●抜け道
面倒な食事も、朝昼はビュッフェに行けば、好きな料理を好きなだけ取ることができるので問題はありません。
問題は夜です。
まず、ワインですが、お水で済ませれば構わないとはいえ、そこは折角船に乗ったのだから、食事とともにおいしいワインでも、などと大それた事を考えると、「ソムリエ」という、首に銀メダルのような物を下げた人がやってきて、「ワインリスト」なるものを見せます。こうなったらもうお手上げ、あなたに残された道は3通りだけです。
1.ワインリストをソムリエに突き返し、「やっぱりいい!」と激しく手を振りながら笑ってごまかす。(ごく普通の反応)
2.ワインリストを散々眺めた挙げ句、小さな声で「ビール」とつぶやくが通じない。(よくあること)
3.値段を確かめる余裕もなく、訳もわからないワインを指差してしまう。(その時ソムリエの目が見開かれたら、それはとんでもなく料理に合わないワインか、とんでもなく高いかのどちらかでしょう。せめて前者であることを祈りましょう!)
では、どうすれば良いのか?ビールやウィスキーなどを飲みたい方はあらかじめバーなどで、「ビアー」「スカァッチ」などとオーダーの練習をしておきましょう。
食事中ワイン以外のお酒を飲むことはあまりお薦めできませんが、近ごろはそれほど気にしなくても良いようです。
ワインを飲む場合は、「グラスワイン」あるいは「ハウスワイン」と頼めばたいてい手頃な(むしろ日本より安い)ワインが飲めます。「グラスワイン」「ホワイト」「ワン」などと単語の羅列で何とかなるはず。テイスティングも必要ありません。
せっかく船に乗ったのだから、美味しい料理に合わせて、日頃手が出ないような高級ワインやシャンペン(日本のレストランなどより断然安い!)を頼んでみたい。という方は、あらかじめ注文してしまいましょう。
船には、メインバーなどに今晩のディナーメニューが置いてあり、料理を検討し、バーテンダーなんかとおすすめのワインを相談出来る場合が多いので、
そこでゆっくりとメニューやワインリストを眺め、もし、お目当てのワインを見付けたら、値段を確認してテーブル番号を告げて、予約してしまいましょう。
これでディナーにはあなたの予約したワインが用意されます。テイスティングはソムリエがラベルを見せてくれたら頷き、ワインを注いでくれたらちょっとだけ飲んで頷く、というだけの作業なので何とかなります。
とにかく、ソムリエが注いでくれるときにグラスを差し出したりしない事。ワインが無くなっても自分で注ぎ足さないでソムリエが注いでくれるのを待つ事、などに気を付けましょう。
さて、いよいよ料理のオーダーについて。英語の苦手な私達にとって外国船でフルコースのディナーを頼むのは命懸け(?)の作業です。
まず、読めなくても絶対にメニューから目を離してはいけません。大変危険です。メニューに飽きて目を離してテーブルに置いてしまおうものなら、
ウェイターは軽いほほ笑みなど浮かべて、真直ぐあなたに向かってきます。たとえメニューを持っていても、ウェイターと目を合わせてはいけません。
これも非常に危険です。ウェイターは何か質問かな?といった無邪気な表情を浮かべてあなたを苦しめに来ます。
一番簡単なのは、隣の人と同じものを頼んでしまうことです。隣の人が一通りオーダーしたら、ウェイターに、その人を軽く指し示し、さらに自分を指し示して「セイム」とか何とか言ってしまいましょう。
さらに何かを聞かれたら、「オールセイム」などときっぱりと言いきれば、ウェイターはあきらめてあなたのメニューを取り上げます。
この場合どんな料理が来るかは、隣の人に聞いてみなければわかりませんが、隣の人を見ていれば、食べ方などでも、そう悩まずに済むという利点があります。
ただ、あなたの隣の人がとてつもなく食べ物の趣味が悪かったり、ダイエット中、または大食漢、などの危険性がありますが、その時は、私もこんなものが好きなのだ、とか、痩せて見えるが、実はダイエット中だとかいうふりをしなければなりません。
では、運悪く一番最初にウェイターが来てしまったらどうしたら良いのでしょうか?
一つだけ便利なおまじないがあります。ウェイターが来て、メモをとる格好をしたら、すかさず、
「シェフズ サジェスチョン プリーズ」
と、唱えてみましょう。運が良ければ、ウェイターは頷き、あなたのメニューを取り上げ、隣の客を新たな攻撃目標に定めるはずです。
そして、全員のオーダーを取りおわると、たいていの場合、非常においしいものを次々ともってきてくれる、というレイケンアラタカなおまじないです。
フォークやナイフがごちゃごちゃ並んでいるのもあなたを混乱させます。
いくら外側から、とか、バターナイフの親分みたいなのが魚用のナイフだなどと予習しておいても、いざとなるとすべてふっとんでしまうかもしれません。そんな時には、「お箸」を使うのはどうでしょう。慌てず騒がず、ポケット(あるいはバッグ)から、あらかじめしまっておいたお箸を取出し、
「エクスキューズミー。アイドゥライクトゥユーズチョップスティックス」などと優雅に同席者に会釈をするか、ただ、ニコニコしてごまかしましょう。
たまにはあまり愉快に思わない人もいるかも知れませんが、たいていの場合、「オー」などと言って、東洋人が二本の棒を使って食事をするのを喜んで(あるいは大目に)見てくれることでしょう。
それもイヤ?とにかく面倒な事は全部イヤ?わかりました。そんなあなたに贈る最終兵器です。
フォーマルウェア、ワイン、食事、マナーなど全ての悩みを解決する方法!
夜、部屋から出ない。
「バカヤロー!夜の食事も楽しめないで何のためのクルーズだ!」という魂の叫びが聞こえるようですが、
それに対する答えは一言。部屋でディナーをとれる船を選びましょう。
プライベートヨットタイプの船の多くは、キャビンでフルコースのディナーを取ることが出来ます。また、その他の客船でも、上級キャビンならフルコースのディナーを取ることが出来る船はかなりあります。
それほど高級な船でなくても、キャビンで食事が出来る船も稀にはあると思いますので、各代理店に聞いてみて下さい。