Q.81 不動産の相続
同居している息子が、年内に家を建て替えてくれることになり、先日、施工していただく住宅メーカーも決まりました。この際、私名義の土地を、息子の名前に変えようと、唯一の肉親である弟に相談したところ、父が亡くなった時に土地もお金も貰ってないのだから息子の名義に変えるならば、土地の代金に見合うお金の半額ぐらいは、もらう権利があるのではなかろうかなどと言いだしましてほとほと困っております。実際、父が亡くなった時、貯金などの蓄えはほとんどなく、全て葬儀代に充てたように記憶しております。わたしはどうすればよいのでしょうか?


A.81 回答

(1)状況が少しわかりにくいですけど,整理します。
 父親が亡くなった時に,弟は土地もお金ももらってなかった。兄である相談者名義の土地がある。弟は唯一の肉親であるが,父が亡くなった時に貯金などの蓄えは殆どない。全て葬儀代に充てたということ。以上のような内容ですか。

(2)そうすると,父親の相続人は兄弟2人と考えられます。
 父親の財産は土地と,若干の貯蓄であり葬儀代などでなくなった。父親の相続で,遺産である土地は,相続人である長男名義にしたということになります。

(3)相続人が兄弟2人で,相続が発生し長男名義にする場合,弟が相続を放棄するか,長男単独名義にする遺産分割協議がなされた場合と,長男に単独相続させる遺言書が作成されていた場合が考えられます。

(4)それぞれの場合について,何か異なってくることはあるのでしょうか。
 まず,弟が相続放棄をした場合と,長男単独名義にするような遺産分割協議がなされた場合には,その後で,他の相続人,この場合は弟ですが,何を言っても,法律的にはその主張は認められません。
 弟が自らの意思で,自己の相続分の主張をしないと決めたわけですから。

(5)今回の相談のように,息子の名義に変えるならば、土地の代金に見合うお金の半額ぐらいはもらう権利があるのではなかろうかなどと弟から言われても,それに従う必要はありません。

(6)実際に,相続に際して,価値がないものと思って他の相続人に譲った土地が,何らかの原因で,高く売却されたりしたような場合に,今回のような主張が他の相続人からでることはよくあります。
 しかし,法律的にはその申し出を拒絶しても何ら問題はありません。肉親の情などから多少の配分をする場合も,あるとは思いますが。

(7)しかし,今回のケースのように自分の息子名義にすることにトラブルがあることはあまり聞いたことはありません。
 本来次男が譲る時は,先祖の土地として長男に守って欲しいという趣旨が多いですから,他人に売却する場合と違い,その子に譲ることにあまりクレームがつかないのが通常です。

(8)それでは,もう一つの遺言で長男名義になった場合はどうなのでしょうか。
 この場合は,相続した時点から1年以内であれば,法律上は遺留分の減殺請求権がありますから,次男には,遺産の評価の4分の1を受け取る権利があります。
 したがって,次男がクレームをつけてきた段階で,よく話し合った方が良いと思います。





Q.82 借金の解決方法
番組で借金についての相談を耳にしましたが、私の場合は、さらに深刻です。
限度額内であればATMから気軽に引き出せたこともあり、ずるずると借りたり返したりを繰り返しているうちに、借金は限度額の300万近くにまで昇りました。さらに、体調を崩して会社を辞めることになり、もう、自己破産しかないのかとも思います。他に何か手だてはありませんか?教えてください。


A.82 回答

(1)借金は300万近くで自己破産しかないのかという相談ですが,今日の相談者の方は,借金の総額しか記載されておらず内容が若干不明です。
 ただ,限度額の300万近くになったとありますから,借入先は1社と考えられます。

(2)借入先が1社であっても,体調を崩して会社を辞めることになれば,働いて300万円近い返済することは,通常は難しいでしょうから,破産するしか方法がないとも考えられます。
 ただ,取引期間が不明ですので,場合によっては,破産せずに済むかもしれません。

(3)それはどういうことでしょうか。
 以前の放送でも何度か話していますが,借り入れと返済を繰り返している期間が長ければ,今までに支払った総額が,借入した金額に法定金利を加算した金額を超えている状況になっている,いわゆる過払いの可能性があるからです。
 また,過払いでなくても,借入金の残額が大幅に減る可能性もあるからです。

(4)もう少し具体的に言うと,過払いとはどういうことでしょうか。
 以前はサラ金業者等からお金を借りた場合,30%から40%程度の高い利息を返済していました。
 しかし,現在は,高い利息は認められておらず,過去に高い利息を支払っていた場合,現在法律で認められている利息で計算し直しをすることができます。
そうすると,利息を払いすぎていたことになりますから,その分を借り入れた金額の返済に充てることが出来ます。その結果,借入金額の返済に充てても,残った金額を返してもらえるという状態が過払いということになります。

(5)例えば,相談者が300万円を請求されていたとしても,150万円の利息を支払いすぎていたということであれば,今後の支払額は150万円になりますし,400万円支払いすぎていたということになれば,100万円を戻せと請求できることになります。このように戻せと請求できる状態を過払いといいます。

(6)相談者が,ある程度の期間,借りたり返済したりを繰り返していれば,過払いの可能性はかなり高いと思います。

(7)破産した方がよいかどうかは,取引履歴を取り寄せて,利息制限法で計算し直しをした後に判断すれば良いと思います。
再就職が出来て安定した収入が見込めるならば,個人再生を選択することも考えられますし,1度専門家に相談した方がよいでしょう。





Q.83 遺言書の作成
12年前妻に先立たれ独り身を続けておりましたが、心から結婚したいと思える女性が現れました。子ども達に再婚したい旨、打ち明けたところ猛反発を食らいまして。私が死んだ時、いくつかある土地などの財産が、縁もゆかりもない人に行ってしまうことが耐え難いようです。子ども達に納得してもらうような遺言書を作成する上での助言を先生から戴けますか。


A.83 回答

(1)妻に先立たれた夫が再婚しようとして子供達の反対に遭うことは時々耳にする話です。
確かに,子と妻が相続人の場合,妻には2分の1の相続権がありますから,子供達にとって,父親が再婚することは,将来の相続にとって重大な影響があります。

(2)今回の相談者の年齢も61歳ということですから,将来の相続を考える子供達の気持ちもわからないではないです。

(3)相談者も子供達の気持ちを考えて,子供達に納得してもらうような遺言書を作成したい,そのための助言を求めたいということですか。どういう方法が考えられますか

(4)まず,遺言書の内容で子供達に財産を相続させる旨の記載をすることが考えられます。
そうすると,とりあえずは,遺言者の意思が優先されますから,子供達が全ての財産を相続することになります。

(5)しかし,妻には遺留分という遺言者の意思によっても侵害されない権利があります。
そうすると,妻が遺言者の遺言で納得すれば,遺言者の意思通りになりますが,不満があれば,遺留分の減殺請求権を行使できます。

(6)具体的に,妻には相続分の2分の1の遺留分があります。
今回の場合は,相続分が遺産の2分の1で遺留分がその2分の1ですから,遺産の4分の1について遺留分減殺請求ができます。

(7)その期間は,相続開始時及び遺留分侵害行為があったことを知った時から1年以内です。

(8)今説明したとおり,全てを子供達に相続させる遺言書を作成して,妻が納得すれば,それで済みますが,妻が納得しない場合は,遺留分を巡るトラブルが発生します。したがって,相談者が亡くなった後に,妻と血縁関係のない子供らとの無用なトラブルを回避するためには,その点を考慮する必要があるでしょう。

(9)例えば,妻と子供達と話し合って,現金と住宅とを分けて4分の1相当分を妻に相続させるとか,妻に何らかの生前給付をして,遺留分の生前放棄手続きをしてもらうとかが考えられます。





Q.84 マンションの管理費について
昨年末に中古マンションを購入したのですが、管理組合から、前の家主が滞納していた未払の管理費を支払って欲しいと言われて頭にきています!小額ですから払えますけど、なぜ私達が!?というのが本心です。組合の人はこんな場合には法律的にも、うちが払う義務があると言いました。本当にうちが支払わなければならないんですか?


A.84 回答

(1)前の家主が滞納していた未払い管理費について支払い義務があるのか,という相談ですか。確かに,前の家主の問題であり,相談者には関係のない問題というふうに思えますし,なぜ私達がという,相談者の心情も良く理解できます。

(2)通常の売買であれば,相談者の言うとおりです。
  売り主の債務を買い主が別に引き受けるという契約がなければ,売り主の第三者に対する債務を買い主が払う必要がないのが一般的な考え方です。

(3)しかし,マンションの管理を巡る法律関係については,建物区分所有法という法律が制定されています。したがって,マンションの管理費の問題についても,その法律が,適用されることになります。

(4)その法律によるとどうなるのでしょうか。
 建物区分所有法第8条には,管理組合又は管理法人がその職務又は業務を行うについて有する債権は,債務者たる区分所有者の特定承継人に対しても行うことができると規定されています。

(5)特定承継人に対しても行うことができるということを,もう少しわかりやすくいうと具体的にどういう意味ですか。
  管理費の滞納者が所有しているマンションが滞納状態のまま第三者に譲渡された場合には,元のマンション所有者だけでなく,その第三者,つまり新たなマンション所有者に対しても滞納管理費を請求できると言う意味です。

(6)マンションの売買の場合は,以上の規定が適用されますから,相談者は支払いを免れることはできません。

(7)ただ,通常のマンション売買の場合ですと,マンションの管理費などに未納があれば,不動産業者はその金額などを重要事項証明書に記載しなければなりません。これは宅地建物取引法で規定されています。
 ですから,相談者は本来マンションを購入する際に,滞納管理費の存在を知り,その分を売買代金から控除する等の手当をすることが可能です。

(8)今回の相談者の方は,全く知らなかったみたいですから,マンションを購入した不動産業者に問い合わせをして,何故記載がなかったのか,売り主からその分を支払ってもらう交渉をした方が良いと思います。
 ただ,管理組合からの請求については,とりあえずは支払う義務がありますから,請求を拒むことはできません。





Q.85 ワンクリック詐欺
アダルトサイトのワンクリック詐欺がまた、大きなニュースになっていますね。
5年前ですが、僕もお金を振り込んだことがあります。後になって、親友から請求がきても無視すればいいと教えてもらいそれ以後支払った事はありません。
年に何度か、こういったニュースを見ると、思い出してムカムカします。
あの時の自分に教えてあげたいです。先生に聞いてみたいのが、捕まった人は、どんな刑や罪に問われるかです。あと、僕が振り込んだ業者が捕まった場合、お金って返ってきませんかね。


A.85 回答

(1)ワンクリック詐欺で捕まった人がどんな刑や罪に問われるかということですか。
「ワンクリック詐欺」で現金を詐取したということであれば,刑法上詐欺ですから,10年以下の懲役ということになります。

(2)しかし,最近は組織犯罪処罰法10条の犯罪収益等隠匿違反で逮捕されたという報告も聞いています。
 その場合ですと,5年以下の懲役又は300万円以下の罰金と言うことになります。

(3)次に,僕が振り込んだ業者が捕まった場合、お金って返ってきませんかねとの質問ですが,法律的には不法行為として損害賠償請求が出来るでしょうが,実際は返還は期待できないと思います。

(4)それでは,ワンクリック詐欺の対策とすればどうすればよいでしょうか。
  まず,基本は不用意にアクセスしない・クリックしないことですね。これが一番です。

(5)アクセスしてしまった場合にはどうすればよいでしょうか。
  この場合でも,あわてて業者に連絡しないこと。これが鉄則です。

(6)IPアドレス、メールアドレス、携帯電話の識別番号などが画面上に表示されることがありますが,その場合でも連絡しない方がいいのですか。
 はい,これだけでアクセスした人を特定する個人情報(氏名や住所など)が業者に伝わっていることは通常はありえません。
 電話やメールで業者へ連絡を取ることは、かえって氏名、住所などを業者に知らせることになりかねないので、あわてて業者に連絡しないことです。

(7)業者から利用料金の請求を受けた場合は,どうすればよいでしょうか。
  請求されても、言われるままに支払わないことです。「登録になりました」「入会ありがとうございます」などと表示されても、契約が成立していない場合が多いです。

(8)まとめますと基本的な対応は以下の通りです。
 @ 相手に電話で連絡を入れない。 着信拒否等で対処する。
 A 相手からの連絡も相手にしない。 不当請求をマトモに相手にする必要はありません。
 B 但し,裁判所関連の請求の場合だけは,無視せずに専門家に相談した方が良いと思います。
 仮に,不正請求であっても裁判所関連の請求を無視すると判決が確定することがありえますから,その場合だけは注意が必要です。





Q.86 過払い金返還請求の金額
この前、居酒屋で たまたま同席した人が、過払い金が戻ったと話していました。
金額は手数料などを引いても、75万円だったそうです。そこで、実際、先生が担当された過払い金返還の経験談を教えてくれませんか?もちろん、プライバシーに差し支えない内容で構いません。


A.86 回答

(1)私が担当した過払い金の経験段ですか。やはりなんと言っても過払い金額が多かった人が印象深いですね。

(2)どのくらいの金額の人がいるのでしょうか。
  一般的にはよく分からないですけど,私の事務所では,戻ってきた過払い金額の合計が500万円を超えるような人たちも5人くらいはいらしたように思います。

(3)その中でも数年前にサラ金からの借入が300万円以上あって,会社の上司から破産を勧められている状況で依頼された方が,調査したら500万円以上の過払い金があったのが印象深いですね。
それまで,毎月の返済に苦しんでおり,真剣に破産を検討してました。
 それが,調査期間中は返済をしなくて良いと言うだけでも喜んでいたのに,その数ヶ月後に500万円以上戻りました。
本人は本当に喜んでいましたね。

(4)最近でもそのような大きな金額が戻ったという例はあるのでしょうか。
 最近は過払い返還事件も減少しており,大きな金額が戻る例はほとんどなくなっています。
ただ,最近も凄い金額が戻った例がありました。

(5)それはどういう例でしょうか。
  知り合いの紹介で来られた夫婦ですけど,一家で様々な業者に借入をしており家族の合計額で800万円ほど戻ったように記憶しています。

(6)そういうことがまだあるのでしょうか。
  この一家の場合には,借入をしていたサラ金業者がまだまだ余裕のある業者でしたから,運が良かったのだと思います。

(7)それはどういうことですか。
  現在は多くのサラ金業者は,過払い金の返還に苦しみだしており,過払い金があるからといっても,容易に返還に応じることが出来ない状況になってきています。

(8)例えば,武富士やニコニコクレジットの丸和商事などは,法的整理手続きに入りましたから,過払い金があってその返還を受けることを心待ちにしていた人たちが,次期が遅かったということで,本当にわずかの割合での返還しか受けることができませんでした。

(9)その意味で運が悪かった依頼者は私の事務所でもたくさんいます。
  時期的には,もうかなり遅いでしょうが,心当たりのある方は急いで相談された方が良いと思います。





Q.87 飲食店でのツケの代金請求
主人と私で小さいながら飲食店をやっています。おかげさまで店は順調なんですが、主人の小学校からの同級生でよく店に顔をだしてくれる人が、ツケの代金を払ってくれません。私も主人の友人ということで、あまり強く言えないのですが、催促すると“また今度払うから”と言って帰っていきます。
そのくせ週末になるとノコノコと顔を出しツマミとビールを飲んでいきます。
おっとりした性格の主人は、まぁいいじゃないのと言いますが、メモしているだけでも、5万円はあります。私が店に出れない日に、来てることがあるようですから、きっとそれ以上のツケがあると思います。どうにかなりませんか。


A.87 回答

(1)相談者が困っているように,図々しい性格の人が世の中にはたくさんいますよね。
 幼なじみというか,昔の知り合いと言うことで,代金を支払わなくてもいいということはありえませんからね。

(2)図々しい人との付き合い方はきっちりするということが大切ですね。
  けじめをつけるにはちゃんと代金を請求するなり,請求書を送付することが大切ですね。

(3)毎月請求書を送って金額が加算されていることを知れば,それなりに足かせにはなると思います。

(4)それでも支払わない場合にはどうすればよいでしょうか。
  請求書を出し続ければよいのでしょうか。
  請求書を出し続けるのが良い方法ですけど,それには1つ大きな問題があるのです。

(5)具体的にどういう問題があるのでしょうか。
  消滅時効の問題があります。

(6)民法174条に次のように規定されています。
次に掲げる債権は,一年間行使しないときは,消滅する。
4項 旅館,料理店,飲食店貸席又は娯楽上の宿泊料飲食料,席料,入場料,消費物の代価又は立替金による債権

(7)ここでは,料理店飲食店の代金は一年間で時効にかかるというふうに規定されていますので,注意が必要です。

(8)消滅時効にかからないようにするためには,どうすればよいのでしょうか。
 1年以内に訴えを提起すれば,中断します。それ以外にも,催告といって,内容証明郵便で請求すれば消滅時効は,その時より半年間は延長します。

(9)訴訟をすれば逆にお金がかかるのでしょうか。
  そうですね。ただ少額訴訟手続きといって,簡単にする方法もありますから,あんまり悪質な場合には検討するのもいいかもしれません。

(10)法律的には以上の通りです。ただやはりご主人と友達との関係もありますから法律的な解決が難しいことが多いですね。
 主人と良く話し合って,あなたがそれでストレスがかかって,精神的に酷いというのであれば,ご主人に理解してもらって,対応するのが良いと思います。





Q.88 転勤を拒否することができるか
この前、転勤する同期の送別会をやったんですよ。一番仲がいいヤツが、大阪に行くことになって、僕もちょっとさびしいっすわ。3次会で彼女も合流したんですけど、彼女大泣き。遠距離って続くんですかね。
いずれ僕も転勤を命じられる可能性はゼロではないわけで。
そん時に彼女いるかなぁ。理由はともかく!僕は地元の小松が大好きやし、転勤はイヤですわ。会社からの命令って断ることできないんですか?クビになっちゃったりするんですかね。


A.88 回答

(1)転勤はイヤ。会社からの命令は断ることはできないか。との質問ですか。
 一般的には従業員が会社に入社するときに結ぶ労働契約に内容によって決まってきます。

(2)ただ,相談者の方は大阪への転勤もあるということですから,それなりの会社に勤めていると考えられます。
 そうするとその会社には,通常,就業規則や労働協約の規定があり,そこに「会社は必要により配転を命ずることができる」という包括的な配転条項がある可能性が極めて高いと思えます。

(3)そのような場合にどうなるかですが。
  原則的には就業規則などの定めに従う必要がありますから,転勤に応じる必要があると思います。
ただその条項があるから絶対に応じなければならないわけではなく,その転勤,配転が権利濫用といえるような場合には,そのような配転は許されません。

(4)どのような場合が権利の濫用になるのでしょうか。
  裁判で争われた例では,業務上の必要性と労働者側の利益を比較考量することによって,権利濫用の有無が決せられてきました。
 具体的には,配転を行う業務上の必要性と当該労働者を人選することの合理性という会社側の利益と,当該配転が当該労働者にもたらす生活上の不利益という労働者側の利益を比較することになります。

(5)具体的に判例を見てみます。
  同居の母親や保母をしている妻,2歳の長女を残した単身赴任を余儀なくされることも転勤に伴い通常甘受すべきものと判断した最高裁判例もあります。
 その他に共働き夫婦の別居を余儀なくされる配転についても,結論として権利濫用に当たらないとした判例もあります。

(6)裁判の流れを見ていると,入社時に契約している以上,後で転勤は嫌と言っても中々難しそうですね。

(7)そうだとすれば,転勤に応じないといけないように思えますが,転勤に応じないということはどうなるのでしょうか。相談者のいうようにクビになるのでしょうか。
 それなりの正当な理由がなく,転勤の拒否を続けているような場合には,懲戒解雇の対象となるでしょうし,クビということになってしまう可能性が高いと思います。





Q.89  年俸制でも残業代は支払われるか
この春短大を卒業した息子が関西の方で仕事につきました。就職難のご時世で、雇ってもらえたことは感謝感謝なのですが先日新入社員を集めた場で、年俸制で給料が定められているから残業代や交通費などは出ないと説明があったというんですね。息子からの伝え聞きなので、詳細は分かりませんけれどもこういった勤務形態は法律で良しとされているんでしょうか。


A.89 回答

(1)近年、年俸制という賃金制度を採用する企業が増えています。
  年俸制とは、給料を年を単位として支払うというものですが、実際の支払いは毎月支払うということで(毎月支払いの原則)、その辺は月給制と変わりません。

(2)内容的には、成果のみで賃金が決まる完全年棒制もありますが、多くは年功や職能給との組み合わせで額を決めるようです。年俸制を採用すること自体は法律上何ら問題はありません。
 
(3)年俸制にはどのような特色がありますか
  年俸制は優秀な人材が正当な評価を受けることで、労働者の意欲が向上し、社内の雰囲気も活性化するという点で、これまでの制度に比べて優れた点もあります。 しかし、現実には年功給、年数加算分が廃止又は縮小されることが多く、賃金減額となっているケースも多く見られます。

(4)会社から残業代や交通費などが出ないという説明があったということですがこの点はどうなんでしょうか。
  確かに、相談者の質問にあるとおり、年俸制を採用する理由を「残業代を支払わなくて済むから」としている会社は意外と多いです。しかし、これは労働基準法違反の可能性が高いといえます。

(5)年俸制においても、労働基準法の適用を当然受けます。したがって、年俸制適用者であっても、原則として1日8時間を超えて労働させたときには、労働基準法37条の割増賃金(残業代)を支払う義務があります。
  残業代を支払わなてもよいとされるのは、管理監督者(経営者と一体の立場にある者)に対してのみです(労働基準法41条)。
 ただ、相談者の息子さんの場合は、管理職ではなく平社員であることから、法定の残業代をもらえる立場にあります。
 この点を勘違いしている人事担当者もいますし、その結果、労働者もその言い分を鵜呑みにして、残業代を一切貰っていないというケースも存在するようです。

(6)もっとも、年俸制を採用した場合に、時間外の割増賃金を予め年俸に含めている場合もあります。
 例えば、時間外労働が毎月ほぼ一定している場合には、あらかじめ割増賃金を年俸に固定残業代として含めて支給することは認められます。
 この場合であれば、実質的に固定残業代が年俸に含まれていますから、形式的には残業代は支払わないという形態になります。

(7)しかしこの場合でも、実際の時間外労働に見合う割増賃金の額が、定額で支払う固定残業代を上回る場合には、その差額を毎月の給与で清算し、追加して支払わなければなりません。

(8)相談者の会社の場合、実際はどうなのかが問題になりますから、労働契約書などによって、
  @ 年俸がどのように決められているか、
  A 残業代が区分されているか、
  B 見込みの残業時間を超えて残業した場合は超過分について追加して残業代が支払われるかどうかを確認する必要があります。

(9)その上で、残業代が未払いであるようなら、労基法違反として会社に未払いの残業代を請求する権利がありますから、その場合は、会社に交渉した上で、解決できない場合は、労働基準監督署の無料相談窓口に相談してみるのがよいと思います。





Q.90 離婚理由について
離婚を考えています。妻と結婚して8年で子供はいません。見栄っ張りな性格の妻は、サラ金にお金を借りてまで、ブランド物を買ってしまうのです。何度も諭しましたが、ご近所の○○さんは似合いもせずに、もっと凄いものを持っている。私の方がもっとブランドにふさわしいなどと言いだし、ほとほと呆れてしまいました。今のところサラ金の支払いに滞りはありませんが、毎月の請求も楽ではありません。こんな妻と離婚できるでしょうか?


A.90 回答

(1)離婚についての相談ですが、まず、離婚をするための方法について簡単に説明します
 離婚には以下の3つの手段があります。
 1つ目は協議離婚です。2つ目は調停離婚で、3つ目が裁判離婚です

(2)順番に見ていきます。
 協議離婚は夫婦がお互いに話し合って決める方法です。お互いが納得すれば離婚ができますから、一番簡単な方法です。
 次に調停離婚ですが、これも基本的には話し合いで決める方法です。ただ、話し合う場所が家庭裁判所になり、2名の調停委員と家庭裁判所の調査官、裁判官が関与することになります。
 当事者間だけでの話し合いが難しい場合や、相手との合意がなかなかできない場合には家庭裁判所に調停の申し立てをするのがよいと思います。
 3つめが裁判離婚です。ただ、裁判離婚をする場合にも調停での話し合いが前提となりますから、調停での話し合いが成立しない場合で、さらに離婚を求める場合に裁判離婚となります。

(3)相談者の方も夫婦の話し合いで離婚が成立しない場合には調停を申し立てる必要があります。

(4)調停での話し合いでも合意に至らない場合は裁判になりますが、裁判ではどのような場合に離婚が認められるのでしょうか
 民法では裁判上の離婚理由として5個の事由が規定されています
@ 配偶者に不貞な行為があったとき
A 配偶者から悪意で遺棄されたとき
B 配偶者の生死が3年以上明らかでないとき
C 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき
D その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき

(5)今回の相談者のように妻がブランド物を買うためにサラ金からの借り入れをする行為は、@からCには該当しませんから、Dのその他婚姻を継続し難い重大な事由といえるかどうかがポイントとなります。
 通常は夫が暴力を振るうとか、長期間の別居状態が継続しているとかがその場合に該当します。

(6)では今回の場合はどうなのでしょうか。
 今回の場合、結論から言えば、妻がブランド好きであり、サラ金に借金がある程度では離婚まではなかなか難しいと思います。

(7)実際どの程度であれば離婚は可能でしょうか
過去の裁判例ですが、夫が高額の借金のため十分な生活費を渡さないとにしても、これ以外に婚姻生活上の支障が特にないことを前提に、婚姻を継続しがたい重大な事由があるとは認められないと判断した例があります。

(8)この場合と比較して考えれば、妻が多額の借金を繰り返し、夫婦の生活が成り立たない状態が続き、それを注意しても何度も繰り返すような状況程度が必要になってくると思います。





Q.91 借用書作成について
同居の母(主人の母88歳)のことです。週に1度デイケアに通っているのですが、そこで知り合ったお婆さんからお金がないと言われ、お金を貸したと言うんです。それも50万円です。あまりの金額に驚き、追及したのですが、そのお婆さんの息子がちゃんと払うから問題ないと言います。借用書のようなものはあるのか聞くと、やはり無いとの話しでした。お金を貸したのも、もう1年近く前のことのようで、どう話しを進めてよいのか、アドバイスをいただけないでしょうか。


A.91 回答

(1)まず、そのお婆さんの息子がちゃんと払うというのは、そのお婆さんが言っていることなのでしょうか。そうだとすれば、お金を貸したことを相手方が認めている間に、その証拠を作ることが重要です。

(2)後で、貸したお金の返済を求めても、相手が自主的に返済してくれない場合には、お金を貸した本人が貸したことを証明する必要があるからです。

(3)どのような証拠が必要でしょうか
 相談者の質問にもあるとおり、借用書を作成してもらうのが一番です。本人の実印印鑑証明書があればいいでしょうが、なければ借用書の内容を自筆で書いてもらうことでもいいと思います。表題は借用書でなくても念書でも覚え書きでも何でもいいです。

(4)どのような内容を記載すればよいでしょうか。
  内容としては、相手方がお金50万円を受け取ったことと、そのお金を返済する合意があることの二つのことが記載されていれば足ります。

(5)ではどう話を進めるのかですが。
  確かに話の持ち出し方によっては、相手が警戒して借用書を書いてくれないことも予測されます。
 相手が借用書などを書き渋ることが予測される場合には、そのお金をすぐ返すというような内容ではなく、一定期間後に返すとか分割で返すとか、相手が応じやすいような提案をすることが必要です。
 
(6)一番大切なことは貸したことの証拠を作ることですから、借りたことを認めるが借用書の作成を拒絶するような場合には、相手とのやりとりを録音しておくことも考えたらよいと思います。

(7)さらに、直ぐに返済できずに、分割の支払いや、相当期間の猶予を求めるような場合には、息子さんを呼んでもらって連帯保証人になってもらうなどの方法も検討したらよいと思います。





Q.92  医療ミスで損害を受けた場合の対処法
先月13日に46歳の誕生日を迎えました。これまでに、6回も手術を受けた事がありますが、これからも手術を受けるようなことがあるかもしれませんしその他色々な治療を受ける事があるかもしれません。そこで、質問なのですが、ニュースなどで医療ミスの為に亡くなったり、後遺障害などが残ったりする話を耳にします。実際に、被害に遭われた方や、ご家族の方々のことを思うと
胸が痛くなります。もし、自分がそのような事態に巻き込まれてしまった場合、
どのように対処すればよいのでしょうか?具体的にしっておいた方が良いことがあれば、教えてください。


A.92 回答

(1)医療ミスで亡くなったり、後遺症が残るという話は時々耳にします。しかし、医療行為を受けた後に何らかの障害を受けたとしても、それが明らかな医療ミスの場合と、医療ミスと呼べるかどうか微妙な場合、現在の医療レベルからしてやむを得ないと思われる場合があります。

(2)まず、明らかな医療ミスがあった場合について考えてみます。
 例えば、看護士が間違った薬を注射したとか、医師が手術で異物を体内に残してしまったとかと言うような人為的に明らかな医療ミスの場合には、医療ミスを発見することは容易ですし、病院側も通常は誠意を持って対応してくれると思います。

(3)問題は医療ミスと呼べるかどうかが微妙な場合についてどうするかです。
  医療過誤として裁判になって争われるケースの大半は医療ミスと呼べるかどうか微妙な場合です。

(4)例えば、医師がその医師としてできる限りのことはしたけど、違う治療方法が考えられたとか、他の医師であればそのような結果が発生しなかった可能性もあったといえるような場合は本当に微妙な問題となります。
 
(5)次に、自分がそのような事態に巻き込まれたときにどのように対処すれば良いのかということについて考えてみましょう。
 医療ミスで損害を受けた場合には、やはり最終的には裁判での解決になりますから、裁判で争いになった時に、医師のミスを証明することができるようにしておくことが大切だということになります。

(6)ただ、実際上、医療ミスの裁判の場合、過失の有無が争点になるとすごく専門性が高くなりますから、患者側として医師の過失を証明するのがかなり困難なのが現状だと思います。

(7)巻き込まれて損害を受けたと思えるならば、とりあえず、知り合いの弁護士等に相談する。そして、その弁護士が医療事件があまり得意ではないということであれば、医療事件に興味を持っている弁護士とか特に専門に扱っている弁護士を紹介してもらうことが必要になります。





Q.93 復縁を迫られた場合の対処法
最近ちょっと気になっていることがあります。今年の1月に別れた人から『会おう』とか『やりなおしたい』とかメールがしつこいんです。メールは毎日きますし電話は私が休みの日を知っているので、その日を狙って週に1回かけてきます。とりあえず今は電話に出ずメールも返信していません。
この前会社の前のコンビニまで来ていて姿を見た時は正直ぞっとしました。もちろん気づかれる前に逃げましたけど。
彼とは4年前に友人の紹介で知り合い2年お付き合いしていました。付き合っていた頃から束縛する人だなぁとは薄々感づいてましたが、これ以上しつこく付きまとうなら男友達に相談しようかと思います。実際どこからがストーカーか分からないですし 。昔は好きだった人なので警察に相談するのもなんだかなぁって思います。



A.93 回答
(1)別れた男性から週に1回の電話と毎日のメールがあると言うことですか。
  実際として、電話を着信拒否にするとかメールを受信拒否にすれば、電話とメールの問題は解決すると思います。

(2)ただ、そのことによって、別れた彼氏の行動がエスカレートしたらどうすればよいかですね。
  本当に別れた彼氏がしつこく付きまとうのであれば、ストーカー被害と言うことにも十分になりえますからきっちり対応した方がよいと思います。

(3)相談者の質問には、これ以上しつこく付きまとうのであれば、男友達に相談しようかと思いますとありますがこの方法はどうですか。
 解決方法としてはあまりお薦めできません。

(4)それはどうしてですか。
  個人と個人の話し合いになれば、逆にトラブルが発生する可能性があります。
  言い合い程度で解決すればいいですが、間に入った男性が、脅したとか手を出したとかと言うような事態がまれに発生することがあります。

(5)では今回の相談者の場合、どうすればよいでしょうか。
  やはりまず、本人からきちんとやり直す気持ちはないこと、これ以上の電話やメールは迷惑だから止めて欲しいことを強く伝える。

(6)多分今回の被害者はもうきっちり本人からは伝えていると思いますが、それでも聞かないならば、どうしますか。
 この場合は、相談者からこれ以上続けば弁護士や警察に相談すると告げる。
それでもだめなら、やはり専門家である弁護士に相談して、弁護士から連絡してもらう。
 弁護士から内容証明郵便で、ストーカー被害の可能性があるから、やめるようにと警告文書を送付すれば通常は収まります。

(7)弁護士からの文書でも収まらない場合には、最後は警察に相談することになります。





Q.94 借用書の作成方法
先月末の放送で知り合いにお金を貸したお婆さんの話を紹介していましたね。
「借用書」の作成についても、先生の事務所で相談にのってくれると話していた様に記憶しています。実は、叔母に30万貸して欲しいといわれ、月々1万づつの返済で、お金を貸しました。しかし、「お金が無い」の一言で、今まで一度も返済してもらっていません。借用書も無く、口約束だけなので困っています。



A.94 回答
(1)相談者のように親戚や友人から借金を頼まれて、断り切れずにお金を貸すということは時々耳にする話です。

(2)また、今回の相談者のように貸した相手からの返済が滞るとか、借用書もないということも、良く聞く話です。特に相手が親戚等の場合には、強く返済を要求しづらいとか、借用書を要求できないと言うこともあり得ます。

(3)やはり本来ならば、親戚や友人であっても、金銭の貸し借りをする際にはきっちり借用書を作成しておくことが大切です。
 お金を貸して欲しいと頼まれた時に作成するのが一番作成しやすいことは間違いのないことですから、貸して欲しいと言われたときに、遠慮せずにきっちり借用書を要求し、返済方法についてもきっちりと取り決めしておくことが大切になります。

(4)今回のように一度も返してもらっていないし、借用書もない場合どうすればよいでしょうか。
 以前にも説明したことがありますが、返済しない相手からどうしても返済してもらいたい時には裁判をする必要があります。そして、裁判では、お金を貸したことを証明する必要があります。

(5)そういう意味でなんとか貸したことの証拠を作ることが必要です。
例えば、返済を渋る相手であれば、それなりの期間返済を待ってあげることを条件として借用書を作成する方法などが良いと思います。

(6)借用書はどういう内容で作成するのが良いでしょうか。
  借用書の内容は@相手にお金を交付したことと、Aそのお金を返済することの合意が記載されていれば良いです。

(7)形式はどうですか。
  表題は借用書でも念書でも合意書でも何でもいいです。できれば実印を押してもらって印鑑証明書があればいいです。

(8)ない場合には判子は三文判でもいいでしょうか。
 実印がない場合には三文判でもいいですが、その場合には借用書の内容を手書きで記載してもらえればよいでしょう。

(9)借用書の作成方法がわからないときにはどうすればよいでしょうか。
 本屋さんには借用書の記載の仕方を書いた本はあるでしょうし、インターネットでも書式は簡単に手に入るでしょう。また、自信がなければ法律事務所等で相談すれば良いと思います。
 




Q.95 学校でのいじめ問題
県外に住んでいる娘から聞かされたのですが、中学生の孫が同級生からいじめを受けているようです。娘は学校にもっと注意してもらうようお願いしていますが、全く改善する様子がありません。娘夫婦も孫も真剣に悩んでいます。
学校にしっかりと対応してもらうために何とかできないでしょうか?


A.95 回答
(1)子供がいじめを受けるという問題は時々耳にしますが,その対応はかなり難しいですね。
学校にしっかり対応してもらうことが一番ですが,その学校が全く改善する余地がないとのことですと,かなり大変です。

(2)学校にしっかり対応してもらうためにどうすればよいかとの質問ですが,
  まず,学校の担任の先生や校長先生とのやりとりは,しっかり記録しておくことが必要です。こちらからの苦情の申し出内容,それに対する学校からの返答のやりとりは,全て正確に記録すること,それがまず一番大切です。

(3)次に,困っている苦情内容,学校に改善を希望する要望事項など,全て書面で申し伝える。そして学校からの回答も書面で要求することが必要です。
 口頭での申し出は,交渉した相手を動かすためにはやはり不十分です。
 何らかの心理的プレッシャーを与えるためにも,書面によって,自分の言い分を相手に伝えることは効果的です。
 また,書面化することは後日の紛争解決のためにも効果的です。

(4)自分では上手く主張できなければ,場合によっては,弁護士などの専門家に入ってもらって,書面を作成するのが良いと思いますし,学校との交渉を依頼することのも良いと思います。

(5)学校との関係は,以上のような内容になりますが,それ以外に親としての対応も必要ではないかと思います。

(6)具体的に,いじめられる関係が発生するのには何か原因があるはずですから,原因は何であるかを,子供から正確に聞き取ることが大切になります。
 そして,自分の子供にも何らかの原因があるのであれば,その点についても配慮することが必要ですし,もっぱら相手に原因があるのであれば,相手のいじめ対して,毅然とした対応を取るように子供を支援していくことも大切になります。

(7)また,いじめをする子供の親に対してはどうでしょうか。
相手の親に対しても対応が必要でしょう。具体的に,いじめをしている事実を正確に伝えて,子供を指導するようお願いする等も大切になります。

(8)学校が対応してくれるのがベストですが,十分な対応が出来ないときには,自分たちで対応することも考えて行く必要があると思います。 





Q.96 婚姻の取消
住宅関係の仕事をしている旦那は,結婚前から1級建築士の資格を持っていると話していました。いずれは自分の事務所も持つと言っていましたが、実は資格があるというのは全くの嘘。結婚して2年。今まで全く気付かなかった自分が情けないです。こんな最低な旦那との婚姻を取り消すことは可能でしょうか。
相手は詐欺師です。顔も見たくありません。



A.96 回答
(1)婚姻を取り消すことは可能でしょうかとの質問ですが,まず,婚姻を取り消すというようなことは可能でしょうか。
 確かに,民法上は,離婚とは別に婚姻の取り消し無効ということも規定されています。 
 民法747条には,詐欺又は強迫によって婚姻をした者は,その婚姻の取り消しを家庭裁判所に請求することが出来ると規定されています。

(2)それでは,どのような場合に,詐欺による婚姻として取消が認められるのでしょうか
例えば,過去の裁判例によると以下のような例があります。
詐欺による婚姻と認めた例として,
@ 第三者が,配偶者の一方に婚姻前数ヶ月精神異常のため入院加療した事実を隠して婚姻を慫慂させた場合は,詐欺によるものとして取り消しうる。とした裁判例があります。
これに対し,詐欺による婚姻と認めなかった例として次のような例があります。
A 薬種商店に勤務し,月収70万円の位の男につき,薬剤師の免許を有し,月収90万円以上ありという媒酌人の言葉を信じてその男と婚姻した場合は,その婚姻は詐欺による取り消しは認められない。としています。

(3)これらの例を見る限り,詐欺による婚姻取り消しは極めて限られた場合に,言い換えれば欺罔行為が相当強度の違法性を持つ場合で,しかもそれによって生じた錯誤が一般人にとっても相当重要なものとされる程度の場合に限られるといえます。

(4)そうすると今回の相談者の場合はどうでしょうか。
 過去の裁判例からみると詐欺取消はかなり難しいような気がします。

(5)しかも,詐欺による取り消しにはもう一つ要件があります。
  民法747条2項によると,詐欺による取り消し権は,当事者が詐欺を発見した後3ヶ月を経過したときは消滅すると規定されています。
 この3ヶ月という期間はかなり短いですから,注意が必要です。

(6)では,その期間を経過した場合,もう方法はないのでしょうか。
  詐欺による取消はできなくても,離婚ができるかどうかは別の問題ですから,離婚の申し立てをすることは可能です。

(7)では離婚は可能なのでしょうか。
  この場合,離婚原因として,民法が規定している婚姻を継続しがたい重大な事由があるといえるかが問題となります。
 婚姻関係に現れた一切の事情を考慮して,婚姻を継続しがたい重大な事由があると言うことになれば,離婚は可能です。

(8)今回の相談者の方も結婚に至った経緯やそれ以外の事情を考慮して,離婚が認められることもあると思います。





Q.97 誰にも知られず債務整理することは可能か
ご相談です。今年の3月いっぱいで会社を解雇されました。これまでサラ金業者からの借り入れは、滞りなく支払っていましたが無職になってから2ヶ月。いよいよ首が回らなくなりました。勝手なことばかりいますが、誰にも知られず債務整理することは可能でしょうか?


A.97 回答
(1)確かに,サラ金に借金をしていたというようなことはあまり人には知られたくないことですね。
 事務所に相談に来られる方の中にも,債務整理をすると借金をしていたことが会社に分かるのではないかと心配する方や,親や妻に内緒にしたいなど言ってくる方がいらっしゃいます。

(2)会社には知られたくないと言うことは理解できますが,やはり,家族にはきちんと事情を話した方がよいと説明はします。
 ただ,どうしても分からないようにということであれば,そのようにはしますが。

(3)誰にも知られたくないと言うことですが,それは可能なのでしょうか
  破産であれば官報等に載りますから,難しいですが,債務整理であればある程度は可能ではないかと思います。
 弁護士から受任通知がサラ金業者等に届けば,本人に直接交渉することは法律上禁止されていますから,その後支払いをしないからといっても,サラ金からの督促状が家の方に届くことはありません。

(4)債務整理の手続きの流れとしては次のようになります。
 @ 弁護士の所に相談に行き,負債整理を依頼する。
 A 弁護士からの受任通知がサラ金業者に届く,そして,サラ金業者と交渉に入ります。
 B サラ金業者から弁護士事務所に取引履歴が開示されます。

(5)この間の支払いはどうなるのでしょうか。
  弁護士から受任通知を発送して,話し合いがまとまるまでは,サラ金業者への支払いをしなくてもよいです。
 この間も支払わなければいけないと思っている人も多いですけど,話し合いが成立するまで,とりあえず支払いはストップすることが出来ます。

(6)その後はどうなりますか。
  取引履歴を入手後,事務所の方で利息制限法の利率に基づいて再度計算し,支払うべき金額を検討します。
 そして,支払いすぎであることが判明すれば,過払い返還請求をします。

(7)どの程度の期間支払っていれば過払い状態となりますか。
 返済状況によっても違いますから,取引履歴を見ないと正確には言えませんが,5年程度の支払いが目処になるようにも思えます。

(8)いずれにしても支払いに困っているのであれば,早急に法律事務所で対応してもらうのが良いと思います。




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Q.98 ネットオークションに関するトラブル
某SNSサイトで知り合った人が、フリマに出店するという事で、品数を増やしたいというので、私が出したかった品物を代理で出してもらうことにしました。結構な量があったと思います。品物を預けてからしばらくして、3点ほど私の品物が売れたと、売上金を1500円ほどもらいました。しかし、その後全く連絡してこなくなったのです。そのうち、預けていた品物を返してもらおうと連絡しましたが、私が預けていた品物は、私に何の相談も確認もなく、自分の知り合いたちを集めて、無料で配ってしまったと言われました。
これは犯罪にはならないのでしょうか。私はどうしたらよかったのでしょうか。今からでも何とかなったりしますか?5〜6年ほど前の話で、当時の相手の携帯番号と名前はわかります。でも番号は変わってるかもしれません。




A.98 回答
(1)預けていた商品を何の相談も確認もなく勝手に,その人の知り合いたちを集めて、無料で配ってしまったということですか。

(2)確かに,預けていたものをその相手が勝手に処分すれば,横領罪という可能性はありますね。

(3)しかし,5,6年前ほどの話ということですから時効の問題があります。
 単純横領罪のような刑期が5年以下の場合には,5年で時効になります。そうするとすでに時効になっている可能性は高いと言えます。
ただ,その人がフリマに出店するということであれば,業務上横領罪の可能性もあります。

(4)その場合であれば,時効は7年ですからまだ刑事事件にすることは可能です。
 ただ,横領罪とか詐欺罪という犯罪は主観面の立証が難しいこともあって,刑事事件にすることはかなり大変です。特に今回のように時間がたっているとかなり難しいと思います。

(5)それでは他に方法はないのでしょうか。
 その人に預けた商品の内容が把握できるのであれば,それを金銭評価して,その人に損害賠償を請求することは可能です。

(6)民事上の損害賠償請求をするのには時効などの期間は制限はないのですか。5,6年たっているとそれも難しいのではないでしょうか。
 そうですね。民事上の損害賠償請求には,契約違反である債務不履行を理由とする場合と,単純に不法な行為で損害を与えたという不法行為を理由とする場合があります。

(7)まず不法行為を理由とする損害賠償請求は,その行為及び損害を知ったときから3年間,行為の時から20年間という制限があります。
 今回は,他人に無償で配ってしまったことを知ってから,何年たっているか不明ですから,時効の可能性もあります。

(8)債務不履行を理由とする場合はどうですか。
  この場合は,商法が適用される場合であれば5年,民法が適用される場合であれば,10年と異なります。
 どちらの法律が適用されるか,時効の始まる時点をどの時点と考えるか等については,今回の相談内容では判断がつきません。本当に今から何かしたいというのであれば,一度専門家に相談することが必要でしょう。





Q.99 離婚後の養育費の請求について
今年で離婚して4年になります。子どもは一人、私が引き取り今も2人で暮らしています。
離婚の際は、こんな言い方は少し違和感を覚えますが、お互いが納得しスムースに書類に署名捺印して済ませました。今は年に3回ほど、前の夫から連絡があり、娘と2人で出かけることがあります。娘は来年から小学生になります。塾などお金がかかります。今まで養育費の話をした事がありませんでしたが、いまさら元夫に養育費を請求することはできるんでしょうか。



A.99 回答
(1)離婚する時に子供の養育費についての取り決めをせずに現在までもらっていないということですか。
 離婚の際に取り決めをしなかった場合,その後に元夫に養育費を請求することはできるんでしょうか。

(2)結論から言えば請求できます。これは,親権者でない親であっても,同居していない親であっても,影響を受けません。
 養育費の支払い義務は親子という身分関係に基づいて発生する義務ですから,離婚後であっても当然に請求することはできます。

(3)今回の相談者のように,養育費の取り決めをしていない場合には,具体的にどうすればよいでしょうか。
ま ず,元の夫と話し合いをすることが可能ならば,話し合いで養育費の分担金額や支払い方法を取り決めて下さい。
  
(4)その場合,口頭の約束でも有効ですが,後々の紛争を防ぐ意味でも,文書にすることをお薦めします。
さらに,公正証書にしておく方が,相手が支払わない場合の回収が容易となりますから,より間違いがない方法です。

(5)では,夫が協議に応じない場合はどうすればよいでしょうか。
 この場合は,夫の住所地の家庭裁判所に養育費の支払いの申し立てをすることができます。そうすれば,家庭裁判所で,申立人,相手方の収入状況,子供の年齢,等を考慮して,具体的な分担額を取り決めしてくれます。

(6)では,離婚の時に,取り決めをしなかったのではなく,夫と別れて子供を引き取りたいがために,養育費は請求しないと約束していたような場合はどうなのでしょうか。
 この場合,自分の意思で放棄した以上請求できなくなるのでしょうか。

(7)養育費を請求しないという合意があるような場合には,その合意の妥当性が問題となります。
請求しないというような合意があったとしても@子の福祉を害する特段の事情があるかどうか,A 合意後の事情の変更があるかどうかの見地から合意の効力を検討するのが裁判所の現在の傾向です。





Q.100 持ち家を手放さずに債務整理は可能?
実は生活が苦しくて5年ほど前からサラ金で借金をしています。今では5社からの借り入れが400万円ほどになってしまい、支払も思うようにいきません。恥ずかしながら、別に住宅ローンも残っています。なんとか持家を手放さずに、債務整理を行うことはできませんか?



A.100  回答
(1)持ち家を手放さずに,債務整理をしたいという相談ですか。
  通常,個人の債務整理の方法には,一般的に破産と,任意整理と,個人再生とがありますから順番に検討してみましょう。

(2)まず,破産の場合には,全ての財産を精算して,支払えるだけの支払をすることになりますから,住宅を残すことは通常困難です。
 ただ,住宅を本人以外の家族や親戚が買い取ることで,破産管財人とか住宅ローンの抵当権者,例えば銀行などと話し合いがつけば,住宅を残すことも出来ます。

(3)この場合は,当然に買い取った人の名義になります。親とか子供とかに協力できる人がいれば,考えても良い方法です。しかし,破産管財人が第三者に売却してしまう危険性もありますし,銀行などが承諾しないこともありますから,確実に残るとは言えません。

(4)任意整理の場合はどうですか。
 任意整理の場合には,各債権者と任意に話し合って,分割弁済の合意をしますから,住宅を残すことは可能です。
ただし,その場合の支払額は利息制限法の範囲内までの減額しか見込めないことが多いですから,支払いはかなり大変です。

(5)もう一つの個人再生というのはどうなりますか。
  個人再生を選択すれば,住宅ローンを支払いながら,その他の借入金を減額して支払うという方法ですから,住宅を残すことは可能です。

(6)どのくらいまで借金の減額が可能なのでしょうか。
 通常は,借金の総額を100万円以上か,借金の総額の2割のどちらか高い方にまでに減額します。

(7)減額した金額の支払いは一括でしょうか。分割は可能なのでしょうか。
 通常は3年以内の分割で,場合によっては5年まで延長できます。

(8)今回の相談者の場合だと,借金を100万に減額して,それを3年又は5年に分割して返済し,住宅ローンはそのまま支払いを継続することになります。
 この場合だと,本人名義で住宅を残すことは可能ですし,借金の大幅な減額が可能になります。

(9)個人再生は住宅を残して,借金を大幅に減額できる方法に思えますが,誰でも簡単にその方法を選択できるのでしょうか。
返済が確実の出来ることが必要ですから安定した収入があることが前提となります。

(10)この手続きをお願いするのに弁護士費用はどの程度かかりますか。
それぞれの事務所によって,違うと思いますが,参考に私の事務所では,住宅ローン付き個人再生手続きは,費用込みで35万円になっています。



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