貝塚市二色 市民の森 

アリの一種(オス)
Formicidae gen. et sp. indet. (male)

アリの一種(オス) アリの一種(オス)
2010年6月7日


ハチだと思って近づいたら、アリのオスでした。アリはハチの一 員ではありますが、他のハチ類とは一線を画しています。

それは地下生活に適応していることです。アリと同じように、地中や枯れ木の中に巣をつくるハチは少なくはありません。ただ、 それらのハチのほとんどは翅を持っていて、空中を飛翔するとい うハチ類本来の生活を捨ててはいません。

アリの場合は、翅のない状態が本来の姿です。形態学的には翅のある状態が本来の姿なのでしょうが、アリの生活史のうえでは、翅が必要となるのは女王アリとオスアリが出会って交尾するときだけです。おそらく、同じ巣で育った姉弟どうしで交尾しないた めに、遠くまで飛ぶ必要があるのでしょう。

さらにいうなら、アリの生活史のうえでは、オスという存在も、 新たに誕生した女王の交尾相手として一時的に必要になるだけで す。子育てやエサ集めなどの労働に従事できないオスは、ほかの 巣の女王と交尾するという目的だけを託され、目的を達成するそ の日のためだけに養われるのです。

アリの生活史のうえの、ごく一瞬のためだけにオスは存在します 。一瞬とはいえ、その役目は重要です。オスと交尾できなかった 女王アリは次の世代を残せません。

アリの社会は役割を分担することで成り立っています。それぞれ がそれぞれの役割を果たしているからこそ、アリは繁栄し、大都 会の中であろうが、へんぴな山奥であろうが、私たちの身近な存 在であり続けているのです。

私たちも社会生活をする生きものです。ひとりひとりが、それぞ れ違った役割を担い、おそらくは、自分が何を担っているのかに 気づかなくとも、それを果たしているのでしょう。だからこそ私 たちの社会も、現に存在しているのでしょう。

もちろん、そうは 思えないこともたくさんあるのですが。

(2010.F.30)


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