もともと「盗み撮り」とか「隠し撮り」といった意味。
だが1920年代後半に、ドイツの写真新聞の記者エーリヒ・ザロモンがライカで国際会議出席者たちの疲れ切った顔をスナップショットし、ヨーロッパのジャーナリズムに「これぞキャンディット・フォトだ」と賞賛される。ここから「撮られている人が気づかないような、リアルな表現の写真」という意味に変化した。
今のフォト・ジャーナリズムなら当たり前のような写真だが、当時の報道写真は大型カメラによる記念撮影的なものしかなく、誕生間もない小型カメラのライカを駆使したザロモンの撮影手法は斬新だったのである。ザロモンは現代のフォト・ジャーナリズムの源流と言えるだろう。
しかし彼の結末は悲劇だ。
その後、ドイツはナチスが台頭。ユダヤ人だったザロモンは周囲からたびたびアメリカへの移民を勧められるが、これを拒否。
ドイツにとどまり、アウシュビッツに送られガス室に消えた。
(参考文献『ライカとその時代』酒井修一著・朝日新聞社)