クエンティン・タランティーノを語る。
(03/10/25)

(06/09/09更新)

 6年ぶりとなるタランティーノ監督の4作目 『キル・ビル』が公開になりました。

 10月25日の日記に、クエンティン・タランティーノについて書き始めたら、自分の中で熱くなって、 うっかり長く書きすぎてしまったので、独立した「タランティーノ枠」を作ってみました。

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 クエンティン・タランティーノ氏は、1963年テネシー州生まれの映画プロデューサー。高校中退後、 レンタルビデオショップでアルバイトをしながら演技の勉強をしていた頃に深作欣ニ作品に出会い、 脚本を書き始め、自分の脚本を自ら監督した『レザボアドッグス』(1991)が高い評価を受けた。 監督2作目の『パルプ・フィクション』(1994)では、カンヌ映画祭でパルムドール賞に輝き、 アカデミー賞でも脚本賞も受賞した。また、監督以外に『トゥルー・ロマンス』(1993) の脚本や『ナチュラル・ボーン・キラーズ』(1994)の原案なども担当している。

 鬼才タランティーノの久々の新作という事で、 『キル・ビル』(2003)は公開前から かなり話題になってたようだけど、メディアの紹介では暴力シーン満載のヤクザ映画チックな作品 であるといったような事を「タランティーノらしい」とガンガンにプッシュしている。しかし、すでに 公開の始まっているアメリカでの評価は、「迫力ある戦闘シーンが続き、見応えがある」 という肯定的な意見と、「手足や首が何百と床に転がるシーンは見るに絶える」 という否定的な意見と、大きく2つに分かれているという。確かにバイオレンスっ気がないのは タランティーノっぽくないとも思うが、私は別にタランティーノにバイオレンスばかりを求めては ないので、最初は凄く楽しみにしていたんだけど、むしろ公開が近づくにつれて次第に期待が薄れた感じ。

 タランティーノの1作目『レザボア―』は、宝石強盗のために犯罪のプロたちが集められ、 互いをホワイト、ブロンド、ブラウン、ブルー、オレンジ、ピンク、と色で呼び、お互いの素性も知らぬまま、 計画が終了したら解散して行く予定であったが、実はメンバーの中に「警察の犬」が紛れていて、 強盗に失敗した6人の窃盗団の、ある者は狂気に満ち、またある者は正義をかざし、果たして裏切り者 は誰なのか?というサスペンステイストも盛りこんだバイオレンス映画。
 この作品のオープニングで、マドンナの曲『Like a virgin』の歌詞の解釈について6人が薀蓄をたれるシーン があるのだけど、それがかなり面白くて、またその和気藹々とした雰囲気が、その後強盗に失敗したときの 緊迫感との対比になっていて非常に良い。もう何度も観たのに、「この中に裏切り者がいる」という 台詞を聞く度に「誰だろう?」ってドキドキしちゃう。

 2作目は言わずと知れた『パルプフィクション』。これはハマった!学生時代はビデオで何度も繰り返し 観た。実は、劇場公開当時はまだタランティーノの事をよく知らなくて、あとからビデオで観たんだけど、 「ああ、なんで映画館に観に行かなかったんだぁ〜!!」って、凄く後悔した作品。
 『レザボア―』では二枚目な役柄だったティム・ロスが、なんだか情けない男を演じているのも面白い。 また、やはり『レザボア―』に出ていたスティーブ・ブシェミやハーヴェイ・カイテルは 『パルプ―』でも良い味を醸し出してます。この作品ははどこをとっても良いシーンばかりだけど、 特に印象深いシーンはトラボルタとサミュエル・L・ジャクソンが演じるヤクザ (ビンセントとジュールス)のヨーロッパのハンバーガーショップについての会話かなあ。 フライドポテトをケチャップじゃなくってマヨネーズで食べるとか、1/4ポンドバーガー(チーズバーガー) の事を「ロワイヤルチーズ」と言うとかね。 (『レザボア―』といい『パルプ―』といい、タランティーノ作品には薀蓄がつきものなのです。) ちなみに私は、ジャクソンが「ワッパーの呼び名は?」と尋ねるとトラボルタが「バーガーキングは行かなかった」 と答えるところがとても好き。しかもそのあとすぐのシーンで、チンピラが「カフナ・バーガー」 という日本では聞き馴染みのないお店のハンバーガー(あとで知ったのだが、実在しない店らしい)を食べているのだが、 小堺一機・関根勤両氏は自らのラジオ番組で「『パルプ―』のオープニングテーマを聴くとハンバーガー食べたくなるよね」 って言ってました。(かなり同感。)で、エンディング近くになって、そのヤクザ2人に、ハーヴェイ・カイテル演じる 「掃除屋ウルフ」が絡むシーンがあるのだが、「個性派俳優夢の競演」って感じでかなり良い。 さらに、その3人が会するところで特別出演しているタランティーノが、皆にコーヒーをもてなすんだけど、 これが凄い美味そうなコーヒーなんですよ。そうやって振りかえってみても、無駄なシーンってほとんど無いし、 キャスティングや音楽のセンスもとても良いと思う。
 ちなみに、この『パルプ―』という作品は、別々に起こる4つの出来事が少しずつリンクしていく、 という話なので、細かいストーリーはここでは説明できないので、是非一度観てみて戴きたいと思います。

 タランティーノが企画したオムニバス映画『フォー・ルームス』や3作目の 『ジャッキーブラウン』も含め、どの映画もバイオレンスなシーンが含まれるが、 無意味に残虐シーンを詰め込んだ映画とはちょいと違って、観ていて特別不快ってこともないし、 それぞれのシーンがストーリー上効果的であったように思う。ところが、『キル・ビル』は バンバン人が殴られ、蹴られ、斬られていくというから、(まだ観た訳ではないのでなんとも言え ないけど)観ていて痛くなるようなバイオレンスはちょっと嫌だなあ、ってね。6年ぶりの タランティーノの新作だし、かなり期待してたんだけど、なんだか超バイオレンスだって評判も 聞いたので、ちょっと観るのが恐いです。

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追伸(06/09/09)・・・2004年『キル・ビル Vol.2 ザ・ラブ・ストーリー』が公開されました。 確かに1作目はかなり闇雲にバイオレンスなのですが、ユマ・サーマン演じる主人公の「ザ・ブライド」が なぜビルと4人の殺し屋に復讐しなければならなかったのかが2作目で描かれていて、その対比が「目から鱗」 らしい。どうやら1作目だけで「『キル・ビル』はバイオレンス過ぎる」と評価するのは早かったらしく、 近々1作目と2作目を一気に観た上で、改めて総合的な評価・感想を述べたいと思う所存です。

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