グローバル・キャリートレードについて(平成3月1日)

 海外のヘッジファンドが低金利の円資金を調達して外貨(主にドル)に変え世界中の投資に使っている模様である。例えば、現在0%に限りなく近い、円を借り入れ、それをドルに変え6%台のドル資産に運用するといった取引である。この場合、為替(ドル買い/円売り)リスクが常につきまとい、まさにハイリスク・ハイリターンの取引である。実は彼らは、5−6%の利ザヤに満足せず、最近は原油の投資に向かったようである。昨年12月、原油価格は1バーレル25ドル近辺であったが、政治要因も絡み現在の30ドル台まで買い上げてしまった。これだけで年率20%近い利回りが得られていることになる。加えて円安も示現してしまい、今回の円安の原因は日銀による介入警戒感とか言われているが、実は日米金利差を利用した円キャリートレードにその理由を見つけたほうが妥当ではなかろうか。一般に、金利差が5%以上開くと、キャリイートレードが行われるようである。今回は、上記金利差も条件を満たしていたが、市場心理が円高はいったん終焉したとの見方が、背後にあるのであろう。円高が終了したと思える時点で、すかさず円売り/ドル買いの取引を一揆に市場に出すタイミングといい、自己の出す取引で市場をリードしようとする心意気には感心する。一部の国際通貨当局には、ヘッジファンドの動きを規制しようとする機運もあるが、自由主義経済のもとでおこなわれる自由な取引を規制するのは、時代に逆行するものであろう。

ヘッジファンドによるキャリートレードは、円に限らずもうひとつの低金利通貨であるスイスフランでも行われている。スイスフランは、最近、1.69台まで下落し、これは10年半ぶりの安値である。  今回の円キャリーは、ドル/円が105円近辺の時点で創出されたものであり111円程度が当面のねらい目といわれていた。このレベルは先週に達成してしまい、恐らくヘッジファンドからの利食いのドル売りもあったのであろう、2月28日の東京市場では、一次108円台までドルが下落する場面も見られた。
 人の懐を勘定するわけではないが、今回のヘッジファンドの採算は、大まかに原油で年率20%、為替で5%の計25%の利益を得たことになる。しかも 3ヶ月程度の期間にである。ヘッジファンドといっても、実は米国だけにも、1,000社を超えるファンドがあるとのこと。すべての、ファンドが上記のような利益を享受したとは言い切れない。それぞれがそれぞれの判断で行動しているわけである。

 ヘッジファンドの動きは、90年台に顕著であり、特にソロスが92年秋にイギリスポンドを売り浴びせ、ついにポンドをERMから離脱させてしまったことは有名な話として残っている。最近は、その規制論も飛び出し、またノーベル賞を受賞した著名な学者さんが携わっていたファンドが経営危機に陥る等、近年、その活動が弱められた感もあるが、やはり市場へのインパクトは見逃せない。為替デイラーにとっては、もちろんであるが、あらゆる金融市場に携わる方々にも、彼らのシブリには、目を離してはならないのである。