2009年11月 8日 (日)

  市場の倫理 統治の倫理 ― 商道徳と組織道徳の混同が招く腐敗
 山岸俊男氏(直前書評参照)の研究の参照本ということで読んでみました。
 ジェイコブズ(2006年死去)は主に都市問題に取り組んだアメリカの思想家・作家です。本書は人間の道徳の2つの側面について、起源から現代の混乱の原因まで、古今東西の知見をもとにプラトンばりの対話形式で考察しています。(といっても雑談調であっさり読めます。)原著は1992年出版ですが、内容は古びていません。

  • 人間だけが「取り引き」を行なう動物である。
  • 集団を統治するための「統治の倫理」と、商取引上必要な「市場の倫理」が発達。
  • 2つの道徳は「規律遵守」vs「気安く交流せよ」など矛盾するので人々の対立を招くが、適用範囲を分ければ社会の発展に寄与。(カーストや日本の江戸時代など)
  • 2つの倫理の混同は、破綻した社会主義国家や行政と企業の癒着などに見るように、「救いがたい腐敗」を招く。
  • カースト無き後、民主主義社会においては、自覚的にいずれかの倫理を選択するしかない。

 人は道徳判断をするとき、組織維持の側か、外部の人々との関係か、いずれかの立場を選択しなければなりません。繰り返される日本の企業の不祥事などを見ても、説得力のある分析に思えます。やはり山岸氏が主張するように、今後グローバル化が進む中、官から民へ、商人道の確立が生き残りへの道なのかもしれません。
 一方で、この観点からすると民主党政権が目指す大きな政府は、まさに二つの道徳の混同にも見え、日本をどう変えるのか一抹の不安を覚えます。

 本筋とは外れますが自治体職員として興味を引かれたのは、第10章「倫理体系に沿った発明・工夫」にエピソードとして出てくるオレゴン州ユージン市の実例です。地方公社が一人の女性の発案で、それまで地域外と取引していた地元企業同士を結びつける縁結びの試みをしたところ、域内の商取引の活発化と新たな商品開発が始まったというものです。もう20年前の話で、現在どうなっているかは分かりませんが、地産地消、地域内循環などが注目を浴びている日本でも参考になりそうです。φ(。_。)メモメモ
 

市場の倫理 統治の倫理 (日経ビジネス人文庫)
ジェイン ジェイコブズ
日本経済新聞社
2003-06
¥ 900
ISBN: 4532191769
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