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キャロル・ヤットの直感は正しいことが証明された。彼女の短剣の記事は新聞には載らず丸一日ストックされたが、同組織の課を通して世界中のかなりの雑誌で取り上げられた。彼女がいなくなって1週間もたたないうちにシカゴで1人の老人がその記事を見て震える指からコーヒーカップを落とした。
彼はそれをを素早く読んでそれから神父に電話した。それがすむと自分の書斎に行って本を読みふけり記憶を新たにし、好奇心を満足させた。興奮に揺さぶられながら彼は雑誌社に電話しロンドンのとある番号を聞き出した。電話をおくと彼は私立探偵のような大胆さと性急さを感じ始めてた。
彼は再度雑誌で筆者名を確認し、ニュースデスクに電話をつながせた。
「私はマイケル・フィンと申しまして、シカゴからかけてます。そちらのレポーターで、キャロル・ヤットさんにお話させていただきたいのですが・・・」と彼は言った。
「できるならそうしたいのですが・・・」男の声がした。「彼女は一週間ほど行方不明なんです。それと関係があったら、お話下さい」
彼が話しているとドアをたたく音がして小さくて瘠せた男が覗き込んだ。彼はグレイのスーツをきて神父の襟をつけていた。フィンは彼に入ってくるように手招きをし、芝居じみて麗々しくその雑誌を手渡した。神父はゆっくりとそれを読んだ。
「うーむ・・・」ついに彼は言った。「奇妙ですね」
「とてもね」
フィンが言い、しばらくの間あの日のことを回想した。フィンがある山の手のオークションであの短剣に出くわしたときのことを。そして神父がそれらをイタリアのスビアコ修道院へどうやって持っていったのかを・・・。
「もし知ってたら・・・」神父は言った。「短剣はあった所においておいたのに・・・」
「思い返して見てくれ」フィンは言った。「あのイタリア人はあの短剣で何をしようとしていたのか何の手がかりもくれなかったのか?」
「何もありませんでした・・・」
フィンは驚いて首を振った。雑誌の中で説明された者たちの死に対して責任があるような気がしてならなかった。
「このデ・カルロはまだ生きているかどうかわかるのか?」
神父は首をすくめた。
「わかりません。でも修道院に電話はできるでしょう」
フィンはうなずいた。また性急さを感じた。
「もし彼が生きていたら、私といっしょに彼に会いにいくかい?」
「なぜです?何をしようというのですか?」
「好奇心を満足させるのさ」
神父は首を振った。
「私の好奇心はそんなに大きくありません。そのかわりに出席すべきものが山ほどあります」
「もちろんさ」フィンは言った。「だが私は休暇を取ることになっている。この時期ローマより快適に過ごせる場所があるかい?」
「ごもっともです」神父は言った。
丸60年間フィンは自分の生まれた都市から出ることはめったになかった。彼の人生は読書と古代史の研究であった。彼はこの国で幅広い聖書のテキストコレクションの専門家として知られており、賞を取った展示品は死海の巻き物の1つでひびのはいったパピルスがひどいダメージから守られガラスケースの中で彼に研究されていた。彼は尊敬される学者だったが、近代の世界のことはほとんど分からなかった。彼は飛行機に乗って安全ベルトをしめながらウキウキするのを感じた。
フィンは荷造りを楽しみ妻との甘い別れの辛さを楽しんだ。そして、ミステリーとたぶん危険であろう手がかりを楽しみにしていた。飛行機が離陸のためにスピードを上げるにつれて、彼は自分が再び若いような気がした。まるで脳みそからクモの巣が吹き飛び、魂から埃を一掃したようだった。彼は長年の習慣さえやぶってまだ暗くなる前にスチュワーデスからカクテルを受け取った。
フィンはローマでまったく時間を無駄にせず、空港デスクから車をハイヤーして、直接東のスビアコへ出発した。デ・カルロに会った後でも景色を見る時間はたっぷりあるだろう。彼はたそがれの中を1時間車に乗り、地図をチェックしながら、地図上の丘の上の黒い石で建てられ壊れかけた建物に着いた。
そこは明かりも窓もまったくないようだった。フィンはドゥーラン神父が彼の前で感じたように、シカゴでは単にイメージしかできなかった歴史とその連続性の感覚に身震いした。
彼は車を止め、エンジンを止め、意識的に全てを静寂にした。彼は重い樫の扉に向かって荒れ果てた小道をヒタヒタと進んだ。唇は無言の祈りで動いていた。人生を図書館に費やしてきた自分が現実のものに出会っている。そんな認識が世紀を超えて彼は自分を突然小さく取るに足らないもののように感じた。
フィンが荒れた敷石をのぼると男達が低いモノトーンで祈っているのが聞え始めた。彼が重い鉄のノッカーをコツコツと叩くと音が建物を反響したが祈りを妨げることはできなかった。彼は扉が開くまで丸一分間待たされた。1人の修道士が顔をほとんど頭巾でかくしだまって彼を見た。フィンが自己紹介するとその修道士は彼が入れるように後ろに下がった。
「あなたに来ていただけて、みんな喜んでおります」
修道士の英語はきれいだった。
「おじゃまでないといいのですが」
「デ・カルロ神父はあなたに会えて喜ぶでしょう。今は彼を訪れる者はありません」
「具合はいかがです?」
「彼の魂は苦悩しています」
フィンは修道士の後について通路を廊下に沿って下りた。その場所は湿気味を帯ていたためフィンは身震いした。
修道士は1つの扉で立ち止まってノックし、扉を押し開けた。フィンはその小さな部屋に入って狭いベッドの上の老人を見た。ドゥーランが描写した神父はどっしりとした体格の男で力強い顔をしており頬骨が高くわし鼻だとのことだった。フィンは変化の心構えをしていたが、こんなに衰えているとは想像していなかった。膚は頭蓋骨の周りで皺が寄り、座る姿勢になるのにも彼の動きはゆっくりで明らかにつらそうだった。
フィンは出だしの言葉を探した。
「お体の具合が悪いそうで・・・お気の毒です」
「私は大丈夫」デ・カルロは言った。「病んでいるのは世界だ」
「ああ・・・そうですね・・・」フィンは少し当惑した。
彼は若い修道士が彼に椅子を持ってきたので振り向いて微笑み、椅子の端に腰かけてキャロル・ヤットの記事をとるためにポケットに手を伸ばした。
「私の手紙は受け取っていただけましたか?」
神父はうなずいた。
「あの短剣を見つけた時あなたはその意味を知ってた?」
「ただ以前見たことがあったある図と似てにていたということと、メジドの古代都市から出てきたものらしいということぐらいです」
「そのとおり。エルサレムの近くの地下都市でかつてアーマゲドンとして知られてたところからだ」
「それからあの短剣にはなにか歴史的意義のようなものがあるかもしれないということです」フィンは続けた。「私はあれはかつて悪魔払いに使われていたものではないかと確信しています」
デ・カルロは微笑んだ。
「悪魔を追い出すという意味のまずい言葉だな。違う。あの短剣はもっと重要なのだ」
フィンは記事を差し出した。
「もう少しで忘れるところでした。この記事を偶然見つけるまでは・・・」
デ・カルロはちらっと見、そしてよく見て、それからその記事を読んだ。彼の目から涙が流れた。彼は涙を袖で払いのけ、再びフィンを見上げた。
「これから話すことをよく聞いていただきたい。話を遮らないように」
フィンはうなずき、神父がゆっくりと物語を始めたので、椅子に深く座った。
デ・カルロは語った。まさにあの部屋でいかにして見習い僧としてスピリトと呼ばれる神父の死に際の懺悔の場にいたかを。その神父は悪魔のしもべになっていて悪魔を誕生させた。それは山犬と悪魔の忌まわしい結合で生まれた生物だったと。
フィンは瞬きしたが何も言わなかった。
その生物が人前に出された後、それは生まれたばかりの人間の子と取り替えられた。ロバート・ソーンとキャサリーン・ソーンの息子とだ。その父には彼の子は死んだとだけ話され、神が彼に捨て子を彼の子として育てるように望んだと言った。キャサリーン・ソーンには流産の経験があった。そしてこれが彼女にとって子を持つ最後のチャンスだったのだ。ロバート・ソーンは同意した。彼は妻にその替え玉を自分たちの息子だと話した。彼らはその子にダミアンと名付けた。
「その子が破滅の力だったのだ」とデ・カルロは言った。「ついにはロバート・ソーンは真実に気が付いたのだ。彼はメジドへ行って7本の短剣を受け取ったがその子を滅ぼす前に彼自身が殺されてしまった」
フィンは目をこすった。そしてデ・カルロは修道士に手まねで水をコップ一杯持ってくるように言った。それからダミアン・ソーンがいかに成長しソーン社の社長になったか、その会社が世界の人口に多大な食料供給をコントロールしているか、彼の力がいかに大きくなったかをかたり続けた。
「それから私の祈りが通じた」デ・カルロが続けた。「あなたがあの短剣を見つけあなたの神父が私の元へ運んできた。神の意志だ。あなたは神の手先として行動したのだ」
フィンは水をぐっと飲んだが何も言わなかった。
「6人の兄弟たちと共に私はダミアン・ソーンを滅ぼすためにイギリスへ向かった」
デ・カルロは寝台の下に手を伸ばし1本の短剣を持ち上げた。フィンは本能的に金属のきらめきと束の独特な彫刻から見をひいた。同じ短剣だ。まったく突然にもしこの狂った神父の話していることが事実だったら、彼、マイケル・フィンが殺人者の片棒をかついだと避難されるかもしれないということが彼の心に浮かんだ。
「神父のあなたが人を殺そうとしたんですか?」
彼は疑うように言った。
「奴は人間ではない」デ・カルロは抑揚のないモノトーンで言った。
「奴はアンチキリストなのだ」
フィンは吹き出すのを押えて鼻をならすと同時にデ・カルロはフィンの前に短剣を突き出した。
「あなたが認め難いのは分かる。あなたのような誠実な人でさえもだ。ロバート・ソーンはもっと認め難かった。しかしついには認めた。そしてケイト・レイノルズという女性も認めた。ダミアン・ソーンの背中にこの短剣を打ち込んだのは彼女だ」
彼は短剣をフィンのひざの上に置いた。老人はキリストの顔を見下ろした。
「我々は成功したと思った。奴を滅ぼしたと。だが、それは間違いの始まりだった」
デ・カルロはため息をつき、寝台の上にもたれた。
フィンは刀にさわり立ち上がろうとした。この場所から出たかった。しかし、彼の足にはまったく力がなかった。
「黙示録を知ってるだろう?」神父は尋ねた。フィンはうなずいた。
「“そして彼には聖戦に戦いをいどんでこれに勝つ”」デ・カルロは言った。「“されにすべての部族、民族、国語、国民を支配する力が与えられた”」彼は間をおいた。
「地球上でソーン株式会社ほど力のあるものはない」
フィンは首を振った。
「あなたは聖書を自分のいいように解釈できる」
「そう・・・・」デ・カルロは言った。「アンチ・キリストのしもべたちは自分たちの解釈を作ってる。タソーンという男がいた。悪魔の誕生を手助けした者だ。後に彼は後悔し、ロバート・ソーンに時は近づいたと説明した。ユダヤ人は約束の地に戻った。世界中に飢饉があり、政治は混乱している。“そして彼は四方に分散したユダヤ族を集めて国のために旗を立てた。”」
彼はフィンを見た。
「あなたは聖書とその解釈をご存知だ。最後の日にはキリストが再生し、アンチキリストに立ち向かいイスラエルでアーマゲドン(最終戦争)が起きるだろうと」
フィンはうなずいた。
「キリストは蘇っている。私は彼を見たことがあるのだ」
フィンは眉毛の上を手でこすった。彼は立ち去りたかった。しかし、まだ居た。いやいやながらも心を奪われていた。
「ソーンはしもべ達にキリストが復活したその日に生まれた子供を殺すように命じた。100人が殺されたがキリストの子供には危害はなかった」
フィンは目をこすった。神父は手を彼に伸ばし、やさしく彼の腕に触れた。
「分かっている。一人の人間に、特にあたなのような図書館のスタッフである人にはもうたくさんだってね。でもどうか私と耐えてください」
彼は寝台の上の書棚に手を伸ばし、2つの封筒をとり出して、1つをフィンに手渡した。
「最初にこれを読んでください。勇敢な女性が病床から書いたものだ。読んで信じなさい」
差し出し人の住所はロンドン北西部だった。フィンは最後のページをめくり署名を見つめた。彼には何の意味もない名だった。
「読んで」
デ・カルロは言った。その言葉は命令だった。フィンは最初に戻して無言で読んだ。
神父様、私は来週入院することになっております。悪魔の手術の為に。私の長い苦しみは快方に向かっていると言われておりますが、私はこれを信じません。私は、長生きするとは思えないのです。まったく劇的でもメロドラマ的でもない私個人のことを知ったら、あなたはこれが発狂した女のノイローゼの戯言ではないとお認めになるでしょう。
私は簡単に証拠(私の身体)を見、痛みを感じ、明らかな結論に達しました。あなたは唯一私が手紙を書けるあのホラーを知っている方です。痛みはあなたがイギリスをたってから数週間後に始まりました。最初腫れ物に気づくまでは痛みを我慢していました。主治医は今定期検診をしている専門医に私を送りました。腫れ物が大きくなったからです。彼はもちろん「癌」という言葉は言いません。最近でさえそれは禁句です。彼はあいまいに「腫瘍」と言ってX線写真を見せます。
でも私は腫れ物が「腫瘍」ではないし、あのX線写真は私のものでないと確信しています。神父様、呪われた腫れ物が私を蹴るのです。もし、これが悪夢なら、これは目覚めながらの悪夢です。
私はあなたの言葉であのことは決して話しませんでした。ダミアンと私は「一体」だったと。あなたにお話しても何も得るものはないのですが、もし私が診療所から出てこなかったら、その時はこの手紙は懺悔の代用になると思います。もし私が死んでしまわなければ、これをお読みになることはないでしょう。
私はキリスト教信者ではありません。あなたのダミアンについてのいわゆる証拠にもかかわらずです。私は未だにそれを容認できません。私が知っているすべてはダミアン・ソーンという名の男が私の息子を私から連れ去ろうとしたこと、彼が息子を刺し殺したこと、そして入れ替わって私が彼を殺したことです。私には未だにピーターの背中からあの短剣を抜きとった時の忌まわしい吸着音、ダミアンの背骨にそれを刺し込んだ時ののきしんだ音が聞えます。それが私の知っているすべてです。あなたにとって彼はアンチキリストですが、私にとって彼はただ奇妙なあざのある魅力ある男性でした。ただそれだけです。
でも、私が彼の所に訪問した夜に短時間あったことは、私の中には邪悪な・・・それは・・・もう続けられません。あなたは悪魔と悪鬼と神の知っていることを信じている信心深い方ですもの。私はまた夢になだめられていることにも気がつきました。あなたはそれは神の子が私を慰めていると言うのでしょう。私にはわかりません。わかっているのは私が診療所に行くことになっているということだけです。私のために祈って下さい。デカルロ神父、少なくともあなたの祈りは私に危害は与えられません。
もし、私が間違っていたら、私の無神論が結局皮肉であることがわかったら、その時はあなたの祈りは私をいくらか楽にしてくれるかもしれません。
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フィンは神父を見た。
「ページをめくって」
デ・カルロは言った。彼は言われたとおりにした。便箋の裏に走り書きが
あった。
| 私は悪魔と寝たのです。神父様、私は自分の胸を傷つけました。私はこの上もない原罪を犯しました。どうか私の魂の為に祈って下さい。 |
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「この便箋は彼女が診療所へ行った朝の日付になっている」デ・カルロは言った。「彼女は次の日に死亡した。この手紙は彼女の弁護士の事務所から私のところへ送られたのです」
フィンは頭を振った。
「かわいそうな女の人だ。癌の治療法が見つからなかったんでしょう」
「癌ではない」
フィンはデ・カルロを見て瞬きした。
「彼女はダミアン・ソーンの最後の生け贄だったのだ。彼女は彼の子供を生んだと確信している」
デ・カルロは2通めの手紙を手渡した。
フィンはだまってそれを受け取り再び読み始めた。彼の唇は言葉通り動いた。
「神様お許し下さい。私は罪深こうございました・・・・・・」
彼は読み終えると再びデ・カルロを見た。彼の顔にはまったく血の気がなかった。
「ナンセンスだ」
彼は言った。デ・カルロは首をふった。
「なぜ、彼女が嘘をつくのだろうか?」
「嘘をついていないのなら、狂ってるんだ」
「ちがう。その懺悔はわかりやすい出口だ。彼女は嘘をついていない。悪魔が彼女に手をのばして以来、彼女は正気だったのだ」
フィンは初めてしゃべろうとして身体を前に傾けたが、デ・カルロはだまっているようにと片手を上げた。
「あのおそろしい夜にケイト・レイノルズと私は彼女の息子を埋葬し、ダミアン・ソーンの身体は祭壇に朽ち果てるようにと残してきた。短剣は私が運び、新しい夜明けを信じた。しかし、それは間違った夜明けだった。悪魔の背信者たちがその身体を見つけたのだ。彼らはそれを心臓麻痺だと言った。彼らの医者がそれを確証した。彼はおそらく、シカゴの家族墓地に埋葬されたのだ」
「知ってます。」フィンは熱心に言った。「テレビで観ましたよ」
デ・カルロは彼から手紙を取った。彼の指はアンダーラインを引いた段落に沿って動いた。
「『各々のナイフは束までつっこまなくてはならない。』」彼はゆっくり読んだ。
「『十字架の印を形作るように埋める。最初の短剣がもっとも重要だ。それは、肉体の生命を絶つもので十字の中心をつくるあとの配置が魂の生命を絶つ。それは聖なる地で行わなければならない。私たちしもべはこれを教え込まれました。それを防ぐよう用心深く行動するためです』」
デ・カルロはため息をついて後ろにもたれかかった。
「私たちはアンチキリストの身体を滅ぼしただけだ。彼の魂は無傷で彼の息子という忌まわしいものを通して働いている」
彼は目を閉じほとんどうわごとのように話した。
「私は悪魔の子がこの世に排泄された日に目覚め、それから知った。失敗したことを。私の兄弟が無駄死にしたと。しかし、つい先月、この手紙が着いて間違いを悟った。無知だったのだ。我々は単に知らなかっただけなのだ」
フィンはゆっくりと立ち上がった。ひざが震えていた。彼は目眩を感じ、急にとても年老いたような気がした。デ・カルロが目を開けた。
「私はこれを全て書いた。私があなたに話したことを。私のメモと手紙を持ってロンドンへ行きアメリカ大使に会うのだ。彼が助けてくれるだろう」
「なぜです?」フィンは言った。「なぜ彼なんです?」
「彼は誠実な男だ。彼には力と支配力もある。彼はあの短剣を握ることができる。人にできないことができるのだ。彼はまだ若い。あなたや私のような者は年老いて弱々しい。あなたの魂は喜んでるかもしれないが身体は・・・」
彼は微笑し、文を終わらせずそのままにして苦しそうに寝台を出て聖書に手を伸ばした。
「約束して」
彼は言った。
フィンは口を開け喋ろうとしたが言葉が何もでなかった。デ・カルロは片手を伸ばし聖書の上に置いた。
「約束して下さい。神の愛のために」
フィンはうなずいた。
「約束します」
「それなら私といっしょに跪いて」
窮屈な小部屋で彼らはいっしょに跪いた。デ・カルロはラテン語で祈り、フィンは自分が何をしてきたかを思った。2人が立ち上がると神父は両手をフィンの肩に置いた。
「大使を納得させるのだ。彼の心の準備ができたら彼に短剣を送る」
と彼は言った。
「蘇ったキリストがあなたを守るだろう。彼を信じ彼に祈るのだ。彼はもう一度地上を歩く。私は知っている。彼を見たことがある」
フィンは震えた。そしてそれはそこを離れるまで続き、修道院が見えなくなると震えは止まり、疑いが始まった。
第1部第7章へ
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