柴田よしき


表は上段が左から標題・作者・出版社・点数(10点満点)、下段が感想となっております。

「RED RAIN」柴田よしき ハルキ・ノベルズ5点
娯楽SF作品です。
小ネタ豊富で、多分に映像的なのが、いわゆるSFっぽいです。
メインテーマは、作者得意?の異端モノ。
作品中で、はっきりと主張があるわけでは無いのですが、どうして他と違うものを受け入れることができないのだろう?という疑問が、そこはかとなく伝わってきます。
という、ムズカシイ話は別にしても、娯楽作品として満足できるものでした。
ストーリー展開が多少強引ですがね。(笑)

「少女達がいた街」柴田よしき 角川書店9点
WISH YOU WERE HERE.
1975年に高校生だった少女の物語。
渋谷でロックを聞き、少女らしく恋をして…
でも、理不尽な(これは最後まで読まないとわかりませんが)事件に巻き込まれ彼女は消えて しまいます。
結果はどうであれ、この魅力的な高校生だった彼女が消えてしまったことは事実です。
時代とともに死んだ…と考えると彼女が羨ましいような気分にもなります。
で、1996年
75年に主人公が巻き込まれた火災からただ一人救出された女性を巡る物語。
陣内刑事による、事件の真相探しという形になってます。
それぞれの夢の代償が悲しいかたちで明らかにされていきます。
うまく書けないけど、いつも不幸を運んでくるのは大人たち、とでも言えば良いのかな?
#この小説を読んで、ますます政治家が嫌いになりましたね。
最後に3行ほど無断で引用させていただきます。
未来はずっと先へなど続いてはいない。
未来はただの幻に過ぎない。
絶望はなま暖かい春の海のように、心地良い。
ついでに私が一言。「過去はいつも幸せで切ない」

「禍都」柴田よしき 徳間書店8点
うーん。前作「炎都」に7点をつけてしまった以上、本作は8点とつけざるを得ない ですねぇ。(^^;
この+1点はヤモリ(ゲッコー族)の珠星と桜井幸子嬢に対するものです。(笑)
混乱の世紀末(作中世界)を彩る綺羅星のような登場人物(爬虫類・妖怪類)達… なんか本当に素敵な世界が構築されてる小説です。
で、「炎都」の感想には書き忘れたのですけど、随所にちりばめられたユーモラスな シチュエーション・情景もこの小説の魅力の一つです。
おかげで、読んでる方としては泣いたり笑ったり大忙しですけど。(^^;
#私が情緒不安定なだけかなぁ?
とにかく、今、もっとも続編が待ち遠しい小説です。
P.S.次作には酒井美紀嬢を期待してます。(笑)>作者様

「聖母の深き淵」柴田よしき 角川文庫6点
なんか最近2冊単位で本を読むのがクセになってます。(笑)
というわけで、RIKOシリーズの続編。
前作が問題提起してたのは女性という性のそのものだとすれば、本作 が提起してるのは、女性と男性の性差かな?
でも、両作を通じていえるのは女性という性が虐げられることに対す る憤りが感じられるということ。
前作では同じ職場という狭い日常で虐げられる女性、本作は暴力団あるいは 社会そのものに食い物にされ虐げられる女性。
ここでの虐げられるという言葉の意味は性的な意味で本当に理不尽に 虐げられているということです。
ま、こういう面倒なことを考えなくても楽しめる好作品ではあります。
ハードボイルド小説としてとらえても本書は前作を上回っていると思います。

「RIKO−女神の永遠−」柴田よしき 角川文庫5点
女刑事RIKOのハードボイルドな物語。
多分に官能的ではありますが、そのこと自体が重いテーマそのものであると言える ような内容です。
登場人物がよく書き込まれていて、その個性が魅力的であることは、この作者の力量のなせるわざでしょう。
それゆえ、作品に入り込むことも、主人公に感情移入することも容易です。
エンターティメントとしては一流だと思いますけど、私の趣味とは少しちが うような感じでした。

「炎都」柴田よしき 徳間書店7点
いやぁ、とにかく面白かったです。
帯の「千年間愛し続けられますか?!」はくさかったけど。(笑)
強烈に(精神的に)強い主人公とひと癖もふた癖もある素敵なキャラクターたち、そ れを取り巻くとんでもなく魅力的な作品世界。
夜中にもかかわらず一気に読んでしまいました。
私が住んでるところが京都のすぐ近くってのもこの作品に入り込めた理由 のひとつではあると思いますけど、それを差し引いても素敵な作品です。
今のところ、今年の一押し。
#でも最後はちょっと御都合主義すぎるかな?





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