子宮筋腫の治療には、ホルモン療法・対症療法・漢方療法など保存的治療や、筋腫核出術や全摘術などの外科的治療などに大きく分けられましたが、近年UAE(子宮動脈塞栓術)やFUS(MRガイド下集束超音波手術)などの新しい治療法ができました。子宮を温存し、子宮筋腫の不快な症状を軽減・改善を目的とする治療法で、子宮全摘術を避けたい方、抵抗感を抱いている方にとって、選択肢が広がったのではないかと思います。私も子宮筋腫と診断され、どうしても全摘だけは避けたいと考えていたときに、UAEを知りました。筋腫核出術を控え、術後不安も抱いていた時期でもありましたが、もし再発した場合この手術を選択できるかもしれない、全摘以外にも道があるのだと思ったとき、絶望感から救われ、気持ちが軽くなりました。結果的には、私はUAEではなく全摘術を選びましたが、もしこの治療法をご存じない方がいらしたらと、簡単な説明を作ってみました。内容は不充分で間違いもあるかもしれませんので、参考程度にご覧下さいませ。この治療はFUS同様新しい治療であり、長期データもありませんので、リスクもあるかと思います。興味を持たれた方は、担当医師にご相談され、メリット・デメリットを十分ご理解された上で、選択されることをお薦めいたします。
子宮筋腫の治療は多種多様であり、選択も人それぞれ・・。治療法を自分で選択できるということは幸せな事でもあり、辛いことでもあります。それぞれの治療方法のメリット・デメリットをご考慮の上、ご自分の症状や、状況、生活環境、考え方にあった納得のいく治療法がみつかりますよう、心より願っております。


子宮動脈塞栓術(UAE)とは
UAE (Uterine Artery Embolization) 
子宮筋腫とつながっている子宮動脈を閉塞させ、栄養を断つことで子宮筋腫を縮小させる治療方法で、主として放射線科医が担当
子宮筋腫の治療としては、1990年頃よりフランスで始められ、アメリカ、イギリスを中心に普及し、世界で18カ国以上およそ50000人以上の患者さんが治療を受けたという報告されいます。フランスでは10年以上、アメリカでは8年以上、日本では6年以上の歴史があり、安全性が高く、有効な治療であることが学術的にも証明されています。(2003年9月現在)
UAEは子宮筋腫への栄養が断たれるため、かなりの高確率(約90%)で子宮筋腫の縮小がみられ、大部分の方が過多月経や月経痛、貧血、子宮筋腫による圧迫症状などの筋腫による症状が軽減されたというデータがあり、子宮は温存されます。現在保険適用外で、自費負担。入院期間平均3〜4日。(日帰りもあり)


概 要


治療方法
局所麻酔で大腿部の付け根から細いカテーテル(約2ミリ程度:1.3ミリというのもありました)を挿入し、そこから造影剤を注入し、血管造影検査を行い、放射線透視画面をみながら、カテーテルを子宮動脈まで挿入し、子宮動脈を閉塞する物質を注入。手術時間は約20分。
(参考:友人の入院した病院では、終了後3時間ほど安静にした後は、動くことができ、翌日には歩くことが可能 入院期間3泊4日でした)
個人差はありますが、デスクワークであれば1週間、肉体労働でも2週間で仕事復帰可能。(参考:友人は水曜日に入院し、月曜日から職場復帰でした)

治療後
85〜90%以上の方が、深刻な不正出血、過多月経、疼痛などの症状が改善され、子宮筋腫も3ヶ月で約50%、1年後には約30%縮小。数ヶ月から半年後には平均で半分以下の大きさに縮小します。
※お臍を越えるような巨大な子宮筋腫では腫瘍の縮小効果が乏しくなることがあるとされ、少数の方(10%程度)は治療効果が出ない場合があるそうです。

副作用/合併症
副作用としては、治療直後から子宮虚血による下腹部痛や発熱があります。発熱は一過性。痛みは生理痛に似た痛み(疼痛)が術後6〜12時間は必ず生じ、特に術後1〜2時間は痛みが最も強くなるそうですが、これは治療効果が得られているというサインとの事。痛みは鎮痛剤などで対処。翌日には痛みは顕著に軽減。(参考:友人談では、術後半日くらいお腹の中をいじられているような痛みがして辛かったそうですが、徐々に治まり、翌日にはほとんど痛みは感じず、熱も下がったとの事でした)術後、数日から1週間くらいは、軽度から中程度の生理痛に似た下腹部痛が生じる場合があるようですが、これは比較的軽い鎮痛剤で治まるようです。この痛みは徐々に軽減していき、約1週間程度で消失しますが、稀に数週間程度かかる場合もあるとの事。
合併症としては、主なものとして子宮および筋腫の感染があり、このために子宮全摘術が必要となる場合が有るそうです。(感染1〜2%、外科的手術(子宮全摘術)を必要としたケースは0.38%という報告有り)また、術後に無月経や卵巣機能不全(更年期障害など)が生じる場合もあります。(一過性:5〜10%、永久的:45歳以下0〜3% 45歳以上7〜14%という報告有り )
この治療はX線を使用するため放射線被曝が懸念されますが、平均4〜8分程度の透視時間で終了、この時間は健康診断の胃透視の時間と比較して1〜2倍程度であり、放射線被曝の影響はほとんどないと考えられているようです。



下記に適応、長所・短所について簡単にまとめてみました。

適  応 適応外
■子宮筋腫が存在する。
■子宮筋腫による過多月経、疼痛、圧迫症状などの症状があり、薬剤よる対症療法でコントロールができない。
■外科的手術(子宮全摘術や筋腫核出術)を希望しない。
■子宮がん検査が陰性。
■現在妊娠していない
■将来の妊娠・出産を希望しない。(要相談)
■子宮筋腫による症状のない方
■閉経後の方
■骨盤内に活動性の炎症性疾患がある方
■将来の妊娠・分娩を希望されている方(※)
■悪性腫瘍が有る方、あるいは悪性腫瘍が強く疑われる方
■動脈塞栓術よりも適した他の治療方法がある場合
■筋腫分娩、有茎性粘膜下筋腫の方(※)
※この治療はまだ歴史が浅く、術後の妊娠・出産に関するデータが少ないため、妊娠を希望される方はこの手術を選択しない方がいいとされていますが、世界レベルでは数例ではありますが、妊娠されたという報告もあります。希望される方は、担当医師に納得いくまでご相談下さい。また、筋腫分娩、有茎性粘膜下筋腫の方は、子宮鏡を用いて筋腫のみを切除するのが第一選択とされており、この治療が困難な場合には、UAEが第二選択になることもあるようですので、ご相談下さい。適応・不適応はあくまでも目安ですので、治療を希望される方は関係機関にご相談下さい。

メリット デメリット
局所麻酔ができる
子宮の温存が可能
身体や子宮にメスを入れないので、美容上目立つ傷跡が残らない。また骨盤内臓器に悪影響を及ぼすような癒着は生じない。
ホルモン剤を使用しない
短期入院(平均入院期間3〜4日?日帰りもあるようです)
癒着や再発がほとんどない。
筋腫の数や場所に左右されない
重度の貧血でも治療可能
過去に骨盤内の外科的手術を行っていても治療可能。
かなりの高確率で筋腫が縮小され、それまでの不快な症状が軽減
筋腫を切除しないため、組織検査ができない
現在保険適用外のため自費診療であるため高額
(参考:友人の場合入院3泊4日\472,500(税込)平均30〜50万?)
新しい治療のため長期データがない
治療にX線を使用する
術後一部(1〜14%とデータにばらつき有り)無月経など、閉経期と同様の症状が起こる場合がある
10〜15%程度でUAEの治療の奏効なし。
合併症の可能性有り







ここに記載している内容は私が調べたものですので、情報は不充分であり、誤りもあるかもしれません。またこの治療は何度も記載していますが、歴史が浅く、データも少ないため、今後大きく変化していくことも予想されます。治療を希望される方は、担当医師に納得いくまでご相談頂き、メリット・デメリットを熟慮の上で、ご選択されるよう御願いいたします。
なお詳細をお知りになりたい方は、病院が作成した゛子宮筋腫の動脈塞栓術ホームページ゛をご参考下さい。また実際にこの手術を受けられた方のHPにリンクを御願いしましたところ、ご快諾頂きましたので、ご紹介します。よく研究されており素晴らしい内容ですので、参考になると思います。この手術に対して興味のある方は、ご覧下さいませ。


子宮筋腫の動脈塞栓術体験者のホームページ