おそらくご期待には添えなかったかと…_| ̄|○
女主の足元が微妙に公式と違うのはご愛嬌。
っていうか、まず場所がどこだって感じですが。
一応、レイリスの塔とか…室内系のダンジョンをイメージ。

結構妄想が膨らんだので、SSなんぞも付けてみました。
……瑠璃がアホですねー。
そして女主ちゃんが乙女ですねー。(遠い目)
(例によって、マイ女主の名前で書いてしまいました;)

こんな拙いもの(しかも余計なものまでくっついてますが)ですが、
よろしければ貰ってやってくださいませ;;
700HIT、ありがとうございました!!
>夕星さんへ私信





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