Q.101 診療ミスに対する損害賠償請求
私の母はずいぶん前から皮膚の病で悩んでいました。今年の初めから漢方の処方をしているところに通い始めました。処方された漢方を服用していると次第に全身が真っ赤な炎症のようになっていきました。そこの院長には『体から悪いものが出て行っているから、これが落ち着くと良くなっていきます』と言われ、4ヶ月で支払った治療費は30万円になりました。
しかし一向に良くならず、病院に行くと、漢方の何かの成分に対してアレルギー反応が出ている可能性があると告げられました。現在病院でその皮膚の炎症を抑える治療をし、漢方の服用を止めて、状態は少し改善してきました。母は漢方の治療院に適切な治療方針でなかったことを謝罪してもらいに行き、『治療費を返して欲しいくらい』と話をしたようです。
後日弁護士名義で母が起こしている損害賠償請求に対しこちらは一切支払いはしません。こちらに落ち度はありませんという旨の文書が届きました。
ただ誠心誠意謝ってくれていたらそれで良かったのに、皆怒りが収まらず、とても憤りを感じています。このような場合、実際に損害賠償を起こしても治療費を返還してもらうことは難しいのでしょうか?


A.101 回答

(1)お母さんが,漢方の治療院に適切な治療方針でなかったことを謝罪してもらいに行き、そこで『治療費を返して欲しいくらいですよ』と話をしたということですか。それを,損害賠償請求をしてくるというように考えたみたいですね。

(2)相談者の母親は損害賠償などを求めておらず,誠心誠意謝って欲しかったということみたいですが,そんな場合でも,弁護士名で落ち度はないから一切支払いをしないという回答をすることはよくあることなのでしょうか。
 一般的に相手方の請求が明らかに不当と思える場合に,こちらに落ち度はないから,一切の支払いをしないということを弁護士名で内容証明郵便で送ることは時々あります。

(3)ただ,今回のように当事者が謝罪を求めに話し合いに行って,治療費を返して欲しいくらいですよと言った程度で弁護士に依頼して書面を送るというのは,少し過敏な反応ですね。

(4)では,このような場合に,実際に損害賠償を起こして治療費を返還してもらうことは難しいのでしょうか。
損害賠償を請求するためには,法律的な請求根拠としては,債務不履行請求,不法行為請求の二つの請求がありますが,いずれも,@治療院のミスで治療行為が適切に行われず,Aその結果損害を受けたということを証明する必要があります。

(5)今回の場合には全身に真っ赤な炎症があるということですから,損害が発生していることは明白です。
 そして,病院の医師から,漢方の何かの成分に対してアレルギー反応が出ている可能性があると告げられということですから,その病院の協力が得られれば,治療院の行為で損害が発生したということまでは証明は出来そうです。

(6)そうすると,治療院のミスがあったのかどうかがポイントとなりそうですね。
治療院の診療ミスといえるのであれば損害賠償請求も出来そうです。

(7)損害賠償請求をするとして,具体的にはどういう方法になるでしょうか。
まず裁判所外で示談交渉する方法があります。この場合には,相手から弁護士名で通知書が来ていますから,弁護士さんに頼んで反論書を書くことが考えられます。

(8)裁判所で争うとなれば訴訟と言うことですか。
裁判所で争うとしても,訴訟と調停という二つの方法があります。
今回のことで家族皆納得できない。泣き寝入りなど出来ないというくらい悩んでいるけど,裁判まではしたくないというのであれば,調停を申し立てて話し合うというのも一つの方法でしょう。






Q.102 保険会社が提示した賠償額
京都に住む兄が交通事故にあい、後遺障害5級と認定されました。
相手の保険会社から、2000万円の賠償金解決を持ちかけられましたが、兄は、保留しています。と言うのも、法律に詳しい友人がいて、インターネットで調べたら4000万円近く請求できると話されたからです。その友人からは、弁護士に相談するよう、強く勧められているようなのですが、先生のご意見を聞かせてください。


A.102 回答

(1)インターネットで調べたら保険会社が提示した賠償額の2倍程度の賠償額になりそうだと言うことですが,そのようなことはあり得るのでしょうか。

(2)相談者の友人がどのインターネットを調べたのかよく分かりませんが,最近では,インターネットでは色々な法律事務所が交通事故の損害賠償額を計算できる計算表を載せています。

(3)それでは,インターネットで記載されている損害賠償の基準は,何故保険会社の提示した基準と異なるのでしょうか。
 おそらくインターネットで記載されている損害賠償の基準は,裁判所の判断する賠償基準を整理したものを記載しているからだと考えられます。

(4)裁判所の判断する賠償基準ですか。それはどういうことですか。
交通事故の態様や,被害者の年齢,収入,後遺症の程度などに応じて,過去の裁判で認められた基準をまとめた本があります。それに記載されている賠償基準のことです。

(5)それは保険会社の基準とは異なるのでしょうか。
 保険会社には保険会社独自の基準があって,それによって事故の被害者の損害賠償額を計算します。これに対して,裁判所では,被害者の受けた損害を純粋に賠償するという観点で損害額を計算しますから,その結論は必ずしも一致しません。

(6)具体的に今回の相談者のように2倍も異なることもあるのでしょうか。
 事案よっては,保険会社が提示する賠償額も,裁判所が判断する賠償額もほとんど変わらないこともありますが,今回の相談者のように2倍以上の開きが出ることもあります。

(7)ただ,インターネットに記載されいるからといっても,それで計算した全額がそのま認められるかどうかは,簡単には判断できません。やはり,その友人の人が言われるように、弁護士さんに相談することが必要だと思います。

(8)相談料は30分5000円程度ですから,保険会社から賠償額の提案があった時点でそれを承諾するかどうか判断する資料として,一度弁護士さんに相談した方がよいと思います。





Q.103 万引きはどのような罪になるのか
家族で小さな生鮮食品の店を営んでおるのですが、万引きの多さに呆れておる次第です。
元々は仕入れから予想される売上との差額におかしいと思う程度でしたが、ここ数年顕著となりこんな田舎の店で一体どれだけ万引きする人がいるのかと近所の知人友人が来店した際にも疑いの目を持ってしまうことにも嫌気が差しとります。盗人は100円のパンぐらいと思っているのであろうがその分を売り上げようと思うと大変な苦労があることを知らんのでしょう。万引きは重い罪であることを法律の先生から話していただけんでしょうか。


A.103 回答

(1)万引きは刑法上は窃盗罪にあたります。
  そうすると刑法235条によれば,10年以下の懲役又は50万円以下の罰金の刑になります。

(2)ただ,万引きの場合は,通常被害額が低額なことが多いですから,警察に通報したとしても,被害弁償をすれば,逮捕されずにそのまま釈放されることも多いと思います。

(3)警察に逮捕されることもありますか。
  事案によっては,逮捕されることもあります。その場合は2日間程度は身柄を拘束されることになりますし,逮捕の後に勾留されることになれば,さらに10日間身柄を拘束され続けることにもなります。

(4)その後はどんな手続きになりますか。
 通常は,起訴猶予として釈放されるか,略式裁判を受けて,罰金を支払うことになります。

(5)一般的にはこのように軽い処分形態になります。
 ただ,万引きは癖になる人が多いです。何度も繰り返す場合には,徐々に処分内容が重くなり,そのうち正式な裁判を受けないといけなくなりますし,場合によっては,刑務所に入ることもあります。

(6)私も過去に万引きばかり何度も繰り返した中年の女性を弁護したことがあります。 たまたま,私が弁護したときの事件の内容はパンの万引きとかそのような程度で被害金額の合計が1000円もいかなかったと思います。ただ,何度も繰り返していたということで,常習累犯窃盗ということで裁判になりました。

(7)常習累犯窃盗ですか。それはどういうことですか。
 窃盗罪以外に,盗犯等の防止及び処分に関する法律があり,そこに規定されています。
 その条文では,人の建物,例えばスーパー等に侵入して窃盗を常習として行った場合に,通常の窃盗に比べて重く処罰するという内容が規定されています。
 その法律が適用されますと3年以上の懲役になります。
 万引きを繰り返していると最終的にはその法律の適用を受けることになります。

(8)相談者の場合も,生鮮食品の店で万引きを何度も繰り返すような場合には,その法律の適用を受けることも考えられます。





Q.104 離婚後の養育費の減額について 
離婚をしておりまして、中学生の息子が1人います。息子は別れた妻と実家で暮らしているようですが、養育費の支払いが、少々厳しくなってきました。この不況の折、私の勤める会社でも給与の削減があり、月々の送金もやっとやっとの状況です。
元妻と話し合いで決めた養育費を減額する事は可能でしょうか。


A.104 回答

(1)離婚の際に,息子の養育費を元妻との話し合いで決めたということですか。
  現在も元妻と話し合いが可能であれば,元妻と話し合って養育費を減額をしてもらうことは可能です。

(2)ただ,養育費の減額を求めて話し合いをしても,話し合いではお互いの合意を得るのは困難なことが多いです。やはりもらう金額を下げられれば,元妻の生活が苦しくなりますから。

(3)話し合いで養育費の減額が出来ない場合にはどうすればよいでしょうか。
  この場合には家庭裁判所に養育費の減額を求める調停の申し立てをするのが良いと思います。

(4)それは具体的にどういうことでしょうか。
 養育費については,当事者の生活状況,例えば,それを支払っている義務者が病気,失業などによる収入の減少等の当事者の生活状況や社会情勢などの「事情の変更」があった場合に,増減額請求が認められています。

(5)そうすると相談者が給与の削減があったということですから,養育費の減額は認められそうですか。
 減額される可能性はありますが,必ずしも認めらるとは限りません。

(6)それはどうしてですか。
 本来養育費はお互いが合意して金額が決まればそれが妥当しますが,当事者間で争いがある場合に,どの程度の支払いが必要かは,子供の年齢,両親の収入状況などで,算定基準というものがあります。

(7)現在支払っている養育費の金額と,算定基準による金額との比較も必要となるのでしょうか。
 そうですね。元々別れた夫が算定基準より低い養育費を支払っていたのであれば,なかなか減額は難しくなりますし,逆に算定基準より高い金額を支払っていたのであれば,減額は認められやすくなります。

(8)いずれにしても相談者の収入,元妻の収入,子供の年齢,二人で決めて支払い続けてきた養育費の金額などを前提に検討しないと正確には判断できません。
一度専門家に相談するのが良いと思います。






Q.105 交通事故での「裁判所の判断する賠償基準」
もう10数年も前の話になりますが、私も社会人になりたての頃、信号待ちで後方から追突事故にあい、ひどいムチウチを患った事があります。保険会社から、通院費と賠償金の支払いを受け、和解しておりますが、長期間の通院と、それに伴った仕事での損失を考え直してみれば、あの金額で妥当だったのか…と、思い返している次第です。交通事故は、また、いつ自分の身に降りかかるかは分かりません。今後の知識として、「裁判所の判断する賠償基準」について、もう一度 教えていただけませんか?


A.105 回答

(1)交通事故にあって,むち打ちになり,数週間通院し,その後完治したような場合,相談者のように保険会社から提示があった金額で示談する例は多いと思います。

(2)私も学生時代に追突されむち打ちで通院し,保険会社の提示する金額に何の疑いも持たずに示談した経験があります。
 今思えば,相談者の言うとおり,示談した金額は,裁判所の判断する基準に比べて少し低かったという気がしています。

(3)それで裁判所の判断する基準についてお尋ねですが,一言で言えば,過去の裁判例を整理した結果を分析し,まとめた,交通事故損害賠償算定基準という本があり,そこに記載されている基準です。

(4)その本に記載されている裁判所の基準と保険会社が提示する示談金の基準が異なるということなのでしょうか。
 そうですね。ほぼ同じ場合もありますが,大きく異なることもあります。
 
(5)それはどうしてですか。
 保険会社は,自賠責保険,任意保険いずれも,保険会社の内部基準で,計算した金額を単純に当てはめて,損害額を計算します。
 これに対し,裁判所では,その人の受けた損害の内容に応じた金額を個別に計算して損害額を計算します。
 そのために,場合によっては損害の合計額は大きく異なることも出てきます。

(6)それでは,交通事故で被害を受けた場合に,保険会社に裁判基準で損害額を計算してもらいたい時はどうすればよいでしょうか。
 まず,法律事務所で相談することが必要です。そして,弁護士さんに依頼することが必要ですが,弁護士が依頼を受けて交渉しても,任意の交渉ではなかなか裁判基準までにはなりません。
 やはり,裁判基準による賠償を求めるときには,裁判までしないとなかなか難しいのが現状です。

(7)裁判まですると本人にも多少の負担がかかりますから,交通事故で被害を受けた場合には,裁判する価値があるのかも含めて一度専門家に相談されるといいと思います。






Q.106 8年前に完済した取引の過払い金返還請求
15年前くらいでしょうか…いわゆるサラ金からお金を借り、そのまま借りたり、返したりを続けていました。このままではいけないと思い、両親に正直に話し、お金を借りて返済しました。ちょうど完済したのがオリンピック・イヤーだったので、今年でちょうど8年前の話になります。ずいぶんと時間がたってしまいましたが、今からでも過払い金の返還を請求する事は可能でしょうか?もう、遅すぎでしょうか?


A.106 回答

(1)相談者は,サラ金からお金を借りて8年前に完済しているということですか。
  借入金を完済していれば,いわゆる過払い状態にあり,過払い部分について返還請求ができることは明白です。

(2)相談者は,取引終了後8年間経過していることを心配しているようですが,消滅時効とかの問題は大丈夫なのでしょうか。
 過払い金返還請求権の消滅時効は10年ですから,消滅時効の問題はまだまだ大丈夫です。

(3)過払い金返還請求の消滅時効が10年だとすれば,既に10年経過している取引はどうなるのでしょうか。
  10年経過した取引も,10年経過前の取引と継続していて,取引に連続性があると判断されれば,一体としてみなされますから,消滅時効にはかかりませんので,その点は心配しなくても大丈夫です。

(4)それでは何か問題になる点はありますか。
  既に多くのサラ金会社が過払い金の返還に苦しんでおり,現在は返還請求をしても,なかなか満足な回収が出来にくい状況にあります。
 サラ金業者によっては,全く回収できない業者もありますから,その点の注意が必要です。

(5)返済できるサラ金業者かどうかは,どうすればわかりますか。
  法律事務所に相談に行けば,請求を予定してサラ金業者から,現在どのくらいの返済が見込める状況にあるかについてだいたいの予測はつきますから,法律事務所に相談に行かれるのが良いと思います。

(6)ちなみに先生のところで相談した場合に相談料や過払い金返還請求の費用はどの程度かかりますか。
 相談料は30分5000円と消費税ですが,そのまま過払い金返還請求の依頼を受ければ,相談料込みで着手金2万1000円ということになりますから,実質上相談料は不要となります。
 後は回収額に応じた報酬が必要になりますが,詳しくはホームページで確認して下さい。一般的な基準より若干低めの金額を設定しています。





Q.107 過払い金
過払い金返還請求の消滅時効が10年であることは知っていました。
10年経過した取引でも、10年経過前の取引と継続していれば、一体としてみなされるとの話には、正直驚きました。
私も15年前ぐらいから、サラ金からの融資を続け7年前に完済しております。これも大丈夫ですよね?



A.107 回答
(1)相談者の指摘するとおり,サラ金に対する過払い金返還請求権は10年で消滅時効にかかります。したがって,支払いを終えて,既に10年が経過していた場合には,どれだけ過払い金があっても,返還請求権は認められません。 

(2)今までにはそのような相談者も時々見かけました。

(3)しかし,10年経過前の取引と継続していると見なされれば,10年経過した取引であっても過払い返還請求ができます。このような相談者はかなり多いです。

(4)今回の相談者の方は,15年くらい前からサラ金からの融資を受け続けた,そして,7年前に完済しているということですから,15年前からの取引を一体として計算することができます。
 そうであれば,借り入れした金利がかなり高いときでしたから,返還される金額もかなり高額になることも予測されます。

(5)過払い金返還請求に関する事件も昨年くらいでほぼ終わりかと思っていましたが,最近でもラジオを聞いた方とかで,数人が相談に来ています。依頼を受けて,実際に取引履歴を取り寄せて計算しますと200万から300万円ほどの過払いになっておられる方もいました。

(6)ただ,以前からラジオでも話をしている通り,返還請求をするサラ金業者の中には,返還するための資金がなく,その資金の工面に苦労をしている業者が多いのが現状です。
 その場合は,過払い金があっても,その金額の返還請求はかなり難しく,仮に返還されても大幅な減額が必要になる可能性もあります。

(7)今はまだ満額近い金額の返還に応じる業者も存在しますが,サラ金業者に返済資金が無く,返還を要求されても返せないという,この傾向はますます強くなると思われますので,過払い金返還請求を考えておられる方は,できるだけ急いだ方が良いと思います。





Q.108 離婚の際姑から慰謝料を貰えるか
頭に来ています。と言うか、本当に悩んでいます。
結婚して半年で、同居している姑とそりが合いません。全く合いません!!!私の話し方、着る服、作る料理、掃除、洗濯、1つ1つにケチをつけてきます。ハッキリ言ってあら探しの天才です。別居したくても、夫の収入では無理ですし、私の悩みに真摯に向かってくれない夫にも既に嫌気がしてます。今まで私が姑から受けた言葉の暴力の対価として慰謝料貰って離婚できますか?証拠が必要でしたら、録音しますけど。



A.108 回答
(1)お嫁さんと同居姑のそりが合わないと言う話は本当に多いです。実際に離婚に至る原因としての割合もかなりあるのではないかと思います。

(2)何か上手く行く方法があれば良いですが,別居するだけの夫の収入がない,夫が悩みを聞いてくれないということで,解決がなかなか困難な状況にあるということですか。

(3)相談者からは,今まで私が姑から受けた言葉の暴力の対価として慰謝料貰って離婚できますかとの質問ですが,親族からの言葉の暴力は民法が規定してる直接の離婚原因にはあたりません。

(4)そこで,既に婚姻関係が破綻している,婚姻を継続しがたい重大な事由といえるかが問題となります。
 過去の裁判例を見てみると,事案の内容によって,既に婚姻関係が破綻していると判断した裁判例や,まだ円満な夫婦関係の回復も可能であるから,夫婦関係は破綻していないと判断した裁判例もあります。

(5)過去の裁判例はどのような点をポイントとして判断しているのでしょうか。
 そうですね。一般的には,嫁姑の不和自体や姑の嫁に対する行動に問題があるかどうかよりも,夫が嫁姑の不和状態の解消に努力しなかったとか,あるいは姑に荷担して嫁に辛く当たったとか等の配偶者である夫の行為,態度が問題とされることが多いと思われます。

(6)他にはどのような点が問題になりますか。
 それと,もう一つは婚姻の継続,解消に向けた夫の気持ち,態度が重要になります。
 当事者の一方である夫が婚姻生活をやり直したいと強く主張して,そのような態度を示した場合には,まだ婚姻関係の回復を期待するのが困難とは言えないと判断される可能性もあります。

(7)相談者は姑の言葉の暴力で離婚とともに慰謝料請求が出来ないかとも聞いていますが,それはどうでしょうか。
 その程度にもよります。夫と姑が共同して言葉の暴力でいじめていると言う状況があるならば,夫に対する離婚にともなう慰謝料請求ができますが,姑が単独で行っているのであれば,なかなか難しいのではないかと思います。





Q.109 賭博の罰則
オリンピックの中継のテレビ番組で聞いたことなんですが、 イギリスはスポーツで賭博するのは合法なんですよ。どの選手が金メダルを獲るのか!?具体的に日本人選手の名前も挙げて、賭けが行われているようです。日本では考えられないっすよね。違法っすよね?
前にプロ野球賭博とかの問題もあったけど、んじゃ、どんな罰則があるのか?このあたり教えてもらえませんか〜?



A.109 回答
(1)賭博が違法かどうかは,ある意味では国家の法政策の問題も絡みます。
実際,アメリカでも,韓国でも,賭博場がありますし,日本でも競輪,競馬,競艇は賭け事ですが,国が行っています。

(2)相談者が言うとおり,日本では国が行う以外の賭け事は刑法で違法とされています。

(3)実際にどんな罰則があるのでしょうか。
 賭博罪は刑法185条と刑法186条で以下の通り規定されています。
 @ 刑法185条
 賭博をした者は,50万円以下の罰金又は科料に処する。但し,一時の娯楽に供するものをかけたにとどまる時は,この限りではない。
 A 刑法186条
 常習として賭博をした者は,3年以下の懲役に処する。
賭博場を開帳し,又は博徒を結合して利益を計った者は,3月以上5年以下の懲役に処する。

(4)具体的にはどういう意味でしょうか。
 まず,単純に賭け事をした場合には,50万円以下の罰金や金銭の支払い義務が課せられるということです。
そして,それが常習犯と言える場合には,3年以下の懲役とかなり重くなりますし,自分が胴元で賭博場を開いた場合には,3月以上5年以下とかなり重くなります。

(5)それでは,先ほどの「但し,一時の娯楽に供するものをかけたにとどまる時は,この限りではない」というのはどういう意味でしょうか。
 これは,賭け事をした場合でも,例えば,負けた人がお昼の定食をおごるとか,負けた人がコンビニで他の人のおやつを買ってくるとか,賭けた内容が,そのような物の場合の時にまでは処罰の対象にはしないという意味です。

(6)それでは良くゴルフで2000円負けたとか,3000円負けたとかという話を聞きますがそれはかまわないのでしょうか。
 これは少し問題があると思います。古い判例ですが金銭をかけた場合は,一時の娯楽に供する物ではないから,違法だとしたものがありますから,直接に金銭をかけるのは控えた方が良いと思います。





Q.110 相続財産の開示 
この夏、父が体調を崩した為、相続の話になっています。しかし、父の財産がいったいどれくらいあるのか…兄が正直に話しているようには感じられず悩んでいます。
父は資産家で、私もずい分とお金の援助をしてもらいました。土地などは、どこに、どのくらいあるのか、私も把握していますが、預金や株券などの詳細は、まったく分かりません。兄からは、「少し多いくらいだが2000万円で良いだろう」と言われていますが、同居している兄だけが知る資産があると、私は踏んでいます。相続人は、母と長男と私の3人です。



A.110 回答
(1)最近は相続の問題で,兄弟姉妹が対立することが多くなってきました。
長男だけに相続させるという家督制度的な考え方が薄くなってきたのだと思います。

(2)特に,今回のように,長男が相続財産の内容を開示せずに,単純に金額を示して,これでいいだろうと言う提案を受けた場合に,他の相続人が納得できない,というような相談は多くなっています。

(3)では,兄の提案に納得出来ないとき,他の相続人はどうすればよいでしょうか。
 今回の兄の提案は,財産を開示せず2000万円支払うということですから,手続的にはおそらく,弟に相続を放棄させて,全て兄の財産にして,その代わり2000万円を渡すと言う内容だと思います。

(4)この場合は,おそらく他の相続人に相続放棄をさせることになります。その場合には,兄は他の相続人に財産を開示しなくても問題はありません。
 ただ,相続放棄の期間は相続の開始を知ってから3ヶ月ですから,納得できなければ,その期間内に相続放棄の手続きを取らなければよいと思います。

(5)相続放棄の手続きを取らないとどうなりますか。
 そうすると全ての遺産を共同相続したということになりますから,不動産であれ,預貯金であれ,名義を変更したり解約したりするときには全ての相続人の署名捺印が必要ということになります。結果として,兄1人では何も行えないということになります。

(6)その場合は,現金以外の財産は全て判明すると思います。

(7)具体的にはどうすればよいでしょうか。
 まず,相続放棄をしないことを兄と話し合って,遺産分割協議として財産の開示を求めれば良いと思います。どうしても協力しない場合には,家庭裁判所に遺産分割の調停を申し立てる方法が良いと思います。預金や株券の内容はそれで把握できると思います。





Q.111 妻の連れ子に相続させたい
私と妻は再婚同士で、妻には前の夫との間にできた連れ子がいます。私にも子供がいましたが、前の妻と、どこで何をしているのか全く分からない状況です。そこで、ふと疑問に思ったんですが、私が死んだ場合、私の遺産の相続権は誰が持っているんでしょうか?
妻の連れ子は、保育所に通っている時から一緒に生活をし、私のことを本当の父親のように慕ってくれます。出来ることであれば、私が死んだ時、今、一緒に生活をしている妻と、妻の連れ子に、全てを相続させてあげたいのです。



A.111 回答
(1)まず,夫であるあなたの相続人は誰であるかという質問ですが,相続人は配偶者と子供になります。したがって,まず,あなたの現在の妻が相続人ということになります。

(2)次に,子供ですが,あなたとの血縁関係がある子供が相続人になります。したがって,先妻との間の子供が相続人になります。前の妻と何処で何をしているのか全く分からなくても関係はありません。居場所は調べる方法もありますし,実際に遺産相続になれば,その子供の相続権が問題となります。

(3)では,相談者は現在の妻の連れ子に全てを相続させたいということですが,それは可能なのでしょうか。
 結論から言えば可能です。

(4)その方法として,何が考えられますか。
 まずあなたが,遺言書を作成する方法があります。あなたの全ての遺産を妻と子と2人に分けて贈与するという内容の遺言書を作成すれば,一応は全て,その遺言書通りになります。

(5)もう一つは,現在の妻の連れ子と養子縁組をして,その上で,遺産を全て相続させるという内容の遺言書を作成する方法があります。

(6)その二つの方法は何処が違うのですか。
 先妻の子供は相続発生後,一年間は遺留分の減殺請求権を行使して,自分の相続分の半分を取り戻すことが可能ですが,その場合の取り戻す相続分,つまり遺留分が変わって来ます。

(7)どの程度違って来るのでしょうか。
 例えば,1000万円の遺産があったとして,相談者が遺言書だけを準備していた場合には,相続人が妻と先妻の子供1人ですから,子供の相続分が500万円となります。そして,遺留分がその半分の250万円です。したがって,先妻の子供の取り戻し分は250万円ということになります。

(8)次に養子縁組をして,遺言書を作成した場合には,相続人は妻と子供2人ですから,子供1人の相続人が250万円,遺留分がその半分の125万円です。

(9)そうするとやはり養子縁組して遺言書を作成しておく方が相談者の意向により沿うことになりますね。





Q.112 代金の返還
彼が友達から車を売ってもらう約束をしたんです。8月の頭に車を譲ってもらうはずなのに先延ばしになっています。お金はもう3か月前に払っています彼は催促の連絡をしているようですが忙しいとか体調が悪いとか,なんだかんだと言い訳をして車を持ってくる様子がないんです。中古ですが車はボルボで支払った金額もそれなりです。怒りで暑さも吹き飛びそうです。



A.112 回答
(1)相談にのって欲しいとのことですが,具体的にどうしたいのかが少し不明確です。そこで,まず相談内容を整理してみましょう。

(2)相談内容から分かる事実を確認します。
 @ 相談者の彼が車(中古のボルボ)を友人から購入する約束をした。
 A お金は3ヶ月前に支払った。
 B 友達は,色々いいわけをして車をもって来る様子がない。
 C お金を払ったとあるが,売買契約書はあるのか,支払代金の領収書はあるのかが不明   である。
 以上の通りの内容です。

(3)まず最初に考えられるのは,車を友人から持ってきて欲しいと言うことだと思います。しかし,友人が自主的に持ってこないとすれば,自力救済はできませんから,車の所有権を取得するためには,裁判をするしかないと思われます。
 ただ,裁判するには日数がかかりますし,その間に車の価値も下がってきます,また車の名義人が誰かという確定の点もありますし,あまり得策だとは思えません。

(4)そうだとすれば,支払ったお金を取り戻すのはどうでしょうか。
 現実的にはそれが一番効果的な方法だと思います。本件では不明ですが,売買契約書や,領収書があれば,契約を解除して,代金の返還を請求することが合理的だと思います。

(5)契約書や,領収書がない場合にはどうなりますか。
 中古車の売買を契約した。そして,その代金を友達に支払ったという事実の証明が必要です。契約書や領収書はそれを証明するのに一番効果的です。

(6)そうはいっても,契約書や領収書はあくまで証明の手段ですから,それがないからと言っても,別の証明手段が考えられるのであれば,解除してお金を取り戻すことが可能です。

(7)具体的にはどのような方法が考えられますか。
 例えば,メールのやりとりで,代金の支払いを相手が認めているとか,もう少し車の引き渡しを待って欲しいとのやりとりがあるとかでも,十分に有力な証拠になると思います。 





Q.113 離婚後も妻が家から出て行かない
離婚した妻が、私の家から出て行く様子がありません。子どもの親権は妻にあり、養育費は既に私の口座から自動送金するようになっています。子供は良しとしても、別れた妻が今まで通り私の家で暮らし、電気・水道を利用されるのは腑に落ちません。正直、顔を合わせるのも、残り香を嗅がされるのも嫌です。今は全く会話もありません。可能な限り早く出て行ってもらうには、どうすれば良いのか…アドバイスお願い致します。



A.113 回答
(1)離婚したということは,すでに気持ちが離れていますから,確かに相談者の言うとおり,もう顔を合わせるのも嫌でしょうね。早く出て行って欲しいというのもよくわかります。

(2)そこで,可能な限り早く出て行ってもらうにはどうすればよいのかと言う相談ですが、離婚をして法的な婚姻関係を解消したとしても,事実上居住する元妻と子供を追い出すことは強制的には難しいと思います。

(3)裁判をして強制退去の判決を取ったとしても,直接強制は難しいのではないかと思います。そこで,まず,当事者で良く話し合いをして,別れた妻が家から出て行かない理由を聞くことです。

(4)離婚にまで至った訳ですから,お互いの気持ちが離れていることは間違いはありません。そうすると,離婚までした男性の家に何故居続けるのか。何らかの理由があるはずです。その理由を解決すれば出て行ってくれるでしょう。

(5)例えば,妻が居座る理由として,例えば,別れた妻にも家の権利があって,離婚に伴う財産分与の話し合いが成立していない場合であれば,それを解決することで退去してもらえることになるでしょう。

(6)また,子供の養育費はもらっているけど,別れた妻が専業主婦をしていたとかの事情があり,子供の養育費だけでは生活できないということであれば,妻の生活が成り立つまでの数ヶ月程度,扶養的な財産分与として援助してあげるという方法も考えられます。

(7)さらに居住場所が確保できないということであれば,その手配をしてあげるとかも考えられます。

(8)いずれにしても,別れた妻だけでなく,子供の生活という問題もありますから,別れた妻と十分に話しあうことが大切です。

(9)直接に話し合いができないのであれば,家庭裁判所の調停制度を利用するなりすればよいでしょう。





Q.114 恋人への慰謝料請求
初めて真剣に結婚を考えた彼がいましたが…既婚者でした。彼の奥さんが依頼された興信所からの電話で初めて事実を知りました。非常に驚き彼を問い詰めたところ事実でした。彼の奥さんは、事実を知らなかったのなら慰謝料は請求しないと言っていて、実際私は知らなかったので、興信所を通して説明し、「慰謝料は請求しません」との連絡がきました。
1年以上、既婚者であることを隠し、顔色変えずに私の家族や友人と話していた彼の姿を思い出すと、悔しくて涙が出てきます。正式な結納などはしていませんが、彼から結婚しようと言われたこともありました。慰謝料を請求したいのは私の方です。彼に請求することは可能でしょうか?



A.114 回答
(1)結婚している男性を独身と信じて,1年以上も交際していたということですか。そして,その相手である彼に対して慰謝料を請求したいということですが,中なかなか難しい問題ですね。

(2)結婚しようと言われたこともあって,結婚を真剣に考えていたと言うことですから,その男の人は,妻と離婚してあなたと結婚しようと考えていたとも思えますが、そういうつもりは全くなかったのかどうか,若干不明ですね。

(3)男性が妻と別れるつもりはなく,その女性とも結婚するつもりもないが,結婚していることを隠して,女性と交際したとした場合はどうなりますか。
 単なる男女の交際であれば,そのことだけで慰謝料などを請求することは難しいのではないかと思います。女性の方に騙されていなければ,その男性と交際することはあり得なかったというような特段の事情が必要ではないかと思います。

(4)どういう事情でしょうか。
 例えば,結婚を前提として交際を開始したような場合ですね。二人が,お見合いで交際を開始したが,その男性が妻がいることを隠していたとかという場合なら,慰謝料請求は可能ではないかと思います。

(5)男性が妻との関係が上手く行っておらず,真剣に妻と離婚を考えていたような場合はどうでしょうか。

(6)この場合には,もっと難しいでしょうね。
 この場合には、2人が結婚まで約束していたというか,つまり2人の関係が,婚約状態という法的に保護すべき状態にありながら,男が結婚していることを黙っていた。けど、結果として男が妻と別れることが出来ずに2人は別れたという状態であれば,可能ではないかなと思います。





Q.115 所有権侵害
隣の家の出窓が境界線を越えているんです。どうしたらいいでしょうか。
3年前に中古の一戸建てを購入したのですが、その時から、隣の家には大きな出窓がありました。1階の部分です。完全に日陰なので、リビングの飾り窓のようなものだと考えられます。先日、ガレージ部分と、家の外壁をリフォームした際、私の家の敷地はコンクリートで囲い、境目をはっきりさせたところ、明らかに30cmは、私の敷地にはみ出していることが分かりました。隣の家の出窓がはみ出した部分は、ちょうど自宅のエアコンの室外機置場にしているので、なんら不便はありませんが、あまりいい気はしませんと言いますのも、子供の声がうるさいと怒られた事がありまして、それ以降お隣とは顔を合わせても会釈もしません。次に子供がうるさいと言ってきたら、こっちも出窓のことを言ってやりたいと思います。
少なくとも、私の家の敷地にはみ出している出窓は、強制的に直させる権利がありますよね?



A.115 回答
(1)隣家の出窓が相談者の敷地にはみだしているのであれば、確かに相談者の土地の所有権を侵害していますね。
 民法は207条で,土地の所有権は,法令の制限内において,その土地の上下に及ぶと規定していますから,土地の上部の空間も所有権の保護の対象になりますからね。

(2)参考までに,建物を建てるときには,異なる慣習がない限り境界線から50センチ以上の距離を離して建てないといけないということを民法234条は規定しています。

(3)所有権を侵害していて法律に違反していることが明らかだとして,それを強制的に直させることができるのでしょうか。

(4)相手に法律に違反していることを説明して,それに応じて相手が自主的に直せば良いのですが,それをしない場合はどうなるかですね。
 まず,自力救済が出来ればよいのでしょうが,法律上自力救済は認められていませんから,やはり裁判所で調停か,訴訟をして解決するしかないでしょうね。

(5)それでは裁判所で争えば,強制的に直させることができるのでしょうか。

(6)隣人とのトラブルですから,まず調停での話し合いの方がよいと思いますが,あくまで,調停の場合は調停委員による解決案の提示ですし,拘束力はありませんから,相手が拒否すれば不調になります。

(7)そうすると相手が調停での解決を拒絶した場合には訴訟しないといけませんが,訴訟すれば必ず直させることができるのでしょうか。
 出来るのが原則です。ただ,出窓が相手の建物の一部として,取り壊すのに相当の費用がかかる,建物本体にダメージを残すような状況で,出窓付近のあなたの土地利用権が侵害されている状態が極めて軽微と言えるような事情があれば,取り壊しは難しいかもしれません。

(8)先ほどの50センチ離すことを規定した民法208条も2項で次のように規定しています
 前項の規定に違反して建物を建築しようとするものがあるときは,隣地の所有者は,その建築を中止させ,又は変更させることが出来る。ただし,建築に着手した時から1年を経過し,またその建物が完成した後は,損害賠償の請求のみをすることができる。

(9)この規定に記載されているように,建物の損害が大きくて,あなたの方の被害が軽微であれば,相手からあなたへの一定額の損害賠償金を支払うことで解決される結果となる可能性もあります。





Q.116 使用貸借契約 
ニ年前から私の父親名義の農地を私物化している叔父がいます。叔父は会社の同僚や知人などに畑を貸し収入を得ています。以前あった時に年5000円ほどで貸していると聞きました。
畑はけっこうな広さがあり今年の春から大人数が利用する様になり、黙って見ているのも馬鹿らしくなりました。この農地の固定資産税は私の父が納めています。夏に遭った時叔父に直接返すよう頼みましたが、使っていない農地をビジネスにしたのは自分だとか言いだす次第で素直に応じてくれる様子はありませんでした。勝手に私物化しているんですから当たり前かもしれませんが叔父から農地を明け渡して貰う良い手だてはありませんか?



A.116 回答
(1)父親の農地を私物化している叔父さんから農地を明け渡して貰う良い手だてはありませんかという質問ですね。

(2)まず,父親は何と言っているのでしょうか,その点が不明ですね。
 農地ということであれば,相談者の父親と叔父さんの父である祖父の財産を父親が相続して名義を移転した状態というように考えられますね。そのような状態であるとすれば,父親と叔父さんとの話し合いが大切ではないでしょうか。

(3)父親が黙認しているとすればどうしようもないでしょうか。
 権利者が容認しているのであれば,子供であっても何も口出しはできないでしょう。

(4)父親が返して欲しいということを言った場合にはどうなりますか。
 この場合,2年間使用して,その間父親が黙認していたとすれば,法律的には父親と叔父さんとの間で,使用を認める使用貸借契約が事実上成立している可能性が高いと思われます。

(5)使用貸借契約ですか,それはどういうことですか。
 賃貸借は当事者間で使用料を払う契約ですし,それが無償で貸しているということであれば使用貸借になります。

(6)使用貸借が成立している場合に返して欲しいという申し入れは有効なのでしょうか。
 まず,契約で返還時期が定められていればそれに従うことになりますが,今回はそのような取り決めはなさそうですね。

(7)そうするとどうなりますか。
 返還の時期が定まっていないときには,使用収益の目的を達成したときあるいは達成に必要な期間が経過したときに,直ちに返還を請求できます。畑で収穫しているのであれば,それが終われば返して欲しいという申し出ができそうですね。

(8)また,返還の時期や使用収益の目的を定めていなかったような場合には,何時でも返還を請求できます。今回の場合はその可能性もありますね。

(9)今回の件は細かい事情がよく分かりませんが,お父さんが本当に返して欲しいと思っているのであれば,一度専門家に相談した方が良いでしょうね。





Q.117 離婚後,父親が親権を得るには
妻との関係が非常に悪く早いうちに離婚も間違いありません。ただ妻とは離婚後の親権で揉めておりまして離婚に至っていないのが現状です。私と妻は5年前に結婚して5歳の幼稚園に通う年中児の長男と、1歳の長女がいます。長女は私の実家に預け、妻はパートに行っています。今は金沢市内で借家住まいですが、私は離婚したら子供を連れて実家に戻ろうと考えています。長男は実家から今の幼稚園に通うことも可能です。妻は離婚した後は市営か県営住宅に住むと言っており、妻の収入では子供たちにとって良い生活が送れるとは思いません。私も大した給料があるわけではなく、高額の養育費は無理です。長男長女共に私の父母によくなついており、ほぼ毎週末私の実家に出かけます。妻の実家も県内にありまして車でいける距離ですが年に盆と正月に顔を出すだけです。妻はインターネットから情報を仕入れているようで経済力のありなしは親権者を決めるのに左右されないから親権は間違いなく私だと言っています。私も色々と調べまして確かに母親が親権を得る場合が多いように理解していますが私も2人の親権を彼女に譲るつもりは毛頭ありません。
もっと詳細にわたってお話ししないと判断はつかないと思いますが、とりあえず父親が親権を得るためにはどうしたら良いのでしょうか。



A.117 回答
(1)相談者が言われるとおり,子供が幼い場合には母親の方が親権者として有利な状況にあります。

(2)今述べた母親優先ということの他に,色々な要素がありますから,親権者に関する基本的な判例の考え方をみてみましょう。

(3)まず,継続性,現状を優先するという考え方があります。実際にそれまで子供を監護してきた方を優先し,現状を変更させないという考え方です。

(4)次に子供の意思を尊重することもありますが,子供の年齢によって変わってきます。
 今回の相談者のように子供が幼い状態であればそれほど重視されない要素になります。具体的に子供の年齢が0〜10歳の時に母が指定される可能性が高いでしょう。10〜15歳の時も母が有利な状況ですね。15〜20歳であれば子供自身の意見が尊重されることになります。

(5)その他にも兄弟はできるだけ分離せずに育てようという考えもあります。

(6)それでは今回の相談者の場合は何かいい方法はないのでしょうか。
 まず,相談者ができることといえば,母親が育てる方が,子供の健全な育成に必ずしもふさわしくないこと,父親の方がふさわしいことを細かく証明できる状態にする。例えば,母親が子供をおいて,頻繁に外出するとか,育児をしないという状況があれば,父親が有利でしょうね。

(7)他にはどうでしょうか。
 実家の祖父母によくなついているのであれば,実家での生活をもっと頻繁にするとか,一定期間継続させて,その環境が子供にとってふさわしいという状況を作ることも考えられます。

(8)ただ,今の状況ですと,子供がもう少し大きくなるまで,離婚を思いとどまって,有利になるような状況作りをするしか方法はないように思えます。





Q.118 交通事故の示談金について
自転車で走行中に、突然左折してきた車に巻き込まれました。入院と治療で1ヶ月会社を休むことになり、今も通院しています。今は示談の段階なんですが慰謝料の額に納得がいかず交通事故紛争処理センターに行きましたがやはり納得ができずにいます。弁護士さんに入ってもらうと当然弁護士費用がかかると思います。私は交通事故紛争処理センターの言う示談金で納得しなければならないのでしょうか?



A.118 回答
(1)まず,交通事故の損害賠償の流れをみてみましょう。
  まず,交通事故で被害を受けた,その後治療に通います。そして交通事故の治療が完了した後,保険会社から示談金の提案がなされます。
このときに,示談金の内容に不満が合って,中々合意ができない。

(2)その場合はどうなりますか。
保険会社によっては,若干示談金を上乗せして,再提案して来ることが多いです。

(3)今回の相談者の方は交通事故処理センターに行ったということですが,これはどういうことですか。
第三者機関として,訴訟外で早期の解決を目指したセンターです。
専門の弁護士がいて,保険会社と被害者の解決を目指すいことになります。
最近,保険会社によっては,被害者と示談ができない場合にセンターに行くように示唆することが多いようです。

(4)それは何故でしょうか
やはり,示談ができずに被害者が裁判を起こすことを避けたいためだと思います。

(5)それでは交通事故紛争処理センターでの解決は,保険会社の思うつぼなのでしょうか。
必ずしもそうではないでしょう。まず,短期間で解決できるメリットがあります。それに金額も保険会社の提示額をよりも増額されることが一般的です。それに費用もかかりません。

(6)では,裁判では弁護士費用もかかるし,日数もかかるから,あまりメリットはないのでしょうか。

(7)そうではないです。
まず,弁護士費用について言えば,裁判所が判決する時に,損害額の1割程度を弁護士費用として加算してくれますから,その点はあまり気にしなくても良いと思います。

(8)期間が長期にわたるということはどうでしょうか。
確かに,半年から1年くらいかかることが多いですが,その間,遅延損害金として支払われる金額が年額5%加算されますから,期間がかかる不利益も,損害額の加算ということで考慮されています。

(9)では,交通事故紛争処理センターで解決するか,訴訟にするかの判断は何がポイントでしょうか。
早期解決が希望であれば交通事故紛争処理センターでの解決がよいでしょう。
ただ,少し日数がかかっても,被害者が希望する損害額を最大限に補償して欲しいと考えるのであれば,弁護士に依頼して裁判する方が良いと思います。





Q.119 弁護士への相談の流れ
春のことです。営業車で外周りしていた時、信号待ちで後方から追突され、全治3週間の怪我を負いました。切り傷などは、すっかり良くなりましたが、右手にしびれが残り、担当医師からも「これ以上はよくならない」といわれ、後遺障害14級と認定されました。
先日、相手の保険会社から示談金の相談があったのですが、全く納得がいかなかったので、お断りしました。すると、保険会社が薦める機関で相談するようとの話でしたので、弁護士事務所はどうかと尋ねたところ、手数料も、時間もかかるため、お薦めできないと言われました。私は、時間をかけてでも、自分が納得できる補償を求めています。弁護士に相談した場合は、どのような流れになるのでしょうか?



A.119 回答
(1)弁護士に相談した場合にどのような流れになるのかをお聞きですから,まず,簡単に流れを説明します。

(2)まず,事務所の方に電話をかけ,相談を希望する旨と,相談内容を簡単に告げます。そうすると,電話を受けた事務員が,相談者の都合と弁護士の予定を見ながら相談する日時を希望します。

(3)その際の相談料はどうなりますか。
 相談料は基本的に30分5250円です。
 但し,所得の低い方などは,法テラスの法律扶助制度の利用が可能ですから,そのような場合には相談料はかかりません。

(4)弁護士との相談はどうなりますか。
 相談者からまず事故内容,怪我の程度,治療期間を聞いて,裁判した場合に予想される金額を概算で計算します。それと,保険会社から提示された金額との比較検討をします。

(5)比較検討して,その後どうなりますか。
 裁判した場合の基準に比べて保険会社からの提示額が,かなり,低い場合には,裁判をした方が良いのではないかと説明します。

(6)裁判した場合には,弁護士の手数料もかかるし,時間もかかるからお薦め出来ないと言われたと言うことですが,この点はどうでしょうか。
 確かに,裁判した場合には時間はかかります。しかし,時間がかかっても,損害賠償請求は1年間に5%の遅延損害金が付きますから,裁判に長く日時がかかった方が得なことも多いです。

(7)弁護士の手数料はどうですか。
 弁護士報酬の方は,事件受任の際に,着手金を支払う必要はあります。
 しかし,裁判所が判決する際に,約1割程度の弁護士報酬も損害額に加算してくれますから,最終的には被害者が弁護士報酬を負担する可能性は低いと思います。

(8)弁護士に頼みたいけど,とりあえずの費用がないという場合はどうなりますか。
 法テラスの法律扶助を利用した立て替え制度もありますし,着手金を分割で,事件を受けることもあります。但し,裁判所に支払う印紙代等は必要になります。

(9)そうすると,期間がかかるとか,弁護士の手数料がかかるから,裁判はあまりお薦めではないということは,ちょっと当てはまらないと言うことになりますか。
 そうですね。裁判期間の問題と弁護士費用の問題は,あまり気にする必要はないと思います。





Q.120 遺産相続における寄与分
同居している義母のことで相談させていただきます。
信用金庫に入れていた義母の貯金なんですが、主人の妹が受取人として、死亡給付金が付いた保険に切り替えられました。それが、けっこうな額なのです。このままでは、普段 自宅で介護をしている私も主人も報われません。生命保険は受取人だけが受け取り、分与する必要はないのでしょうか?今回の件で、主人は妹と同額分で遺産を相続できるよう、早めに話しを進めたいと思っています。可能な限り詳細に渡り、義母の財産を正確に把握し、平等な分割に進めるには、どのような方法がありますでしょうか?



A.120 回答
(1)生命保険金の受取人が指定されている場合には,その人が受け取ることになります。ご主人の妹が受取人になっていれば,遺産相続の対象にはなりません。

(2)受取人が被相続人である義母の名前であれば,保険金請求権は遺産の中に含まれ,遺産分割の対象となります。

(3)あなたのご主人が妹と同額で遺産を相続したいのであれば,今の状況では,ご主人とその母親とで良く話し合って見るのが良いでしょうね。

(4)次に,可能な限り詳細に渡り義母の財産を正確に把握し,平等な分割を進めるには,どのような方法があるかについて問い合わせですが,これについてはどうですか
 義母が生前中であれば,義母から直接に財産の状況を聞くのが一番でしょう。

(5)義母が亡くなった場合はどうなるでしょうか。
 この場合には,相続人間で遺産分割手続きが行われますが,その手続きで,遺産
の内容が判明することになります。

(6)妹が隠していた場合にはどうなるでしょうか
 現金以外の財産であれば,共同相続になりますから,相続人全員の署名・押印がないそれを現金化することや名義を移転することは出来ませんので,妹が隠していたとしても,妹が独り占めすることはできません。

(7)妹が母親の亡くなる直前に解約して,現金化していた場合にはどうなりますか。
 その場合にも,通帳の履歴とかで把握できますから,それを全て含めて遺産分割の話し合いをすることは可能だと思います。

(8)相談者は母親を普段,自宅で介護していたのが報われないと言っていますが,その通りなのでしょうか。
 自宅で介護をしていたことが,母親の財産の維持形成に貢献しているというのであれば,遺産分割に際して,寄与分の主張をして,その分の割り増しを請求出来る可能性は高いです。

(9)特別寄与分とはどういうことですか
 共同相続人中に、被相続人の財産の増加や維持に特別の働き(特別の寄与)をした者がある場合に、相続財産からその寄与分を控除したものを相続財産とみなして各相続人の相続分を計算する。そして、寄与者にその控除分を取得させることによって共同相続人間の公平を図る制度です。

(10)そうすると寄与分が認められれば報われることになりますね。





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