●クルーズの生活と食事「フルコース?ワイン?マナー?外国語!?」

クルーズの一日は船内新聞によって始まります。
ほとんどの客船では、朝、キャビンに船内新聞が配達されます。
これに今夜のドレスコード、レストランの時間、エンターテイメントやカルチャースクールのスケジュール、などの予定表が載っています。
その予定表に沿って朝のジョギング、各種の講座、ワインテイスティング教室、ビンゴ大会、カジノ教室、クラッシックコンサート、ショー、ダンス・・・と飛び回るも良し、 一日中デッキでぼーっと海を眺めて寝ているも良し。どちらもクルーズの楽しみ方です。(何度も世界一周をしている方や「船が好きだから」というだけでクルーズされている方の中にはショーは全く見ないという方もいますし、寄港地で全く下船しない方も。)
「飛び回り派」の人から見ると「寝ころび派」は「もったいない!」ということになり、「寝ころび派」は「飛び回り派」に「クルーズはゆったり楽しむものよ」と思ったりしますが、お互い放っときましょう。それがクルーズの良さです。
ただ、いろんな事に興味があるなら迷わず臆せずチャレンジしましょう。
特に外国船では、ダンス教室で全く始めての人が踊ってるのなんか誰も気にしません。
人に迷惑がかからない限り、やりたいことをやって楽しみましょう。
ところで、外国船ならではのものにチャーチサービス(礼拝)があります。
多くの外国船では日曜礼拝が持たれるようです。大体はキリスト教、といっても船によって、プロテスタント色、カソリック色、イギリス国教会色の強いものなどいろいろだったり、ユダヤ系のお金持ちが多く乗る船などは、ラビによるユダヤ教の礼拝があったりするようです。

そして、多くの日本人にとって、船内生活の中で、最大の楽しみであり悩みでもあるのが食事です。
朝食は朝の光を浴びながらデッキでビュッフェを取るも良し、レストランでゆったりと(朝昼のレストランは非常にすいています)卵料理、ポリッジ(おかゆ)などをいただくのも良いでしょう。 昼もビュッフェ・レストランでのチョイスを選べる船がほとんどです。(まれに、天候によってデッキランチが中止になったりします。)
ピザやハンバーガーなどのファストフードを軽くつまめる船もあります。

問題はディナーです。⇒メニュー●その傾向と対策
本来はまず、アペリティフ(食前酒)に甘目のお酒をいただきながら食事をを選び、ワインリストに目を通し、料理にあったワインを注文。うやうやしく注がれたワインの色、香を確かめつつ一口テイスティング。ソムリエにニッコリと頷いて同じテーブルの船客にふるまう・・・なんて余裕、なかなかありません。
もし、日本人コーディネータが乗っていなければ、外国船では、メニューも良くて英語、ヘタするとフランス語でチンプンカンプン。
たいてい、メニューは2〜4個位がひとまとめになっていて、その中から一つづつを選んでいきます。上からアペタイザー(オードブル)、スープ、サラダ、メインディッシュ、デザートです。 その下にはコーヒーなど食後の飲み物の種類や、場合によっては、プチフールやフルーツ、フロマージュ(チーズのこと)などの種類、お薦めのワインまで書いてあったりするので、ますます訳がわかりません。 船によっては、サラダがなかったり、メインディッシュの前に口直しのソルベ(シャーベット)が入っていたりするので、上から適当に注文してしまったりすると、デザートを断ったつもりが、メインディッシュが来なかったりする危険性もあります。 注文が決まったら、メニューを閉じてテーブルに置けば、おもむろに担当のウエイターがやって来ます。「おーい!」と呼んではいけません。そのテーブルごとに担当のウエイターや食器を片づけるバスボーイが決まっているので、用のあるときは自分のテーブルのウエイターと目を合わせるだけで用を聞きに来てくれます。
逆に(これは船だけでなく欧米のほとんどのレストランでも)担当以外のウエイターに用事を頼んでも、なかなか聞いてくれません。
オーダーは「チキンと○○の○○風 ○○添え」みたいなメニューなら、「チキン」で充分です。「○○サーモンの○○ソース」なら「フィッシュ」でも構いません。
注意したいのは1人分のメニューをいっぺんに注文する事。「私のスープはコンソメ、この方はポタージュ。」「メインは私とこちらがビーフ、あちらとあちらはお魚」というオーダーの仕方はウェイターを混乱させます。
他の方のオーダーをしてあげる時も、1人分づつをまとめてオーダーするようにしましょう。
ナイフやフォークは外側から、といっても、これもずれたりする怖れがあります。
グラスもいくつか並んでいますが、ゴブレットにお水を注いでもらう時、グラスにワインを注いでもらう時などにグラスを持ってはいけません。
タバコを吸う方は、スモーキングテーブルを指定しても、食事が終わるまでは、ガマンしましょう。

外国船では、クルーズの終わりに、部屋のスチュワード(毎日掃除やベッドメーキングをしてくれる人)、レストランのウェイター、バスボーイなどに(ワインを給仕してもらった方はソムリエにも)チップをまとめて渡します。 1日ごとに渡す必要はありません。下船の前夜に渡すのが普通です。金額の目安はパンフレットなどで案内されているので心配ありません。
部屋に何かを持ってきてもらった時や、バーで飲み物を注文した時などはその都度チップを渡した方が良いでしょう(バーでは伝票に「tip 10%」等と書き足してもOK)
ただ、何かして頂いたからといって、オフィサー(制服に肩章が付いている人と思えば良い?)の方に、チップを渡すことは大変失礼だそうなので気を付けましょう。

●抜け道

面倒な食事も、朝昼はビュッフェに行けば、好きな料理を好きなだけ取ることができるので問題はありません。

問題は夜です。
まず、ワインですが、お水で済ませれば構わないとはいえ、そこは折角船に乗ったのだから、食事とともにおいしいワインでも、などと大それた事を考えると、「ソムリエ」という、首に銀メダルのような物を下げた人がやってきて、「ワインリスト」なるものを見せます。こうなったらもうお手上げ、あなたに残された道は3通りだけです。
1.ワインリストをソムリエに突き返し、「やっぱりいい!」と激しく手を振りながら笑ってごまかす。(ごく普通の反応)
2.ワインリストを散々眺めた挙げ句、小さな声で「ビール」とつぶやくが通じない。(よくあること)
3.値段を確かめる余裕もなく、訳もわからないワインを指差してしまう。(その時ソムリエの目が見開かれたら、それはとんでもなく料理に合わないワインか、とんでもなく高いかのどちらかでしょう。せめて前者であることを祈りましょう!)
では、どうすれば良いのか?ビールやウィスキーなどを飲みたい方はあらかじめバーなどで、「ビアー」「スカァッチ」などとオーダーの練習をしておきましょう。
食事中ワイン以外のお酒を飲むことはあまりお薦めできませんが、近ごろはそれほど気にしなくても良いようです。
ワインを飲む場合は、「グラスワイン」あるいは「ハウスワイン」と頼めばたいてい手頃な(むしろ日本より安い)ワインが飲めます。「グラスワイン」「ホワイト」「ワン」などと単語の羅列で何とかなるはず。テイスティングも必要ありません。
せっかく船に乗ったのだから、美味しい料理に合わせて、日頃手が出ないような高級ワインやシャンペン(日本のレストランなどより断然安い!)を頼んでみたい。という方は、あらかじめ注文してしまいましょう。
船には、メインバーなどに今晩のディナーメニューが置いてあり、料理を検討し、バーテンダーなんかとおすすめのワインを相談出来る場合が多いので、 そこでゆっくりとメニューやワインリストを眺め、もし、お目当てのワインを見付けたら、値段を確認してテーブル番号を告げて、予約してしまいましょう。
これでディナーにはあなたの予約したワインが用意されます。テイスティングはソムリエがラベルを見せてくれたら頷き、ワインを注いでくれたらちょっとだけ飲んで頷く、というだけの作業なので何とかなります。
とにかく、ソムリエが注いでくれるときにグラスを差し出したりしない事。ワインが無くなっても自分で注ぎ足さないでソムリエが注いでくれるのを待つ事、などに気を付けましょう。

さて、いよいよ料理のオーダーについて。英語の苦手な私達にとって外国船でフルコースのディナーを頼むのは命懸け(?)の作業です。
まず、読めなくても絶対にメニューから目を離してはいけません。大変危険です。メニューに飽きて目を離してテーブルに置いてしまおうものなら、 ウェイターは軽いほほ笑みなど浮かべて、真直ぐあなたに向かってきます。たとえメニューを持っていても、ウェイターと目を合わせてはいけません。 これも非常に危険です。ウェイターは何か質問かな?といった無邪気な表情を浮かべてあなたを苦しめに来ます。
一番簡単なのは、隣の人と同じものを頼んでしまうことです。隣の人が一通りオーダーしたら、ウェイターに、その人を軽く指し示し、さらに自分を指し示して「セイム」とか何とか言ってしまいましょう。 さらに何かを聞かれたら、「オールセイム」などときっぱりと言いきれば、ウェイターはあきらめてあなたのメニューを取り上げます。 この場合どんな料理が来るかは、隣の人に聞いてみなければわかりませんが、隣の人を見ていれば、食べ方などでも、そう悩まずに済むという利点があります。 ただ、あなたの隣の人がとてつもなく食べ物の趣味が悪かったり、ダイエット中、または大食漢、などの危険性がありますが、その時は、私もこんなものが好きなのだ、とか、痩せて見えるが、実はダイエット中だとかいうふりをしなければなりません。
では、運悪く一番最初にウェイターが来てしまったらどうしたら良いのでしょうか?
一つだけ便利なおまじないがあります。ウェイターが来て、メモをとる格好をしたら、すかさず、
「シェフズ サジェスチョン プリーズ」
と、唱えてみましょう。運が良ければ、ウェイターは頷き、あなたのメニューを取り上げ、隣の客を新たな攻撃目標に定めるはずです。
そして、全員のオーダーを取りおわると、たいていの場合、非常においしいものを次々ともってきてくれる、というレイケンアラタカなおまじないです。

フォークやナイフがごちゃごちゃ並んでいるのもあなたを混乱させます。
いくら外側から、とか、バターナイフの親分みたいなのが魚用のナイフだなどと予習しておいても、いざとなるとすべてふっとんでしまうかもしれません。そんな時には、「お箸」を使うのはどうでしょう。慌てず騒がず、ポケット(あるいはバッグ)から、あらかじめしまっておいたお箸を取出し、 「エクスキューズミー。アイドゥライクトゥユーズチョップスティックス」などと優雅に同席者に会釈をするか、ただ、ニコニコしてごまかしましょう。 たまにはあまり愉快に思わない人もいるかも知れませんが、たいていの場合、「オー」などと言って、東洋人が二本の棒を使って食事をするのを喜んで(あるいは大目に)見てくれることでしょう。

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夜、部屋から出ない。
「バカヤロー!夜の食事も楽しめないで何のためのクルーズだ!」という魂の叫びが聞こえるようですが、 それに対する答えは一言。部屋でディナーをとれる船を選びましょう。 プライベートヨットタイプの船の多くは、キャビンでフルコースのディナーを取ることが出来ます。また、その他の客船でも、上級キャビンならフルコースのディナーを取ることが出来る船はかなりあります。
それほど高級な船でなくても、キャビンで食事が出来る船も稀にはあると思いますので、各代理店に聞いてみて下さい。

一言。
やはり英語が一語も解らない、という方は、日本語の通じるクルーや日本人コーディネーターの乗船している船、パックツァーなどを選ぶのが無難でしょう。
でも、苦労をするのも旅の楽しさかも(無責任)

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