目次


99mTc−HMDP
クエン酸ガリウム(67Ga)
99Mo−99mTcジェネレータ
塩化インジウム111InCl
123I−IMP
99mTc−HM−PAO
99mTc−ECD
脳血流シンチグラム製剤の集積機序
インジウムDTPA(111In)
ヨードカプセル123I
131I−Capsules(カプセル)
99mTc−MAA
キセノン133Xeガス
クリプトン(81Rb−81mKr)ジェネレータ
99mTc−HSA−D
テクネアルブミンキット(HSA)
テクネピロリン酸 99mTc−PYP
塩化タリウム(201Tl)
タリウム集積機序の謎
99mTc−Tetrofosmin
99mTc−MIBI
123I−BMIPP
心代謝と機能の評価
123I−9MPA心筋シンチグラフィ
123I−MIBG
99mTc−PMT
99mTc−GSA
肝臓の核医学
99mTc−フチン酸
99mTc−スズコロイド
99mTc−DMSA
99mTc−MAG3
99mTc−DTPA

131I−OIH

腎の核医学
131I−MIBG
アドステロール131I
インジウム(111In)オキシン
クエン酸第二鉄(59Fe)
クロム酸ナトリウム(51Cr)
131I−HSA
アイソトープ内用療法
99mTc−アネキシンV
Sr−89骨転移疼痛緩和療法

センチネルリンパ節シンチグラム








99mTc−HMDP
ヒドロキシメチレンジホスホン酸テクネチウム
:骨疾患診断薬
静注後1〜2時間後より撮像する。
骨盤部読影の妨害となる膀胱の描出をさけるために撮影直前に排尿させること。
膀胱部の被爆を軽減させるため、静注後できるだけ水分を摂取させ排尿を促させること。
骨親和性物質の集積増加がみられる病変部には血流の増加がある。
ハイドロオキシアパタイト(Hydroxyapataite)結晶にイオン結合することにより骨、ことに骨新生の盛んな部分に多く集まるものと考えられている。
血中クリアランスは2時間後で7%に減少する。
尿中排泄率は2時間で40%である。
ハイドロオキシアパタイト(Hydroxyapataite)結晶にイオン結合?

「吸収線量」
骨 0.512 mGy/37MBq
赤色骨髄 0.331
肝臓 0.086
腎臓 0.219
膀胱壁 0.609
卵巣 0.1
睾丸 0.073
全身 0119


クエン酸ガリウム(67Ga)
悪性腫瘍、炎症性病変診断
クエン酸ガリウム(67Ga)は、悪性腫瘍組織、特に乳ガン、肺ガン、悪性リンパ腫などへの高い集積を示すため、悪性腫瘍診断薬として広く臨床的に使用されている。
また、クエン酸ガリウム(67Ga)は、肺炎、結核、骨髄炎、各種炎症性病変においても炎症巣の有無、局在部位、広がりの診断、治療効果判定や経過観察にも有用である。
各炎症性病変とは、腹部膿瘍、肺炎、塵肺、サルコイドーシス、結核、骨髄炎、び慢性汎細気管支炎、肺繊維症、胆のう炎、関節炎などをいう。
腫瘍シンチグラフィの場合は、1.11〜1.48MBq/kgを静注し、24〜72時間後に、撮影する。
炎症シンチグラフィの場合は、炎症巣の局在部位・活動性等、他の検査では十分な情報が得られない場合に1.11〜1.85MBq/kgを静注し、48〜72時間後に撮像する。必要に応じて投与後6時間後を撮像する。
腫瘍集積機序は、クエン酸ガリウムが腫瘍に集積する本質的機序については、現在まだ十分に解明されていない。ただ67Gaの腫瘍への集積過程については、種々の実験的事実に基づいて、次のように考えられている。血中に投与されたクエン酸ガリウムは血中のタンパク質であるトランスフェリンと結合する。
一般的な放射性医薬品は生理食塩水に溶けてしまうが、ガリウムの場合クエン酸がないと、トランスフェリンと結合するのに3〜4日もかかってしまうことがわかってきた。ガリウムとトランスフェリンとがしっかりと結合するには、クエン酸のようにどここかに炭素の原子が共存しないと安定にならなない。このトランスフェリン−67Ga複合体は腫瘍細胞のトランスフェリンレセプターと作用し、細胞内に取り込まれる。細胞内では、ライソゾームをはじめ細胞質に分布する。この一部は67Gaフェリチンとして、また大部分は、microvesicles や粗面小胞体に運ばれ、そこで腫瘍細胞の機能に必須な高分子タンパクと結合する。
炎症集積機序は、炎症部位への集積機序についても十分に解明されていないが、いくつかの機構が考えられる。
○ 血流増加による集積
細小動脈の炎症による拡大、毛細管の透過性亢進によりイオン形で細胞にはいる。
○ 白血球による取り込み
ヒトの多型核白血球による67Gaの取り込みがリンパ球よりも高く、多型核白血球の膜表面に結合していると考えられる。
○ ラクトフェリンとの結合
67Gaが好中球に多く含まれるラクトフェリンと結合し好中球が炎症部位に集積する。
○ 細菌による直接取り込み
ブドウ球菌やサルモネラ菌など、いくつかの一般的な微生物によって67Gaが取  り込まれる。
腫瘍及び炎症部位における67Gaの結合物質は酸性ムコ多糖である。そのうちでも                                                                     
特にヘパラン硫酸が高い67Ga親和性を有することを示した。
 67Gaは静脈投与後24時間以内では主に腎臓から排泄されるため、腎臓が最も高い集積を示す。24時間以内で腎から投与量の約12%が排泄されるが、その後は肝臓が主な排泄経路となる。
48時間から72時間では、骨、肝臓、脾臓で高い集積を示す。
投与後1週間以内で投与量の約1/3が排泄され、残り2/3は肝臓(6%)、脾臓(1%)、腎臓(2%)、骨・骨髄(24%)、他軟部組織(34%)にとどまる。他に副腎、腸管、肺でも、比較的高い集積がみられる。

「吸収線量」
全身 2.6mGy/37MBq
肝臓 4.6
脾臓 5.3
骨髄 5.8
骨 4.4
胃 2.2
腎臓 4.1
卵巣 2.8
睾丸 2,4

67Gaとして
物理的半減期:3.26日
主γ線エネルギー:93.3kev(39.2%)
        185kev(21.2%)
        300kev(16.8%)

 
塩化インジウム111InCl
造血骨髄診断薬
塩化インジウム(111In)は、インジウム-111を塩化インジウムの形で含む造血骨髄診断薬を目的とする体内投与放射性医薬品である。
造血骨髄は、通常、頭蓋骨、胸骨、脊椎骨、骨盤骨、上腕骨、大腿骨、上部等に存在し、エックス線撮影や骨シンチグラフィではその分布を知ることはできない。111InClを静脈内投与すると造血骨髄に集積するため、シンチグラムを撮ることにより得られる情報は、造血骨髄の分布・活性度の把握、全身性又は局在性の造血骨髄疾患の診断に有用である。
通常、成人には37〜111MBqを静脈内に注射し、おおよそ48時間後に被検部の骨髄シンチグラムを撮る。
肘静脈内に投与された111InClは、血清transfuerrinと結合し、鉄イオンに類似した血中動態を示し、幼若赤血球に取り込まれることが知られ、活性骨髄の様子を知ることができると考えられる。
正常者では、静注後、主に肝臓、脾臓、骨髄に漸増的に集積し約72時間でプラトーに達する傾向があること、造血障害が著明になると腎への集積が著しく増大し、24時間以後の肝臓、骨髄への取り込みが減少する傾向にあると認められた。
投与後48時間までの尿中排泄率は正常群で数%以下で造血機能障害群は16%であった。

「吸収線量」
赤色骨髄 36.2mGy/37MBq
骨 5.5
肝臓 60.2
脾臓 56.6
腎臓 53.3
膵臓 9.0
肺 5.0
睾丸 35.0
卵巣 5.1
膀胱 11.0
全身 6.0
* ただし、異核種114mInを5%(規格限度)を含有すると仮定して算出した値である。


99Mo−99mTcジェネレータ
過テクネチウム酸ナトリウム注射液ジェネレータ
脳腫瘍及び脳血管障害の診断
甲状腺疾患の診断
唾液腺疾患の診断
異所性胃粘膜疾患の診断

 モリブデン酸塩をガラスカラムに充てんしたアルミナに吸着させ、これに過テクネチウム酸ナトリウム注射液を溶出させるために必要な装置。
99mTcO4は血液−脳関門(Blood Brain Barrier:BBB)を通過しないため、投与したときの脳シンチグラム像は、正常人では脳実質内に放射能の集積がないcold area として描出される。しかし脳腫瘍のようなBBB障害患者ではこれを通過して腫瘍組織に高濃度に集積するのでその部分が hot spot として描出される。また、病巣部における組織血管床の増加、即ち病巣内血液量の増加、腫瘍その他の病的組織内の血管壁の構造と機能の異常による透過性の亢進、病的組織内の細胞外液くう腔の増大、pinocytosis,carrier transport,passive diffusion,腫瘍などの代謝と関連した能動的なRIの取り込み、などの機構で取り込まれると考えられる。
過テクネチウム酸(99mTcO4)は静脈内投与後、速やかに血中から消失し、甲状腺、唾液腺及び胃粘膜に特異的に集積する。その後、腎から尿中へ及び腸から糞への2つのルートから体外へ排泄される。
静脈内投与後1日で30%が尿中に排泄され、それ以降尿中への排泄はわずかである。一方、その時期から糞中排泄が次第に増えはじめ、投与後8日には投与量の60%が排泄される。
脳シンチグラムを測定する場合、脈絡叢及び唾液腺への集積を防ぐために過塩素酸カリ(パークロレート)を検査1時間前に服用させる。成人には74〜740MBqを静注し、静注後10〜30分までにシンチグラムを得る。やむを得ず経口投与の場合は1〜2時間後に撮像する。腫瘍部は陽性像となる。
甲状腺シンチグラムを撮るには、成人に74〜370MBq静注し、被検部を撮る。甲状腺摂取率のみの測定の場合は、7.4〜74MBqを静注することにより測定する。正常値は0.4〜3%。甲状腺機能亢進症では5%以上である。
唾液腺シンチグラフィは成人に185〜555MBq静注してシンチグラムを得る。必要に応じて唾液分泌刺激物による負荷を行う。また、時間放射能曲線(TAC:Time Activity Curve)を作成することにより、RIシアログラムを得ることもできる。疾病対象はシェーグレン症候群等。
異所性胃粘膜シンチグラフィは成人に185〜370MBq静注し、経時的撮像する。陽性像として検出する。
注意事項として、授乳中の婦人は投与後少なくとも3日間は授乳しない方がよいとのほうこくがある。また、膀胱部の被爆を軽減させるため、撮像前後できるだけ患者に水分を摂取させ、排尿させること。


 123I−IMP
 N-イソプロピル-4-ヨードアンフェタミン
 局所脳血流診断薬
 123I−IMPは局所脳血流イメージングを目的とする体内投与用放射性医薬品である。
123I−IMPは静注後、高率に脳に取り込まれ、局所脳血流に比例して脳内に分布し、その初期分布は一定時間保持されるため鮮明な脳血流シンチグラムが得られます。123I−IMPを用いたシンチグラフィにより、脳血流障害の部位、広がりが可能で、エックス線CTでは検出困難な急性期の脳梗塞をはじめ、エックス線CTでは異常があらわれない早期の脳血流障害の検出や、低吸収域では説明できない神経症状の責任病の検出や、低吸収域周辺における回復可能な低血流域を検出できるため、外科的手術適応の決定や術後の評価に有効である。また、エックス線CTではあらわれないluxury perfusionやcross cerebellar diaschisisなどの遠隔効果(remote effect)を検出でき、病態把握に有効である。このように様々な病態における局所脳血流量を知ることができ、脳血流障害の診断、治療効果判定に極めて有用です。
123I−IMPの脳への集積機序は、脳内での血管内/脳実質組織のpH勾配、脂質/水分配係数並びに脳及び脳内毛細管内膜に局在する相対的非特異的な高容量アミン結合部位への親和性などの作用が複合しているであろうといわれている。
体内投与された123I−IMPは、速やかに血中から消失して、まず、肺に集積し、次いで脳、肝臓に集積した。脳への集積は、最初速やかに上昇し、1.5時間で8.5%となり、以後緩やかに(有効半減期7.8時間)減少した。
尿中への累積排泄率は、0〜6時間で1.6%、24時間で27.9%であった。

通常、成人には123I−IMP37〜222MBqを静脈内に注射し、投与後15から30分後よりガンマカメラ等の検出部を向け撮像もしくはデータを収録し、脳血流シンチグラムを得る。必要に応じて持続採決した末梢動脈血の放射能(オクタノール抽出で脂性成分を補正)とガンマカメラで実測した脳内の放射能を相互比較することにより、局所脳血流量を求める。
前処置として、放射性ヨウ素が甲状腺に摂取されることを防止するため、投与前から試験後も数日無機ヨウ素1日20mg以上を投与し、甲状腺ヨウ素摂取能を抑制しておくことが望ましい。
また、膀胱部の被ばくを軽減させるため、撮像前後できるだけ患者に水分を摂取させ、排尿させること。

123I
物理的半減期:13.3時間
主ガンマ線エネルギー:159kev

「吸収線量」
脳 0.84mGy/37MBq
肺 1.60
肝臓 1.76
腎臓 0.46
膀胱壁 5.66
甲状腺 0.19
睾丸 0.29
卵巣 0.44
赤色骨髄 0.42
全身 0.38
* ただし、123Iを100%として算出した。


99mTc−HM−PAO
エキサメタジムテクネチウム
局所脳血流診断薬
 エキサメタジムテクネチウムを過テクネチウム酸ナトリウム注射液ジェネレータの溶出液で溶解すると、エキサメタジムがテクネチウムと中性かつ脂溶性の錯体(エキサメタジムテクネチウム)を形成します。エキサメタジムテクネチウムは、静注後、初回循環で急速に脳内に取り込まれ、局所脳血流に比例して脳内に分布し、かつ長時間保持される。
常時保有することにより緊急時にも検査することができる。
非侵襲的局所脳血流測定法
パトラックプロット(Patlak Plot)法
99mTc−HM−PAOや99mTc−ECDは投与後、速やかに脳に取り込まれ、長時間安定にとどまることにより、マイクロスフェア法の理論を基本として脳血流量の測定が可能と考えられる。
測定時における動脈血中濃度を測定する代わりに、投与と同時に、患者の正面より約100秒間のRIアンギオグラフィを収集し、大動脈弓に設定した関心領域(ROI)の時間放射能曲線(TAC:Time Activity Curve)から求める。また、測定時における脳内濃度は大脳半球に設定した関心領域の時間放射能曲線から求める。
その後、関心領域の大きさに依存しない脳血流量の指数、Brain Perfusion Index(BPI)
を求める。BPIは、予め別の群で求めたBPIと大脳平均血流量(mCBF)の相関関係から得られた回帰式を用いてmCBFへ換算する。また、局所脳血流流量は、高血流域の過小評価を改善するためにLassenの補正式を用いてmCBFとSPECTカウントから求める。
エキサメタジムテクネチウムは、低分子の中性かつ脂溶性の錯体であり、脳血流関門を通り抜け、極性を持ちません。しかも脳内に留まるように、関門を通り抜けた後は、すぐに水溶性、、または極性に変化して脳内に分布する。健常者による体内分布試験によると、エキサメタジムテクネチウム静注後急速に血中より脳内に移行し、1分以内に脳に最大の取り込みを示し、2〜4分で最大摂取量の5〜15%がクリアランスされた後は有意な変化を示さない。投与量のほぼ5%が長時間脳内に保持される。
HM−PAOは静脈内投与直後急速に血中より消失して、脳以外にも全身の軟部組織に広く分布し、以後は緩やかな消失を示した。
健常者による体内分布試験では、投与後48時間までに投与量のほぼ40%が尿に排泄された。また、投与量のほぼ30%が肝胆道系に移行し、腸管を介した排泄も見られた。

(調整方法)
1) 放射化学的純度に及ぼすテクネチウム99等を除くため、使用前24時間以内に一度以上溶出を行ったことのある過テクネチウム酸ナトリウム注射液ジェネレータを使用し、溶出後2時間以上経過していない溶出液を使用する。
2) HM-PAO1バイアル当たり99mTcとして370MBq〜1.1GBqの過テクテチウム酸ナトリウム注射液ジェネレータの溶出液を加える。
3) 注射用生理食塩液又は過テクネチウム酸ナトリウム注射液ジェネレータの溶出用生理食塩液で希釈することにより、ジェレネータの溶出濃度を370MBq〜1.1GBq/5mlに調整する。
4) 調整後30分以内に使用すること。

「吸収線量」
胆のう     0.67mGy/37MBq
腎臓      1.26
肺        0.41
甲状腺     0.96
肝臓      0.32
赤色骨髄   0.13
骨(表面)   0.19
膀胱      0.85
脳        0.25
卵巣      0.24
精巣      0.09
小腸      0.44
上部大腸   0.67
下部大腸   0.56
全身      0.154
(ただし、3.5時間ことに排尿した場合である。)


99mTc−ECD
[N,N'-エチレンジ-L-システイネート(3)]オキソテクネチウム(99mTc)、ジエチルエステル
局所脳血流シンチグラム用診断薬
99mTc−ECDはジョンズホプキンス大学Burns、ニューヨーク州立大学Kung
等との協力のもと、米国デュポン社にて開発された局所脳血流シンチグラフィ剤である。従来よりジアミンジチオール(DADT)化合物は99mTcと容易に安定なキレートを形成することが知られており、その構造より脳イメージング剤として期待されてきたが、脳下の取り込みが高いものは洗い出しも速いため脳実質への保持機構に製剤開発の焦点があてられた。米国デュポン社では、脳実質への保持機構としてエルテル基に着目し、エステル基を導入したDADT化合物の検索を進めた。エステル基導入DADT化合物は血液−脳関門を透過して脳実質に取り込まれた後、脳内で酵素的分解を受け、極性化合物に代謝されるため血液−脳関門透過性を失い、脳実質に保持されると想定されている。サルを用いたイメージングを指標として、種々のエステル基導入DADT化合物が検索された結果、局所脳血流イメージングに最適な化合物として脳内への取り込みが高く、脳内での保持時間が長い[N,N'-エチレンジ-L-システイネート(3)]オキソテクネチウム(99mTc)、ジエチルエステル(99mTc−ECD)が見いだされた。脳ホモジネートを用いた種々の実験では、99mTc−ECDのエステル基が脳組織中で加水分解を受け、血液−脳関門透過性のない極性化合物に迅速に代謝されることが確認されている。
99mTc−ECDは、脳血流に比例して脳実質へ集積し、細胞内に長く保持されることが確認されている。また、血球成分、軟部組織との親和性が低く、脳以外の臓器、血液からのクリアランスが早いため、バックグラウンドの低い画像が得られる。
通常、成人には400〜600MBqを静脈内に投与し、投与後5分以降より被検部にガンマカメラ等の検出器を向け撮像もしくはデータを収録し、脳血流シンチグラムを得る。      
中性、脂溶性の99mTc−ECDは、容易に血流−脳関門を透過し、局所脳血流に比例して脳実質に取り込まれる。脳細胞ではサイトゾール分殻に70%以上が分布している。アカゲザルの脳組織を用いたインビトロの検討では、99mTc−ECDが脳組織中で水溶性の単一なモノアシドーモノエステル体に迅速に代謝され、この代謝物は血液−脳関門を透過しないことが確認されている。また、アカゲザルに99mTc−ECDを静脈内投与した際、同一の代謝物が脊髄液中に確認されることより、99mTc−ECDは血液−脳関門を透過後、エステル基が加水分解を受け、水溶性物質に代謝されることにより脳実質に保持されると想定される。
健常人を対象とした臨床試験では、脳への集積は投与後直ちに始まり、投与20〜40秒後に最大となり、その後、極めてゆっくりとwash-outされた。投与後5分で投与量の5.4±0.5%、投与後65分で投与量の5.0±0.3%が脳実質に保持された。また、肺および肝臓への集積は、投与後5分でそれぞれ投与量の2.2±0.5%、2.4±0.6%へ速やかに低下した。主要排泄経路は腎−尿路系であり、投与後90分までに投与量の60.2±7.3%、投与後24時間までに投与量の88.5±10.3%が尿中へ排泄された。
 加水分解:水が作用して起こる分解反応。塩(えん)類が水により分解され酸とアルカリになることや、有機化合物が水と反応して分解することなど。

「吸収線量」 mGy/MBq
2.5時間後排尿 _____________4.5時間後排尿
_________脳 0.0051 _________0.0051
_________肺 0.0015 _________0.0015
______心臓 0.0043 _________0.0043
______肝臓 0.0016 _________0.0016
______脾臓 0.0013 _________0.0013
______腎臓 0.0032 _________0.0035
______小腸 0.0051 _________0.0057
大腸上部 0.0068_________ 0.0073
大腸下部 0.0110 _________0.0120
___膀胱壁 0.0730 _________0.1100
______卵巣 0.0049 _________0.0062
______精巣 0.0051 _________0.0062
______全身 0.0010 _________0.0010
 

脳血流シンチグラム製剤の集積機序
はじめに
脳血流シンチグラフィは、脳の生理的、機能的情報を得る手段として臨床に定着している。SPECT用の脳血流シンチグラム製剤としては、
IMP :N-isopropyl p(123I)-iodoamphetamine
HMPAO :99mTc-hexamethylpropyleneamine oxine
ECD :99mTc-ethyl cysteinate dimer
の3剤が広く用いられている。これらのトレーサはいずれも血流分布に応じて脳に集積し、長期間脳内に停留する。脳集積過程は、動脈入力、脳組織への抽出、脳内での保持の3段階に分けて考えられるが、3種の脳血流シンチグラム製剤は各段階について互いに異なった性質をもつ。臨床使用に際しては、集積機序を理解した上で、使用薬剤の適切な選択、薬剤に応じた画像の解釈を行う必要がある。ここでは、各トレーサの集積機序について既設し、集積と血流に乖離を生じやすい亜急性期脳梗塞と脳腫瘍について検討する。
123I−IMP
123I−IMPは、静注された後いったん肺に補足され、その後緩徐に放出されて脳に達する。動脈入力が長時間続くことはこのトレーサの特徴の一つである。中性、脂溶性の低分子であるため、単純な拡散によって血液関門を通過し、脳に抽出される。初回循環抽出率は高く、静注後早期の脳内分布は血流分布をよく反映する。
123I−IMPの脳における保持には、大容量の非特異的結合部位への結合やpHシフトなどの関与が考えられている。脳内保持は不可逆的ではなく、比較的顕著な洗い出しを生じる。静注後の脳内放射能は30分後から60分後程度まではほぼ一定だが、これは持続的な流入と流出による動的平衡に過ぎない。特に注意すべきなのは、洗い出しが脳内で不均一に生じることで、このため静注後の時間の経過とともに、集積分布は血流分布から乖離してくる。高血流域からの洗い出しは速く、静注から撮像までの時間が長いと、高血流域の血流を過小評価することになる。小脳や後頭葉からの洗い出しが速いことも報告されている。疾患脳組織における保持機構の障害が洗い出しを生じることもある。
脳梗塞の亜急性期には酸素消費率が低下するが、しばしば血流は相対的に増加している。亜急性期脳梗塞で血流が絶対的に増加していても、通常の123I−IMPSPECT上が集積低下となることが多い。これは保持機構の障害によると考えられている。また、脳腫瘍は、血行に富む場合でも、やはり集積低下域として観察されることが多く、これも保持機能の低下によると考えられる。
緩徐な入力と比較的速やかな洗い出しを生じる123I−IMPの脳集積は経時的変化が大きく、撮像開始時間、収集時間に注意する必要がある。

99mTc−HMPAO
99mTc−HMPAOは静注後速やかに脳に達する。血中放射能は急速に減少し、残留した薬剤も短時間のうちに血液脳関門通過性を失う。このため、動脈入力は短時間で終了する。123I−IMPと同様に99mTc−HMPAOも脂溶性の低分子であり、単純拡散により血液関門を通過するが、初回循環抽出率は123I−IMPより低い。一般に血流が増加するに従って初回循環抽出率は低下するが、この傾向は抽出率の低いトレーサにおいてより顕著である。99mTc−HMPAO SPECTでは、高血流域の血流が過小評価され、集積のコントラストは実際の血流のコントラストほどにはつかないことになる。
一度抽出された脂溶性のトレーサは、細胞内グルタチオンとの相互作用で水溶性に変換され、血液脳関門通過性を失って脳内に留まる。グルタチオンは蛋白質などのSH基を維持したり、フリーラジカルを除去したりする生体防御物質である。様々な病態で脳内グルタチオン含有量が変化するが、これが99mTc−HMPAO SPECTに実質的な影響を与えるかが問題になる。99mTc−HMPAOとグルタチオンとの反応性が十分に高いために集積効率はグルタチオン含有量に影響されないとする報告もあるが、グルタチオン含有量と99mTc−HMPAO集積が正の相関を示すとの報告もあり、さらなる検討が待たれる。また、99mTc−HMPAOの脳内保持には細胞内小器官や細胞内蛋白質との結合が関与するとの指摘もある。
脳に抽出されたトレーサがすべて保持される訳ではなく、脳に入ってすぐに流出する早期逆拡散が多きことは99mTc−HMPAOの重要な特性である。逆拡散は血流依存性であり、高血流域では逆拡散が増加し、抽出率の低下とともに画像のコントラスト低下の原因になる。水溶性への変換または細胞内構造への結合によって非拡散型になると、脳からの流出はほとんどない。動脈入力が短いことと合わせ、静注後数分以内に脳集積は決定され、長時間一定の集積分布が保たれることになる。このため、静注時の血流分布を反映する画像が容易に得られ、てんかんの発作時、生理的負荷または、薬物負荷時なとにおける短時間持続の血流変化を評価することが可能になる。
99mTc−HMPAO SPECTでは、亜急性期梗塞で血流が増加している部位を高集積に描出するが、しばしば血流相応以上に集積が亢進し、血流を過大評価することが知られている。脳内での水溶性の血中トレーサが障害された血液脳関門を通過して脳に流入することが考えられる。脳腫瘍では99mTc−HMPAOの集積は腫瘍血流を有る程度反映すると考えられるが、富血管性でも集積が低いこともあって、必ずしも信頼できる血流の指摘とは言えない。髄膜腫のグルタチオン含有量が多いことと関連している可能性がある。

 99mTc−ECD
99mTc−ECDの脳内挙動は99mTc−HMPAOのそれと類似している。動脈内入力は短時間で、静注数分以内に集積分布は決定されて、その後長時間大きな変化はない。しかし、静注後後期の洗い出しは99mTc−HMPAOよりは速く、部位によって速さが異なることも指摘されている。特に連続した2回の静注で負荷前後の血流を評価するスプリット・ドーズ・スタディなどでは、洗い出しの影響に注意が必要である。初回循環抽出率は99mTc−HMPAOより低いが、早期逆拡散が99mTc−HMPAOより少なく、しかも血流に依存しないとされている。この結果、高血流域と低血流域とコントラストは123I−IMPより低いが、99mTc−HMPAOよりは高いとされる。
99mTc−ECDの脳内保持は立体特異的脱エステル反応による水溶性への変換によるが、この変換はエステラーゼによって媒介される酵素反応である。99mTc−ECDの変換に関わる酵素は生物種によって、また臓器によって異なり、多様なエステラーゼが関与する。99mTc−ECDとエステラーゼとの反応は特異性が低いと考えられ、脳内保持機構は特定の酵素に強く依存するものではないことが推察される。通常のpHの変動では反応速度はあまり変わらず、また、未標識のECDによる拮抗障害もほとんどない。これらの特性は、99mTc−ECDの脳集積が酵素反応速度に影響されて血流分布から乖離する危険性を減らしていると考えられる。ただし、酵素活性には脳内で局在性があり、これが集積効率の局在性を生む可能性がある。99mTc−ECD SPECTでは、後頭葉内側皮質における集積が高くなるが、これは酵素活性と関連するのかもしれない。
亜急性期脳梗塞では、血流が増加していても99mTc−ECDの集積は低下する。これは、エステラーゼ活性の低下、または傷害された血液脳関門からの水溶性産物の流出によることが考えられる。亜急性期梗塞における99mTc−ECD集積は血流の集積というより、組織障害の指標になっているとされる。脳腫瘍も集積低下域として描出されることが多い。この現象には、亜急性期梗塞の場合と同様に原因のほかに、細胞膜上のエステラーゼ活性が亢進して、膜酵素による水溶性への変換が細胞内への有効な入力を低下させるといった機序が関与しているかもしれない。
以上、脳血流シンチグラム製剤の集積機序について概説した。脳血流SPECTは脳血流分布そのものではなく、トレーサの集積をSPECT装置で評価して得られた画像である。脳血流分布とSPECT像の間にはトレーサの集積機序とSPECT装置の特性という2つのフィルターが存在し、これらのフィルターによって両者が乖離し得ることに留意することが望まれる。


インジウムDTPA(111In)
ジエチレントリアミン5酢酸インジウム
脳脊髄液腔病変診断薬
インジウムDTPAは、ジトリアミン5酢酸(DTPA)をインジウム−111で標識した脳槽・脳室シンチグラフィ用の放射性医薬品である。
In−DTPAを脳脊髄腔内に(腰椎穿刺)投与後、脳脊髄液とその挙動を共にするため、脳脊髄液動態を視覚的に把握でき、脳脊髄液腔病変、特に正常圧水頭症及び各種水頭症、クモ膜下腔ブロック、脊髄漏等の診断に有用である。
脳脊髄液は、その大部分が脳室系の脈絡叢から絶えず分泌され、脳室内を循環した後、Magendie(マジャンディ)孔及びLuschka(ルシュカ)孔より流出してクモ膜絨毛から吸収され、脳静脈洞に還流する。脳脊髄液と生理的に類似した111In−DTPAを用いることにより、脳脊髄液の動態、脊髄くも膜下腔の形態を経時的に観察することができる。
脳脊髄液と生理的に類似した111In−DTPAをくも膜下腔に注入すると、生理的な脳脊髄液の流れに従って循環し吸収される。腰椎穿刺により脊髄液腔内に投与された111In−DTPAは、5時間及び12時間の2相性の半減期で脳槽に移行する。一部は脊髄腔で吸収される。(初期血中出現)。脳槽に移行した111In−DTPAは髄液流に従い脳槽を上行し、上矢状洞から吸収され半減期26時間で静脈相に移行する。
血中濃度は投与後3時間で最高値を示す。以後6時間までは半減期2時間の急速な消失を示し、その後半減期15時間で緩やかに消失し腎(糸球体)を経て尿中に排泄される。
啓示的な全身シンチグラフィにより、脊髄腔から脳槽、血中を経て膀胱への111In−DTPAの移行は明らかであり、又それ以外に111In−DTPAの集積は認めない。

「吸収線量」
脊髄索 30mGy/37MBq
脳 41
卵巣 0.8
睾丸 0.6
腎臓 1.2
骨髄 1.5
全身 1.5

111In
物理的半減期:2.805日
主ガンマ線エネルギー;171kev(90%)
           245kev(94%)

使用上の注意として、頭蓋内圧が著明な亢進を示しており、乳頭浮腫が認められる患者や、後頭蓋窩の腫瘍が疑われる患者(乳頭浮腫の有無にかかわらず)には脳ヘルニアを起こすおそれがあるので投与しないこと。その他、感染症を有する患者、穿刺部位に湿疹・かぶれ・床ずれなどを有する患者及び極度に細菌感染抵抗性の低下していると思われる患者には、慎重に投与すること。
まれに髄膜刺激症状(発熱・頭痛・嘔吐・項部硬直など)があらわれることがある。


ヨードカプセル−123
甲状腺疾患診断薬
ヨードカプセル−123Iは、ヨウ素123をヨウ化ナトリウムの形で含む甲状腺疾患診断を目的とする放射性医薬品である。
ヨウ素は甲状腺に特異的に摂取され、甲状腺ホウルモンの合成に利用されます。ヨウ素のこのような特性を利用した123I−カプセルの経口投与によって得られる甲状腺シンチグラムは、甲状腺の大きさ、形態変化及び123I−カプセルの分布状態等をとらえるのに有効である。また、ヨウ素の甲状腺摂取率の定量による甲状腺機能の検査にも用いられる。
本品中の123I−カプセルは、159kevのガンマ線を放出するためシンチグラムを描くのに適しており、又半減期が(13.3時間)が短くベータ線を放出しないため被験者の被ばくが従来用いられているヨウ化ナトリウム(131I)と比較して極めて小さいという利点を有している。
ヨウ素は消化管より吸収され、血中に移行する。血中へ入ったIイオン(iodide ion)は、甲状腺の上皮細胞によって血中から能動的に取り込まれる。甲状腺はIイオンを有機化し、T3及びT4に合成する。T3及びT4は濾胞腔にcolloidとして貯えられ、上皮細胞のpinocytosisにより再び細胞内に取り込まれ加水分解を受けた後、分泌される。
放射性ヨウ素は上記と同じ挙動を示すため、123I−カプセルによる甲状腺摂取率は甲状腺の機能状態の診断に、また、甲状腺シンチグラフィは甲状腺の形態等甲状腺疾患の診断における良い指標と考えられる。
123I−カプセルの胃部分布率は、溶解吸収の様相を示すものと考えられるが、3時間までに急速に減少し以後は緩やかに減少した。胃部分布率の低下に対して血中濃度は3時間までは上昇の傾向を示したが、以後は緩やかに減少した。また、経口投与後6時間で甲状腺に平均して約13%取り込まれ、以後24時間まで緩やかな上昇曲線を描いた。
検査前1〜2週間は、ヨウ素を含む食物やヨウ素甲状腺摂取率に影響する薬剤(造影剤等)を摂らせないようにする。
甲状腺摂取率の測定には、通常、成人に3.7MBqを経口投与し、3〜24時間後に1〜3回シンチレーションカウンターで計数する。
甲状腺シンチグラフィは、通常、成人に3.7〜7.4MBqを経口投与し、3〜24時間後に1〜2回シンチレーションカメラ又はシンチレーションスキャナーで撮影又は走査することにより甲状腺シンチグラムを撮る。

通常、成人には74〜148MBqを静脈内投与する。投与後15〜30分より被検部に検出器を向け、撮像もしくはデータ収集を行いシンチグラムを得る。

甲状腺摂取率検査を指標とする負荷試験
 過塩素酸塩またはロダンカリ放出試験
 先天性甲状腺機能低下症、橋本病などでヨードの有機化障害が存在するか否かを検査するのに用いられる。放射性ヨードを投与して2時間後に甲状腺摂取率の測定を行う。その後にただちに過塩素酸塩(perchlorate,KClO4,またはNaClO4)またはロダンカリ(KSCN)1gを経口投与し、30分及び60分後に摂取率の測定を行ってその変動を観察する。ClO4-,SCN-イオンはヨードよりも甲状腺への親和性が大であり、甲状腺に摂取されて無機ヨードプールを占拠し、有機化されていないヨードを放出させるとともに、最集積を阻害する。したがってヨードの有機化に障害の存在する場合には甲状腺部のカウントが急速に減少する。2時間後の摂取率の10%以上が放出されたとき、陽性と判定する。軽度の有機化障害の判定にはヨード・パークロレイト試験が行われる。放射性ヨードとともに0.5mgのKIを投与し、3時間後に摂取率を測定した後パークロレイト1gを投与する。正常では60分後の摂取率の低下は3時間値の15〜20%以下であり、20%を越えるものを陽性とする。この方法によれば橋本病のほとんどの例で 有機ヨード放出が認められ、有機化障害の存在が検出される。
 トリヨードサイロニン抑制試験。
 トリヨードサイロニン(T3)を経口投与して下垂体よりのTSH分泌を抑制することにより、甲状腺摂取率が低下するかどうか、すなわち摂取率がTSH依存性であるか否かを判定する検査で、バセドウ病の診断確率と治癒判定に有用である。
 普通に摂取率検査を行った後、T3を25?gを1日3回、1週間にわたって継続投与し、再び摂取率の検査を行う。通常T3の投与後の摂取率が1/2以下になれば、T3抑制試験は陽性と判定される。バセドウ病では甲状腺がTSH以外の刺激物質(thyroid stimulatingantibody:TSAb)で刺激された状態であるため、T3を投与しても摂取率が低下しない。このほかプランマー病など機能性線種の腫瘍部は自立性を有しており抑制が見られない。血中のTSAb活性とT3非抑制性とはよく相関し、抗甲状腺剤療法中のバセドウ病における治療中止時期の決定には、この試験の陽性化が最良の指標とされている。ただし抗甲状腺剤投与中の患者ではヨード有機化が阻害されているため、摂取率24時間値が低下するので、早期(3時間または静注後20〜30分)摂取率を用いるべきであり、99mTcO4−摂取率は、この目的に適している。なおこの試験ではT3を負荷するので、心疾患のある患者では注意を要する。

「吸収線量」
  123I     131I

甲状腺     13.0   1300mGy/3.7MBq
胃壁       0.21     1.4
肝臓       0.027    0.48
卵巣       0.031    0.14
睾丸       0.012    0.09
赤色骨髄    0.030    0.26
全身       0.029    0.71
* ただし、本吸収線量計算においては、甲状腺摂取率を25%とかていした。また、121Teの含有率規格は0.3%であるが、実際含有率は更に低いため、123Iを100%として算出した。


131I−Capsules(カプセル)
甲状腺機能亢進症の治療
甲状腺ガン及び転移巣の治療
シンチグラムによる甲状腺ガン転移巣の発見
甲状腺疾患に対するラジオアイソトープ(RI)の利用は、1934年Fermiの放射性ヨウ素の発見以来、1938年にはHertzら、続いてHamiltonらの甲状腺疾患の診断の研究により始められた。最初は130Iが主として用いられていたが、1946年米国原子力委員会から131Iの商業的供給が可能になって初めて131Iによる甲状腺疾患への臨床研究が広く行われるようになった。本法でも1952年より入手可能になったが、が初めは少量であったために臨床的にはトレーサーとして診断に用いられ、次第に増量されるようになってから治療にも利用されるようになってきた。
131Iは経口投与されると選択的に甲状腺に集まり、その残りの131Iは速やかに腎より排泄される。したがって他器官、他組織への被ばくは軽微である。
薬物動態
ヨウ化ナトリウム(131I)が体内に取り込まれると、甲状腺ホルモンであるチロキシンやトリヨードチロニン合成のために131Iは甲状腺に蓄積される。正常の甲状腺は24時間後20〜30%を摂取し、残部は尿中に排泄される。甲状腺機能亢進症(バセドウ病、甲状腺腫)では正常者に比べて摂取率が高く30%以上70%程度に達する。反対に甲状腺機能低下症(粘液水腫)では摂取率は15%以下である。
バセドー病の治療
投与量は(1)甲状腺131I摂取率、(2)推定甲状腺重量、(3)有効半減期等をもとにして、適切な量(期待照射量30〜70Gy)を算定し、経口投与する。
中毒性結節性甲状腺腫の治療
結節の大きさ、機能の程度、症状等により適切な量を経口投与する。
甲状腺ガン及び転移巣の治療
本品を1回あたり1.11〜7.4GBq経口投与する。一定の期間後症状等を観察し、適宣再投与する。
甲状腺転移巣のシンチグラム
本品18.5〜370MBqを経口投与し、一定時間後に甲状腺転移巣のシンチグラムを得る。
甲状腺放射性ヨウ素摂取率の測定
0.185〜1.85MBqを経口投与し、一定時間(24時間)後に甲状腺部の放射能を測定する。
注意、副作用等
治療後、甲状腺機能低下症があらわれることが多いので、その旨を患者に説明しておくことが望ましい。
重傷の甲状腺機能亢進症患者では、一過性の臨床症状の悪化、クリーゼの誘発等があらわれることがあるので、本品投与の前又は後に抗甲状腺剤治療を行うこと。
急性症状として、白血球減少、ヘモグロビン減少、血小板減少等の血液異常があらわれることがある。
前処置
ヨウ素含有量の多い薬剤(ヨード造影剤、ルゴール液、ヨードチンキ等)及び飲食物(コンブ、ワカメ等)、甲状腺ホルモン、抗甲状腺剤は、治療あるいは検査に影響を与えるので、本品投与前後の3日〜1週間は禁止すること。
晩発性副作用
甲状腺ガン、白血病、遺伝因子に対する影響が考えられるが、白血病、遺伝因子については現在のところ統計学的に有意な報告はみられない。しかし、甲状腺ガンについては若年者に対する131I甲状腺治療は成人に対してより甲状腺ガン発生の可能性が高いことが指摘されている。
動物における体内分布及び排泄
ラットにNa131I3.7MBq/0.5MLをエーテル麻酔下で尾静脈より投与し、経時的にγ線計測を行った結果は次の通りである。
全計測では放射能は投与後2日までに急速に消失し、3週間後に99%が消失した。
甲状腺摂取率は投与1日後32%で最も多く、その後4日までの間に速やかに131Iを放出し、それ以後は有効半減期約4.5日で指数関数的に減少した。
血中131I濃度は投与後1日目までに急速に減少し、1日目から4日目の間比較的ゆるやかに減少し、それ以後は有効半減期4.5日で指数関数的に減少した。
有機ヨウ素は肝で代謝されるが、無機ヨウ素は腎より尿中に排泄される。

「吸収線量」 mGy/37MBq
全身 11.5
肝臓 22.1
血液 17.2
骨髄 11.4
生殖腺 10.7

131Iの核物理学的特性
物理的半減期 8.04日
主なγ線エネルギー 364kev(81%)
主なβ線エネルギー 606kev(89%)
β線組織内飛程 2mm


99mTc−MAA
テクネチウム大凝集人血清アルブミン
:肺血流分布異常部位診断薬
99mTc−MAAに標識された大凝集人血清アルブミンが右心内で血流と完全に混合された後、肺の毛細血管床に一時的に補足されるので、一過性の微小塞栓を生じ、肺の局所血流に応じた肺のシンチグラムを得ることができる。
右心側から左心側への血管シャントのあるチアノーゼを呈する患者には投与しないこと。
肺血流に高度の抵抗があるもの(肺高血圧症、抗原病等)
沈殿したアルブミンを攪拌してから静注すること。
滞留したアルブミンは微小化され投与後24時間までに投与量の約26%が尿中に排泄される。
糞便中への排泄は0.6±0.5%にすぎない。
生物学的半減期は16.1時間で有効半減期は4.4時間である。
大凝集アルブミンの量は1mlあたり0.9mg。
その粒子数は1mlあたり30〜60万個
粒度分布は10〜60μmの粒子が90%以上、100μm以上の粒子は含まない。
ヒトの正常肺には300〜500μm径の筋性小動脈が10万〜20万個あり、その各々が50〜300μm径の小動脈を100個、10〜50μm径の小動脈を2000個、10μm径以下の毛細血管を20万含むという。
99mTc−MAAを2ml投与した場合、その中に含まれる粒子数は60万から120万個であり、これらがすべて1個ずつ肺の毛細血管を閉塞すると仮定しても、ヒトの正常肺の毛細血管床の150〜600分の1しか閉塞せず、肺血行動態の阻害は起こらない。
大凝集アルブミンの抗原性も問題にならないとされている。

「吸収線量」
肺        3.00mGy/37MBq
肝臓       0.43
脾臓       0.35
腎臓       1.10
胃壁       0.23
小腸壁     0.17
大腸上部壁  0.21
大腸下部壁  0.17
赤色骨髄    0.22
卵巣       0.1
睾丸       0.05
全身       0.19



キセノン133Xeガス
局所肺換気機能の検査、局所脳血流の検査
放射性キセノン吸入法は、苦痛を与えず生理的状態で局所肺機能を測定する方法として、1955年Knippingらにより肺機能検査に導入されて以来、それまでの繁雑で局所的な肺機能を知り得ないという欠点を有していた諸種の肺機能検査に変わり、現在広く使用されている。
一方、放射性キセノンが血流を介して血液脳関門を通過する性質を利用して1961年Lassen,Ingvarにより、133Xe内頸動脈注入法による局所脳血液循環測定法が開発された。しかし、侵襲的で手技も複雑であるため広く普及されるには至らなかった。その後、1963年Mallett,Veallにより133Xe吸入法が報告され、続いての1967年Orbist,1975年Risbergによる改良並びに測定装置の開発により、133Xe局所脳血流量の測定は現在広く行われるようになっている。
1.局所肺機能の検査
本品から分取したキセノンガス133Xeを、キセノン133Xe吸入用ガス専用吸入器具に注入し、その用法及び用量に従って使用する。ただし、一人1回370MBq投与とする。
 1) 一回吸入検査
 (a) キセノン133ガスを希釈しない方法
    患者にできるだけ大きく呼出させて呼吸停止させ、キセノン133ガスを放出する。直ちに一回深吸入させて呼吸停止させ、肺シンチグラムを撮る。
(b) キセノン133ガスを希釈しない方法
    患者にできるだけ大きく呼出させて呼吸停止させ、キセノン133ガスを放出すると同時にできるだけ大きく呼出させてキセノン133ガスを呼気で希釈する。引き続き一回深吸入させて呼吸停止させ、肺シンチグラムを撮る。
2) 再呼吸検査
必要により、一回吸入検査に引き続いてキセノン133ガスの呼出、吸入を反復させ、肺内のガス濃度が一定になった後深吸入させて呼吸停止させ、肺シンチグラムを撮る。
3) 洗い出し検査
一回吸入検査又は再呼吸検査に引き続いて室内の空気を導入吸気させ、肺内のキセノン133ガスが洗い出される家庭の啓示的な肺シンチグラムを撮る。
1. 局所脳血流の検査
  本品から分取したキセノン133ガスをRI局所脳循環血流測定装置に注入し、その方法及び用量に従って使用する。
 呼吸マスクを通じて、キセノン133ガス111MBq/Lの混合した空気を1分間約555〜740MBq呼吸させる。
   その後通常の空気に切り換え、10分間、脳血流よりキセノン133が洗い出されるクリアランス曲線を、頭部両側に設置した複数のシンチレーションプローブにより記録計に描記する。このクリアランス曲線から局所における脳組織血流量を、接続したコンピュータによりプログラミングによって算出する。
  プログラミングの種類にはイニシャルスロープ法、ハイトオーバーエリア法、2コンパートメント法などがある。
体内薬物動態
133Xeを含んだ空気を吸入すると、133Xeは血液−空気分配係数に応じて肺より血中に移行する。血中に移行した133Xeは組織−血液分配係数及び各組織の血流に応じて全身に取り込まれる。10分間の反復呼吸では、吸入に用いた量の約1/3が全身に取り込まれ、副腎に最も多く分布し、肝臓・脾臓ではその2/3,心臓・甲状腺では1/2,脳・腎周囲脂肪では1/3程度である。133Xeを含んだ空気の吸入を中止すると、取り込みとは逆の経路を通り、体内で変化することなく肺より排泄される。各組織から血中に移行した133Xeは、血液の一回の肺循環で90から95%が呼気中に排泄される。その排泄パターンは、22秒から17時間の生物学的半減期を有する5つの成分からなり、最も長い生物学的半減期を有する成分は、キセノンの脂質溶解特性により脂肪組織に取り込まれたものであり、全身に取り込まれた量の約13%に相当する。
毒性
キセノンの空気中の天然存在比は9E×10**−6vol%で、化学量的には空気1L中に約0.53μgのキセノン(原子量:131.3)が存在することになる。
133Xeを用いた局所肺換気機能検査及び局所脳血流検査での133Xeガスの投与量は、前者で370MBq、後者で約555〜740MBqであり濃度に直すと約111MBq/Lである。
投与量の多い局所脳血流検査でも投与される111MBqの133Xeの化学量は約0.016μgになり、投与される空気1Lに含まれるキセノンの総和量は約0.55μg(9.3E**−6vol%)と133Xeを空気1Lに加えても含まれるキセノンの量は若干増加するだけであり、非放射性キセノンを用いた検査に用いられるキセノンの量に比べはるかに微量である。
従ってこの程度の量による人体への影響(麻酔作用を含めた)はないと考えられる。
一般薬理
キセノンガスの吸入による生体への作用は、キセノンの溶解特性及びエチレンとの類似性に基づく麻酔作用が知られている。
空気中のキセノン濃度と麻酔作用の程度の関係は以下の通りである。
キセノン濃度 作用
25〜50% 無痛覚(鎮痛)
50〜75% 無感覚
75% 麻酔深度1
80% 麻酔深度2以上

吸収線量 mGy/37MBq
スピロメーター容積 5L 7L 10L
肺 0.110 0.082 0.065
赤色骨髄 0.015 0.012 0.009
卵巣 0.013 0.010 0.008
睾丸 0.012 0.009 0.007
全身 0.014 0.011 0.009

133Xeの核物理学的特性
物理的半減期 5.24日
主なγ線エネルギー 81.0kev(38%)



クリプトン(81Rb−81mKr)ジェネレータ
局所肺換気機能・肺血流・局所脳血流診断薬
クリプトン(81mKr)ジェネレータは、用時、使用目的に応じて吸入用ガス又は注射液の形でクリプトン(81mKr)を溶出し、検査に使用することを目的とする診断用放射性医薬品である。
加湿した酸素又は空気で溶出したクリプトン吸入ガスを吸入させた場合、肺換気シンチグラフィを撮ることができる。
5%ブドウ糖注射液等の非電解質液で溶出したクリプトン注射液を静脈内に投与した場合、肺血流シンチグラフィを撮ることができる。
5%ブドウ糖注射液等の非電解質液で溶出したクリプトン注射液を頸動脈内に投与した場合、局所脳血流シンチグラフィを撮る。
クリプトン(81mKr)は、半減期(13秒)が極めて短いため持続投与が可能であり、多方向検査、負荷検査ができ、全体の検査時間を短縮できる。加えて半減期が極めて短いことにより被検者の被ばく線量が小さく、医師等の被ばく及び検査室、環境の汚染が少ないという特徴を持っている。
肺血流検査において、静注された81mKrは右心系で混和された後、肺動脈血流にのって肺胞壁毛細管に分布し、その大部分が肺胞内に移行するため、肺の各部分に分布する81mKrの量はその大部分への肺動脈血流に比例し、また、この部分からの81mKrガスの消失速度はその換気状態に比例する。一方、81mKrガスを吸入させても血中にほとんど移行しないため、局所の81mKrガスの量はその部分の呼吸状態を反映する。
血中の81mKr濃度は、投与開始後速やかに上昇し、吸入の場合約15秒、静注の場合約24秒で最高値に達する。投与継続中、この水準を維持する。投与中止後は初期半減期約9秒(最高値から5〜10秒の5秒間より算出)、後期半減期約13秒(最高値から20〜30秒の10秒より算出)の2相性を描いて減少する。
後期半減期と物理的半減期がほぼ一致することにより、血中の81mKrが初期段階でほとんど消失し、以後は脂肪、筋肉等の組織に取り込まれた81mKrが減衰することが推察される。

肺血流シンチグラム
持続静注法−0.3〜3ml/秒の流速でクリプトン注射液を溶出しつつ患者の肘静脈より必要な時間投与し、肺血流シンチグラムを撮る。
ボーラス静注法−5〜10mlの溶出剤を急速に加圧導入して溶出するクリプトン注射液を患者の肘静脈より投与し、肺血流シンチグラムを撮る。
肺換気シンチグラム
持続吸入法−0.3〜3L/分の流速でクリプトン吸入用ガスを溶出しつつ患者に必要な時間吸入させ、肺換気シンチグラムを撮る。
ボーラス吸入法−10〜20mlの溶出剤を急速に加圧導入して溶出するクリプトン吸入用ガスを患者に吸入させ、肺換気シンチグラムを撮る。
脳血流検査において、一定濃度の81mKrを頸動脈内に持続注入すると81mKrは脳血流関門を通過して末梢脳組織に達し、局所脳血流量にほぼ比例して分布する。
頸動脈内に投与された81mKrは直ちに脳に移行し、投与開始後約2分で脳内放射能は平衡に達する。投与継続中この水準を維持し、投与中止後は半減期約13秒で速やかに減少する。このことは、81mKrの物理的半減期に比し、脳からの血流による81mKrの洗い出しが無視し得ることを示している。ゆえに、平衡時における脳局所の81mKr放射能がその部位における血流量の指標となり得ることが示唆される。

脳血流検査
7.5〜15ml/分の流速でクリプトン注射液を溶出しつつ患者の頸動脈より投与し、脳血流シンチグラムを撮る。

「吸収線量」
 肺血流シンチグラム
30秒間持続静注法 ボーラス静注法
肺 16.9 4.6   μGy/37MBq
肝臓  0.27 0.08
腎臓  0.10 0.03
睾丸  0.006 0.002
卵巣  0.02 0.005
全身  0.04 0.01

 肺換気シンチグラム
30秒間持続静注法 ボーラス静注法
肺 17.0 4.9   μGy/37MBq
肝臓  0.27 0.08
腎臓  0.10 0.03
睾丸  0.003 0.0009
卵巣  0.02 0.005
全身  0.04 0.01

脳血流検査
一分間持続頸動脈注入法
脳 25.0    μGy/37MBq
心臓  3.3
肺  0.72
甲状腺  0.44
睾丸  0.0005
卵巣  0.0014
全身  0.80

クリプトン81mKr
物理的半減期:13秒
主ガンマ線エネルギー:190kev(67%)

取り扱い場の注意
1. クリプトン(81mKr)注射液を初めて溶出する場合は、5〜10mlの予備溶出を行うこと。
2. クリプトン(81mKr)吸入用ガスを溶出したジェネレータはクリプトン(81mKr)注射液の溶出には用いないこと。(注射液の細菌汚染防止)
3. クリプトン(81mKr)注射液を溶出する場合は5w/v%ブドウ糖注射液等の非電解質注射液を用いること(81Rbの遊離防止)
生理食塩水等の電解質注射液を用いると81Rbがカラムより遊離し溶出するので用いない。
4. クリプトン(81mKr)吸入用ガスを溶出する場合は湿気を含ませた酸素又は空気を導入すること(カラムの乾燥による溶出率低下の防止)
乾燥した酸素又は空気を導入するとカラムが乾燥し、クリプトン(81mKr)吸入用ガスの溶出率が極度に低下する。
なお、先にブドウ糖注射液等を溶出液として用いた場合には必ず20〜30mlの注射用水で予備洗浄を行い、次いで湿気を含ませた酸素又は空気を導入して、カラムの湿潤状態を一定にした後、検査を施行すること。


99mTc−HSA−D
人血清アルブミンジエチレントシアミン五酢酸テクネチウム
:血行動態及び血管性病変診断薬
テクネチウム-99mに対して強い配位能力を有するジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)を介して人血清アルブミンを標識している。
生体内でも非常に安定で, 血中保持率も高い。
RIアンギオグラフィ及び血液プールシンチグラフィによる各種臓器・部位の血行動態及び血管性病変の診断に用いる。
成人に740MBq静注し、投与直後から連続画像(RIアンギオグラム)を得る。終了後、検出部の各方向から平衡時画像(血液プールシンチグラム)を得る。いずれも必要に応じデータ処理装置を用いデータ収集及び処理を行う。
必要に応じ、同時に血液を採取することにより循環血漿あるいは血液量の測定を追加することも可能である。
正常人に静脈内投与したとき、投与後血中から2相性を示しながら緩徐に消失しする。
初期相(投与後1時間から3時間)の半減期は10時間。
後期相(投与後6時間〜24時間)の半減期は26時間。
血中保持率は投与後10分を100%としたとき、投与後30分で97%、1時間で94%と高率である。
尿中への排泄率は投与後24時間で34%である。
シンチグラフィによる検討では心臓、肝臓、腎臓、頭部の順で高い。

「吸収線量」
脳 0.04mGy/37MBq
心臓 0.64
肺 0.17
肝臓 0.57
脾臓 0.45
腎臓 0.48
膀胱 0.57
睾丸 0.11
卵巣 0.16
全身 0.15


テクネアルブミンキット(HSA)
テクネチウム人血清アルブミン(99mTc)注射液調整用
RIアンギオカルギオグラム及び心プールシンチグラムによる心疾患の診断
心臓大血管のRIimaging agentsとして、1958年Rejaliらが初めて血液プールスキャンに成功して以来、ヨウ化人血清アルブミン(131I)が長い間使用されてきた。また1965年Angerらは、Harperらが初めて臨床応用した99mTcO4−をシンチカメラやコンピューターと組み合わせて心大血管の血流動態のdynamic Imageに成功している。その間、1964年McAfeeらによってテクネチウム人血清アルブミン(99mTc)が開発され、ヨウ化人血清アルブミン(131I)に比し被ばくが少なく、それ故大量投与が可能で、良質のシンチグラムが得られるようになった。また,99mTcO4−に比し血液中から組織液、貯留液中への移行が少なく、シンチグラムの分解能も向上した。しかし、これまでのテクネチウム人血清アルブミン(99mTc)は調整方法が複雑であり、術者に対する被ばくが多く、放射能濃度が低いなどの理由から、1971年EckelmanらはSnClを還元剤として用いて人血清アルブミンに99mTcを標識する方法を開発した。本キットはEckelmanらの方法を基にキットしたもので,99mTcO4を加え、バイアル中の薬剤と混和振盪する一回の操作のみで、安定なテクネチウム人血清アルブミン(99mTc)注射液が高い標識率で調製される。
RIアンギオカルギオグラム及び心プールシンチグラフィー
冷蔵庫からHSAを取り出し、約5分間放置して室温に戻す。99mTcO4を1〜9mlをHSAに加える。よく振盪して内容物を溶解した後、室温で5分間放置することにより、テクネチウム人血清アルブミン(99mTc)注射液が調製される。
これによって得られた注射液370〜740MBqを肘静脈より急速注入し、ディテクターを患者の胸部に指向させたシンチカメラを用いて、注入直後から撮影を始めることにより,RIアンギオカルジオグラムを得、またRIアンギオカルジオグラフィー終了後に撮影することにより心プールシンチグラムを得る。
また、同じく上記によって得られたテクネチウム人血清アルブミン(99mTc)注射液185〜370MBqを静注し、ディテクターを患者の胸部に指向させたシンチカメラ及びシンチスキャナーを用いて、注入数分後に撮影することにより心プールシンチグラムを得る。
体内薬物動態
テクネチウム人血清アルブミン(99mTc)注射液は静注した場合、人血清アルブミンとほぼ同じ挙動を示す。静注後7分までは循環血液によって次第に希釈されその後平衡に達すると考えられる。又、分子量が大きく血管外への漏出が少ないため、組織液や貯留液への移行は少なく、1時間程度は安定した血液プールを示す。しかし長時間となると貯留液中に滲出することもある。心プールシンチグラフィの場合、心外膜貯留等があると、この部分には血液が入らず、貯留液によるγ線の吸収により、放射能を欠くいわゆるHaloを示す。また、粘液腫、血栓、悪性腫瘍転移等では心プール内に欠損像を示す。
動物における体内分布及び排泄
テクテチウム人血清アルブミン(99mTc)注射液0.2mlをラットの尾静脈より投与すると、血中では投与直後より時間の経過に従い減少する傾向が見られたが、投与後1時間でも70%以上の集積がみられた。しかし投与後10時間では1〜2%にまで減少した。腎臓・肝臓へは投与後1時間で数%の集積を示し、以後減少した。脾臓・肺へは投与後3時間以内で0.1%以下の少なく、以後減少した。性腺への集積は、睾丸において投与後3時間目まで増加したが0.3%と少なく、以後減少した。卵巣へは極めて分布が少なかった。
尿・糞便中には、投与後3時間で60%、8時間で90%が排泄された。

「吸収線量」 mGy/37MBq
全身 0.07
肺 0.06
肝臓 0.12
脾臓 0.11
腎臓 0.52
性腺 0.21

テクネピロリン酸 99mTc−PYP
心シンチグラムによる心疾患の診断
骨シンチグラムによる骨疾患の診断
心シンチグラフィ
近年、心疾患ことに虚血性心疾患が成人病で重要な位置に占めるにしたがい、ラジオアイソトープによる心・血管系の診断法が注目されてきている。その診断法であるRIアンギオカルジオグラフィや心プールシンチグラフィにはテクネチウム人血清アルブミンが用いられてきたが、テクネチウム人血清アルブミンは時間経過とともに血管外に漏出する欠点を有しているため、血管外に溶出しない標識製剤の開発が望まれていた。1971年EckelmanらはSnClを用いてin vitroで赤血球に99mTcを標識させる方法を発表し、次いで1974年BardyらがStannous Pyrophosphate(Sn−ピロリン酸)を用いてin vitoroで99mTcと赤血球を結合させることに成功した。一方1975年Chandlerらは、99mTc−ピロリン酸による骨シンチグラフィの後に99mTcO4による脳シンチグラフィを行うと。赤血球のアクティビティが増加すると報告したが、それをもとにPavelらがSn−ピロリン酸を用いてin vivoで99mTcと赤血球を結合させることに成功した。国内でも、宮前ら、朝倉らにより検討され、現在では安定性が高く血管外への漏出が少ない優れたシンチグラム剤として確立されている。
99mTcと赤血球が体内で結合する原理やその機序、結合部位などについては、なお不明な点があるとされているが、本法はSn−ピロリン酸溶液を静注し、赤血球表面に99mTcとの結合を可能とする準備状態を作らせ、その後99mTcO4を投与し、体内で赤血球と99mTcを結合させる方法である。また、このときHamiltonらも発表しているようにSnClの量が重要であり、10マイクロg/kg以上、朝倉らの成績でも30マイクロg/kgで良い成績が得られているとされている。SnClの働きは7価の99mTcを4価に還元しピロリン酸ナトリウム存在のもとに赤血球のβ鎖ヘモグロビン分画に不可逆的結合を容易ならしめると考えられている。そして、SnClを単独で用いたときよりもSn−ピロリン酸を用いたほうが標識率が高く、また赤血球よりの99mTcの遊離が少ないことから、Snイオンの存在様式はピロリン酸を伴ったほうが安定すると考えられる。

骨シンチグラフィ
骨のRIimaging agentsとして1961年Flemingらが85Srを、1962年Blauらが18Fを、また1964年Charkesらが87mSrを用いた骨シンチグラフィを報告しているが、各々種々の要因によって一長一短があった。1972年Subramanianらが骨の新しいRI imaging agentとして99mTc−tripoly-phosphateを骨スキャニングに応用して以来、種々のリン酸化合物の試みがなされてきたが1972年Perezらによって比較的化学的に安定な物質として99mTc−ピロリン酸が報告された。
99mTc−ピロリン酸は患者への被ばくが少なく、85Srの様に腸管への排泄がなく、入手が容易で、99mTcO4液を加えるだけで簡単に調製できるといった利点を有している。99mTc−ピロリン酸の骨への集積機序については現在なお明確になっていない点もあり、イオン交感による置換説や結合説が提唱されているが定説はない。しかし、アルカリフォスターゼ高値やカルシウム代謝亢進例では高度に骨組織へ集積することが認められており、99mTc−ピロリン酸の骨集積は骨代謝を反映していると考えている。

用法及び用量
心シンチグラフィ
ピロリン酸キットを冷蔵庫から取り出し室温に戻したのち、日局・生理食塩水液2〜4mLを加えよく振盪した後、約半量を被検者に静注し、約30分後に日局・過テクネチウム酸ナトリウム(99mTc)注射液370〜740MBqを静注し、シンチレーションスキャナー又はシンチレーションカメラを用いて静注直後より速やかにディテクターを体外より胸部に向けて撮影することによりRIアンギオカルジオグラムを得、またRIアンギオカルジオグラフィ終了後に撮影することにより、心プールシンチグラムを得る。ファーストパスはRAO30度、GateプールはLAO40で撮像する。
骨シンチグラフィ
ピロリン酸キットを冷蔵庫から取り出し室温に戻したのち、日局・過テクネチウム酸ナトリウム(99mTc)注射液1〜9mLを加えてよく振盪した後、室温に5分間放置する。
調製されたピロリン酸テクネチウム(99mTc)注射液185〜555MBqを被検者に静注し1〜6時間後にシンチレーションスキャナー又はシンチレーションカメラを用いてディテクターを体外より骨診断箇所に向けて走査又は撮影することによりシンチグラムを得る。
使用上の注意
投与時、心シンチグラフィにおいて、99mTc-invivo赤血球標識法施行時、三方活栓の使用など99mTcO4が被検者へ静注する前Sn−ピロリン酸と接触すると、標識率の低下や腎への集積を認めることがある。
撮像前、骨シンチグラフィにおいて、99mTc−ピロリン酸は静注後速やかに尿中へ排泄されるため、多量の水分摂取や頻回排尿はシンチグラムに好結果をもたらすばかりではなく、膀胱への被ばくの軽減につながる。
調整後は6時間以内に投与すること。
体内薬物動態
心シンチグラフィ
Sn-ピロリン酸は赤血球鏡面に99mTcとの結合を可能とする準備状態を作り、その後99mTcO4を投与すると、30分後には標識率は96%になり5時間経過しても標識率は低下せずかえって上昇する傾向が認められる。
99mTcの尿中への排泄は3時間後までで投与量の10%であり、その大部分は初期に排泄される。
骨シンチグラフィ
99mTc-ピロリン酸の集積は静注後正常部で3時間後に、また病変骨部で4時間前後にピークを示し、病変骨部に比して緩やかに減少する。また正常骨部に対する病変骨部の集積比は1.1〜23.1の範囲である。
動物における体内分布及び排泄
心シンチグラフィ
99mTc-invivo赤血球標識法によるラット体内分布試験では、投与1時間後まで99mTcの90%以上が血中に存在する。肝臓への分布は投与後30分後で約7%以上に達し以後減少する傾向がある。腎への分布は時間と共に増加し投与24時間後で8%である。また尿中には投与後24時間後で約30%が排泄される。
一方ラット体内における赤血球標識率は投与24時間まで97%以上である。
骨シンチグラフィ
ピロリン酸テクネチウム(99mTc)注射液をラットに投与すると、初め血液、肝臓、腎臓に集積が見られるが消失は極めて速やかで、24時間後にはほとんど検出されない。頸骨への集積は初め投与総放射能の約1%と低いが8時間後まで徐々に増加し、その後漸減する。臓器単位重量当たりの集積率は、腎臓、脛骨が他臓器に比べて著しく高い。また体外への排泄は非常に速やかで投与24時間後には約80%が排泄される。

吸収線量 mGy/37MBq
   心シンチグラフィ   骨シンチグラフィ
全身  0.12         0.15
肺    0.15         0.12
肝臓  0.22         0.21
脾臓  0.09         1.22
腎臓  1.16         1.40
睾丸  0.27         0.59
卵巣  0.16         0.38
骨                 0.15


塩化タリウム(201Tl)
心疾患診断薬・副甲状腺疾患診断薬・腫瘍(脳、甲状腺、肺、骨、軟部、縦隔)診断薬

 塩化タリウム(201Tl)は、心疾患並びに腫瘍及び副甲状腺疾患診断薬を目的とする体内投与用放射性診断薬である。
塩化タリウム(201Tl)を静脈内投与すると、局所血流に応じて速やかに心筋ないに分布し心筋シンチグラムが得られる。心筋シンチグラフィは特に心筋梗塞の診断に有用であり、特に負荷心筋シンチグラフィは、負荷心電図に比べ狭心症をより鋭敏にかつ特異的に診断できると言われている。
また、塩化タリウム(201Tl)を静脈内投与により得られる腫瘍シンチグラムは甲状腺、肺、脳、骨・軟部及び縦隔の腫瘍診断において、局所診断のみならず質的診断にも有用である。
更に、副甲状腺疾患の診断では、他の検査法では検出が困難な異所性甲状腺腫も検出できるなど臨床的に極めて有用である。
心筋シンチグラフィ:検査前から検査終了までは禁食とし、74〜111MBqを静脈内投与し、5〜10分後よりシンチグラムを得る。最近はSPECTが主流である。負荷心筋シンチグラフィには静脈投与前に運動負荷(エルゴメーター、トレッドミル)や薬剤負荷(ジピリダモール:商品名ぺルサンチン)を行い、適正負荷直後に静脈内投与してシンチグラムを得る。SPECT撮影をした再構成画像をもとにウォッシュアウトレシオ「Wash out ratio」(洗い出し比率)、Bull's eye、polar map(極座標表示)等を表示する。
腫瘍シンチグラフィ:脳腫瘍では55.5〜111MBq、甲状腺腫瘍、肺腫瘍、骨・軟部腫瘍及び縦隔腫瘍では55,5〜74MBq静脈内に投与し、5〜10分後より撮像する。必要に応じ、投与後3時間に撮像を行う。
副甲状腺シンチグラフィ:74MBqを静脈内に投与し、5〜10分後に撮像する。副甲状腺腫瘍のみを検出する方法として、99mTcO4による甲状腺シンチグラフィとの組み合わせにより甲状腺部分をサブトラクションする方法もある。
Tlは周期律表V−A族に属する金属であるが、一価のイオンの場合には、T−A族に属するKと類似した生体内挙動を示すことが知られている。正常心筋では心筋細胞膜の Na+−K+ATPase系によりK+が心筋細胞内に能動的に取り込まれ心筋内に集積する。この正常心筋内への取り込みは主に局所心筋血流に依存しており、K+では初回冠動脈通過で約70%が取り込まれるとされている。したがって、K+と類似の体内動態を示す201−Tlを静脈内注射すると、全身の筋肉に分布するが、筋活動の活発な心筋に多く分布し、虚血等の障害部位には分布しない。
またTlはCsと同様血流に応じた分布が見られ、腫瘍部では他の組織に比して貯留傾向が大であることから腫瘍像を得ることが可能である。Tlの腫瘍内集積はNa+−K+ATPase系のK+がTlによって置換することによると推測されている。また、Tlの集積の程度は腫瘍への血流分布に大きく左右される。
201−TlClの初期血中クリアランスの半減期は約5分、24時間以降における半減期は4日であった。腎臓においては、5分後まで増加する傾向をとり、10分以降は緩やかに減少する傾向を示した。心臓及び肺においては、本剤投与直後に速い減少を示し、2〜5分後緩やかな減少となった。減少の速度は常に肺が心臓より大きかった。
また、本剤は尿より糞中に多く排泄され、生体内で代謝されなかった。

「吸収線量」
心臓 6.4mGy/37MBq
肝臓 4.7
脾臓 4.5
腎臓 4.0
肺 2.4
卵巣 7.1
全身 1.7

201Tl
物理的半減期;72.9時間
Hg特性エックス線;71−80kev
主ガンマ線エネルギー:135kev(2.6%)
           167kev(10.0%)                              

K+の内向き移動とNa+の外向き移動には電気化学的勾配に反して能動的に輸送される。
 能動:自分から他に働きかける。
 受動:他の働きかけを受ける。
イオンチャンネルにはイオン特異性があり、特定のイオンをよく通過させる。K+はNa+よりも10〜20倍用意に受動チャンネルを透過する。
イオンチャンネル:イオンが透過する細胞膜の穴。
電気化学勾配ではNa+は細胞内に、K+は細胞外に流出し、細胞内外の陽イオン平衡になる傾向にある。しかし、電気化学的勾配に逆らってNa+を能動的に細胞外に輸送する作用(能動作用)が細胞膜に局在すると考え、これをNa+−K+ポンプと呼んだ。このポンプ作用は細胞の物質代謝によって維持され、Na+、K+に依存性のATP分解酵素(Na+−K+依存性ATPase)がNaポンプ機構の中で重要な役割を果たしている。
Na+−K+依存性ATPaseがリン酸化と脱リン酸化を繰り返すごとにその立体構造が変化し、それに伴ってNa+が細胞膜の内表面から外表面へK+が外表面から内表面へ運搬される。
このようにニューロンや筋細胞はたえずエネルギー(ATP)を消費して細胞内に流入し続けるNa+を排出し、流出するK+を細胞内に取り戻している。この働きによって細胞内外のイオン濃度差が一定に保たれ、定常的な静止電位が維持される。
何故Na+とK+なのか?
ATPを消費することの意味?
脱分極:膜電位の減少
膜電位:細胞膜内外の電位差。
I>0:外向き電流。
I<0:内向き電流。
活動電位:脱分極がある一定の臨海値(−30〜50mV)を越えるとき細胞膜は自ら進んで(能動的)膜分極性の電位変化すること。
心筋線維の細胞膜にはCa2+ポンプが存在し、ATPを消費して細胞内のCa2+を細胞外へ排出する。
さらに細胞膜には、細胞外から細胞内へNa+が流入するエネルギーを利用して、細胞内のCa2+を細胞外へ排出する機構が存在する。(Na+−Ca2+変換)


タリウム集積機序の謎
『タリウムの取り込み機序でNa−KポンプによりKと似た動きをするタリウムは、
心筋内に取り込まれると言われているんだが、通常細胞ではKを放出してNaを取り
込み細胞内の平衡を保ち、そのときのエネルギーで心筋は収縮していると思うんだが
、どうしてだろう?』
 上記の質問の答えになるか分かりませんが、この時点で調べましたことを報告します。
・Tlの心筋への取り込まれ機序はNa-K ATPaseポンプにおいて、TlがKに似てい  
 るので、取り込まれていくらしいのですが、そもそもその事が確かなのか、分 からない様です。他説が無くて、Na-K ATPaseポンプ説が主流になっている ということです。
・血中にはNaが多く、細胞内ではKが多く存在しています。Na-K ATPaseポンプではそのバランスを保つためにできるだけ、Kを取込み、Naを放出する様で す。従って、Kと似たTlは細胞内に取り込まれていくらしいのです。
・心筋の収縮は脂肪酸代謝、糖代謝によるエネルギーが使われていて、Na-K ATPaseポンプによるエネルギーは使われていない様です。Na-K ATPaseポンプはどの細胞にでもありますが、それはNaとKの細胞への入出にエネルギーを必要とするもので、心筋を動かすエネルギーを生産することは出来ない様です。
・TlはIVされた後、Kと同じくNa-K ATPaseポンプで心筋に取り込まれると言われています。細胞の活動が活発な場所程、よく取り込まれる様です。甲状腺、腎、心筋、眼筋、平滑筋、運動後の骨格筋等に取り込まれます。それ以外の体内の動向はかなり違う様です。Kは心筋に留まっている時間は短い(正確な時間はわかりませんが、「時間」単位だと思われます。)ですが、TlはIV後、一週間経過してもγカメラで心筋を確認出来る様です。甲状腺や肺に関しては2時間ぐらいでWashoutされます。また、排泄もKは尿排泄が主ですが、  
 Tlは尿に3%程度で、ほとんどが便中に排泄されます。


99mTc−Tetrofosmin
テトロフォスミンテクネチウム
:心疾患診断薬、心機能診断薬
 99mTc−Tetrofosmin(以下TFM)は静注後心筋に迅速に取り込まれた後しばらく保持される。したがって、投与後早期から数時間まで、検査スケジュールに応じた心筋シンチグラフィが可能である。さらに、ファーストパス法による心RIアンギオグラフィや心電図同期イメージングを併用することにより、心機能の診断も可能である。
99mTc−TFMは細胞に入り込むように、脂溶性で、カリウムイオンに似せて、+1価の陽電子を帯びている。そして細胞に入って留まるように、ミトコンドリアと相性を良くしてあります。静注後、速やかに血中より消失して主に心筋、肝臓、肺等に分布した。心筋への取り込みは急速で、投与後5分には投与量の1.2〜1.8%が集積した。
一方、そのクリアランスは緩徐であり、投与後3時間でも1.0〜1.3%が保持されていた。
肝臓及び肺からの消失は急速で、また肺への取り込みはわずかであった。
時間の経過とともに胆道・消化管及び尿路系への取り込みは増加し、投与後48時間までに投与量の約60〜80%が尿及び便中に排泄された。

「吸収線量」
臓器 安静時 運動負荷時
心臓 0.0039 0.0041mGy/MBq
肺 0.0021 0.0023
肝臓 0.0042 0.0032
胆のう 0.0486 0.0332
膵臓 0.0050 0.0050
胃 0.0046 0.0046
小腸 0.0170 0.0121
大腸上部 0.0304 0.0201
大腸下部 0.0222 0.0153
腎臓 0.0125 0.0104
膀胱 0.0193 0.0156
精巣 0.0031 0.0034
骨髄 0.0040 0.0041
全身 0.0037 0.0038



99mTc−MIBI
ヘキサキス(2-メトキシイソブチルイソニトリル)テクネチウム
心筋血流シンチグラフィによる心疾患の診断
初回循環時法による心機能の診断
従来、非侵襲的に心筋の血流状態を評価する核医学検査法としては、塩化タリウム(201TL)注射液(201TlCl)を用いた心筋シンチグラフィが広く臨床応用されてきた。しかし、201Tlから放出X線エネルギーが低いこと、比較的半減期が長いために投与量を押さえる必要がある等、その物理的特性による限界が指摘されている。
一方、テクネチウム(99mTc)は、そのγ線エネルギーがガンマカメラでのイメージングに適しており、また、短半減期であるために核種としては理想的で99mTc標識心筋血流イメージング剤の開発が望まれていた。
1982年,Jonesらによる99mTc―イソニトリル錯体の開発によりその端緒が開かれ、その後種々の錯体が合成された。さらにこれらの錯体は、201Tlと同様に一価の陽イオンになるようにデザインされた脂溶性錯体であり、高い心筋集積性を示したが、それと同時に肺や肝へも高い集積性を示したため臨床応用には至らなかった。
その後、米国DuPont社により開発されたヘキサス(2-メトキシイソブチルイソニトリル)テクネチウム(99mTc−MIBI)は、これら一連のイソニトリル錯体の中から心筋集積に優れ、心/肺比、心/肝比が高い化合物として選択されたものである。
99mTc−MIBIは、冠血流に比例して心筋へ分布し、細胞内に長時間保持されることが確認されており、高い心筋集積性と共に、心筋滞留性にも優れることが示されている。また、99mTc標識製剤の特性を利用した、初回循環時法による心RIアンギオグラフィや心電図同期心筋シンチグラフィについても報告されており、心筋血流と心機能の同時評価が可能である。
心筋シンチグラフィによる心疾患の診断
通常、成人には370〜555MBqを静脈から投与し、30分以降にガンマカメラを用いて心筋血流シンチグラムを得る。又は、心電図に同期させてデータ収集を行い、心筋血流シンチグラムを得る。なお、調整用キットの場合、99mTcを370〜555MBq(1〜3ml)加えてふり混ぜ、95〜99度で15分間加熱したのち、室温で15分間放冷して使用する。
初回循環時法による心機能の診断
通常、成人には740MBqを肘静脈から急速に投与し、直後より心RIアンギオグラムを得る。必要に応じ、収集したデータより区出分画を算出する。
また、心電図に同期させてデータ収集を行い、拡張末期像および収縮期像を得る。
なお、調整用キットの場合、99mTcを370〜555MBq(1〜3ml)加えてふり混ぜ、95〜99度で15分間加熱したのち、室温で15分間放冷して使用する。
体内薬物動態
有効成分(99mTc0−MIBI)の心筋への集積は受動拡散による物であり、ATP-ase輸送系を介する201Tlとは異なる。心筋による抽出率は約66%と報告されており、201Tlの約85%に比しやや低値であるがその初期分布は201Tlと同様に冠血流に比例し、一度心筋内に取り込まれると細胞内に長時間保持され、明らかな再分布はないことが確認されている。

99mTc−MIBIは腫瘍にも集積する。特に、副甲状腺腫瘍に集積する。しかし、細胞から毒物を吐き出すポンプ蛋白質(P糖蛋白)によって細胞の外へ吐出されてしまう。このポンプをたくさん持っている腫瘍細胞は抗癌剤も吐出してしまうので、抗癌剤が効きません。つまり、99mTc−MIBIをは吐き出す腫瘍は抗癌剤が効かないという情報が得られる。


健常人の心筋への集積は投与後直ちに始まり、5分後で平均1.4%dose(安静時投与)、2時間後でも平均1.1%dose(安静時投与)と心筋によく保持されていた。また、肺および肝における集積は、経時的に比較的速く減少し、投与5分後の心/肺比は2.0以上、心/肝比も投与1時間後には1.0以上となった。血中からの消失も速やかであった。排泄経路は腎及び胆道系で有り、投与24時間までに25.4%dose(安静時投与)が尿中に排泄され、その他糞便中にも排泄された。なお、99mTc−MIBIは体内で分解されることなく排泄される。
動物における体内分布及び排泄
99mTc−MIBIをウィスター系ラットの尾静脈より投与し、経時的に屠殺し心臓、肺、肝臓、血液、尿、糞便等の放射能を測定した。
99mTc−MIBIは静脈内に投与された後、血中から速やかに消失した。心臓には投与直後から3時間まで投与量の1.5%程度が集積し、その滞留性の高さが示された。肺への集積は投与直後でも1%程度であり、その後速やかに消失した。肝臓への集積は投与後10%程度とやや高いものの、その後消失は速やかであり、投与3時間後にはほとんど消失した。尿及び糞便中への累積排泄率は、それぞれ投与後6時間で約14%及び約0.1%、投与後24時間で妬く19%及び18%であり、尿及び糞便中への排泄が速やかなことが示された。
急性毒性
99mTc−MIBI調整用キットは毒薬である。
テトラキス(2-メトキシイソブチルイソニトリル)銅(I)四フッ化ホウ酸の急性毒性(LD50・mg/kg)はラット雄で7.2、ラット雌で6.8及びイヌにおけるおおよその致死量は2.5〜10と考えられた。
よって、ラットにおけるLD50値は、予想される臨床常用量(0.017mg/kg)の約400倍、イヌにおけるおおよその致死量は、臨床常用量の約150〜600倍の間であり、安全域が広い。

「吸収線量」 mGy/37MBq
安静時 運動負荷時
全身 0.089 0.097
甲状腺 0.13 0.1
心臓 0.34 0.21
肺 0.045 0.056
肝臓 0.14 0.094
胆のう 0.56 0.19
脾臓 0.11 0.088
腎臓 0.62 0.41
小腸 0.84 0.72
大腸上部 0.92 0.65
大腸下部 1.1 0.72
膀胱壁 0.73 0.65
睾丸 0.049 0.057
筋肉 0.08 0.11
骨髄 0.14 0.13
卵巣 0.52 推定せず


123I−BMIPP
15-(4-ヨードフェニル)-3(R、S)-メチルペンタデカン酸123I
心疾患診断薬
123I−BMIPPは、局所心筋脂肪酸代謝を評価することにより、心疾患の診断を目的とする体内投与放射性医薬品である。
健常心筋は、空腹時においてそのエネルギー源の80%以上を脂肪酸のベータ酸化に依存していますが、虚血や低酸素状態になると主な代謝はグルコースを利用した解糖系へと移行する。このような代謝異常は、心筋の血流、左室壁運動機能・形態の異常に先行することが多いため、本剤を用いて脂肪酸代謝に基づいた代謝・生理学的情報を得ることは、心疾患の早期診断、治療効果判定に有用である。
123I−BMIPPは、静注されると、脂肪酸として細胞内へ取り込まれた後、長くとどまると考えられており、心筋からのクリアランスが比較的緩徐であるため、データ収集に適当な時間をかけることが可能となり、精度の高い情報と明瞭な画像を得ることができる。
123I−BMIPPは、脂肪酸として細胞内に取り込まれた後、アシルCoA合成酵素によって活性化され、トリグリセリド及びミトコンドリアに取り込まれる。脂肪酸のベータ位にメチル基が導入されているために第一段階でのベータ酸化を受けずに心筋細胞内に長くとどまる。本剤の局所心筋内分布は心筋細胞内のATP濃度、トリグリセリド含有量及びミトコンドリア機能の変化を反映するなど、脂肪酸としての特徴を有する。
123I−BMIPP「15-(4-ヨードフェニル)-3(R、S)-メチルペンタデカン酸」ば、β位に側鎖メチル基をもつ芳香族脂肪酸を123Iで標識したもので、脂肪酸を同様に心筋に取り込まれるが、側鎖にメチル基を有するためにミトコンドリア内でのβ酸化が遅れ、心筋内に長く留まる。したがって、心筋の脂肪酸代謝を評価することができる。
123I−BMIPPは静注後、血中から半減期2.5分で速やかに消失し、心筋、肝臓、及び全身の筋肉など脂肪酸代謝が営まれる主な臓器に集積した。心筋集積率は静注後1.5時間及び3時間でそれぞれ5.4%及び5.1%であり、心筋からの洗い出しは緩徐であった。肝臓での集積率は静注後1.5時間及び3時間でそれぞれ10.0%及び8.7%であり、洗い出しは心筋に比してやや速やかであった。累積尿中排泄率は静注後6時間及び24時間においてそれぞれ約10%及び22%であった。
血中における静注後早期(5分)の放射化学的成分の98%以上は本剤の未変化体(123I−BMIPP)であったが、その後123I−BMIPPは経時的に減少して、静注後60分では14%まで減少する一方、p-ヨードフェニル酢酸(123I)(123I−PIA)が静注後60分で70%を占めた。尿中における主な放射化学的成分は123I−PIPAのグルタミン抱合体及びグルクロン酸抱合体であった。
以上のことから、本剤は静注後、各組織に取り込まれて123I−PIPAに代謝された後、肝臓等でグルタミン抱合又はグルクロン酸抱合を受けて、水溶性物質として主に尿中に排泄されると考えられた。
通常、成人には74〜148MBqを静脈内投与する。投与後15〜30分より被検部にに検出器を向け、撮像もしくはデータ収集を行いシンチグラムを得る。
副作用として、一過性の異臭、味覚異常又は口内異常感、注射部主張、注射部疼痛があらわれることがある。
123I−BMIPPの心疾患診断における臨床的有効性について、以下のような見地が得られた。
(1)虚血性心疾患
  心筋梗塞において201Tlによる血流検査と比較したとき、急性心筋梗塞や血行再建術後症例では、血流障害範囲に比し、より広範囲な代謝異常又は血流回復後にも持続する脂肪酸代謝異常を示し、また、時間経過と共に血流に一致して回復する脂肪酸代謝を評価することが可能であった。
 狭心症では労作性狭心症や不安定狭心症などそ各々の狭心症の病態における虚血状態を反映した所見が得られた。
   虚血性心疾患において本剤の安静時早期像における心筋集積の程度は201Tlで判定される心筋の生存能と相関して心筋内に集積し、心筋生存能の判定に有効であった。
(2)心筋症
   心筋症では、201Tlより相対的に集積が大きく、特に肥大型心筋症においては肥大心における血流障害に先行して発現すると考えられる広範な代謝異常を捉えることが可能であった。
(3)その他の心疾患
   弁膜性心疾患、高血圧性心疾患及び心筋炎などの疾患において、左室負荷による利用エネルギー基質の変化や、冠血流異常に先行した代謝異常を把握することが可能であった。また、糖尿性心筋障害にも有用である。

「吸収線量」
心臓 0.057mGy/MBq
肝臓 0.038
腎臓 0.011
脾臓 0.010
膀胱 0.043
赤色骨髄 0.013
卵巣 0.011
精巣 0.0076
全身 0.010


心代謝と機能の評価

 心筋血流と心機能の同時評価
 心電図同期SPECT
 心電図同期SPECTとは心電図のR−Rを8−16分割し各フレームごとにSPECT像を作成するものである。この心電図同期SPECTにて壁運動を評価する定量的指標として、まず初めに考案されたものはwall thickening の概念であり、近年新しくQGS(Quantiative Gated SPECT analysis)が開発された。
Wall thickening
 この指標はSPECTによる心筋のカウントが部分容積効果のため壁厚と比例関係を示すことを応用したものである。
 %wall thickening={(ED count)-(ES count)}/(ED count)X100
 上式により求められた%wall thickeningを心筋収縮の指標としたものである。20mm以下の心筋壁厚では壁厚とカウントに比例関係が存在した。
QGS(Quantiative Gated SPECT analysis)
 QGSは心電図同期SPECTを自動辺縁抽出することにより、心機能を評価するソフトである。これにより心腔内容積や左室駆出率を求め、さらに局所壁運動の解析も可能となった。
 wall thickeningは従来よりの部分容積効果に加え辺縁抽出より得た幾何学的要素を加味した壁厚を基に算出した指標として表示する。
 modified centerline methodは実際に心筋壁の内膜面が移動した距離を基に算出した指標を表示する。
 regional ejection fractionはそれぞれ分割した領域における容積変化から算出した駆出率の指標を表示する。。
 これら3つの指標は、例えば中隔においてはwall thickeningがの方が正確であり、低集積領域ではcenterline methodの方が正確であるというようにそれぞれ長所・短所を有しており、場合によって使用する指標を選ぶことも必要と考えられる。

 心筋代謝の評価
 心筋代謝の評価は心臓核医学の分野において血流・機能に次いで重要な位置をしめるようになってきた。心筋の代謝基室として重要なものは脂肪酸とブドウ糖であるが、従来はPETでのみその代謝情報を得ることができた。しかし、脂肪酸代謝に関しては123I−BMIPPの登場によりSPECTにてもある程度まで脂肪酸代謝の様子が検索できるようになっており、また、糖代謝に関してはポジトロン製剤である18F―FDGを用い、ガンマカメラにて撮像しようとする工夫がなされている。それら以外にもTCA回路に直接取り込まれ酸素代謝の情報を得ることのできる11C−adetateもPETにて撮像可能となり、臨床応用が期待されている。
 
 脂肪酸代謝イメージング
 心筋は安静空腹時にはそのエネルギー基質として70−80%程度を脂肪酸に依存している。しかし、虚血や、低酸素の状況では酸素を多く必要とする脂肪酸代謝は先に障害され、糖代謝に移行される傾向にある。そこで、脂肪酸代謝を評価することは心筋の代謝障害を初期に検出する手段として期待された。まず、最初はPETを用いて直脂肪酸である11C―palmitatenによる心筋脂肪酸代謝の評価が行われてたが、代謝速度が速いため直脂肪酸はSPECTには適しておらずSPECT製剤の開発は断念された。そこで、SPECTでも撮像できるように心筋に長時間停滞する製剤として側鎖脂肪酸である123I−B  IPPが開発され、現在一般普及しつつある。
 123I−BMIPPの集積機序
 123I−BMIPPはカルボシキル基のβ位にメチル基を導入した側鎖脂肪酸であり、そのままではβ酸化を受けることができず心筋に長時間停滞する構造を有している。Langendorffの灌流心を用いBMIPPの代謝機構を検討した。その結果BMIPPはα酸化を受けた後にβ酸化を受け、最終的にparaiodophenyl adetate(PIPA)となって細胞外へ放出されることがわかった。また、同様に灌流心を用いて灌流液の組成を変えることによって血中の基質組成によって123I−BMIPPの集積・代謝がどのように影響を受けるかを検討した。灌流液にオレイン酸を入れたものをコントロールと考えるとブドウ糖とインスリンを入れたものでは123I−BMIPPの取り込みは増大し、インスリンにより脂肪酸の集積が亢進していることが示唆された。しかし、その代謝産物は減少しており、糖を優先に利用し、triglycerid(TG)プールに貯蔵されている。123I−BMIPP量が増大していることがわかった。また、別の基質である酢酸を入れると123I−BMIPPの取り込みは抑えられ、coldのBMIPPでも123I−BMIPPの摂取は低下し、これらの物質は競合して取り込まれるものと考えられた。BMIPPは長鎖脂肪酸のトランスポーターと考えられるCD36を介して心筋細胞内に取り込まれるとされている。その後アシル化されBMIPP-CoAとなるが、この反応においてはATPを必要とする。BMIPP-CoAの約15%はcarnitine shuttleを介してミトコンドリアに入りα酸化を経てβ酸化を受けTCA回路に組み込まれていく。しかし、BMIPP-CoAの大部分(約50%)はTGの形となりTGグループの中に貯蔵される。アシル化を受けずに遊離されたままのBMIPPの集積は早期にback diffusionの形で細胞外に放出されると考えられている。このようにBMIPPの集積はTGプールによるところが大きく、実際に代謝されていく成分はわずかであり真の脂肪酸代謝とは言い難いが、脂肪酸代謝の摂取を始めとした、脂肪酸代謝に関わる指標となりうると考えられている。
 虚血性心疾患
 BMIPPの集積は心筋の機能つまり壁運動に相関があり、その集積の障害はstunned(気絶させる) myocardiumやhibernating(冬眠する) myocardiumの状態に一致するのではないかと考えられている。つまり、急性期の心筋梗塞の場合、タリウムで血流障害が認められない場合でも壁運動障害がある場合は、BMIPPでは集積が低下する。また、急性期のBMIPPとタリウムの乖離が壁運動の改善の程度に関係していることも報告されている。このような乖離を示す心筋はまだ生きているが壁運動が障害されており、その回復していく心筋、つまりstunned myocardiumを表していると言える。また、BMIPPは不安定狭心症の診断に有効であると考えられている。不安定狭心症では負荷をかけることが危険な場合が多く、安静での評価が必要となる。BMIPPは現在強い虚血にさらされている領域や虚血を繰り返している領域においてタリウムよりも出現しやすいため、安静の状態でもその虚血の障害をよりよく反映すると考えられている。
 さらに、BMIPPはmemory imageとしての役割が期待されている。memory imageとは過去に虚血にさらされた既往がある場合に、その虚血が解除されているにも関わらず、現時点から振り返ってその虚血時の状況をイメージとして表現することである。BMIPPの取り込みは強い虚血によって障害され、その障害は回復するまでにある程度の時間を要することが知られており、そのためmemory imageとして応用されうる。臨床応用としては冠攣宿性狭心症の診断、心筋梗塞再灌流療法後の虚血area at riskの評価の二つがあげられる。
 肥大型心筋症では、BMIPPはその診断の手段としては非常に有用であり、糖代謝との関連がる。また、アドリアマイシン心筋症においても、その早期障害をBMIPPにて診断しうるという報告があり、拡張型心筋症の予後の予測手段としてBMIPPが有効かどうか現在検討されているところである。
 およそ0.2%の症例にBMIPPの無集積例が存在する。以前はBMIPPは細胞内へ拡散するかのように考えられていたが、近年その集積には特別のトランスポーターが関与されていることが明らかになった。これは長鎖脂肪酸を選択的に対象とするトランスポーターでCD36と呼ばれている。その欠損症とBMIPP無集積とは密接な関係が指摘されている。

 糖代謝イメージング
 FDG-PETは心筋 viability の指標として確立されている。しかし、PETは特殊な施設でのみ可能な検査であり、一般には普及していない。しかし、糖代謝と脂肪酸代謝は空腹の状態では相補的な関係を持つことが期待される。つまり、BMIPPによる脂肪酸代謝イメージにおいて糖代謝を推測できないかということである。また、近年ガンマカメラでのFDGの撮像が試みられるようになってきており、将来FDGが企業より供給されるようになれば一般の施設においてもFDGによる心筋 viability の評価が可能になると考えられる。
 空腹時のFDGの集積とBMIPPの欠損像は相補的な関係を示すことがよくある。それは脂肪酸代謝の方が糖代謝よりも障害されやすく、脂肪酸代謝が障害された領域では代償的に糖代謝の亢進が起こるためである。しかし、完全に心筋細胞が壊死に陥った場合はFDG、BMIPPともに欠損を示すことになり、また、空腹時のFDGは様々な条件により影響を受けるため必ずしも相補的な関係が保たれるわけではない。
 急性心筋梗塞の場合、その発症早期には viability が保たれていれば、FDGとBMIPPは相補的な関係を示すことが多い。
 肥大型心筋症においては血流SPECTでは肥大している心筋はその部分容積効果のためカウントが高く見えることが多いのに対し、BMIPPでは肥大心筋において早期にその摂取が障害され集積低下として観察されることが多い。このような領域では相補的に糖代謝の亢進が起こっており、FDGは非常に高度の集積を示すことが確認されている。
 長鎖脂肪酸トランスポーターであるCD36欠損症には血小板と単球の両者にて欠損をしめす完全型のtype1と血小板のみに欠損を示す不完全型のtype2が存在することが確認された。type1では心筋においてBMIPPの無集積を示し、空腹時のFDGはびまん性に集積が亢進することが確かめられており、type2ではBMIPPの集積は低下傾向を示し、FDGは空腹時で軽度の集積を示すことが多い。この場合でも両者はほぼ相補的な関係を保っている。

PET及びガンマカメラの感度、FWHM
FWHM(mm)   感度cpm/MBq/ml
PET 3.7 440
DCD 4.8 160
UHGP 9.2  15

DCD:dual head gamma camera imaging with coincidence detection
UHGP:gamma camera imaging with ultra high energy general purpose collimator

 特徴
 DCD
 同時計数方式(DCD)はUHGPより高分解能、高感度である。
 散乱線の影響が少ないため非常に吸収の影響を受けやすく、補正なしでは正確な診断は不可能である。
 高感度なため、少量投与か投与後時間をあけて撮像する。
 111MBq程度でもOKなので企業配布の医薬品でも有利。
 UHGP
 吸収と散乱線の影響が相殺しあい、補正なしでもある程度までは診断可能である。

123I−9MPA心筋シンチグラフィ
 心筋は主たるエネルギー源として脂肪酸とブドウ糖を利用しており、好気的条件下における空腹時の健常心筋ではエネルギー基質の80%程度を脂肪酸代謝に依存している。一方、虚血や低酸素状態に陥った心筋においては、エネルギー代謝の過程に障害が生じ脂肪酸のβ酸化が抑制される。このような心筋脂肪酸代謝の挙動を画像として捉えることは、虚血性心疾患や心筋症など各種心疾患の病態把握にきわめて有用であると考えられる。核医学分野における心筋脂肪酸代謝イメージング製剤として123I-iodopheny pentadecanoic acid (IPPA)が考案されている。IPPAは直鎖脂肪酸でありβ酸化を反映する画像を得られるものの心筋からの洗い出しが速いためSPECT用製剤としては不利である、一方、123I-β-methyl iodophenyl pentadecanoic acid (BMIPP)はカルボシキル基のβ位(3位)にメチル基を有するため心筋内に長時間停滞することより心筋SPECT製剤に適している。ただβ位にメチル基が結合しているため純粋なβ酸化の評価を行うことはできない。それに比べ、123I-15-(p-iodephenyl)-9-methyl-pentadecanoic adid (9MPA)は9位にメチル基を有する製剤のデザインであるため、理論的には3回のβ酸化を反映するイメージを得ることができる。
 123I−9MPAは正常心筋内ではミトコンドリアで3回のβ酸化を受け、短鎖脂肪酸(9-(p-iodoohenyl)-3methyl-nonanoic acid)の形で心筋細胞外へ放出されると考えられている。一方、虚血に陥った心筋細胞では嫌気的な糖代謝の割合が多くなるため、脂肪酸の代謝速度が正常心筋のそれに比し低下することになる。また虚血に陥った心筋細胞では当然、脂肪酸の心筋内への摂取も低下している。すなわち正常心筋と虚血心筋では、脂肪酸の取り込み量と代謝速度に相違があるため、123I−9MPA遅延像における虚血心筋部位では、その違いを反映したいわゆる再分布現象が生じるものと考えられる。また、再分布現象については、虚血心筋において一旦、脂肪酸のアセチルCoAによるエステル化が生じると細胞外に拡散することができないため、このような再分布現象が見られるものと考えるものもある。

123I−MIBG
3−ヨードベンジルグアニジン
心シンチグラフィによる心疾患の診断
心臓には交感神経が豊富に分布しており、心交感神経は副交感神経とともに、自律神経系の循環調節に重要な役割を果たしている。
1976年Fowlerらは、心交感神経機能を生理的な状態で画像化するために神経伝達物質ノルエピネフリン(NE)をポジトロン放出核種11Cで標識してイヌの心臓の撮像に成功した。しかし、NEの心臓への集積性を損なわずに通常のガンマカメラで撮像に適した核種で標識することは困難であった。
1980〜1981年Wielandらは、交感神経遮断性降圧剤であるグアネチジンが副腎髄質や交感神経終末みNEと同じ機序で取り込まれることから、グアネチジンの類似物質群の放射性ヨウ素標識体を合成した。種々の標識体を用いてイヌやサルなどの動物の体内分布を検討し、3−ヨードベンジルグアニジン(MIBG)の131I標識体が副腎髄質のイメージング剤として最適であることを見出した。同時に131I−MIBGが投与早期には心臓にも高い集積性を示したことから、心イメージング剤としての有用性をも示唆した。
次いでWielandらは131I及び123I−MIBGを用いてイヌ、サルさらに5人の男性健常者の心臓を描画することに成功し、撮像に適したエネルギーのガンマ線を放出する123I−MIBGが心イメージング剤として非常に有望であることを示した。また同時にMIBGの心臓への集積がレセルピンによりブロックされることなどから、主な集積機構として心交感神経の終末のNE貯蔵顆粒への取り込みを推定し、123−MIBGを用いた心イメージングによる心筋内カテコールアミンの定量的評価の可能性を示した。
その後、123I−MIBGは心筋梗塞、狭心症及び心筋症などの心疾患の局所または全体的な交感神経支配の喪失(denervation)・回復(reinnervation)を検出でき、従来の検査法では得られなかった心交感神経機能に関する画像情報が得られるとして多数報告されている。
心シンチグラフィ
通常、成人には、111MBqを静脈より投与し、約15分後以降にガンマカメラを用いてシンチグラムを得る。必要に応じて、3〜6時間後の心シンチグラムを得る。また運動負荷時投与の心シンチグラムを得る。
体内薬物動態
123I−MIBGは、静注後冠血流を通過する際に心交感神経終末のノルエピネフリン(NE)再摂取機構いわゆるuptake-1を介して主としてNE貯蔵顆粒に取り込まれる。しかし、NEとは異なり、カテコールアミン受容体と結合せず、またカテコール-O-メチル転移酵素(COMT)、モノアミン酸化酵素(MAO)による代謝を受けない。
123I−MIBGを健常者に静注すると、血中放射能濃度は1時間後までは急速に減少し、その後は漸減する傾向を示した。血中からの消失の速やかな相及び緩やかな相の有効半減期はそれぞれ11.6〜15,1分及び7.39〜9.46時間であった。また、尿中排泄は投与から4時間後までに投与量の30〜40%、24時間後では平均で66%が尿中に移行した。
123I−MIBGは心筋の交感神経分布および交感神経末端のカテコラミンの貯蔵の状態を描画する心筋シンチグラムとして、心筋梗塞などの虚血性心疾患や心筋症などに利用され、特にShy-Drager症候群(神経性の病気で歩けなくなる)、糖尿病などの心臓の自律神経障害を有する疾患にはよい適応とされている。また、パーキンソン症候群、家族性アミロイドポリニューロパーチーなどに自律神経障害を直接的に描画・診断する良い適応として利用される。
123I−MIBG(メタヨードベンジルグアニジン)は、交感神経遮断剤であるグアニジンのアナログであり、心筋内摂取により交感神経末端に貯留される。心臓局所交感神経分布および機能を画像化できる。虚血性心疾患、心筋症、糖尿病、自律神経失調症などでの有用性が報告されている。
アナログモデル[analog model]:現実の現象を,別のものを使って模型化すること。
動物における体内分布及び排泄
123I−MIBGをラットに静注すると、血中より速やかに消失し、投与30分後では、投与量の約2.3%が心臓に集積し、その他、約13%が小腸、約9%が肝臓、約4.7%が肺及び約2.7%が大腸に集積した。
また、副腎、胃、大腸を除く臓器では経時的に単調な減少を示した。尿中への排泄はきわめて速やかであり、投与後30分、24時間及び48時間までに、それぞれ投与量の約15%、47〜64%及び71〜74%が排泄された。
また、糞便中へは投与後48時間までに投与量の7.9%が排泄された。

「吸収線量」 mGy/37MBq
心臓 0.41
肺 0.59
肝臓 2.63
脾臓 0.74
胃 0.29
副腎 0.41
腎臓 0.52
小腸 0.31
大腸上部 0.33
大腸下部 0.28
精巣 0.20
卵巣 0.30


99mTc−PMT 
N−ピリドキシル5メチルトファンテクネシウム
:肝胆道系疾患及び機能診断薬
99mTc−PMTを静注すると、肝胆道系が正常の場合、静注後血中から速やかに消失してその大部分が肝臓に集積し、次いで胆道系を経て腸管に排泄する。
血中ビリルビンとの拮抗性及び尿中排泄率が従来の肝胆道系診断薬と比べ低いため、血中ビリルビンが比較的高値の場合でも腎描出のほとんどない明瞭なシンチグラムが得られる。
そのため、高度の黄疸症例にも適用することができる。

「吸収線量」
肝臓  0.5 mGy/37MBq
胆のう 26.6
小腸  2.9
大腸上部    4.1
大腸下部    3.0
腎臓  0.2
卵巣  0.9
睾丸  0.04
膀胱壁  0.3
赤色骨髄      0.3
全身  0.2



99mTc−GSA
ガラクトシル人血清アルブミンジエチレントリアミン五酢酸テクネチウム
:肝機能診断
 アシアロ糖たん白(ASGP)受容体は、哺乳類の肝細胞に特異的に存在し、ASGPのがラクトース残基を認識してASGPと結合し、これを肝細胞内に取り込む性質を有している。
 このASGPと等価な99mTc−GSAはASGPと同様にASGP受容体に取り込ませることにより肝臓の機能や形態を診断するもので、従来の診断用医薬品で得られない情報を得ることができる。
 ASGP受容体量は肝疾患の病体によって減少することが知られており、放射性各種で標識した合成糖蛋白を投与し体内での肝集積の様相を評価することによって肝機能を診断することができる。
 投与直後から24時間まで、主たる集積臓器は肝臓であり、シンチグラム上、血液プール並びに肝臓〜腸管及び腎臓〜膀胱の排泄系以外の臓器への放射能の集積は認められなかった。
 投与後24時間までの累積尿中排泄率は17〜28%、累積尿中排泄率は24〜46%で、主排泄経路は胆道〜糞中であった。
血中の放射化学的成分は、その80%前後がこの医薬品の未変化体であると考えられるタンパク成分であり、99mTc−GSAは血液中で比較的安定に存在する。
尿中の放射化学的成分はほとんどが低分子成分であり、肝臓で分解されて生じた低分子成分か再び血中に放出された後、尿中に排泄されたものと考える。

「吸収線量」
肝臓 0.054mGy/MBq
胆のう 0.065
小腸 0.026
大腸上部 0.049
大腸下部 0.030
腎臓 0.0081
膀胱 0.015
赤色骨髄 0.0054
卵巣 0.010
睾丸 0.0011
全身 0.0046



肝臓の核医学

 肝臓は最も大きな重量を持つ実質臓器のひとつであり、その機能総量は、1)生存に必要な最小限度量、2)種々の物質代謝の恒常性を維持するのに必要な量、3)機能としては発現しない予備能に区分することができる。正常の状態では、本来肝のもつ昨日総量の1/5〜1/4しか使用しておらず、肝切除において80%まで切除しても、残存する肝のみで術直後の必要な機能は維持される。通常はほとんどみられない肝細胞の分裂増殖は、肝切除後にはDNA合成を端緒として、急速に進行し、切除前の肝重量に回復していく。びまん性肝疾患は、ウィルスの直接攻撃、自己免疫機序、アポトーシス、アルコール毒性、などによる肝細胞変性とその終末点としての細胞壊死、細胞数の減少、これにつづく結合組織の増正、門脈圧の亢進、灌流血液量の減少を成因とし、さらに疑小葉の形成、肝内シャント形成、有効肝血流量の減少が、悪循環となって肝細胞の修復機転を阻止し、肝硬変の病態を成立させる。
 予備能の低下の範囲内に留まる軽度の肝障害は、血清アルブミンやプロトロンビン時間などの異常値としては観測されない。さらに障害が進行し、恒常性の破綻をきたした時点ではじめてこれら内因性物質の低下が観察される。このような潜在的な予備能低下を知るには、ブドウ糖負荷試験や、ICGクリアランス測定などの負荷検査が必要である。
 99mTc−GSA
 肝実質細胞のみに存在するアシアロ糖タンパク(ASGP)受容体活性は、びまん性肝疾患においては細胞障害の程度に応じて減少し、肝硬変では健常例の28%、また肝癌組織にはほとんど存在しない。99mTc−DTPA-garactosyl humann serum albumin(99mTc−GSA)肝シンチグラフィはこの受容体の特異的リガンドその投与量3mgはほぼ受容体総量に相当すると推定され、一種の負荷試験とみなしうる。この投与量設定によって血流の影響を避け、肝細胞固有機能量を反映した評価ができる。本法では99mTc−GSAが血液中から消失し、肝に集積する速度の指標化が重要である。頻用されている簡易指標としてはLHL15,HH15がある。静注15分後の肝と(心+肝)の比は肝摂取の指標とされる。しかしガンマカメラで実測した肝摂取率(%ID)との関係は非直線的であり、%IDの高い正常、軽症域では0.90〜0.95の狭い範囲に限局し、重症域に移行するにつれてその低下が増大した。このような特性を持つLHL15は肝の部位別に機能を区分して論ずるような際の指標としては扱いにくい。静注後15分と3分後の心カウント比HH15は血中停滞の指標である。曲線回帰法で求めた血中停滞率(%ID)との比較では,HH15の数値は一致線よりもやや高いものの、全域において直線的な対応を見た。一方、河法マルチコンパートメント解析は速度定数の設定にミハエリス_メンテン型薬物飽和モデルを採用しており、全肝の受容体最大結合量(GSARmax[mg/min])が算出される。これは生理的知見や組織生化学的な成績と良い対応を示した。GSARmaxは受容体活性の量的変動をよりよく反映し、さらにコンパートメント解析により肝血流も独立した指標として求められる。このことにより、肝切除の際の区域別の指標を参考に安全な肝切除の機能と考えられる。
 安全な肝切除の機能的適応
 部分切除、亜区域切除 0.15(mg/min)以下
 一区域切除      0.30(mg/min)以下
 二、三区域切除    0.35(mg/min)以下


99mTc-フチン酸
フチン酸テクネチウム注射液調整用キット
肝臓脾臓シンチグラムによる肝脾臓疾患の診断
 肝のイメージングへの試みは、1954年にStirrettらが198Au-金コロイドをもちいたのが最初である。その後、1964年にHarperらが99mTcを標識したイオウコロイドによる肝イメージングを報告して以来、99mTc製剤の開発研究が活発化した。1972年にLinらにより99mTc-スズコロイドが、1973年Subramanianらにより99mTc-フチン酸が報告された。99mTc-フチン酸は、静注すると血中のCaとキレート結合して、いわゆるインビボコロイドを形成し、肝・脾・骨髄等の細網内皮系細胞に摂取される。
 99mTc-フチン酸は半減期の短い99mTcで標識しているため、198Au-金コロイドに比べて患者の被ばくが少なく、画質の良好なイメージが得られる。び慢性間疾患における脾描出の程度は198Au-金コロイドに類似している。しかし、最近は他のイメージング検査(超音波、CT,MRI)に取って代わられ、使用頻度は少なくなって来ている。
 組成
 1バイアル中にフチン酸ナトリウム(36水塩)5.0mgを含有する。添加物として塩化第一すず(二水塩)0.5mgを含有する。

 用法及び用量
 冷蔵庫から取り出したフチン酸キットを約5分間放置して室温に戻し、過テクネチウム酸ナトリウム注射液を2〜8mlを加え、よく振とうしてフチン酸テクネチウムを得る。得られた溶液の111〜370MBqを投与し20〜30分後に撮像を開始する。肝硬変や肝炎では、脾臓と骨髄への集積が増加し、ときには肋骨も描出されることがある。
 体内薬物動態
 肝機能正常例に99mTc-フチン酸を静注した場合、肝への集積は約11分でプラトーに達する。また、99mTc-フチン酸静注20〜30分後のイメージングにおける肝の集積を基点とすると、肝消失の有効半減期は約6時間である。
 動物における体内分布及び排泄
 Wistar系ラットに99mTc-フチン酸を静注すると、最初、肝臓にそのほとんどが集積し、その後、緩やかに消失する。肺、脾、睾丸、卵巣及び血液には、最初投与量の1%以下が存在するだけであり、その後も速やかに消失する。一方、腎臓にはある程度の集積が認められるが、投与24時間後でも約5%の集積率である。また、投与24時間後までに投与量の30%が体外へ排泄される。

「吸収線量」
 臓器 吸収線量(mGy/37Bq)
 全身 0.1
肺 0.1
肝臓 2.1
脾臓 0.2
腎臓 0.3
睾丸 0.2
卵巣 0.2

99mTcの核物理学的特性
 物理的半減期 6.01時間
 主なγ線エネルギー 141Kev(89%)



99mTc−スズコロイド
テクネチウムスズコロイド
:肝、脾診断薬
この医薬品は肝臓及び脾臓の網内系に補足される。
肝腫瘍・肝膿瘍によるSOL(Space Occupying Region)の検出及び肝硬変・脾腫による経大変かをとらえるのに有用である。
この医薬品の肝集積は、肝実質の約15%を占める網内系細胞(RES細胞)中のKupffer細胞の異物貪食作用に基づく。
粒子の体内分布は網内系細胞の分布及びこれを含む臓器の血流量の多寡に左右される。
正常人では、静注された医薬品の約85%が肝に集積して、残りは主として脾と骨髄に分布する。
静注後15分で肝中放射能は最大となる。

「吸収線量」
全身 0.2 mGy/37MBq
肝臓 3.2
脾臓 0.4
赤色骨髄 0.3
卵巣 0.06
睾丸 0.07

99mTc−DMSA
ジメルカプトコハク酸テクネチウム
:腎疾患診断薬
ジメルカプトコハク酸テクネチウムは腎皮質内に選択的に集積する。
腎の形態的変化に伴う疾患の検査に使用。
腎腫瘍、のう腫などのSOL(Space Occupying Region)の検出。
腎梗塞をはじめとする腎血管性疾患の検査。
水腎症などの残存腎機能検査。
腎機能が低下している場合肝臓に多く集積することがある。
静脈内に投与されると腎尿細管上皮細胞によって摂取され、かつ高率(90%)に腎皮質に集積し、かなり長時間蓄積、停留する。
腎尿細管上皮細胞?
静注後1〜2時間後でほぼ50%が腎内に蓄積移行し、5時間以降ほぼ70%に達しプラトーを形成する。

尿中排泄率は最初の1時間で4.15±2.05%、15時間で19.1±0.57%である。

「吸収線量」
全身 0.144mGy/37MBq
腎皮質    14.10
膀胱壁 0.148
肝臓 0.420
脾臓 0.630
卵巣 0.101
睾丸 0.059
骨髄 0.152


 99mTc−MAG3
 メルカプトアセチルグリシルグリシルグリシンテクネチウム
 :腎及び尿路疾患診断薬
今まで腎疾患診断薬としてヨウ化ヒプル酸ナトリウム(OIH)と類似した体内動態を示し、特異的かつ高率に尿細管から分泌されるため、腎/バックグラウンド比が高い良好な画像及び識別生の高いレノグラムが得られ、有効腎血漿量の測定も可能である。
99mTc−MAG3は静脈内投与後速やかに血中から消失し、体内で代謝を受けることなく、尿細管に能動的に高率に取り込まれ、尿中に排泄される。
腎臓での摂取率は有効腎血漿流量や有効腎血流量を反映する。123I−OIHの値と相関が見られた。
99mTc−MAG3の腎摂取率は99mTc−DTPAの3倍であった。

「吸収線量」
膀胱       0.029   mGy/MBq
腎臓       0.0028
肝臓       0.00060
胆のう      0.0017
脾臓       0.00047
小腸       0.0021
大腸上部    0.003
大腸下部    0.0031
赤色骨髄    0.00085
卵巣       0.002
精巣       0.001
全身       0.00063

 99mTc−DTPA
 ジエチレントリアミン5酢酸テクネチウム
 1960年MacAfeeらにより203Hg-Chlormerodorinによる腎シンチグラフィが報告されて以来、197Hg、203Hgを標識した水銀製剤による腎の形態学摘心団が行われてきた。しかし、197Hgはγ線エネルギーが低く、203Hgは物理的半減期が長く、β線を放出するため腎の被ばくが多い等の血管が指摘されていた。その後、99mTc化合物が検討され、1970年、Hauserらが99mTc−DTPA(99mTc-diethylenetiamine pentaacetid acid)を報告した。99mTc−DTPAは短半減期核種である99mTcを標識しているため、大量投与が可能で、ガンマカメラによる腎シンチグラフィではRIの腎血行動態を経時的に追うことができ、画質の優れた鮮明な経時的腎シンチグラムが得られる利点がある。
 今日では、99mTc−DTPAは腎シンチグラフィ及びレノグラフィに広く臨床応用されている。
 本薬剤は1バイアル中ジエチレントリアミン5酢酸20mgを含有し、添加物として塩化第一スズ(二水塩)2.2mgを含有する。

 体内動態
 99mTc−DTPAは糸球体濾過物質で、腎糸球体で濾過され、尿細管で分泌、再吸収、代謝されることなく尿中に排泄される。
 動物における体内分布及び排泄
 Wistar系ラットに99mTc−DTPA約3.7MBqを尾静脈より投与した場合、腎臓に投与直後投与量の約20%の集積が認められるが、1時間後、3時間後、5時間後にはそれぞれ7%、1%、0.1%と減少する。肝臓・胃には、投与直後それぞれ1%、0.2%の集積が認められるが、5時間後には両者共0.01%に減少する。肺・性腺・脾臓・脳では投与直後、1%、以下の集積で、2時間後、いずれも0.01%以下に減少する。
 尿、糞便中には投与後1時間後までに50%、3時間までに90%が排泄される。
 用法及び用量
 1.DTPAの調整
 (1)冷蔵庫から本薬剤を取り出し、約5分間放置して室温に戻す。
 (2)日局・過テクネチウム酸ナトリウム(99mTc)注射液2〜9mlをバイアルに加える。
 (3)よく振盪して内容物を溶解した後、室温で2〜5分間放置することによりジエチレントリアミン5酢酸テクネチウム(99mTc)注射液が調整される。
 (4)本薬剤は調整後6時間以内に投与すること。
 2.腎シンチグラフィ及びレノグラフィー
 上記によって得られたDTPAを74〜555MBqを静注した直後から、ガンマカメラを用いて撮影を始めることにより、血管相イメージ、機能相イメージおよびレノグラムを得る。
 膀胱への被ばくを最小限にとどめるため、検査終了時とそのご4〜6時間は排尿を行うようつとめることが望ましい。

 副作用
(1)血管迷走神経反応:まれに失神、血圧降下、徐脈、顔面蒼白、めまい、悪心、嘔気、嘔吐の症状があらわれることがある。
(2)アレルギー反応:まれにアレルギー反応があらわれることがある。
(3)発熱:まれに発熱の症状があらわれることがある。

 吸収線量
臓器     mGy/37MBq
全身    0.03
肺      0.03
胃      0.04
肝臓    0.04
脾臓    0.05
腎臓    0.35
睾丸    0.04
卵巣    0.04

 131I−OIH
 ヨウ化馬尿酸ナトリウム(131I)
 ラジオアイソトープによる腎機能検査への試みは、1952年にOeserらが131I−urosekectanを用いてその尿中排泄率より腎機能を推測したのが最初である。その後、1956年にTaplinらは131I−iodopyracet(diodrast)を用いた体外計測法を左右の分腎機能検査へ応用した。しかし、131I−iodopyracetは投与量の10〜15%が肝臓に集積する為、右腎のレノグラムが影響を受ける欠点があった。1960年、Nordykeらは131I−o-iodohippurate(ヨウ化ヒプル酸ナトリウム(131I)を報告し、腎血漿流量指標物質としてプローブ型検出器によるレノグラフィに使用されるようになった。
 また、ガンマカメラの普及に伴い、ヨウ化ヒプル酸ナトリウム(131I)のような排泄の早い薬剤でも腎シンチグラムを撮影することが可能となり、今日では、ヨウ化ヒプル酸ナトリウム(131I)はレノグラフィあるいは、経時的シンチグラフィによる腎動態機能検査に応用されている。

 体内薬物動態
 ヨウ化ヒプル酸ナトリウム(131I)は腎血漿流量指標物質でその排泄には近位尿細管機能が関係し、1回の腎循環で90%以上が血中から尿中へ移行し、30分以内に投与量の約75%が尿中に排泄される。
 動物における体内分布及び排泄
 成熟ラットにヨウ化ヒプル酸ナトリウム(131I)を静注すると、腎に速やかに集積し、かつ急速に排泄され24時間以内にはほとんど体内に残存していない。又、その消失は2相性を示し第1相、第2相における有効半減期はそれぞれ0.01,0.22日である。

 本薬剤には、検定日において1ml中9.25MBqのヨウ素131(131I)をオルトヨウ化ヒプル酸ナトリウムの形で含有する。
 添加物としてリン酸水素ナトリウム(十二水塩)3mg、リン酸一カリウム0.07mgを含有する。
 
 機能検査
 本薬剤0.37〜1.85MBqを静注後、腎臓部の放射能を連続的に記録し、レノグラムを得る。
 尿路機能検査を行う場合は、膀胱部の放射能も連続的に測定する。
 シンチグラム
 本薬剤1.85〜18.5MBqを静注し、ガンマカメラ等で腎・尿路系のシンチグラムを得る。
 使用上の注意
 本薬剤に対し、過敏症の既往歴がある患者及び高度の腎機能障害がある患者に投与するときは慎重に投与すること。
 副作用
(1)血管迷走神経反応:まれに失神、血圧降下、心悸亢進、顔面蒼白、冷汗、脱力、嘔心等があらわれることがある。
(2)アレルギー反応:まれに皮膚発赤、喘息等があらわれることがある。
(3)発熱:まれに発熱することがある。
 適用上の注意
 高度の腎機能障害を有する患者に本薬剤によるシンチグラフィを施行する場合には、放射性ヨウ素が甲状腺に摂取されることを防止するため、投与前日から試験後も無機ヨウ素1日20mg以上投与し、甲状腺ヨウ素摂取機能を抑制しておくことが望ましい。

 吸収線量
臓器 mGy/37MBq
全身 0.18
腎臓 0.94
膀胱壁 33.3
卵巣 0.63
睾丸 0.39

 腎の核医学
長年にわたり腎臓核医学に重要なよく割を果たしてきた131Iヒップラン(OIH)「馬尿酸」はその役割を終え、我が国ではレノグラフィ製剤としては99mTc−mercaptoacetyltriglycine(MAG3)が中心的な放射性医薬品となった。MAG3は、血中からのクリアランスが早く、かつガンマカメラに適したエネルギーを持つ99mTcで標識されているため、画質の良い腎動態画像が得られる。ここでは、MAG3を用いたクリアランス測定法、ACE阻害剤負荷レノグラフィ、利尿剤負荷レノグラフィについて概説する。
クリアランス測定法
クリアランスという言葉は"取りかたづけ"とか"取りのける"などの意味をもつ。腎のクリアランスとは、血液中に存在するいろいろな代謝産物(老廃物)を体外に尿として排泄する(取りかたづける)能力として定義される。その能力を定量するためには、腎から速やかに排泄される薬剤を投与し、それが尿中にどれくらい速やかに排泄されるかを測定することが腎機能を評価することになる。
MAG3は近位尿細管から排泄される物質であることから、MAG3の腎クリアランスを測定すること、有効腎血漿量(ERPF)に関連した近位尿細管機能を定量的に測定できることになる。パラアミノヒプラン(PAH)に代表される古典的なクリアランス測定法をベースに、投与一定時間後の薬剤血中濃度からクリアランスを予測する経験式を用いる方法は、従来からのレノグラム製剤のOIHで行われていた。この手法をそのままMAG3に適応する研究が重ねられ、経験式が求められ実用化されている。
一回静注と2コンパートメントモデルによるクリアランス測定
クリアランスを薬剤一回投与後の血中の薬物濃度の消失速度としてとらえる方法が、Sapristeinらによって考えられた。投与した薬剤の血液中の薬剤濃度が速やかに低くなれば腎のクリアランス機能が高いことを意味する。
 この方法の基本的な概念は、
 (1)体内に投与した薬剤は第一のコンパートメントである血液中(血管内)に瞬時に均等に分布する。
(2)次に濃度勾配にしたがって血管外の第二コンパートメントに移行すること。
 (3)第一コンパートメントである血管内から腎のみを介して体外に排泄されること。
を前提としている。6−8回の採血データに2コンパートメントモデルを当てはめて血中クリアランスを求める方法は精度の高い方法であるが、実際の臨床の現場で行うには手技がやや繁雑である。そこで簡便法として一回の採血でクリアランスを推定する方法が開発されている。一回採血法ほの回帰式としては、BubeckあるいはRussellの式が標準的である。血液中にトレーサー濃度からクリアランスを推定する方法は、第二コンパートメントが大きくなった状態、すなわち腹水や浮腫が顕著な状態では、クリアランスを過大評価してしまう精度上の限界があることに留意しなくてはならい。
ガンマカメラを用いたクリアランスの測定
クリアランスの測定の古典的な測定方法は尿を採取する物であり、更に投与後の血液中のトレーサ濃度を測定し消失する状態を解析する方法も、採尿、採血といった煩雑さがある。尿、血液のかわりに腎を測定対象とし、採血、採尿を必要としない方法がガンマカメラ法である。この方法は、レノグラム検査と同時に行え、かつ左右腎のクリアランスを別々に測定できる。ガンマカメラ法はShlegelやGatesやによって導入された手法であり、131I馬尿酸による有効腎血漿流量(ERPF)や、99mTc−DTPAによる糸球体濾過率(GFR)を投与後1−2分の腎のカウントから経験式をもとに求める。
MAG3については、Taylorらが8回採血法の2コンパートメントモデル解析で求めたMAG3クリアランスとMAG3投与1−2分間、1−1.2分間、2−3分間の腎摂取率との回帰式を提案している。我が国では伊藤らも腎摂取率を血中クリアランスの回帰式を提唱している。これらは方法論としてはShlegelやGatesの方法を踏襲したものである。
1−2.5分後の腎摂取率からMAG3クリアランスを求めるTaylor方式は、
 CL(ml/min)=10.8(%dose at 1-2.5 min)(BSA/1.73m**2)-2.5 (1)であり、%dose at 1-2.5 minはMAG3投与1−2.5分の間の腎摂取率、BSAは被検者の体表面積(平方メートル)である。ガンマカメラ法の場合、腎摂取率すなわち"投与量のうち何%が腎に集まったかを示す指標"を求めるためには、投与量の測定とトレーサ(MAG3)の腎放射能測定の2つの測定が必要である。投与量は注射前後のシリンジカウト差として求める。実際の測定は、シリンジを撮影台のうえにのせて、下側のガンマカメラで撮影し、台のガンマ線吸収を被検者と同じ状態とする。腎のカウントは、実際にはガンマカメラレノグラフィを行う過程で求める。一定時間後、例えば1−2.5分間の加算画像を作成して、腎および周囲のバックグラウンド関心領域(ROI)を設定し、バックグラウンド補正をした左右腎カウントの総和を求める。この際、どのようなROIを設定するかはコンセンサスが得られていないため、各施設ごとに一定した方式で行う必要がある。できらば、自動的にROIを設定し、再現性を高めることが望ましい。
腎は体深部にあるため、ガンマカメラにそのガンマ線の情報が到達するまでに、体内で吸収されてしまう。もし、そのままシリンジのカウントで割って腎摂取率を計算すると、クリアランスを過小評価することになる。そこで腎の深さを計測してガンマ線の吸収を補正する必要があるが、CTや超音波検査で患者ごとに腎の深さを計測することは煩雑であるため、身長や体重から推定する。
織内らにより開発された1コンパートメントモデルによるガンマカメラ法は、経験式ではなく1コンパートメントモデルを用いた理論式に基づく測定法である。MAG3は血漿蛋白との結合が80−90%と高く血管外への拡散が少なくかつ、尿中以外の排泄がほとんどない。そこで、投与したMAG3は腎からのみ消失し、投与早期には尿中への移行がないと仮定すると、1コンパートメントモデルを適用できる。すなわち、血中からのMAG3の放射能消失速度は血漿中のMAG3の放射能(B(t))に比例し、かつ腎の摂取量R(t)と血漿中のMAG3の総和B(t)が投与量に等しいという2つの式を基本とする。
計算過程は略すが、ガンマカメラでRUR(腎摂取率)を求めれば、消失速度が求まる。循環血漿量は身長、体重、ヘマトクリットから推定できるので採血することなくMAG3のクリアランスが求まる。本法によるMAG3クリアランスの健常者29人の平均と標準偏差は412.5±56.51(ml/min/1.73平方メートル)であり、平均−2sdを正常下限とすると300(ml/min/1.73平方メートル)が正常下限である。
このほかガンマカメラ法によるクリアランス測定法には、ダイナミックスキャンによりパトラックプロット法を用いた方法も考案されている。
ACE阻害剤負荷レノグラフィ
アンジオテンシン転換酵素(ACE)阻害剤負荷レノグラフィは、腎血管性高血圧症の診断に有用であるが、欧米ではこの検査の有用性が高いことからコンセンサスレポート(意見の一致.合意.)がだされ、検査法とその解釈の標準化が進められている。被検者は検査4時間前より固形食の摂取を禁じ、MAG3あるいはDTPAの投与60−90分前にACE阻害剤であるカプトプリルを25mg錠剤を砕いて水200mlと共に飲用する。レノグラムは,grade0を正常、grade1を軽度異常(Tmax5分以上でかつバックグラウンド補正後レノグラムで20分値対ピーク値比0.3以上)、grade2を著明な排泄遅延、(排泄相がのこっている)、grade3を排泄相がない閉塞パターン、grade4を腎放射能を認められる腎不全型、grade5を腎放射能が測定できない腎不全型(血液バックグラウンド型)として6型に分類する。本法の基本的な測定方法は、ACE阻害剤を投与しない状態のレノグラムがACE阻害剤負荷後にどの程度変化するかを観察することである。コンセンサスレポートでは、腎血管性高血圧症に対する診断基準のhigh probability(見込み)(>90%)とは、片方の腎臓のレノグラム上の変化が以下のいずれかの条件を満たすときとしている。
(1)レノグラムの2grade以上の悪化、(2)Tmax(投与後ピーク値に達する時間)の2分以上または40%以上の延長、(3)20分値対ピーク値の0.15以上の変化、(4)相対腎摂取率の10%以上の変化(頻度は低いが特異性が高い)
逆にlow probability(<10%)の診断基準は、
(1)ACE阻害剤負荷時のレノグラムがgrade0(正常の場合)、(2)ベースラインスタディでgrade1or2のレノグラムが薬剤負荷によって改善した場合、(3)ベースラインスタディでgrade1または腎摂取率30%以上の状態で薬剤負荷で不変である場合。
利尿負荷レノグラフィ
利尿負荷レノグラフィは上部尿路拡張症例に対し、閉塞か非閉塞性かの鑑別に有用とされている。しかし、この検査法も手技や解釈に施設間でバラツキがあるため、標準化を目的としたコンセンサスレポートが出された。一般的には、アイソトープ(MAG3)投与20分後にfurosemide(フルオセミド)を静注し、さらに15分観察するため計35分の検査時間となる。furuosemideをMAG3投与後15分前に投与する方法もある。腎機能に関係なく、正常の反応があれば正常と解釈する。利尿剤投与後遅れてピークが出現するサインをHomsy's signあるいはdelayed double peak signといい、間欠的な水腎症(intermittent hydornephrosis)であることを示す。GFRが15ml/min以下の腎機能である場合は、利用が少ないため判定に注意が必要である。


131I−MIBG
3-ヨードベンジルグアニジン(131I)
1960年代より副腎に特異的に集積する標識化合物の検索が進められ、14C-アドレナリン誘導体、125I-フェネチラミン、14C-ドーパミン,75Se-セレノコレステロール等の副腎への集積性の比較がなされた。1979年及び1980年、米国ミシガン大学のWielandらは、交感神経遮断性降圧剤であるグアネチジンが副腎髄質や交感神経終末にノルエピネフリンと同じ機序で取り込まれることから。グアネチジンの類似物質群の放射性ヨウ素標識体が副腎髄質のシンチグラフィに有用であることを報告した。更に1981年にはSissonnらが、これらの化合物群の仲より、131I-ヨードベンジルグアニジン(131−MIBG)が褐色細胞種のシンチグラフィに最も有用であることを報告した。すなわち、131I−MIBGによるシンチグラフィは副腎髄質内褐色細胞種はもとより異所性病巣や転移巣をも描出することを見出した。また、X線CTや超音波は全身検索に適さず、解剖学的異常所見のみが検出されるのに対し、131I−MIBGによるシンチグラフィは病巣の機能状態を反映するため、褐色細胞種が疑われる患者に対して極めて有用な画像診断法であることが示された。以後、褐色細胞種の診断に用いた多くの報告がなされるとともに、神経芽細胞種、甲状腺髄様癌、カルチノイド、肺ガン等の局在診断にも役立つことが報告されてきた。
国内においても褐色細胞種、神経芽細胞種等の診断における131−MIBGの有用性についていくつかの報告がなされている。
通常、成人には、30〜40MBqを静注により投与し、1〜4日後にガンマカメラを用いてシンチグラムを得る。
使用にあたっては、体内で遊離した放射性ヨードが甲状腺に摂取されることを防止するため、適当なヨード剤(例えばルゴール液など)を服用させること。
レセルピン三環系抗うつ剤を投与している場合、MIBGの腫瘍への集積が抑制されるとの報告がある。
体内薬物動態
131−MIBGは、ノルエピネフリン(NE)の生理的アナログ(体内動態が似ている)であり、NEの再摂取機構(uptake-1)を介してカテコールアミン(CA)生産細胞に取り込まれ、NE貯蔵顆粒中に貯蔵される。しかし、NEとは異なり、CA受容体とは結合せず、またカテコール-O-メチル転移酵素(COMT)、モノアミン酸化酵素(MAO)による代謝を受けない。
Uptake1といわれる能動輸送により髄質内の貯蔵顆粒に取り込まれる。
褐色細胞腫患者及びその疑診患者による臨床試験の結果、131−MIBGの血中濃度は、投与後急激に減少し、4時間後には0.221〜0.505%dose/Lとなった。その後は緩やかに減少し、24時間後には0.127〜0.431%dose/L、72時間後には0.070〜0.215%dose/Lとなった。尿中への排泄は24時間で投与量の22.3〜74.3%、72時間で41.1〜100%であった。131−MIBGの尿中への排泄は、血中濃度推移と同様に褐色細胞腫患者群と疑診群の間で著しい差異はみられず、血中より消失してから尿中へ排泄される速さは速やかであることが確認された。心臓、肝臓における放射能分布の経時的推移には褐色細胞腫患者群と疑診群の間に著しい差異はみられなかった。また、腫瘍部位は心臓、肝臓と比べて、放射能の消失が遅く経時的に腫瘍/臓器比が増加するため、適当な時間の後にシンチグラフィを施行することにより腫瘍の描出が可能であることが示された。

動物における体内分布及び排泄
131−MIBGはラットの静脈内に投与されると速やかに血中から消失した。投与30分後では大腸、小腸及び胃などの消化管にそれぞれ投与量の2〜10%が集積したが、その後、血中の放射能の消失に伴い速やかに消失した。これらの臓器への集積は、血中放射能を反映したと考えられ、肝臓、肺及び腎臓などの場合も同様の反映と考えられた。体外への排泄は速やかであり、投与から24時間後には尿及び糞中へそれぞれ70〜80%及び3〜6%が排泄された。

吸収線量 mGy/20MBq
臓器
副腎 3.4
甲状腺 1.0
肺 3.8
肝臓    16.6
脾臓 9.8
胃 1.5
腎臓 2.4
小腸 1.5
大腸上部 1.6
大腸下部 1.4
精巣 1.2
卵巣 1.3

ヨウ素131Iの核物理学的特性
物理的半減期 8.04日
主なγ線エネルギー 364kev(81%)
主なβ線エネルギー 606kev(89%)
β線組織内飛程 2mm


アドステロール131I
ヨウ化メチルコレステノール
副腎のイメージングへの試みは、1968年にDiGiulioらが131−1、1-(p-iodophenyl)-2,2-dichoroethaneを用いてイヌの副腎の描出に成功しているが、臨床応用には至らなかった。一方、同じ1968年にNagaiらが131−I-stigmasterolを用いてクッシング症候群における副腎皮質腺腫の陽性描出例を報告している。
その後、コレステロールが副腎皮質ステロイドの主要な前駆物質であることから、1970年にCounsellらは131−I-19-ヨードコレステロール(19-iodocholest-5(6)-en-3β-ol-131I)を開発したが、安定性、純度及び副腎集積性などの点で若干問題があることが指摘されていた。1975年Kojimaらは131I-19-ヨードコレステロールの合成分離過程の際、ある条件下では、化学的により安定で副腎集積性の高い物質が得られることを発見し、ヨウ化メチルノルコレステノール(131I)〔6β-iodomethyl-19-norcholest-5(10)-en-3β-ol-131I(NCL-131I)〕と同定した。
以後多数の基礎的及び臨床的研究により本剤がより優れた副腎イメージング剤であることが示され、今日、NCL−131Iは「アドステロールI131注射液」として副腎イメージングに広く臨床応用されている。
本品には添加物として、エタノール0.016ml,ポリソルベート800.032ml含有する。

体内薬物動態
本薬剤は副腎に取り込まれ、長く残存する。その集積率は131I−19−ヨードコレステロールに比べ高いと報告されている。また、肝臓への集積も認められるが、投与7日後において副腎・バックグランドの比が最も高く、通常、静注後7日目以降にイメージングを行うのがよいとされている。
また、糖質コルチコイドであるデキサメサゾンの投与によりACTHの分泌が抑制される為、正常あるいは過形成では本薬剤の集積は低下する。一方、腺腫では腫瘍部への集積には変化がないので、腺腫例と正常あるいは過形成との鑑別が可能である。
本薬剤の原発性アルドステロン症の腺腫への集積率はホルモン産生能と腺腫の大きさとに関係すると考えており、通常、直径が1cm以下の腺腫では診断が困難とされている。また、たとえ直径が1cm以上の場合でも、ホルモン産性能が低い場合、陽性描出不可能な場合がある。
副作用にかんする調査症例数2,500症例において38症例(1.52%)に顔面紅潮、心悸亢進などの血管迷走神経反応、及び発疹その他が認められた。
臨床上特に留意すべきこととして、飲酒に対し強い反応を示す患者には慎重に投与すること。

用法及び用量
本品には生理食塩液又は注射用蒸留水を加えて2倍以上希釈する。次に、その約18.5MBqを被検者に30秒以上かけてゆっくり静注し、静注7日以降にシンチカメラを用いて、副腎シンチグラムを得る。
尚、年齢、体重により適宜増減する。

使用上の注意

1.一般的注意
(1)本品はエタノールを1.6V/V%含むので、生理食塩液又は注射用蒸留水を用いて2倍以上に希釈し、30秒以上書けてゆっくり投与すること。
(2)本品投与に当たっては、体内で遊離した放射性ヨードが甲状腺に摂取されることを防止するため、適当なヨード剤(例えばルゴール液など)で甲状腺をブロックすること。
(3)副腎及び性腺の被ばくが多いので副腎疾患が強く疑われる場合を除いて投与しないこと。
(4)患者への被ばくを軽減させるため投与量は最小限にとどめること。
 (5)検査前には下剤等により排便の促進をさせたほうがよい。
 2.次の患者には投与しないこと
 (1)ヨード過敏症感者
 (2)妊婦又は妊娠している可能性のある婦人ならびに授乳中の婦人。
 (3)副腎疾患が強く疑われる者以外の患者
 (4)18歳未満の者には投与しないことを原則とする。

 3.次の患者には慎重に投与すること。
 (1)薬物過敏症又はアレルギー性体質の患者。
 (2)飲酒に対し強い反応を示す患者。(血管迷走神経反応の副作用があらわれやすい。)
 4.副作用
 (1)血管迷走神経反応:ときに顔面紅潮、心悸亢進、吐気・嘔吐、めまい、頭痛、発汗、息苦しさ、又、徐脈の症状があらわれることがある。
 (2)アレルギー反応:まれに発疹の症状があらわれることがある。
 (3)その他:ときに腹部痛の症状があらわれることがある。なお、失神、失禁、心停止を起こした症例が報告されている。

動物における体内分布及び排泄
本薬剤をWistar系ラットに静注した場合、最初肝臓、肺、血液に多く分布する。一方、副腎には最初投与量の1%以下の集積率であるが、投与3日後には2〜3%の集積を示しその後はほとんど代謝されずに残存する。それに対して、他の臓器では集積率が低く、体外への排泄も角谷かであり、3日後までに投与量の約50%が、10日後までに80%が糞尿中に排泄される。その排泄は尿中よりも糞便中への方が多いと報告されている。

吸収線量
臓器 mGy/18.5MBq
全身 4.4
肺 8.4
肝臓 8.0
脾臓 8.9
副腎 4.6
腎臓 4.6
睾丸 3.7
卵巣 40.3



 インジウム(111In)オキシン
 インジウムオキシキノリン液
 血栓形成部位、炎症部位診断薬
 インジウム(111In)オキシン液は、血栓形成部位及び炎症部位の診断を目的とする体内投与用放射性診断薬である。
本剤により、従来必要であった、塩化インジウム(111In)と8-ヒドロキシキノリン(以下オキシン)によるインジウム(111In)オキシキノリン(以下、111In−オキシン)の調整を省くことができるため、111In−標識血球の調整が簡便化され、術者への被ばくを軽減することができるようになった。
111In標識血小板は、動静脈血栓の検出、動脈硬化病巣の検出、腎移植後の拒絶反応の早期検出等に広く臨床応用され、その有用性が評価されている。一方、白血球はその機能として炎症巣に集積するため、インジウム(111In)オキシンにより白血球を表し期してその挙動をスキャニングすることにより炎症巣の診断に用いることができます。
本剤は、体外で血球を表紙記するための製剤です。本剤中の成分のほとんどは標識血球の調整時に除去され、体内に投与されるのは標識血球に結合した111Inのみである。
111In-オキシンは中性かつ脂溶性の飽和錯体であり、血小板又は白血球と反応させると、111In−オキシンは血球膜を透過し、インジウム111は血球内成分と結合し、解離したオキシンは血球外に排出される。
体内に再投与された111In標識血球は、それぞれの動態に従い血栓形成部位又は炎症部位に集積するため、それらを陽性像として描出できる。
本剤により標識した111In標識血小板は、静注後、主として脾臓及び肝臓に分布する。その他の臓器への分布はほとんど無視できる程度(投与量の約1%又はそれ以下)であり、また、血中の放射能はほぼ一定の割合で消失する。糞尿中への放射能の排泄は極めて緩徐であり(48時間までにそれぞれ投与量の約1%)、111Inは実際上その物理的半減期に従って体内より消失すると考えられる。
一方、111In標識白血球も、静注後、主として脾臓及び肝臓に分布する。他に、投与量の訳5%が肺に分布するが、これは急速に排泄され、通例4時間後には描出されない。その他の臓器へはほとんど分布せず(投与量の約1%又はそれ以下)、また、血中の放射能はほぼ指数関数的に消失する。111In標識血小板と同様に、糞尿中への放射能の排泄は極めて緩徐であり、111Inはその物理的半減期に従って体内より消失すると考えられる。
血栓シンチグラフィは、インジウム(111In)標識血小板を調整し、通常、成人対して3.7〜37MBqを静注し、24時間以後に全身像又は局所像を撮像する。必要に応じ、3から6時間後の早期像を撮像する。
炎症シンチグラフィは、インジウム(111In)標識白血球を調整し、通常、成人には3.7から37MBqを静注し、24時間以後に全身像または局所像を撮像する。必要に応じ、3〜6時間後の早期像を撮像する。
主な注意事項として、すべての操作を無菌的に行うこと。微量金属イオン等の混入を防ぐため、清潔なガラス器具を用いること。血液から血球を分離する際には血球をよく洗浄すること。また、インジウム111In標識血球は投与前に十分洗浄すること。
血球の凝集又はインジウム111の血球から溶出を最小とするため、インジウム111標識血球は、調整後できる限り速やかに使用すること。

「吸収線量」
111In標識血小板
脾臓 138.5mGy/18.5MBq
肝臓  13.5
腎臓   7.5
骨髄   6.7
精巣   0.8
卵巣   1.7

111In標識白血球
脾臓 101.8mGy/18.5MBq
肝臓  13.1
腎臓   6.1
骨髄  12.8
精巣   0.8
卵巣   2.2


クエン酸第二鉄(59Fe)
鉄代謝異常及び造血機能診断薬
クエン酸第二鉄(59Fe)注射液は、血液疾患及び造血機能診断を目的とする体内投与用放射性医薬品である。
クエン酸第二鉄(59Fe)は、比放射能が高いため、体内の鉄代謝を乱すことなく鉄代謝機能の測定が出来る。また、トランスフェリンと速やかに結合し、他の血漿蛋白と結合しないため、直接静注することができる。
適用上の注意として、希釈する場合は、沈殿を防ぐため、日局クエン酸ナトリウム10及び日局塩化ナトリウム60mgを日局注射用水に溶かして10mlとした液を希釈液として使用する。
血液中に投与された59Feは、血漿から骨髄の赤芽球にとられ、ヘモグロビン合成に用いられることにより、赤血球として末梢血に出てくる。
骨髄部の放射能は投与後、血漿からの消失速度にほぼ一致して上昇し、4〜8時間で最高となる。2日目後以は、末梢赤血球の59Feの増加とは対照的に急激に減少し、5〜7日後にはほとんどの59Feの放射能は骨髄に認められなくなる。正常人の場合、大部分の血漿鉄は骨髄赤芽球のヘモグロビン生成能によって赤血球ヘモグロビンへ転入する。

投与方法
1. クエン酸第二鉄(59Fe)注射液を直接静注する方法
(1)  投与前、対照用として採血し、バックグラウンドカウント、血漿鉄量(PI)不飽和鉄結合能(UIBC)、ヘマトクリット値(Ht)等を測定する。
(2)  クエン酸第二鉄(59Fe)注射液185kBq以下を静注する。静注放射能量(A)は正確に測定しておく。
(3) 計数効率の補正、59Feの放射壊変による補正を行うために、一定量のクエン酸第二鉄(59Fe)注射液を採り、放射能量(S)を正確に測定し、生理食塩水液で希釈してスタンダードどする。
2. クエン酸第二鉄(59Fe)注射液を血中トランスフェリンと結合させた後、静注する方法
(1) 被検者より血液30〜50mlを採血し(滅菌、除鉄及びヘパリン処理)、                           無菌バイアル中に移す。一部を採り、バックグラウンドカウント、PI,UIBC、Ht等を測定する。
(2)  残りの血液より無菌的に分離した血漿にクエン酸第二鉄(59Fe)注射液185kBq以下を加え、37度で30分間インキュベートする。被検者のういBCが低い場合には、被検者と同じ血液型の正常人の血漿を用いてもよい。
(3)  この標識血漿185kBq以下を静注する。静注放射能量(A)は正確に測定する。
(4)  上記標識血漿の一部を採り、放射能量(S)を正確に測定し、生理食塩液で希釈してスタンダードとする。
測定法
1. 血漿消失率(PID)の測定法
(1)  クエン酸第二鉄(59Fe)注射液又はこれで標識した血漿を静注した後、5,10,30、60及び120分等の間隔で、反対側の肘静脈より3〜5mlずつ採血する。
(2)  ウェル型ガンマシンチレーションカウンターで、各時間の血液サンプルの一定量の放射能を測定し、片対数グラフの対数側に放射能をとり、採血時間に対しプロットする。
(3)  グラフ上の各点を通る最適直線を描き、投与直後(0分)の放射能をこの直線から外挿して求め、この放射能の1/2になる時間をグラフから求める。これを血漿鉄消失率半減期(PIDT2/1)とする。
2. 赤血球鉄利用率(RCU)の測定法
(1)  クエン酸第二鉄(59Fe)注射液又はこれで標識下血漿を静注した後、毎日又は隔日に2週間採血し、Ht値を求める一方、血液の一定量の放射能をウェル型ガンマシンチレーションカウンターで測定し、これより血液1m当たりのカウント(X)を求める。
(2)  投与したクエン酸第二鉄(59Fe)注射液の全カウント(Y)は、スタンダードのカウント(Z)より求める。
Y(cpm)=Z(cpm/ml)×スタンダードの希釈量(ml)×A/S
(3) 全カウント(Y)、血液1ml中のカウント(X)及び全血液量(BV)よりRCU(赤血球鉄利用率)を次式により求める。
RCU(%)=BV(ml)×X(cpm/ml)/Y(cpm)×100
3. 血漿鉄交代率(PIT)及び赤血球鉄交代率(RCT)
上記で求めたPIDT1/2、RCUmax及びPIより、PIT及びRCITを求める。PIT(mg/1日)=
0. 693×PI(mg/ml)×全血漿量(ml)×24/PIDT1/2(hour)
RCIT(mg/1日)=RCUmax(%)×PIT(mg/日)/100


「吸収線量」
肝臓 0.44Gy/37MBq
卵巣 0.24
心臓 0.24
脾臓 0.90
精巣 2.00
全身 0.24
骨髄 0.43
腎臓 0.32

 クロム酸ナトリウム(51Cr)

 ヒトの循環血液量測定については古くから色素を用いた希釈法など多くの測定法が報告されてきたが、それぞれ欠点があり臨床上広く用いられるに至らなかった。1950年になってGray,Sterlingらがクロム酸ナトリウム(51Cr)による赤血球標識法を発表し、51Cr法はその簡便さと、循環血液量のみならず赤血球寿命も容易に測定し得ることから臨床的に注目されるようになった。
 被検血液に本薬剤を加えると、6価のクロムイオン(Cr6+)は細胞膜を透過して、容易に赤血球に入り、還元されて3価のクロムイオン(Cr3+)となって、主としてヘモグロビンA3のβ-polypeptide chain結合する。未結合のCr6+はアスコルビン酸を加えることによりCr3+に還元するか、生理食塩液で洗浄することにより除去される。
 脾臓で51Cr標識赤血球が崩壊した後、クロムイオンは再利用されることなく急速に尿中に排せるされる。

 1.循環血液量・循環赤血球量の測定
 (1)アスコルビン酸還元法
 被検血液20〜30mlにACD液及び本薬剤1.11〜3.7MBqを加え放置後、アスコルビン酸を添加し51Cr標識液を調整する。51Cr標識血液10〜20mlを静注し、10〜30分後に血液5〜10mlを採血する。51Cr標識血液及び採取血液はいずれも一定量を生理食塩水で洗浄した後、その計数を測定し、次式により循環血液等を算出する。
 循環血液量(ml)=(51Cr標識血液1mlあたりの赤血球計数率)×(注入量)/(採取血液1mlあたりの赤血球計数率)
 循環赤血球量(ml)=循環血液量×静脈ヘマトクリット値×0.9*
 *静脈ヘマトクリット値の補正値
 (2)赤血球洗浄法
 被検血液20〜30mlにACD液及び本薬剤1.11〜3.7MBqを加え、放置後生理食塩水で洗浄し、最後に生理食塩水を加えて51Cr標識赤血球浮遊液を調整する。51Cr標識赤血球浮遊液10〜20mlを静注し、10〜30分後に血液5〜10mlを採血し、51Cr標識赤血球浮遊液と共に計数率を測定する。次式により、循環血液量等を算出する。
 循環血液量(ml)=(51Cr標識赤血球浮遊液1mlあたりの計数率)×注入量/(採取血液1mlあたりの計数率)
 循環赤血球量(ml)=循環血液量×静脈ヘマトクリット値×0.9*
 *静脈ヘマトクリット値の補正値
 2.赤血球量の測定
 本薬剤3.7MBqを用いて循環血液量・循環赤血球量の測定の際と同様の方法で、赤血球を標識する。51Cr標識液10〜20ml静注後経時的に採血し、計数率を測定する。次式により、赤血球生存率を算出しグラフ上にプロットする。
 赤血球生存率=(静注後任意日の採取血液1mlあたりの計数率)/(静注30分あるいは24時間後の詐取血液1mlあたりの計数率)×100
 計数率が半分になったとき、すなわち生存半減期を持って赤血球半寿命とする。

 動物における体内分布及び排泄
 マウス及びラットの赤血球をクロム酸ナトリウム(51Cr)で標識して静注し、残存する標識赤血球が投与時の10%に低下したときの体内分布は、マウスでは脾臓が14.4%、肝臓が11.6%、他の臓器は合わせて2%で、ラットでは脾臓が22%、肝臓が4.5%、骨髄が4.5%である。

 吸収線量
 臓器 μGy/37kBq
 全身 2.5
 肝臓 18
 脾臓 200〜700
 血液 14〜24
 生殖腺 2.2



 131I−HSA
放射性人血清アルブミン131I
 循環血漿量、循環血液量、心拍出量は種々の疾患によってもたらされる血行動態の変化を反映しており、その値を正確に、繰り返し、しかも容易に測定できることが、日常診療に活用するための必要条件である。これらの測定に用いられている原理は希釈法であり、希釈物質としては血管外への漏出が少ない色素や放射性同位元素が利用されてきた。現在では特に循環血漿量、循環血液量の測定にヨウ化人血清アルブミン(131I)を用いる方法が一般的となっている。
 本薬剤は、要素131で標識した人血清アルブミンの溶液で、アルブミン1グラム分子に対しヨウ素1グラム原子以上を入れないようにヨウ素化してある。静注された標識人血清アルブミンは、血液中の人血清アルブミンの挙動を反映する。
 本薬剤には添加物としてリン酸一カリウム4mgを含有する。

 用法及び用量
 1.循環血漿量の測定
 本薬剤0.185〜0.74MBqを静注し、10〜15分後採血し血漿中の放射能を計測する。注射全放射能と10〜15分後血漿中放射能を計測する。
 循環血漿量=(注射液を希釈した者1mlあたりの計測値)/(注射後血漿1mlあたりの計数値)×希釈倍数×注射量(ml)
 循環血液量の測定
 循環血漿量を求めた後、ヘマトクリット値(Ht)から次式により算出する。
 循環血液量=循環血漿量/(100−Ht)×100
 3.血液循環時間の測定
 本薬剤0.185〜1.85MBqを可及的速やかに注射し、ガンマカメラ又は指向性シンチレーション検出器を測定しようとする部位に当て、放射能の出現までに要する時間を測定する。
 4.心拍出量の測定
 本薬剤0.185〜1.85MBq静注後、ガンマカメラ又は指向性シンチレーション検出器を心臓部にあて、放射能を連続記録する。注射5分後に採血し、体外計測値を較正する。
 心拍出量(ml/分)=(注入した総計値)×60/(血液中の平均計数値)/(第一次循環に要する時間(秒)

 適用上の注意
 本薬剤を投与することにあたっては放射性ヨウ素が甲状腺に摂取されることを防止するため、投与前日から試験後も数日無機ヨウ素1日20mg以上を投与し、甲状腺摂取能を抑制しておく必要がある。

 体内薬物動態
 本薬剤は静注した場合、その放射能を血液たん白に転荷することはなく、体内では血漿成分と同じ挙動を示す。静注後10分以内に循環血液と完全に混合し、1時間後にその90%は血漿中に存在し、血液及びリンパ組織に7〜13時間とどまる。その後ヨウ化人血清アルブミン(131I)は分解されて131Iはy主として尿中に排泄され、その量は1日に5〜15%であり、131Iの約5%が甲状腺に摂取されるが、遊離された131Iが更に体内でヨウ化人血清アルブミン(131I)に合成されることはない。

 吸収線量
臓器 μGy/185kBq
全身 440
血液 870
生殖腺 440


 アイソトープ内用療法
 放射性医薬品による核医学的治療は、粒子線(主にβ線)放出核種を病巣に集中(ターゲッティング)させて体内から選択的な放射線照射を行うため、内用療法あるいは内部照射療法とよばれる。外部照射治療に比べ、低線量率かつ持続照射となるため生物学的効果が異なる。利点は、がん病変の部位や個数にかかわらず治療できることである。
 甲状腺癌
 治療原理
 消化器から吸収されるヨードは、甲状腺濾胞上皮細胞に取り込まれて甲状腺ホルモンに合成される。同様に、甲状腺由来のがん細胞にもヨードを取り込む、この性質を利用して、放射性ヨード(131I)を甲状腺がんにターゲッティングし、放出されるβ線によって内用療法を行う。131Iのβ線の有効飛程は0.5mmであるため、微妙な転移巣(直径数mm)や潜在性(不顕性)病変がもっとも良い治療の対象となる。
 治療目的と適応
 術後の残存がん組織、局所再発あるいは遠隔転移(肺、骨など)を131Iで治療する。局所で進行した甲状腺がんに対しては肉眼的病変が無くても、残存甲状腺(甲状腺床)の破壊を目的とした131Iの投与が行われる。これをthyroid remnant abalationとよぶ。微小あるいは不顕性転移巣病巣の予防的治療であると同時に、開花観察がしやすくなるメリットもある。
 131I治療方法
 治療のターゲットによって投与量が決まる。ablationおよび局所残存病変に対しては2.22〜3.7GBq、肺転移に対して5.55〜7.4GBq、骨転移に対しては7.4GBqを経口投与する。わが国ではこのような投与法が一般的であるが、アメリカでは個々の症例ごとに投与量を調節する方法が定着しつつある。
 線量分布計算に基づき200cGyを全身被ばくの太陽限度として、投与48時間後の全身残量および肺集積放射能が、それぞれ4.44GBq、2.96GBq以下になるような最大の投与量を決定している。この方法で70例に2.59〜24.38GBq(平均11.4GBq)を投与しても副作用はなく安全であった。
 治療効果
 131I治療は、131Iの取り込まれる甲状腺がん病巣に対してもっとも有効な治療法である。分化がんの転移あるいは再発巣の約75〜80%に集積がみとめられ、少なくとも半数に高い治療効果が期待できる。理論的には腫瘍の単位重量あたりの集積放射能が高く、病巣に長くとどまり、腫瘍内分布が均一であるほど治療効果が高い。そのほかに臨床的には、年齢、腫瘍の大きさ、転移の出現部位、組織型なども治療効果を左右する。
 再発の防止と延命効果
 甲状腺分化がんでは約30%が再発し、再発の2/3は術後10年以内に発生する。Mazzaferriらの多数例の検討によると、手術のみ施行した802例のうち38%が再発したのに比べ、術後に131I治療を追加した138例では再発率が9%に低下した。術後35年に及ぶ経過観察と死亡率の検討では、131I非治療率群は死亡率8.5%に対し、治療群ではがん死はゼロであった。甲状腺分化がんの10年生存率は90〜95%である。
 肺転移
 骨転移をともなわないかぎり肺転移が広範にみとめられても、131Iの集積がある場合は長期の生存が期待できる。肺転移の半数に131Iの集積があり、約3/4の症例に治療効果がみとめられる。年齢および肺転移巣のサイズは治療効果に影響する。若年者の肺転移には131Iがよく集積し治療効果が高い。131Iが肺野に強く集積するものの個々の腫瘍径がきわめて小さく、単純写真では判別できないような例がもっとも治療に反応する。
 副作用
 131I治療の副作用には、治療後すみやかに発生するもの(3ヶ月以内)と、晩発性(3ヶ月以降)に出現するもとのがある。7.4GBq以下の131Iの初回治療では、重篤な副作用はないと考えてよい。
 131I投与後数日間は全身倦怠や食欲不振などの放射線宿酔症状が出現することがあるが、1〜2日で改善する。唾液腺は131Iの生理的集積部位であり、放射性の炎症による腫脹や疼痛が一過性に生じることがある。131Iが肺へ高度に集積した場合、放射線性の肺線維症をきたす可能性があるが、実際にはまれである。生理的不順が一過性に生じることがあるが、女性で不妊、流・早産先天性奇形のリスクが高まることはない。
 骨髄機能障害は線量性依存性で、投与した131Iの合計が37GBqを超えると骨髄機能低下や白血病の発生は報告されている。急性骨髄性白血病が多く、131I治療後10年以内に発生する。頻度は0.5%であり、この白血病による死亡は、甲状腺がん再発によるがん死の危険率の1/4〜1/40と見積もられている。全身被ばくを1回あたり200cGy以下に抑え、治療と治療の間隔をあけることで危険は低減できる。
 131I−MIBGによる治療
 治療原理と対象疾患
 131I−MIBG(meta-iodobenzylguanidine)は神経伝達物質ノルエピネフリンの類似体で、副腎髄質や交感神経終末に豊富に分布する。また、これら器官由来のさまざまな神経内分泌系腫瘍群にも集積する。代表的な褐色細胞腫、傍神経節腫、神経芽細胞腫、甲状腺髄様癌、カルチノイドなどがある。
 投与量は3.7〜11.1GBqの131−MIBGを30分〜4時間程度かけて緩徐に静脈内投与する。
 治療効果
 褐色細胞腫では約6割の症例で腫瘍の縮小、カテコールアミンの低下、自覚的な改善(ホルモン分泌過剰症状あるいは疼痛の緩和)がる。腫瘍の完全消失は6%と例外的で再発率が高いなど問題もある。しかし、褐色細胞腫に対しては化学療法や外部照射が無効であり、131I−MIBGが唯一の根治療法である。
 傍神経節腫の報告は少ないが、腫瘍縮小効果は認めないものの治療後3年を経過してもなお腫瘍の再増大はなく、治療前に頻発した血圧上昇発作もコントロールされている。
 神経芽細胞腫の奏功率は35%と褐色細胞腫より劣る。これは、強力な化学療法や外部治療がなされた上での無効令が131I−MIBGにまわり、ステージの進んだ症例が多いことが影響している。甲状腺髄様癌では他覚的改善38%、疼痛などの自覚症状の改善50%である。転移性カルチノイドでは他覚的改善19%と不良であるが、セロトニンの過剰分泌によるカルチノイド症候群の自覚的改善は65%にのぼる。
 モノクローナル抗体によるがん治療
 治療原理と利点
 体内投与した場合、がん抗原を認識するモノクローナル抗体は、抗原を発現しているがん組織に集積し免疫反応で結合する。放射性核種で標識された抗体を投与し、体内から悪性腫瘍の放射線照射を行う内用療法は、放射免疫療法(radioimmunotherapy:RIT)とよばれる。腫瘍組織を構成する細胞群における抗原の発現様式は不均一であり、すべての標的細胞が抗原陽性ではない。
 しかしRITの場合、かならずしもすべての標的細胞と結合する必要はない。壊変によって生じるβ線などの電離放射線は、細胞核へのヒットによって致死効果を与える。青のエネルギーに応じて一定の範囲(数μ〜数mm)の組織を友好に照射できるためである。
この点が、薬剤を用いるターゲッティング療法と根本的には異なるRITの大きな利点である。
 治療効果
 アメリカを中心に血液疾患(悪性リンパ腫)での有効性が確立され、臨床試験が最終段階になっている。骨髄移植を前提に超大量の131I−BIモノクローナル抗体を悪性リンパ腫の再発症例に投与した。21例中19例(90%)に治療効果を認め、そのうち16例(84%)では腫瘍が完全に消失し、2年生存率は93%であった。
 また、骨髄移植をせずにすむ投与量で同一の抗体を用い、化学療法無効の悪性リンパ腫28例を治療したが、従来の治療法に比べると圧倒的に良好な治療成績である。

 転移性骨腫瘍の除痛療法
 骨転移による疼痛
 我が国で注目を集めている新しい治療手段がストロンチウム(Sr)-89による骨転移の除痛療法である。がん告知率や患者のQOL改善へ関心の高まりにしたがい、効果的な疼痛緩和への需要が増加している。乳ガン、前立腺がんもしくは甲状腺がんでは、進行すれば約80%の症例に骨転移が生じる。骨転移はしばしば激烈な疼痛をきたし、従来からの治療方法では痛みのコントロールに苦慮する症例も多い。
 89Srの除痛効果の発現機序
 ストロンチウムは、静脈内投与するとカルシウムと同様に骨質ミネラルに集積し、腎尿路系から排泄される。転移により造骨が亢進した骨には、正常骨より約3倍多く集積して約7倍長くとどまる。89Srはβ線放出核種で、有効飛程は2.4mmであり、その範囲以内の転移性腫瘍が照射され脱落する。
 その結果、解除され1〜2週で疼痛が軽減する。投与数日で疼痛改善を示す症例もあり、腫瘍体積減少による減圧以外の機序も想定される。転移巣に浸潤したリンパ球は、痛みを強くするインターロイキンおよびインターフェロンなど放出するといわれている。照射により、リンパ球のサイトカイン放出が低下することも除痛に関与するとがんが得られる。
 89Srの治療効果と副作用 
 鎮痛効果の発現には1〜2週間を要する。1.5〜2.2MBq/kgの89Srの1回投与にする前立腺がんおよび乳ガンでの有効率は約89%と高く、約20%〜30%はほかの鎮痛剤の投与が不要となる。効果平均持続時間は平均3〜6ヶ月と長く、再投与しても除痛効果の低下はない。5〜10%で投与36〜72時間後に一過性の疼痛増強(flarepain)があるが、対照的に対処できる。骨髄線量は1.0〜1.9cGy/MBqとなり、80%の症例で一過性の血小板減少が認められるものの、半数以上は正常範囲内での変動にとどまる。
 89Srの適応
 本剤の適応は、転移性骨腫瘍による疼痛で、その部位に骨シンチグラフィの集積増加を示すことが原則である。骨転移が生じても、生命予後が比較的長いがんほど本治療法の必要性が高い。局所療法である外部照射と異なり転移の部位や個数は問わない。前立腺がんのほうが乳ガンより造骨性(osteoblastic)転移の割合が多いが、除痛効果は両者ほぼ同等である。したがって、造骨性の転移と同様に破骨性の(osteoclastic)転移にも適応がある。
 また、痛みのない症例にまで適応を広げる考え方もある。89Srは外部照射に比べ骨転移あるいは疼痛出現までの器官を有意に延長する。89Srには肉眼的な腫瘍の縮小効果がないとされているものの、微妙な不顕性の骨転移に対して抑制効果があることを、この現象は示唆する。
 骨転移治療用の放射性医薬品
 89Sr以外にも、レニウム186標識hydroxyyv ethylidene diposphonate(186Re-HEDP),サマリウム153標識ethylenediaminetetramethlene phosphonic acid(153Sm-EDTMP)スズ117m標識diethylenetriaminepentaacetic adic(117mSn-DTPA)
 併用療法
 89Srと様々な治療法との組合せが試行されている。外部照射と組み合わせて不顕性の病変を放射性医薬品が担当する方法。少量のシスプラチンと併用することで放射線増感作用を期待する方法。骨吸収を抑制するビスフォスフォネート化合物を併用し、除痛効果を高める方法。さらに、複数の飛程の異なる放射性医薬品を組み合わせて治療効果を高める方法などが提案されている。


 99mTc−アネキシンV

 はじめに
 アポトーシス(日本語訳"細胞自滅")とは、個体発生、器官形成、あるいは恒常性の維持のために生体にとって不必要な細胞や有害となる細胞を除去する、遺伝子によりプログラムされた能動的なメカニズムである。1972年、オーストラリアからスコットランドのアバーデン大学病理学部門Currie教授のもとに留学中だったKerrと、大学院生だったWyllieが、ネクローシスとは形態学的に明らかに異なる細胞死が存在することに気づき、新しい細胞死の概念として発表した。ネクローシスでは、細胞全体やミトコンドリア、小胞体の膨潤をきたして細胞膜融解が起こり、炎症を伴う。これに対し、細胞の縮小、クロマチンの核膜周辺への凝縮、核の断片化、くびれて膜に包まれた小体(アポトーシス小体)の形成を経て、最終的にマクロファージや隣接する食細胞によって貪食除去され、炎症を起こさない細胞死の現象を観察した。彼らは、この死をアポトーシス[(apo=離れて)+(ptosis=落ちる;花びらや木の葉が散る意味のギリシャ語)]と名づけ、ネクローシスと区別した。
 個体は、細胞の増殖や分化だけでなく、アポトーシスによる細胞の死によって生命を維持しており、アポトーシスによる制御のアンバランスに起因して様々な疾患が生じうる。アポトーシスが過度に起こると細胞の異常現象に起因する疾患を引き起こし、逆にアポトーシスが十分に起こらないと、細胞の異常増加を原因とする疾患が起こると考えられる。
例えば、癌や自己免疫疾患の発症はアポトーシスの抑制が関与しており、一方、その亢進がエイズに見られるT細胞の異常現象、アルツハイマー病における神経細胞死に関わっていることが報告されている。そのため、このような疾患において病体の把握、治療効果の判定に有用な情報を提供すると期待される。

 アポトーシスの検出
 従来、アポトーシスとは電子顕微鏡による観察から病理学的、形態学的に定義された細胞死であったが、現在はこれに加え、DNAのヌクレオソーム単位での断片化(電気泳動によるDNAラダーの検出)という生化学的所見を持ってアポトーシスを定義している。また、免疫組織科学的方法として、断片化されたDNAの3'−OH−末端を認識する酵素ターミナルデオキシヌクレオチドトランスフェラーゼ(TdT)を用いて、組織切片におけるアポトーシスの局在を検出するin situ end labeling法(TUNEL法)が開発され汎用されている。さらに、ここの細胞に蛍光標識を施すことによりアポトーシスを定量的に評価可能なフローサイトメトリ法も広く研究に用いられているが、その対象は遊離細胞に調整可能な組織に限定されてる。しかし、実際に臨床の場でアポトーシスが関与する疾患の診断、経過観察を行うためには、低侵襲で広範な検索を可能とし、さらに定量性を併せ持った検査法の開発が望まれる。
 アポトーシスの初期には、細胞形質膜内層に局在していたホスファチジルセリン(PS)、フォスファチジルエタノールアミンの表層への発現、フォスファチジルコリン、スフィンゴミエリンなど表層脂質の内層への移行が観察される(スクランブリング)。この変化は、クロマチンの凝縮、核の断片化、アポトーシス小体の形成よりも早期に起こるため、この現象をとらえることにより、DNAの断片化を検出するTUNEL法など従来の検査法よりも鋭敏にアポトーシスの存在をとらえられる可能性があると考えられた。
 アネキシンは、種々の細胞に発現しているカルシウム依存性リン脂質結合タンパク質である。このファミリーに属するアネキシンVはPSに強い親和性を持つため、その性質を利用し、RI標識アネキシンVをアポトーシスのが増加に利用することを試みた。

 開発の経緯
 標識と体内動態
 アネキシンVには、hydrazinonicotinamide(HYNIC)を介して99mTc標識がなされ、安定した標識率を選るに至った。ラットを用いた99mTc−アネキシンVの体内動態試験では、血中からのクリアランスは迅速であり、バックグラウンドの低い良好な画像が得られた。ただし、投与30分後から今回検討した3時間後までは腎臓にもっとも高い集積が認められ、脾臓、骨髄、肝臓にも集積が見られた。腎臓と膀胱の放射活性は時間経過とともに増加し、泌尿器系を介した99mTc−アネキシンVの排泄が予想された。また、腎臓の皮質には高濃度のPSが存在するとの報告があり、これも、本トレーサの腎臓への高集積の一因であろうと考えられる。

 研究成果
 劇症肝炎モデルのイメージング
 増殖因子、分化因子の刺激により、細胞は増殖、分化を促される。また細胞の生存自体が増殖因子に依存しているため、増殖因子の除去は細胞死を誘導する。しかし、さらに積極的に細胞を死に至らしめる細胞死誘導因子が存在し、これが細胞膜上の受容体と結合することにより、細胞内へアポトーシスの信号が伝えられ、細胞死の機構が活性化されることが明らかになってきた。その代表的なシステムの一つがFas-Fasリガンド系である。FasはTNF/NGFレセプタースーパーファミリーに属するI型膜貫通タンパク質である。全身ほぼすべての組織、臓器で発現が認められ、胸腺、肝臓、心臓、肺での発現は特に強い。FasリガンドはTNFファミリーに属するU型膜貫通タンパク質であり、精巣での著しい発現のほか、胸腺、脾臓、リンパ節や活性化された成熟T細胞での発現が確認されている。
 抗Fasモノクローナル抗体(Jo-2)が肝細胞のFas受容体と結合することにより、アポトーシスシグナルの機構が活性化されるため、抗Fas抗体を腹腔内に投与すると、劇症肝炎に酷似した急性肝不全が起こると報告されている。我々は、まずこの系を利用して99mTc−アネキシンVによるアポトーシス画像可能の評価を試みた。Fas機能を欠損した突然変異マウスであるlpr(lymphoproliferation)マウスと、野生型マウスの腹腔内に抗Fas抗体を投与し、1時間後に99mTc−アネキシンVを静注し、さらに1時間後にガンマカメラで撮像を行い、抗Fas抗体を投与前の99mTc−アネキシンV画像と比較した。野生型マウスの肝臓では、抗Fas抗体投与後の撮像で著明な99mTc−アネキシンV画像の集積が見られたが、lprマウスでは、抗Fas抗体投与前の画像と比べて変化を認めなかった。
 心臓モデルのイメージング及び治療効果判定
 移植臓器の拒絶反応は、移植患者の術後管理において依然最も重要な問題である。現在、心臓移植急性拒絶反応の程度を評価するには、右心カテーテル法を施行し、得られた生検心筋の組織学的診断を行うのがもっとも信頼度の高い方法とされている。しかし、心筋生検は侵襲的検査である上に高額の医療費がかかり、さらに、三尖弁閉鎖不全症などの合併症を伴う可能性もある。また、生検によって得られる組織は、心室中隔右心側の限られた領域の内膜下心筋小片であるため、その評価に際しては擬陰性の可能性を否定できない。
 一方、心移植の急性拒絶反応においても、他臓器移植の場合と同様、アポトーシスが重要な役割を演じていることが報告されている。移植片に浸潤した細胞障害性T細胞はFasリガンドを発現し、標的細胞上のFasとの相互作用により、心筋細胞、内皮細胞、炎症細胞にアポトーシスを誘発する。また、生検心筋組織でアポトーシスを起こしている心筋細胞の割合と、従来の組織所見に基づく急性拒絶反応の程度との関連が報告されている。
 実験にはラット異所性心筋移植モデルを用い、術後7日まで99mTc−アネキシンVイメージングを施行し、全身カウントに対する移植心のカウントを算出した。異系移植モデル(PVGラット→ACIラット)の移植心には、術後4日目から同型移植モデル(ACIラット→ACIラット)に比べ有意に高い99mTc−アネキシンVの集積を認め、術後6日にピークを迎えた後も、観察終了の7日まで高集積を持続した。他方、同系移植心には、観察貴簡を通じて9mTc−アネキシンVの有意な集積増加は認められなかった。
 さらに、術後4日目からサイクロスポリン(10mg/kg/day)の経口投与を始めた異系移植モデルの移植心においては、治療後14日目には99mTc−アネキシンVの集積が移植翌日と同程度までに低下し、組織学的検査でもアポトーシス細胞を認めなかった。

 抗癌剤感受性評価に対する応用
 化学療法を行うにあたり、抗癌剤感受性の評価は、抗癌剤の種類、用量の選択、治療方針の決定にきわめて重要な情報を提供すると考えられる。日常臨床においては、画像診断により腫瘍の大きさや個数の変化を観察し、抗癌剤の有効性を評価するのが一般的である。また、臨床で用いられる癌取り扱い規約の組織学的効果判定基準は、腫瘍病巣中心部をとおる最大割面における変性、壊死、融解部の程度によって判定される。しかし、これらは、いずれも抗癌剤による治療プロとコールの最終段階で初めて可能となる方法であり、投与開始時に必要とされる個々の症例に対する抗癌剤感受性の判定を可能にする検査法の臨床応用が望まれる。
 抗癌剤がガン細胞にアポトーシスを誘導するとの多数の報告がなされ、アポトーシスは癌化学療法の治療効果に直接結びつく重要な現象であると考えられている。そこで、抗癌剤投与早期に認められるアポトーシスの程度を99mTc−アネキシンVを用いて評価することにより、抗癌剤感受性の判定、すなわち治療効果の予測が可能か否か検討するため、腫瘍マウスを用いた基礎的研究を進めている。

今後の展開
 先に述べたように、アポトーシスが病因、治療と深く関係する疾患は多く報告されている。現在、上記以外にもアドリアマイシン心筋症、心筋虚血、心筋炎、脳虚血などの動物モデルを用いて実験が進行中である。
Sr−89骨転移疼痛緩和療法

 転移部の骨代謝
 正常骨においては骨吸収と骨新生(リモデリング)がバランスよく繰り返しており、常に新鮮な骨が維持されている。骨は、骨芽細胞の一種であるlinig細胞に覆われているが、遊走してきた破骨前駆細胞は、露出面に接着し、破骨細胞に分化し骨吸収を始める。次いで骨吸収により生じた骨吸収窩の吸収面をマクロファージが平滑にし、骨芽細胞の接着を促す。骨芽細胞は新たな骨形成を行い、骨吸収窩を元の状態に戻す。リモデリングには、加重などの物理的刺激や、ホルモン、サイトカイン等、様々な要因が関与している。これらの要因で、骨吸収がより亢進したり、骨新生が低下すると、骨量の減少が起こる。
 骨転移部では様々なサイトカインが骨転移部より放出される。これらは破骨細胞を活性化し、炎症細胞、免疫担当細胞を引きつける。これら細胞から放出されるサイトカインによっても破骨細胞は活性化され、骨吸収が促進すると考えられる。多くの場合、破骨細胞活性化に引き続き、転移巣局所で、骨芽細胞による骨新生も同時に起きる。骨吸収が骨新生より亢進している場合、エックス線写真上、溶骨性転移として、前立腺癌骨転移のように骨新生が上回る場合は、造骨性転移として認められる。
 疼痛の発生については、さまざまな機序が考えられているが、腫瘍増殖に伴う内圧亢進に因る骨膜進展による痛み、腫瘍細胞、炎症細胞、破骨細胞等から放出されるサイトカインによる痛み等の説明がなされている。
 疼痛治療
 現在行われている疼痛治療はいろいろある。腫瘍が抗癌剤に感受性がある場合は、積極的に抗癌剤治療が行われるが、感受性がない場合、合併症等で抗癌剤治療が行えない場合は、疼痛発生経路をブロックするさまざまな手段が考えられる。
 WHOの3段階疼痛ダラーは、通常量の鎮痛剤で効果のない癌性疼痛に対して、積極的に麻薬性鎮痛剤使用を推奨し、こにれより、末期癌患者のQOLは、著明に改善された。しかし、悪心、嘔吐、便秘などの副作用により疼痛緩和に十分な量を投与できないこともしばしば経験する。
 疼痛を有する骨転移部位が限局性の場合、局所放射線照射治療は、有効率の高い治療法であり、その効果も比較的長く持続する。40Gy照射で50%以上の症例で疼痛の完全消失が認められたとの報告もある。疼痛部位が広い範囲にわたる場合、欧米では、半身照射も行われている。しかし、再発例に対しては、再治療は困難である。
 骨集積性放射性医薬品は、いろいろ臨床応用されているが、現在、欧米で承認を受けているのはSr−89、Sm−153であり、Re−186はスイスでのみ承認を受けている。P−32燐酸塩は1970年代に骨転移疼痛への応用の報告が集中している。主として真性多血症の治療に用いられ、核酸代謝の盛んな骨髄、転移巣に集積するため、骨髄毒性が強い、SrイオンはCaイオンと類似の動態をとり、Ca代謝の亢進した転移部位に集積する。Re−186や
Sm−153は、HEDPやEDTMPに標識することにより骨転移部へ集積する。Sn−117m集積機序については不明な点が多い。
 これら、放射性医薬品は、治療が1回静注と簡便であること、複数にわたる部位の痛みを対象とできること、効果が持続することが特徴である。治療効果は、ほぼ同等の鎮痛効果が報告されており、毒性も類似している。Sr−89の物理学的特性は、半減期50.5日、β線最大エネルギー0.46Mev、平均エネルギー580Kev、骨に対する飛程距離2.4mmである。

 鎮痛効果
 本邦では1992年4月〜1993年12月に第U相臨床試験が、5施設の参加で、1994年4月〜1995年7月に第V相臨床試験が全国16施設の参加で行われた。製剤は、1バイアル中148MBqのSr−89を有する。4mlの無色透明の注射液として供給された。浸透圧比約1であり、塩化ストロンチウムを40〜85mg含有している。第T相、U相とも、1.5MBq/Kgまたは2.2MBq/Kgの用量が投与された。
 第U相では、前立腺癌骨転移症例9例が登録され、7例が評価可能とされた。評価可能症例7例全例に何らかの効果が認められた。
 第V相では、前立腺癌53例、乳癌18例、その他固形眼19例(含原発不明3例)の90例が登録され、88例が評価対象となった。88例中18.2%で疼痛がほぼ消失し、約70%で軽度改善以上の効果を認めている。鎮痛効果の発現により、患者の気分、全身状態等のQOLは改善した。
 効果発現までの期間は、大半の症例で1週間以内であった。4週目までに有効例の90%以上の症例に効果の発現を見た。一方、効果の持続が長く、半数以上は、10週間以上の鎮痛効果を認めている。

 副作用
 Sr−89投与時のおもな副作用は、約12%程度の症例に見られた一過性の疼痛増強(flare pain)と、27%にみられた白血球減少、29%にみられた血小板減少等の血液毒性である。Flare painは、投与後1日から1週間程度の間に出現するが、通常、無治療ないし鎮痛剤の一時的増量で対処可能である。血球減少は投与後6〜8週目に治療前値より30〜40%減少し、その後徐々に回復する。このため、投与前に患者造血能が保たれていることが必要である。
 Sr−89の効果は、用量依存的に高くなるが、1.5MBq/Kgでほぼプラトーとなり、それ以上の増量では効果に差がない。一方、用量依存的に血液毒性が強くなり、3.0MBq/Kgになると、血小板減少頻度は2.2MBq/Kgの28〜45%へと増加する。このため、至適投与量としては、1.5〜2.2MBq/Kgと考えられる。
 反復投与を行っても同様の効果があるとされており、血液毒性に注意を払えば、繰り返し治療可能である。
 放射線治療との比較では、局所放射線群とSr−89投与群、半身放射線群とSr−89投与群、の比較試験があり、有効率では外照射群の方が若干良いが、Sr−89投与群では、外照射群に比べて、約10%程度、治療後の新病巣の出現率が低くなった。また、局所外照射後のSr−89投与により、疼痛の再燃が抑えられたとの報告もあり、Sr−89のアジュバント効果(組織に残存して徐々に遊離する)が示唆されている。

 体内動態
 Sr−89は、1回静注で投与されるが、血中よりの消失は速やかで、骨以外への集積はほとんどなく、骨新生部へ取り込まれなかったSr−89の大半は、腎より排泄される。血中では、血漿中に存在し、血球に取り込まれることはない。Sr−89は、γ線を出さないため、集積の予測は、骨シンチグラフィで行うこととする。投与後の実際の集積をイメージ画像として選るには、制動放射線を利用した画像作成の試みがある。
 Sr−85による検討で、正常骨では、分布したSr−89は経時的に減少して行くが、転移部では、数日間にわたり集積が増加し、その後も長期にわたって保持されることが示されている。この結果、転移部への吸収線量は6〜61Gyと計算される。赤色骨髄への吸収線量は1.2Gy程度であり、Sm−153と同程度であると考えられる。

 法的規制
 Sr−89は純β核種であり、組織内飛程距離は、最大8mm、骨内では3.5mmしか飛ばない。1998年6月30日の医薬安発第70号通知で患者の退出基準は体内残存量200MBqとされた。この量であれば外来治療が可能となる。
 廃液として貯留槽の中に混入するSr−89は、半減期が50.5日と長いので減衰貯留することが非常に困難な施設が多く出て、使用の届出が出来ない施設が出てきて、放射性同位元素使用施設を有しながら治療が出来ない病院が出てくる可能性がある。
 廃棄物としてのSr−89は日本アイソトープ協会と岩手県滝沢村との協定した核種の中に入っていないので独立した容器に分別保管し、一定期間保管後日本アイソトープ協会に引き渡すことが考えられている。
 
 Sr−89の投与後の体外計測
 投与直後で体表から0.5,1.0,1,5mでそれぞれ、34.2,9,4,3,3μSv/h。1日後で0.5,1.0,1,5mでそれぞれ、20.2,5.4,2.1μSv/hであった。
センチネルリンパ節シンチグラム

 悪性腫瘍の転移は血行性転移とリンパ性転移がある。血行性転移は血流にのってアトランダムに生じるので転移部位の予測は困難である。リンパ行性転移は侵入したリンパ管の流域に生じる。よって腫瘍からリンパ流を観察すれば、転移リンパ節の予測が可能である。 一般的にリンパ節とは、リンパ管網のと中に存在する従結節状の構造物で、免疫機能を有し、異物、有害物を攻撃する。腫瘍といえどもリンパ節を素通りすることは難しい。
 センチネルリンパ節(Sentinel Node Lympho:SNL)とは、悪性腫瘍の原発巣からのリンパ流を最初にうけるリンパ節のことで、見張りリンパ節:歩哨(センチネル)リンパ節と呼ばれる。リンパ行性の転移はセンチネルリンパ節に始まる可能性が高い。そこで最初にセンチネルリンパ節だけを生検しSNLに転移していればリンパ節郭清施行をし転移がなければリンパ節郭清を省略でき患者さんへのQOLの向上につながることになる。
 検査法としては色素法と放射性同位元素法があり、どちらも腫瘍の周囲を囲むようにリンパ移行性のある物質を投与してその流れを追跡する方法である。放射性同位元素法の利点としては検出率が高く、短期間で習熟でき、視野外も検索可能だということである。色素法の利点は設備投資が特になく、費用も安く、放射線に被ばくをする不利益もない。
 乳がんの場合の検出率は色素単独法で76%、ガンマプローブ法で92%、併用法で91%、シンチグラフィの追加で93%であった。(Alazraki NP:Semi Nuc Med 30(1)56-64,2000)
放射性同位元素法によるセンチネルリンパ節検索手順
 放射性コロイド(99mTc-Sn Colloid)や99mTc-フチン酸、99mTc-HAS-Dが日本では使用されている。当病院はスズコロイドを胃がんに、フチン酸を乳がんに使用していて腫瘍周囲組織に注入する。放射能はリンパ節検索に約37MBq/0.5mlを腫瘍周囲に注入したものとするように放射能を調整する。現在は前日投与法と当日投与法がなされている。体内のバックグラウンドとセンチネルリンパ節のカウント比がどちらがよいか検討中である。移行速度は乳がんで30〜60分、胃がんで2,3時間で移行する。移行時期にガンマカメラでシンチグラムを撮像し、手術中にガンマプローブ(小型検出器のサーベイメータ:CdTe)でセンチネルリンパ節を検出する。最近は手術室で手に持つことの出来るイメージングカメラも開発されており、これも大変期待されている。色素法を併用する場合には、手術直前に色素を投与する。