2010年 1月 6日 (水)

  地域づくりの経済学入門―地域内再投資力論
 本書は、グローバル化に抗して地域が生き残る術を、地域内外との資金の流入・流出の重要性に着目し、地域経済学の観点から地域づくりの方向を提案しています。少し前の本ですが、リーマンショック後、企業の海外移転が加速している今、本書の指摘はより切迫性を増しているように思います。
 特に重要なのは、著者の造語である「地域内再投資力」という概念で、資金の域外流出を留め、地域内経済の循環に導くことが地域の持続的発展の鍵となる可能性が示されています。この観点からの自治体の産業政策点検も必要かもしれません。
 他にも、大企業の工場誘致は生産利益が本社など域外に流出してしまうため誘致投資に比して域内の経済効果は少ないという指摘や、湯布院をはじめ成功事例の経済学的観点からの分析など、フィールドワークを踏まえた示唆に富む内容です。使える資源が限られてきている現在、経済的理論の基礎固めに、まちづくりに携わる人にとって必読の一冊といえると思います。欲をいうなら、これからさらに進むであろうグローバル化が地方に与える変化の「俯瞰」が欲しかったところですが。

なお、本書中で、国の政策の行く先を「憲法9条を改悪しての『戦争のできる国』にすることではないでしょうか」という記述が、再三繰り返されます。著者の思いが溢れたのでしょうが、一般的な読者にとっては唐突で、記述の客観性に疑いを与えかねません。本書の内容が損なわれるわけではありませんが、惜しい、ということで星ひとつマイナスかな。
 

地域づくりの経済学入門―地域内再投資力論 (現代自治選書)
岡田 知弘
自治体研究社
2005-08
¥ 2,730
ISBN: 4880374431
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