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Q.1

先日,Xの父が死亡し,父の財産には,土地と
建物(1億円)及び預貯金(5000万円)がある。
残された親族は,XとXの母,兄と
弟(父と愛人の間の子),Xの妻,息子そして
伯父,従兄弟がいる。

具体的な相続分は?

 A.1
 まず,誰が相続人になるのかという点について,法律は,被相続人(本件では父)の配偶者(母)は,常に相続人になると規定しています。そして,被相続人の子も相続人となります。もっとも,被相続人に子がいない場合には,被相続人の直系尊属(両親,祖父母など)が,直系尊属もいない場合には,被相続人の兄弟姉妹がそれぞれ相続人となります。

 続いて,(法定)相続分ですが,配偶者と子が相続人である場合,相続財産を配偶者と子で1/2ずつ,配偶者と直系尊属の場合,2/3(配偶者)と1/3(直系尊属),配偶者と兄弟姉妹の場合,3/4(配偶者)と1/4(兄弟姉妹)とそれぞれ規定されています。ちなみに,子,直系尊属及び兄弟姉妹が複数いる場合,各自の相続分は等分されますが,嫡出でない子は嫡出である子の1/2,父母の一方のみが同じである兄弟姉妹は双方が同じである兄弟姉妹の1/2です。そうすると,本件では,母と被相続人の子であるXと兄及び弟が相続人となり,Xの妻,息子,伯父,従兄弟及び父の愛人は,相続人にはなりません。

 本件では,配偶者と子が相続人となりますので,それぞれ1/2ずつ分けられる結果,母は,相続財産全体の1/2に相当する7500万円を相続することになります。一方,子はXと兄と弟ですが,弟は父の愛人の子ですので嫡出でない子ですから,X及び兄の相続分は全体の1/5,弟は1/10となり,Xと兄がそれぞれ3000万円,弟は1500万円となります。






 Q.2
 実際に相続する場合は法定相続分によって相続しなければならないのか?
 Xは,父,母,妻及び息子と父親名義の建物に長い間,居住しており,このまま住み続けたい。


 A.2
 父親が死亡して相続が開始しますと,相続財産は相続人全員の共有に属することになり,それをいかなる方法で分配するか,相続人間で協議して決定することになります。これが遺産分割協議です。
 その際,法定相続分は一応の目安になるものの,どの財産を誰に帰属させるのがよいのかを実質的な平等と公平の観点から話し合いをします。そして,話し合いが成立すれば,法定相続分と関係なく建物を相続することは可能です。
 もっとも,遺産分割協議は,相続人間で争いとなることが多く,協議が整わないことがあります。その場合,まずは,家庭裁判所に遺産分割調停の申立をし,第三者である調停委員を交えた形で協議をすることになります。ただし,調停が成立しなければ,審判手続に移行し,最終的には家庭裁判所が分割をすることになります。
 相続は,親族間で様々な利害対立が生じる場面があり,また遺産の範囲,相続人の範囲等,法的な問題も多数はらむことが非常に多いです。また,相続の場面では親族間で骨肉の争いとなることも少なくないようです。それゆえ,このようなケースでは,当事者だけで解決することは困難であり,早期に弁護士に相談することをおすすめします。





 Q.3
 父親に愛人がおり,財産の全てを愛人に相続させるという遺言がある。
 この場合,X,母及び兄,弟は,父の財産から何も得られないのか?


 A.3
 兄弟姉妹以外の法定相続人には,直系尊属については相続財産の1/3の範囲で,配偶者及び子については1/2の範囲で取り戻しが認められています。これは,相続が残された家族の生活を保障するという側面を有することから,一部の法定相続人に相続財産の一定額を確保することが認められており,これを遺留分といいます。一定額の取り戻しの権利(遺留分減殺請求権)が認められているのです。

 そうすると,本件では,X,母及び兄弟は,愛人に遺贈された総額1億5000万円の財産の1/2に当たる7500万円の範囲で愛人に対し,遺留分減殺請求権を行使でき,母が3750万円,Xと兄が1500万円,弟が750万円について遺留分を有することになります。

 もっとも,遺留分は,本件のように相続財産が明確でない場合が多いこと,減殺請求の対象の範囲や遺留分の侵害額,減殺請求権行使の期間等,法的概念が錯綜する場面であります。また,調停や審判になることは必至といえます。
 したがって,遺留分を確保するためにも早期に弁護士に相談された方がよい場面です。





 Q.4
 遺言を残したい。相談する場合に用意するものはあるか。


 A.4
 遺言は,自己の死亡後の財産の帰属等が決まるものであるため,厳格な様式行為となっています。それゆえ,法律に定める方式にしたがっていないものは全て無効であり,厳格な要件をクリアーしていないものも当然,無効となります。また,遺言にはいくつか方式があり,どれを選択すべきかという点も重要なファクターです。
 それゆえ,遺言を作成したいという場合には,専門家である弁護士に相談することがもっとも確実で効果的であることは疑う余地はありません。
 ただし,その際,どのような財産を所持し,誰にどの財産を遺贈したいのかということをはっきりさせるために,自己の財産を整理し,不動産であれば登記簿謄本,預貯金であれば通帳などそれが分かるものを持参されることをおすすめします。また,印鑑をお忘れなく。





 Q.5
 父親が死亡したが,多額の借金があることが明らかになった。
 借金も相続しなければならないのか。
 

 A.5
 相続は,被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継するものでありますから,当然,マイナスの財産すなわち借金なども相続することになります。そして,その相続分は土地建物や現金などプラスの財産と同じです。それゆえ,そのまま相続すれば,相続人が被相続人の借金を負うことになります。

 もっとも,相続財産がマイナスの財産ばかりであるときに,相続人が過大な借金を負わされることは酷な結果を招来しかねず,法律は,相続人が相続を希望しない場合にこれを拒否する自由を認め,相続人の地位から離脱することを認めております。これを,「相続の放棄」といい,これが認められれば初めから相続人にならなかったものとみなされます。
 また,プラスの相続財産により得られる範囲内でマイナスの相続財産も負担するという条件付承認もあります。これを「限定承認」といいます。
 このように,過大な借金を相続するという惨事を回避する制度が法律には用意されておりますが,相続開始から一定の時間が経過すると,相続することを「承認」したものとみなされ,その場合,相続放棄をすることができなくなります。また,いずれも家庭裁判所への申述が必要とされています。

 したがって,相続開始後,被相続人に多額の借金があると分かったら早期に弁護士に相談してください。専門的な見地から,相続放棄,限定承認等の選択から家庭裁判所への申述まで早期に対応します。



       
                                     石川県金沢市大手町7番23号
                                                       蔵大介法律事務所
                                                      金沢弁護士会所属
                                                  電 話:076(234)5830
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