森博嗣


表は上段が左から標題・作者・出版社・点数(10点満点)、下段が感想となっております。

「地球儀のスライス」森博嗣 講談社1点
久しぶりに「買うんじゃなかったなぁ」と思った一冊です。
この作者の犀川・萌絵シリーズ以外を読むのも、短編を読むのもはじめてでした。
が。
とにかく、何がやりたいのか?何が言いたいのか?わからない作品が目白押しでした。
それも、麻耶雄嵩のような、思想的なものも感じさせない、とにかくわからないだけで、面白くない作品なのです。
ということで、感想は無し。
語る必要も読む必要も無いというのが、私の唯一の感想です。(--;

「有限と微少のパン」森博嗣 講談社5点
犀川&萌絵シリーズの最新作にして、(多分)最終作。
「F」ではじまったこの世界を閉じるのは、やはり、真賀田四季という天才でした。
このシリーズの本当の主人公は犀川&四季で、萌絵というのは単なる狂言回しに過ぎなかったのでは無いか?という気がします。
ということは、つまり、このシリーズは「F」と本書の2作を読めば十分ということにもなります。
まぁ、個人的に好きな作品もあるのですけど、結局読者がこの作者に求めているのはこの2作ような世界なのだと思います。
でも、ミステリーとしては可もなく不可もなくという感じで、個人的評価は高くないです。
でも、「F]のイメージを壊すことなく完結したという点では、続編としての評価はできると思います。
最後に。
本書を読むに際して「F」は必読です。

「数奇にして模型」森博嗣 講談社4点
またまた犀川&萌絵シリーズです。
が、前作と打って変わって辛口な採点です。
なんか、本書のトリックはずるいなぁ。って印象だからです。
それに犯人および犯人候補な人々がすべて気に入らない---友達になりたくないタイプというのも理由の一つです。
まぁ、よくわからん理由(=個人の美学?)に基づいて行動、殺人をするというのは森作品の特徴ではあると思うのですが、今回はその美学が理解(共感?)の範疇をはるかに越えていました。
さらには(犯人の行動は)何か行き当たりばったりなのに周りが勝手に混乱していくと言う展開も嫌いです。
密室トリック的にも、こちらが森作品に期待しているようなものでは無かったので不満です。
作者は、期待を裏切る、既成概念を崩すというのにチャレンジしているのかもしれませんが。。。
どうせ裏切るなら前作のように気持ち良く裏切って欲しいものです。
大御坊というアジなキャラクターが新登場するのがせめてもの救いかなぁ?
P.S.わたしは単位なんかどーでも良いと思いますけどねぇ。

「今はもうない」森博嗣 講談社8点
何故か惰性で買い続けてしまっている、犀川&萌絵シリーズです。(笑)
多分、私は、本シリーズではこの作品が一番好きです。
確かに最初に「すべてがFになる」を読んだ時ほどの驚きというか、新鮮味はありませんが、物語的にはこの作品の方が好みです。
帯に「結末は決して他人には語らないでください。」と書いてあるので、結末も話の粗筋も書きませんが、この結末には目が点になりました。
「やられたぁ!」「ずるい!」「いったい何なのだぁ?」という感想が頭をよぎった直後に思わず微笑んでしまう。。そういう結末でした。
ミステリー的に欠陥が無いか?とか、このミスディレクションに何の意味があるのか?ってことは私にはわかりかねますが、久しぶりにだまされる心地よさを味わうことができた作品でした。
私の思慮不足&脳みそが少ないせいかもしれませんけど。(^^;
あと、本書の主人公(的)男性が、私にとって好ましい性格だったってのも好印象の理由の一つです。
要するに私と感覚的に非常にシンクロした本でした。

「夏のレプリカ」森博嗣 講談社5点
これまた犀川&萌絵シリーズです。
奇数章だけで構成される前作に対して、こちらは偶数章だけで構成さ れています。
時系列的にはこういう章構成になるのですが、この2冊を交互読みす るメリットは無いと思います。
私は交互読みにチャレンジしたのですけど、作品の雰囲気が全然違う こと、登場人物は時間的にはつながってるけど、精神的にはつながっ ないように思えること。この2点から交互読みは混乱をまねくだけの ように感じました。
話としては、「幻惑…」の方がはるかに面白いです。
本書は叙述トリックに基づく作品で(これくらいなら書いてもネタば れではないでしょう)奇をてらってはいるもののなんか釈然としない し、登場人物に今一つ共感できないのです。
#某犯人の思考をトレースできないんですよ。
#この部分結構重要だと思うんですけど…
ま、萌絵の成長の一過程、あるいは彼女の今までに無い一面を見ることができるということ を評価すると興味深い一冊にはなるのですけど…
ミステリーとして本書単独で評価すると5点以下になります。

「幻惑の死と使徒」森博嗣 講談社7点
例の(笑)犀川&萌絵シリーズです。
#本シリーズは推理小説なのか恋愛小説なのか???(笑)
公衆の面前でショーの最中に殺されたマジシャン。
彼に隠された驚くべき秘密…
名前、人を認識する記号、それの持つ意味について考えさせられると ともに、全体の滑らかな流れと登場するキャラクターに魅せられた好 作品でした。
このシリーズは巻を重ねる度にキャラクターが魅力を増してきて面白 くなってきてると思います。
ただ、最初に「すべてがFになる」で受けた斬新で衝撃的作品世界は だんだん薄まってきてるように思いますけど。





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