2005Y 3月19日〜 21日
鹿島槍 天狗尾根
L 佐藤 、河村
前夜 最終電車で0時10分に韮崎に着き、駅構内でステビバし河村さんの到着を待つ。
6時頃 予想より早くやってきた河村さんに起こされ大谷原に向かう。 3連休は好天の予想で豊科は既にこの時間からスキー渋滞となる。
19日 9:29 大谷原発 ⇒ 10:56 天狗尾根 取付 ⇒11:40 尾根上1,700M
⇒ 16:20 天狗の鼻 下 幕営
大谷原の林道に入ると既に車が一杯で駐車スペースなし。 工事関係者からスキー場の駐車場に止めるように
命令される。 ここで行ったりきたり、河村さん車にピッケル忘れなどで、なかなか出発できず。
大谷原出発組は30パーティー位だろうか。 赤岩尾根、が半分以上、東尾根に6P、天狗に8P、うち5P位は
北壁、北壁がこんなにポピュラーだとは知らなかった。 この3連休を毎年、恒例にしているクライマーが結構
いるらしい。
沢は荒沢までほとんど雪に埋まり、楽な渡渉が2回のみ。 取水口先の高巻もツルツル岩がすっかり雪の暖傾斜となり問題なし。
天狗尾根取り付きから急登を終えるとあっという間に正月の敗退点1,700M地点、そこからいよいよ未知の
第1、 第2クロアールを目指す。
1,800M付近、樹林が少なくなり尾根上の風が強くなる。尾根も狭まりアイゼン装着。
第1クロアールはただの雪壁という感じでなんとなく過ぎ、更に尾根はどんどん切れてくるが、適当にトレース
があり、時々煽られる強風に注意すれば、周りの景色を楽しみながらの楽しい登高。
第2クロアールは雪の状態によっては危険だが、しまった雪でグングン登れる。ここを抜けると目前に大きな
天狗の鼻が望める。
天狗の鼻は広い大地だが風強く、とても幕営適地とは言いがたい。 少し降った尾根上に既に5P位が幕営しており、僕らもそこに風除けのブロックを積み上げて幕営。
夜、トイレに起きると、鹿島槍スキー場の照明と 大町のネオンに囲まれ、結構にぎやかだ。
20日 7:25 発 ⇒ 9:24 小舎岩 ⇒ 12:07 北峰 ⇒ 13:30 南峰
⇒ 14:50 布引山、冷池山荘間 稜線上 幕営
北壁パーティーが3時頃から動き出し、ガチャガチャで目が覚める。 ほとんどのパーティーは「トラバースが
悪い」と言って戻ってくる。 又、荒沢奥壁にも1パーティー取り付いていく。 彼らの動きが気になりしばらく観察しているうち出発が7時を過ぎてしまった。 結局、ほとんどのパーティーが北壁を諦め、天狗尾根ピストンに切り替える。 この山行中、北壁も荒沢も雪崩はなかった。
小舎岩まで眺めのよい、スノーリッジの急登。 隣の東尾根では第2岩峰下に8人位の列が出来ている。
こちらの小舎岩上 P5の岩壁で3パーティーの順番待ちとなる。
P5は正面岩壁を左上するが先行パーティーに散々踏みつけられ、気温も上がりザラメ雪と岩のミックス登攀
で少しやらしい。ザイルを出して先行3人パーティーの3人目の後に続く。僕らの後ろにいたYCCの3人Pは
正面右へトラバースしダケカンバの間を縫うように抜けていった。
上部に行くにつれ雪は益々腐り、ピッケル、バイルも効きが悪い。 先行パーティーの2人目は空身で初心者のようだが、進みが悪く不安定な状態で待たされる。 と、いきなり2人目が落ちてザイルの引きと3人目の体で何とか止める。 危うくこちらも巻き込まれそうになり声をあげる。 落ちてすっかりビビッてしまった2人目はトップと3人目から「もう、根性で登るしかない。思い切って行け!」と叱咤され、何とか引っ張りあげられる。
続くP6は短い岩壁で途中に1箇所残置ハーケンが打ってある。 ここを抜けると後は荒沢の頭に向かって急登。
北壁と平行に登っていく感じだ。
北壁に目をやると全部、敗退したかと思っていたが2パーティーが正面尾根に取り付いていて、先行2人パーティーはもう頂上直下の雪壁に迫っていた。しかもノーザイル。(アンザイレンしても確保する支点乏しいが)
注目の的だ。
結局、暗いうちから行動開始したパーティーがトラバースの途中で皆引き返し、明るくなり一番後から取り付いたパーティーが先行の踏み固めたトレースを使って安易に下部取り付きに達し、雪崩の可能性少ないと見て
一気に登って行くという結果になったようだ。
荒沢の頭に出るとまだ東尾根からは誰も上がって来ていないようだった。
強風に気をつけて最後のスノーリッジを登り北峰ピーク。
久しぶりの完登に握手を交わしたが強風で居心地悪く早々に降って南峰を目指す。 この南峰までの強風の稜線登高が一番辛かったと思う。
なつかしの南峰で牛首尾根から続く剱への尾根に再チャレンジを誓う。後はもう降るだけ。早くこの強風から
開放されたい一心で歩く。 布引山を過ぎると稜線上に樹林帯が現れ、風が弱まる。明日も天気は良いし、急ぐこともないので、赤岩尾根でごった返しているであろう冷池よりはその辺の樹林の陰で静かにひっそり幕営したいと思い、稜線上に幕営を決める。河村さんは冷池まで行きたがっていたが、僕はもう整地を始めている。
これが、その夜の地獄を演出するのだが。
風は弱いとはいえ、たっぷり1時間かけて整地し雪ブロックを積み、山行が終わりに近づき明日の赤岩尾根の稜線からの急降下さえクリアすれば危険も無いし安堵感に包まれて19時頃にはシェラフにくるまる。
風が強くなり雪がちらつくが稜線なのでしょうがないと安易に考えていた。 22時頃、寝心地の悪さに目を覚ますと地吹雪となった雪が積み上げた雪ブロックとテントの間に吹き溜まりテントは半分以上雪の中。
頭と脇を雪に押されながら我慢して寝ていたが、さすがに雪の影が天井近くになり河村さんが勇んで雪かきにでる。計3回雪かきでテントの中は雪だらけ、ラジオでは明日は晴れだし、我慢して夜が明け、地吹雪がおさまるのを待つ。
しかし、防風のための雪ブロックも場合によっては逆効果ということだ。
21日 8:31 発 ⇒ 10:07 赤岩尾根下降点 ⇒ 21:08 高千穂平 西沢下降
⇒ 13:08 大谷原
太陽が高く上るにつれ強風が雲を追いやりやがて快晴になる。 冷池までラッセルとなり、昨日の安易な判断を
反省しながら歩く。 やはり積雪期は行ける内に行ける所まで行っておくべきだ。
(ただし冷池冬季小屋は利用料 1,000円取られる。)
赤岩尾根の上部急降下は立って降るには傾斜がきつく、雪もグサグサなのでシリセード&腹ばい滑落停止姿勢で
スピード優先下降する。 河村さんは一歩一歩、ピッケルとバイルで確保しながら降りてくるのでとても時間が
かかる。 「河村さーん さっさと降りちゃわないと雪崩れるよ! 雪崩が来るの待ってるようなもんだよ!」と叫ぶが強風で聞こえない。突風吹く中、待ちきれず先に降りだす。
風の止んだところで河村さんを待っていると「置いて行った!」と怒りながら降りてくる。
高千穂平からは右に沢を降って西沢を下降。 出だしこそシリセードで一気に降ったが西沢に入ってからは
デブリのラッセルとなり、トレース、バッチリの赤岩尾根のほうが楽だったのではと思う。
この冬は予想以上の大雪で正月以来、みんな山に入れず欲求不満気味だったのがこの3連休の好天で一気に
山に入った様子。 北壁が決して特別な存在ではないと実感し、チャレンジしたい気持ちを抱いて帰京。