オプンチア属

 所謂ウチワサボテンで、100を超す種類や変種がある大きなグループです。基本的には団扇のように扁平した形をしているわけですが、中には筒状に近い形をしたものもあります。柱サボテンや玉サボテンとの大きな違いは、茎節("団扇"の部分に当たります)があって、各茎節が一定の大きさになると成長が止まり、一度茎節の成長が止まると再度大きくなることはありません。そして次なる新たな茎節を出すことで株として大きくなっていくことです。
 下に示す赤烏帽子以外には、直径30cm以上にもなる茎節を出して大きく育つ大丸盆や、長い銀色の刺を有する銀世界真っ白の短い密生した刺を有する白桃扇金色の短い刺の金烏帽子金色の長い刺を有する金武扇などがあります。
 成長が早く、栽培自体は楽なものが多いのですが、花を咲かせるとなると結構大変で、と言うか、地植えにしないと花を付けないものが多いようで、マンションのベランダ等で植木鉢に植えて育てる場合、花を咲かせるのは難しそうです。逆に、地植えにしてどんどん成長させると簡単に花を咲かせるものも結構ありますので、日当たりの良い庭がある方は是非栽培してみてください。(^^)

 
沢山の蕾を付けた赤烏帽子

赤烏帽子
学名:Opuntia microdasys var. rubra
赤烏帽子
赤烏帽子の花
  上記の説明にもありますが、このサボテンも"地植えにしないと花を付けないもの"のひとつといって良いでしょう。しかも、日当たりが良くないと蕾は付けません。逆に、日当たりが良い場所(直射日光が9時頃から16時頃まで当たる程度)に地植えできれば、翌年に花を咲かせるまでになります。
  実際、私も長年、5号鉢にこのサボテンを植え、日当たりの良いところに置いていたのですが、毎年、新しい茎節が1つ出るのですが、その代わりにと古い茎節が枯れていき...を繰り返して一行に大きくならないまま10年、20年と時を重ねていました。そんな中、家内の実家に日当たりの良い庭があることをふと思い当たり、5月の連休、実家に帰った時そこに植えてみましたところ、出てきた茎節が大きく育ち(写真下)、翌春に花を付けるに至りました。\(^^)/

  茎節の大きさは、好条件下で栽培されたとして、長手方向で10cm程度から大きいもので20cm程度、厚みは7mm~15mmになります。色は、成長中は若葉色で、成長が終わると萌葱色になります。
  刺は金色で短く密集して生えています。柔らかい刺なのですが、先端に微小な"返し"があるらしく、軽く触れるだけで抜けて刺さってしまいますので注意が必要です(刺さると結構痛いです)。茎節のみならず、花の茎の部分にも刺がありますので、花柄詰みを行うときは園芸用の革手袋を着用するなどして刺が刺さらないようこ注意下さい。
赤烏帽子の蕾
赤烏帽子の蕾

  蕾は春先に出始めます(写真右、矢印の2箇所)。蕾はグリーンアスパラの頭部に似ていて(但し色はピンク色ですが)良く育った茎節の周辺部にある刺座(アレオーレ)から出ます。蕾にはプヨプヨした太い"ひげ"のようなもので覆われており、この色が紅色であるために、出始めは紅色の小さな盛り上がりが刺の中から現れます。この"ひげ"は刺座から出ており、葉っぱの名残ではと思われます。花期は5月中旬で、右上の写真に見てのとおり、花径は5~6cm、薄紅色の大輪の花を付けます。他の多くのサボテンと異なり、花びら1枚1枚の幅が広く、薔薇や牡丹の花に似た感じです。少なくとも、このサイトに掲載されている花の中では花びらの幅が一番広いです。昼頃に咲き始め夕方に萎み始めます。1日しか咲かないのが少し淋しいですが。

茎節の新芽
茎節の新芽
  蕾と同じ時期に、刺座(アレオーレ)から新しい茎節も出ます(写真右)。新しい茎節は、出始めは蕾と見分けがつき難い程よく似ていますが、丸みを帯びたまま大きくなると蕾で、扁平に変わってくると茎節です。出る場所は茎節の周辺であることが多いのですが、茎節の根っこ(地面に近い部分)や、中央部から出ることもあります。逆に、殆どの場合、蕾は周辺部にしか出ませんので、周辺部以外に出た場合は茎節であると考えて間違いないでしょう。
  この新芽にも蕾と同じような"ひげ"があるわけですが、こちらの方は茎節が成長し終えると萎れてなくなります。逆に言えば、この"ひげ"が萎れて小さくなったらその茎節の成長が終了した、といって良いでしょう。ただ、厚み方向の成長はその後も続くようで(というか、広さ方向の成長が終わると厚み方向の成長になる、といった感じです)、最初は暑さ5、6mmと薄っぺらい感じですが、徐々に分厚くなります。
  この茎節が大きく育てば翌年蕾を付けます。当然ながら、株が大きいほど、茎節が大きいほど多くの蕾を付けます。茎節の長さが10cmを越え、厚みが10mm以上になると蕾を付け始めるようです。ただ、冬場にも充分な日照が必要ですが。

3ヶ月後の赤烏帽子。新しい茎節(矢印)が更に出てきた
3ヶ月後(8月)の状態
新しい茎節(矢印)が更に
2ヶ月後の赤烏帽子。大きく育ってきた(矢印)
2ヶ月後(7月)の状態
育ってきた(矢印)
5月に植え付けた時の赤烏帽子
1ヶ月後(6月)の状態
新しい茎節が出てきた(矢印)
5月に植え付けた時の赤烏帽子
植え付けたときの赤烏帽子(5月)

  新しく出てきた茎節を大きく育てるためには水やりと施肥が必要な訳ですが、水やりは、他の一般的なサボテンとは異なり、(地植えの場合は)庭木に水やりをする感覚で良いと思います。ただ、水が必要なのは新しい茎節が出る春先から初夏にかけてですので、地植えの場合、この時期には週に1回程度雨が降りますのであまり気にしなくて良いかと思います。逆に、雨が少なくなる夏以降は、もう茎節の成長も終わってますので、それほど水やりは必要ありません。ただ、良い条件下で育っている場合は夏場にも新たに茎節を出して生育を続ける場合もありますので、その時は週に1~2回程度水やりをすると良いと思います。
  施肥に関してですが、地植えの場合は特に必要ないと思います(実際、上の例では何もせずにそのまま植え付けただけで施肥はしていません)。ただ、植え替え代わりに、2~3年に一度、茎節が育ち始めた頃に油粕等による施肥をしてもよいでしょう。

  水やりにも関連しますが、用土も(逆の意味で)重要となります。つまり、きちんとサボテン用土に植え付けるのはこのサボテンに関しては適切ではなく、むしろ、通常の花木や草花用の土に植える方が良い結果が得られます。ですから、通常の草花がちゃんと育つような土であれば、あなたのお家の庭の土でもこのサボテンを育てられる、ということです。
 と申しますのは、総じて団扇サボテンの仲間(つまりオプンチア属のサボテン)は水やりを好み、快適は環境下ではどんどん新しい茎節を出して成長します。そして、乾期が来るなどして生育不能となった時には、先の方から一節ずつ養分を付け根となる茎節に戻して枯らせていくことで生き延びて次の雨を待つ、とのことです。ですから、所謂通常のサボテン用土に植え付けますと、肥料不足と乾き過ぎの状態となり、新しい茎節はですのですが、その茎節はあまり大きくは育たちません。しかも新しい茎節と入れ替わりに古い茎節が枯れていく、といったことを毎年繰り返すことになりますので、枯れはしないものの、殆ど大きくなることなく年月が過ぎていきます。

《余録》
  その後、実家より1節の茎節を自宅に持ち帰り、プランタに植え付けましたところ、日当たりが良くなかった(日照時間が半日弱程度)ためか一向に大きくなりませんでした。そこで、その株を9号鉢に植え替えた上で日当たりの良い南向きのベランダに置いて育てたところ、3輪ではありますが蕾を付けるに至りました。どうやら花を楽しむには9号鉢程度は必要なようです。


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