2013年11月23日 (土)

  統合失調症 - その新たなる真実
○知っておきたい精神疾患の知識
 知的障害・精神障害・パーソナリティ障害・認知症…。

 市町村職員が、精神的な障害を抱えた方々に直面するケースが増えてきました。業務上必要なコミュニケーションが困難な場合も多く、ストレスを抱える職員も増加しています。  
 職種によっては、精神障害に関する知識は不可欠な状況ですが、職員研修はまだ一部でしか行われていません。自分の心を守り、適切な行政サービスを提供するためにも、少しでも理解を深め対応スキルを身に付けていきたいものです。

 さて、本書が扱う統合失調症は、一般には傷害事件のニュースなどでしか接することがなく、訳の分からない怖いイメージがありますが、発症率は人口の1パーセントに達し、福祉部門では普通に出会う疾患です。現代では、きちんと治療・投薬さえ受ければ日常生活を送れる人が多いのですが、症状が強く出ている時期は本人も苦しく周囲とのコミュニケーションが難しいこともあります。
 本書は、この分かりにくい統合失調症について、病気としての歴史からはじまり、症状ごとの分類、現在の治療の方法まで、その全体像を分かりやすく解説しています。著者・岡田尊司(おかだたかし)氏は精神科医として第一線で治療にあたりながら、一般人向けに精神的な障害に関する数々の本を発表しています。本書も新書ながら、バランスが取れた説明でお勧めの一冊です。

○タイプによって異なる対応

 特に、参考になるのは周囲の人々が患者に接する態度についての解説です(第7章)。一口に統合失調症といっても、症状のタイプは人によって、解体型・緊張型・妄想型などに分かれ、タイプに合わせた対応が重要なようです。ケースとして対応する場合は、治療をきちんと受けてもらうことが先決になるので、主治医と話し合いを持つうえでも本書の内容は理解しておきたいところです。

 なお、統合失調症は、環境によって症状改善が図られることも多いそうで、その理由は、この病気が本人の要因だけではなく、社会的環境との相互作用により起こるものだからということです。アフリカなどの地域社会の結びつきが強い開発途上国では、近代的な精神医療より、シャーマンによる土着治療のほうが良好な治療実績が認められる(第6章)というのは衝撃的です。
 日本ではもはや呪術師に頼れませんが、社会全体として統合失調症の患者を受け入れて暮らしやすい環境を整えることは、まだできるかもしれません。そしてそのような社会は、とりもなおさず、私たち一人ひとりにとっても生きやすい世界なのでしょう。
 

統合失調症 (PHP新書)  
岡田 尊司
PHP研究所
2010-10-16
¥ 798
ISBN: 4569793061
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