サイダー
「おい、何飲んでるんだもみ子よ」
「え?」
暁の視線を追って灯里は自分の手に握られた缶を見た。
どこにでもある、ただのサイダーの缶。
特別珍しいものではない。現にこれはその辺の屋台で買った物だ。
にも関わらず暁は興味津々と言った目で缶を凝視している。
「……暁さん、サイダー飲んだことないんですか?」
「ない」
「はぁ……じゃ、飲んでみます?」
さらっと缶を差し出されて当然のように受け取り、いざ口を付ける段になって暁は内心慌てた。ちょっと待て。これは間接キスじゃないのかひょっとして。
と言うことはアレか。灯里も自分が少しは気になってたり────
(する、訳じゃねーなどう見ても)
横目で伺った灯里が平然とした顔をしているのを見てこっそり肩を落とす。深く考えずに渡しただけなのだろう、きっと。
暁は落胆した気分のままこれまた深く考えずに缶の中身を一気に呷って、盛大に噎せた。
「何故初めて炭酸飲むのに一気なんて無茶を……」
「うるせえ」
言外に「あなた馬鹿ですか」と言われている気がして暁はむくれる。
あんなに奇妙な刺激のある飲料だと知らなかったのだとは、何故か言えなかった。
「まだ口の中がおかしい気がするぞ……」
「大丈夫ですか?」
無防備に顔を寄せてきた灯里の薄い色の唇が目に入る。
肩を無意識に捕まえた。
後頭部に手を回して逃げられないように顔を固定し、そして。
肉の薄い唇は思ったよりも柔らかいものではなかったが、儚い感触は悪くなかった。
「あ、あ、あ、暁さん……!?」
「口直しだ」
酸欠の金魚よろしく顔を本当に耳まで真っ赤にして口をパクパクさせる灯里から暁は目を逸らす。
その頬も僅かに赤い。
「口直しって、人のファーストキスを何だと思ってるんですかっ!」
灯里の大して力の篭ってない拳を手のひらで受けながらあの飲み物がいけないのだ、と暁は思うことにした。
妙に甘ったるいくせに強い刺激を残すから。
+感謝状+
七市さんから、等価交換という名目で頂いてしまいました…!
暁灯里!!
ヤバいなんですかこの萌え。
思いっきりのたうち回りながら読ませて頂きました(変態!)
キスネタですよ。キスネタ。
ももももももうドキドキしすぎて心臓がおかしいですYO!
口直しとか言ってさらりと灯里たんの唇を奪える男気溢れる暁さんに
本気で惚れこみました。脱ヘタレ…!
灯里たん、すごく素敵なファーストキスの奪われ方でよかったね!(えっ)
そのままもっと先までさらりと奪われるといいと思います(えぇっ)
こう、全体的に流れる初々しくて爽やかな雰囲気に、ハート鷲掴み!
本当は、サイダーの写真を載せたかったんだけれども…見つからず。
悔しいな…。
七市さん、本当に素晴らしく且つ勿体無い代物をありがとうございました…!
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