聖博物館

聖博物館へ行ってきました。聖博物館は長野自動車道、麻績ICを下りて、山道を登ったところの聖湖畔にあります。緑が美しい山に囲まれた静かな湖。その湖畔の斜面にジェット戦闘機が点在しています。私が訪れたときは他に来館者はだれもおらず、大好きな飛行機と一対一の対話を思う存分に楽しむことが出来ました。しかし、3000mの舗装の滑走路上にあって当然のF-104が、山の傾斜地に存在する違和感は最後まで拭えませんでした。

C-46の機首部分が展示されていました。敷地の崖っぷちに設置されていて、操縦席に座ると地面がずっと下のほうに見えます。こんな展示の仕方をした人の思いがよく解かります。子供の頃、朽ちかけたアメ車の運転席でガチャガチャとハンドルやレバーをいじって遊んだことを思い出します。あの時と同じ機械のにおいがしました。

F-86D。機体は自由に触ることが出来て、コックピットを見るための踏み台も用意されています。機体はどれもしっかりと銀塗装されていて、リベットの位置などは確認しづらい状態です。塗装のおかげで機体各所に書かれているはずの注意書きなどは、ほとんど塗りつぶされていて残っていないのが残念です。山間の厳しい気候を考えればやむを得ません。せめて屋内に取り込んで長生きさせてやりたいものです。

ロケット弾のパッケージが下りていて、細部を観察することが出来ました。

水平尾翼のボルテックスジェネレータは、板の切り起し曲げの簡単な構造。

T-34メンター。足元の草花は植えられたものか、勝手に生えてきたものか、こんなシチュエーションならば花に囲まれるのもメルヘンチックで良いかもしれません。しかしうかうかしていたら朽ち果てて土に還ってしまいそうです。

尾翼取り付け部の板金の重なり具合がよく解かる。日の丸から前の胴体の微妙なラインも理解できる。

F-86Fの風防。コックピットに入ることは出来ないが、係員もいない状況では閉めておいた方が安全でしょう。パーツの分割位置やネジの位置がよく解かる。上方から撮影してみると、中央の窓は意外に複雑な形状をしている。

尾翼や背ビレの先端Rがよく解かる。水平尾翼付け根の部分はこの角度から見ると、加工性を考慮した結果の形状だと見て取れる。

F-104Jだけは足元に鎖が張られ、いじりまわすことは出来ません。主翼前縁は安全のためのカバーが取り付けてある。(純正品のようです) ピトー管の先端はホースの切れ端でガードされていた。(間に合わせかな) こののF-104Jは他の機体よりも特に傷みが少ないようです。野ざらしの悪条件を考えれば、どの機体も程々の良い状態に保たれていると思いました。

エンジンは抜かれていて、展示室の方に置かれていました。エンジンの無い胴体内側。左右の吸気口からのダクトが合流する部分の形状を観察することが出来ます。

D-51蒸気機関車。長野県の不思議スポットに登録してください。こんな山の上までどこを走ってやって来たのでしょうか。屋外展示以外にも屋内展示館の方にも沢山の展示物がありました。半分は飛行機関係ですが、他の半分は民族博物館-自然博物館のような収蔵品です。どれも貴重な品だと思いますが、詰め込み過ぎで興味の対象が絞り込めません。私はここで本当に楽しい時間を過ごさせていただきました。しかし、この山に自然を求めてやってくる人たちには、戦闘機や機関車の存在は場違いでマイナスのイメージを与えるのではないかと心配です。年老いた戦闘機や機関車は下界の建物の中で余生を過ごさせてやりたいものです。


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