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2007年03月08日(木)

 沈黙のフライバイ
 日本ハードSFの担い手・野尻抱介の、近未来の宇宙開発を描く珠玉の5作品が詰まった、最新短編集です。野尻抱介は、スティーブン・バクスターと似た着眼点を持ちながら、気張らない、絶望しないみずみずしいSF世界を見せてくれます。
 一時期日本のハードSFがつまらなくなりましたが、それは登場人物、世界観、謎解き、情念などなど「ハード」以外のトッピングの部分に色気を出したからでしょう。ハードSFでしか味わえないもの−それは、科学と技術の思考実験が見せてくれる、目もくらむようなセンスオブワンダーです。
 本書では、その最良の(そして最新の)エッセンスを、ストレートに感じることができます。
 お勧めは、工学部の女子新入生が、学内のアイディア・コンテストに応募したことから、成層圏のさらに上層まで上っていくことになる、「大風呂敷と蜘蛛の糸」。
 日本のSFのひとつの到達点といえるかもしれません。
 

沈黙のフライバイ (ハヤカワ文庫JA)
野尻 抱介
早川書房
2007-02
¥ 630
ISBN: 4150308799
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2007年01月03日(水)

 時間はどこで生まれるのか
 相対性理論でも量子力学でも、時間が一方方向に流れる必然性はどこにもないという。それでは、私たちが感じる時間の流れは、どこからやってくるのでしょう。哲学者は、いまだに最新の物理学理論を取り込んだ考察をしてくれません。(分かんないからかな)バシッ\(`o')
 そこで、受験生の神様・物理のハッシー君こと、橋本先生が立ち上がりました。本書では、現代物理から導き出される時間の概念が丁寧に解説された後、私たちが感じている時間との溝が、埋められていきます。
 タネ明かしは避けますが、もし本書で示された概念が事実なら、まさに宇宙で1回きりの人生がなんと貴重なことか。SFファンならずとも、ぜひ読んでほしい1冊です。
 

時間はどこで生まれるのか (集英社新書)
橋元 淳一郎
集英社
2006-12
¥ 693
ISBN: 4087203735
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2006年07月29日(土)

 2ちゃんねるで学ぶ著作権
 2ちゃんねる管理人の西村博之氏、アップルの法務部長等を勤めた弁護士で大学教授の牧野和夫氏、編集者の3人が懇談する形で、ネット上の著作権の問題について分かりやすく解説しています。
 最近、新潟県観光協会のイラストが著作権侵害で訴えられました。役所の文書は、文字通りパブリック・ドメインなため、我々はふだん著作権について深く考えないで済ませています。しかし、ブログなどで個人が手軽にネットで情報発信できるようになってきた現在、著作権について知らなかったでは済まない時代になりました。
 本書は、2ちゃんねるを題材にしているため、非常に分かりやすく現状に即してネット上の著作権の基本を知ることができます。堅い話も、3人の掛け合い漫才のような構成で、楽しく読めます。
 著作権トラブルに巻き込まれないためにも、ブロガー、個人サイト管理者はとりあえず必読の一冊といえると思います。後は興味に応じて、専門書に挑むことにしましょう。
 

2ちゃんねるで学ぶ著作権
牧野 和夫,西村 博之
アスキー
2006-07-03
¥ 1,365
ISBN: 4756147704
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2006年07月09日(日)

 チョムスキー入門 生成文法の謎を解く
 近年チョムスキーといえば、9.11以降のアメリカにおいて、政治・メディアの批判を続ける知の巨人として有名です。
 しかし、本来は言語学を科学のレベルに引き上げた言語学者。私にとっては大昔に解説書を10ページ読んだだけで諦めた、屈辱の「生成文法」の創始者であります。
 どれだけややこしいかというと、生成文法(ウィキペディア)
 本書は、これを学問的歴史から、批判も含めて分かりやすく解説しています。
 興味の無い方にとっては取っ付きどころのない分野ですが、法務の視点から考えると、なんだか足元がぐらぐらしてきます。
 法律は言葉を全て定義しているはずだが、その「文の意味」って、ほんとうに数学のように普遍的なものなの?ある文章は、みんなの脳味噌の中で、ほんとうに同じ意味を形成しているの?
 チョムスキーは、人間は生まれつき「普遍文法」を生得的に備えていて、それを規則に従ってそれぞれの母語に翻訳して話しているのだ、といいます。そう考えると少しほっとしますが、近年、認知言語学や情報処理学の分野からは批判も多いようです。
 人間は「言語」で何を行っているのか。言葉の本質を考える入り口として一読の価値があります。
 

チョムスキー入門 生成文法の謎を解く (光文社新書)
町田 健
光文社
2006-02-16
¥ 756
ISBN: 433403344X
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2006年05月23日(火)

 ネオ共産主義論
 共産主義思想の変遷を、ユダヤ教の旧約聖書まで遡って整理した力作です。
 内容は「へー」18点なのですが、ノンポリの私は全く関係の無い「市民協働」について考えてしまいました。
 本書は、ユダヤ教、プラトンからマルクス・レーニンに至る、ユートピアを目指した思想のひとつとして共産主義思想を位置づけ、その変遷を分かりやすく整理しています。
 しかし、私が感じたのは、思想を実践に移した場合の見事な失敗の歴史であるなあ、ということでした。
 なぜ、失敗したのか?
 不遜を承知で言うならば、「人間行動の勝手な思い込み」に尽きると思います。現実の人間は、思想家や為政者たちが頭で考えた抽象的な人間のようには行動しなかったわけです。(現場で対応している自治体職員の皆さんなら実感されるかな?)
 で、考えたことは、今はやりの「市民協働」が、その轍を踏んではいないだろうか、ということです。「これからの公共は、行政と市民が協働して担うべき」という、素晴らしい理念があります。でも、その「市民」とはどんな動機で、どのように行動する人たちなんだと聞かれたら、私は答える自信がありません。「理念」や「思想」をもって誰かに行動を求める場合、相当謙虚になって現実の人間同士として話合っていくことが必要なんでしょうね。自戒。
 

ネオ共産主義論 (光文社新書)
的場 昭弘
光文社
2006-04-14
¥ 777
ISBN: 4334033490
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2005年12月04日(日)

 日露戦争の世紀―連鎖視点から見る日本と世界
 日露戦争終結から100周年だった2005年は、硬軟さまざまな日露戦争本が出版されましたが、ベストセラーとなった本書は、その中で最も優れた知的収穫といえます。
 副題に「連鎖視点から見る日本と世界」とあるように、時間的には1855年の日露和親条約から1955の日本の国連加盟まで、地理的には韓国、中国はもちろんアジア・中東諸国まで、人的側面からは政治家はもとより記者、芸術家にいたるまで、驚くべき広い視点の連鎖から、日露戦争の本質に迫っています。
 現在、韓流ブームが続く一方、嫌韓論や嫌中論など理詰めを装いつつことさら感情を煽る本が人気を得ているようです。
 しかし、本書を一読されるなら、そのような浅薄な理解で近代のアジアを語ることが、いかに危険なことかが実感できます。本書の視座を敷衍するなら、読者はさらに21世紀の世界のありようまで射程に入れることができるでしょう。必読の1冊です。
 

日露戦争の世紀―連鎖視点から見る日本と世界 (岩波新書 新赤版 (958))
山室 信一
岩波書店
2005-07
¥ 819
ISBN: 4004309581
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2005年09月20日(火)

 日露戦争史―20世紀最初の大国間戦争
日露戦争は大方の人にとって、明治維新と第二次大戦の間の戦争程度のイメージだと思われますが、本書は、21世紀の視点から、日露戦争を再評価しています。
 まず、日露戦争は20世紀最初の大国間の近代戦であり、その後の世界の歴史の分岐点になった戦争だったということです。
 帝政ロシアは、対日戦を植民地戦争と同様に考え、一貫性のない政策と戦略で敗戦を招きます。そして戦後、ロシア民衆の支配層への不信を招き、共産革命へと繋がります。
 一方、日本は、世界戦略の一環として日露戦争を位置付け、政・軍挙げての総力戦で勝利しますが、劇的な勝利が災いし、世界戦略の観点は忘れ去られ、軍国大好き化した国民とともに、無謀な大陸侵攻へと突き進んでいきます。
 ロシアでは日露戦争敗戦の徹底的な分析が行われたのに、日本側では「奇妙なほど分析的姿勢を欠いた」戦史しか作られなかった、という指摘は考えさせられます。
 40年後の第二次世界大戦末期、満州になだれ込んだソ連軍との戦いは、ソ連にとって「第二次日露戦争」だったのだ、というくだりはショックです。
 しかし、明治の指導者たちは、列強がアジアを侵食する弱肉強食の世界で、全知全能を賭して生き残り戦略を考えていました。それと比較して、アメリカべったりで平気で中国・韓国と摩擦を繰り返す21世紀の日本の為政者さんたちは、本気で日本の未来と世界戦略を考えているのでしょうか。不安になりました。
 

日露戦争史 - 20世紀最初の大国間戦争 (中公新書)
横手 慎二
中央公論新社
2005-04-25
¥ 777
ISBN: 4121017927
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2005年09月02日(金)

 なるほど世界知図帳
 お恥ずかしながら、ソ連崩壊後のまともな世界地図を持っていませんでした。
 ペーパーバックを読む関係上、町レベルまで英語標記と日本語標記が併記されていて、なおかつ小さくて安い、という条件を満たすものを探していたのですが、これはお買い得でした。3000円以上のアトラスよりも見やすいように思いました。
 主要都市の詳細地図のほか、巻頭にはニュースに関連したトピックが分かりやすく解説されています。2005年版から、毎年改定していくようです。もしこれで、各地の歴史が少し載っていれば完璧だったのですが。
 おおっと、いま気が付いた。なぜか、中国と朝鮮半島だけ、天津ティエンチン、平壌ピョンヤン、みたいにカタカナ標記だ。
 あ、そうかこれにアルファベット入れると3行になっちゃうからか。
 でも、英語標記もほしかったなあ。
 

なるほど知図帳世界〈2009〉 第6版

昭文社
2008-12-01
¥ 1,680
ISBN: 4398200398
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2005年08月20日(土)

 複雑な世界、単純な法則―ネットワーク科学の最前線
複雑な世界、単純な法則―ネットワーク科学の最前線 マーク・ブキャナン著/草思社
 例えば、60億人の人間関係、河川の網の目、金持ちに金が集まるしくみ、インターネットの網の目の形、細胞内の酵素間の関係、等々、世の中の全てのレベルにおいて、奇妙なほど似通った「ネットワーク」構造が発見されつつあります。
 その隠された法則を、数学と物理学から解き明かそうとするのが、ネットワーク科学です。
 本書は、新たな科学の分野である、ネットワーク科学の歴史と現状を、数学を使わず分かりやすく解説しています。著者は著名な科学ライターで、さまざまな研究者の発見のエピソードが巧みに紹介しながら、一気に読まされます。
 基本となるのは、ダンカン・ワッツとスティーヴン・ストロガッツの「スモール・ワールド」ネットワーク理論です。これは、世界の60億人の一人一人は、距離・社会等でどんなに離れていようと、わずか6人の知り合いの輪(6次の隔たり)で繋がっているという発見で、思わず《へー20》です。
 このスモール・ワールド・ネットワークは、冒頭に書いたような、現実世界のさまざまなレベルで次々と発見されつつありますが、これらの絶妙な構造は、どうやら、ネットワークを作る個々の単位間の「単純な法則」の相互作用により、自然に生成されるらしいというのです。
 私が興味深かったのは、社会や組織の人間関係も、個人の複雑な心理によるものではなく、結構「単純な法則」により生成されているのかもしれない、ということです。
 最終章では、組織について、危機管理のために外部とのパスをいかに構築するべきか、示唆を与えてくれます。
 いわゆる組織論の本ではありませんが、人事・組織・市民協働に携わる人は、思いがけない発見があるかもしれません。お勧めです。
 なお、本書には一切記載はありませんが、ネットワーク理論から、因果、縁起、曼荼羅、因陀羅など、仏教の言葉を思い起こすのは、私だけでしょうか。(ナムアミダブツ・・・(-‖-)
 

複雑な世界、単純な法則 ネットワーク科学の最前線
マーク・ブキャナン
草思社
2005-02-25
¥ 2,310
ISBN: 4794213859
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2005年06月06日(月)

 季刊・自治体法務研究
 (株)ぎょうせいから、季刊・自治体法務研究が出ました。
 うちの職場にも、創刊号の見本が届いたので速攻、年間購読しました。
 今後、法務担当の常備書になりそうですね。
 ただ、まだ法務担当者(及び各課の担当者)が、どのような法務情報を必要としているか、十分なリサーチと整理ができていないように見受けられる点もありますので、編集者の皆さんの今後の精進をご期待したいと思います。