読者投稿・ときめく恋　赤い薔薇たちの館


	菲菲

	後ろからふわっと抱かれた途端、あなたの唇が首筋を掠めて耳元に辿り着いた。思わず漏れ出た熱い吐息をあなたの耳は聞き逃さず、もう？と言いたげに今度はてのひらが胸にやってくる。柔らかく包まれ、同時に鋭く擽られ、吐息はため息へと成長する。するとあなたはそんな私の反応を、いろいろなコトバに変換しては、私の耳の中にほろりほろりと送り込んでくるの。そのたびに私のからだの中心は、熱く甘くとろけていくのよ。ああ、とうとうその場所にあなたの指がやってくる。薔薇のつぼみをほぐすように、指は花びらを掻き分けながら少しずつ近づいてくる。そしてついに目的の場所に到達すると、あなたは再びコトバを紡ぎ出す。ほら、もうはしたないほどに潤っているよと、震える耳朶に報告するの。どうしてこんな感覚が発生するのか自分でもわからない。足元が崩れ落ちていくような、それでいてどうしようもなく安らいでゆくこの感覚は何なんだろう？私は初めてのecstasyを経験したときに、あなたにすべてを委ねることができる自分に気がついた。そう、私は完全にあなたに制御されている。脈拍も呼吸も体液の分泌も、すべてあなたがコントロールしているのね。あ、今あなたは私のいちばん敏感なところを人差し指と薬指で開いた。そして現れた真珠の粒を中指でそうっと触れてきた。電流が走る！奥のほうから熱いものが溢れてくる！そのことに気づいて私はさらにエスカレートしていくのよ。指を入れて、と小さな声で言ってしまう。ちゃんと言ったつもりなのに、それはため息と悲鳴の中間の喘ぎにしかならない。だけどあなたには私のことがすべてわかるのね。ゆっくりだよ、と泣きたくなるくらいやさしい声で応えてくれる。ああ、ああ、入ってきた！お願い、そおっとね。まだ動かないで。私のからだがあなたを認識して取り込んでしまうまで、そのままじっとしていてね。最初は小さな違和感をもたらした指。でもすぐに私のからだに溶け込んでしまうの。ああ、とうとう指が動き出す。私はもうあなたのマリオネット。あなたの引く糸のとおりに動くのよ。からだが震え出す。もう自分では止められない。からだの奥の一箇所に全意識が集中するの。指が動く。高まりはどんどんレベルを上げていく。指が動く。本当に止められない。何かが弾けてしまいそうな予感。だけど欲張りな私はもうひとつの感覚をも求めているの。あなたはそれも察知してからだを傾けてくる。そして…！あなたの熱い舌が私の真珠を捉えるの。私はあなたのピアノ。あなたのサキソフォン。私はヴァイオリン。あなたの指や舌の動きに合わせて、忠実に音色を奏でる楽器なの。私は音楽になる。それは大きな波になって近づいてくる。初めはピアニシモ…少しずつ強くなる。ピアノ、メゾピアノ。近くにきてる…メゾフォルテ、ほらすぐそこに、フォルテ…。ああ来るわ、フォルテ、もうすぐよ、ああ！フォルティシモ!! !!!!!!!! そう、私は音楽。私は人形。私はあなたのもの。あなたに抱きしめられて意識が拡散していくわ。目の前が…白くぼやけていく。

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