差し込む陽の光に目を細めて。
中庭から見上げた校舎は、ひどく眩しかった。




 昼下がりに見えた空




「――先輩の教室、あの辺かぁ」
4階建ての校舎の2階部分。
それの、ある一角を見つめて呟いた。
それから視線を大幅に動かして。
その上の階のずっと向こうにある教室を探した。
自分の教室。
「…遠いなぁ」
ぽつりと出た言葉は、自分でも驚くほど無感情で。
(よっぽど、気にしてるんだろうなぁ)
ひとつしか、年が違わないことを。
でもそれは、かなり大きな問題だ。
教室ひとつ見てみても、こんなにも離れている。
階さえ違うんだから。

「――へこむよなぁ…」

「おーい、日比谷!早くしねぇと次の授業遅れんぞ!!」
クラスメイトの声に、見上げていた頭を戻す。
首が痛い。
案外長い時間、考え込んでいたらしい。
いつの間にか、一緒に移動してた奴らに随分離されてしまっていた。
軽く溜息を吐いて、それから彼らに駆け寄ろうとして。
――その前に、もう一度だけ。
あの人がいる教室を見上げた。

あまりに眩しくて。
ぐっと、目を細めて。
妙に泣きたいような気分になった。


「ひーびーやーっ!!何やってんだよ!少しは急げっ!!」
「わ、わかったよ!今行く!」

「全く…ここに来るといつも上ばっか見てるよな、お前。何かあるのか?」

「…――何にも、ないよ…」


あと一年。

その距離が、憎かった。





陽の光を遮るようにして、

俺は静かに、目を閉じた。








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