東京外国為替市場の問題点−未だ戦後は終わっていない−(2000年9月11日)

 最近の本邦外国為替市場では、極端に顧客取引が減少しているようだ。
3月以降のグローバルマクロ型ヘッジファンドの衰退をもその理由の一つであろうし日銀によるゼロ金利解除の方向を見極めたいとの意向をもっていた市場参加者もいたようである。
 夏休みの影響もあったであろうし、資本が予想したほど外に向かわないこともあるようだ。との意向も働いたようだ。しかしながら、なんといっても大きな要因は、ヘッジファンドの衰退によるグローバルマクロ型投資が大きく減少していることであろう。

 対顧客為替取引額の減少は、銀行間での顧客争奪戦をますます熾烈化させる結果となるであろうし、ひいては銀行手数料体系を大きく崩す結果をもたらすものとなろう。

 もとより、本邦外国為替市場における、例えばドルの対円手数料としてのTTS,TTBと言ったTT幅を仲値プラス・マイナス1円と言うのも、昭和24年4月に1ドルが360円に設定された以後、いくつかの変遷を経て採用されたものであり、仲値制度にしても50年以上も昔に決められたものが、現在も営々として使われているものである。

 1ドルが110円前後となった現在、このような過去の遺産が、市場を闊歩しているのは誠に不思議な話しである。
 現在、大口の取引には上記TT幅は適用されず、実質的には形骸化されており、市場では1銭,2銭と言った単位での、あるいはそれ以下の手数料で取引されているのが現実であり、店頭の顧客にのみ、小口で手数が掛かるとの大義名分の基に、大口取引とあまりにもかけ離れた手数料を当然のごとく押しつけるのは、理不尽と言うものである。

 仲値にしても、殆ど全ての邦銀が東京三菱銀行の呈示する仲値に合わせており、最近、興銀と富士銀行が独自の仲値を公表するようになったのは、賞賛に値するうれしいニュースである。

 仲値は独自に決め且つ5銭刻みにする必要はないこと、及び市場取引時間も前場を9時ー12時、後場を13時30分−15時30分との取り決めも5年以上前に東京外国為替市場慣行委員会で撤廃したはずであり、私も当時の委員を仰せつかっていた。

 しかしながら、相変わらず仲値は外銀を除いては5銭刻みで決められており、邦銀では興銀、富士銀行を除き、全てが東京三菱銀行にならっているのは納得が行きかねるし、この件は公正取引委員会とも話し合ったことがあるが一向に改善されず、邦銀ディーラーの相場観が育たない一因となっていることは誰も気がつくまい。ブロカーにあっても、午前10時の仲値決めの時間になると、真っ先に担当銀行に東京三菱銀行の仲値を知らせることが、サービスと勘違いをしており、担当銀行のディーラーの相場観の育成を阻み、それで取引が少ない不満を影でもらすのも、自業自得というものである。

 もうこの辺りで、50年来続いた仲値制度を撤廃し、TT幅を改め、ドル現金、トラベラーズ・チェックへの適用レートも自行のコストを意識しながら、呈示するシステムの確立が、金融ビッグバンの心にも沿った流れではないかと思う次第である。  因みに、米国市場には、仲値と言ったものは、存在しないのは言うまでもない。

 私事であるが、8月よりシンガポールに本店を置く、ユナイテッド・オーバーシーズ銀行の東京支店に勤務することとなった。今となっては、自画自賛になりかねないが、まず感心させられたのは外貨、特に米ドルの現金を殆どの銀行が仲値プラス3円で売っているが、この銀行は独自の採算に基付き、仲値プラス1円50銭で行っていることである。しかも1万ドル以上は1円30銭、3万ドル以上は1円20銭とボリュームディスカウントも用意している。

 銀行としての看板を掲げているのであれば、東京三菱銀行の建値を其のまま受け売りせず、せめて自行の採算を基準にレート呈示をしてもらいたいものである。次ぎに、金融ビッグバンを機会に50年来行って来た市場慣行を根本的に見直す時期にきているのではないだろうか。