2013年 6月 2日 (日)

  かゆいところに手が届く―農家の機械整備便利帳
 自家菜園ブームで、耕運機など素人向けの農機( 農業機械 )がホームセンターで安く販売されるようになりました。しかし、農機は故障した場合、修理費は最低でも5000円、ちょっと面倒なものは10,000円以上はかかります。家庭菜園の日曜ファーマーなら、簡単な整備は自分でできるようにしたいものです。

 本書は、農家を含む機械初心者向けの農機整備の入門書です。耕運機、刈払い機、動力噴霧器をはじめ、よく使われる農機を中心に、その構造と整備・修理の方法とコツを解説しています。著者はJAの機械整備担当の方で、高齢化した農家を日々相手にしているだけあって、難しい専門語を使わず、故障しやすい部分にしぼって丁寧に解説しています。キャブレターなどの部品は分解図で説明しているので、写真ではよく分からない機械の全体構造がよく理解できます。

 農機は最近の自動車に比べれば非常にシンプルな機械なので、タイヤ交換も苦手という人でも、一度本書を片手に挑戦してみれば整備はそれほど恐ろしい作業ではありません。逆に、エンジンの整備などは男の子の本能が呼び覚まされて、結構ハマってしまいます。
 なお、本書の写真は印刷が悪く部品の形がよく見えません。下記のような、整備写真を満載した農機整備サイトがありますので、本書と併せて見ながら作業するとさらに分かりやすいでしょう。

・http://kikaim.com/ 農業機械メンテナンスナビ
・http://www.engineer314.com/ 農業機械の簡単メンテナンス

 Youtube も整備ハウツーの宝庫。アメリカ人の投稿が多いです。
(例)http://www.youtube.com/watch?v=1HxzeuMzKjg 刈払い機キャブレターの修理

 ところで、この本を紹介しようと思ったのには別の理由があります。 日本には数えきれない農機があるというのに 、農家を含む初心者向けの農機整備の手引書は、2013年現在、日本にはこの一冊しか存在しないのです。

 農機整備のハウツー本が出ないのには、どうも我が国農業の現状に根本原因があるようです。
 まず、本書でも触れられていますが、農機の整備を自分で行う農家は少ないという現状があります。アメリカなどの農家は、個人事業者として経営上、農機はできるかぎり自分で整備するのが普通です。しかし日本の農家は、経費管理も農機整備も耕作のノウハウを農協に依存してきました。高齢化や兼業化も進み、いまさらこのような本で整備を学ぼうという農家は少ないのです。
 一方、日本でも自分で整備をする農家もいますが、彼らは農業高校などで教育を受けたプロなので、入門書は不要です。

 しかし今、引退した団塊の世代が一斉に家庭菜園用のミニ耕運機を買っており、このことが状況を変えるきっかけになるかもしれません。凝り性の世代ですから、すぐに分解を始める人も多いはずで、ハウツー本の潜在的需要は高いのではないでしょうか。
 アメリカでは一般向けの小型エンジンの整備解説書が大量に出版されています。これには建国以来の伝統として、一家の主人は芝や庭木の手入れを自分で行わなくてはならず、乗用芝刈り機やチェーンソーを所有している家庭が多いという事情があるようです。日本も似たような状況になりつつあるわけで、フルカラーで格好いい農機整備の入門書が出たら、意外なベストセラーになりそうな気がします。(出たら俺は買う!)
 

かゆいところに手が届く農家の機械整備便利帳
青木 敬典
農山漁村文化協会
1998-01
¥ 1,950
ISBN: 4540970860
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