2010年11月23日 (火)

  リスクに背を向ける日本人
 著者の山岸俊男先生は、集団主義、武士道といった日本人観が誤りでにあることを主張し続ける社会心理学者。今回は、アメリカの社会学者、メアリー・ブリンストンとの対談の形で、日本社会の停滞の原因を探ります。

 日本人のリスク回避傾向は世界一だそうで、内向き、上昇志向の欠如などと併せて世界的にも注目されています。本書のメインのテーマは、「日本人はなぜリスクを避けるのか」ということ。その回答は、日本がアメリカなどと比べて逆にリスクが高い社会だから、という意外なものです。
 アメリカでは、国民皆保険がない、解雇基準が甘いなど、日本よりリスクが高そうに見えますが、再チャレンジや自己PRが好まれチャレンジが報われる社会のため危機感は低いといえます。
 一方、日本では新卒就職でセカンドチャンスがない、自己主張が嫌われるなど、人と違ったことをすること自体がリスクです。社会自体が「リスクを取ってチャレンジする人は報われない仕組み」になっています。日本人は、この危険な環境に適応して、リスク回避の性格を形成しているというわけです。
 本書ではこのほかにも、安心社会・信頼社会、無難を選ぶデフォルト戦略など、これまで山岸先生が主張してきた日本社会論についても述べられています。
 しかし今回特徴的なのは、日本の若者たちへの熱い視点です。まじめさや意欲を失っているように見える若者たちですが、社会心理学的視点からは、しつけや倫理などの問題ではなく、このようなリスクの高い社会への彼ら自身の防衛策に過ぎないことを指摘します。

 補筆が多く、対談本として気楽に読むにはややリズム感を欠きますが、社会学の観点から日本の今を俯瞰し若者が元気になれる社会を考えるには格好の一冊です。
 

リスクに背を向ける日本人 (講談社現代新書)
山岸 俊男,メアリー C・ブリントン
講談社
2010-10-16
¥ 798
ISBN: 4062880733
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