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   Ni-MH単三形電池放電器

PIC16F628を使ってNi-MH単三形電池4本を個別に放電させる放電器を製作しました。


写真は放電器の全体写真で電源アダプタは5Vの定電圧型です

ケースは市販のタカチ製SS−125です

ニッケル・水素蓄電池(Nickel-Metal Hydride Battery),通称Ni−MH電池を使用した機器用の充電器はほとんど放電機能が付いていません.Ni−MH電池は十分な放電がなされない状態で充電を繰返すとメモリ効果により電池の容量が少なくなることがあり,フル充電した電池は25℃の温度で20日間経過すると25%が自己放電で失われるといわれています.Ni−MH電池の性能を長期間維持するため充電前に,残っている容量を十分放電させる単三形Ni−MH電池用放電器を製作しました.
放電方法
複数の電池を放電させる場合,上の図のように電池個々に抵抗器を通す方法と電池を直列にして放電させる方法があります。

電池を個々に放電させる方法は図のように電池毎に固定抵抗器とスイッチ,制御回路が必要になります。これに対して複数の電池を直列にする方法は固定抵抗器やスイッチなどが1系統で済む利点があります。しかし電池を直列にして放電させる場合、電池の性能にばらつきがあると先に放電を終えた電池はまだ放電能力のある電池から極性が逆向きに充電されることになり好ましくありません。

製作した放電器
製作した放電器は電池を個別に放電させる方法を採用しました。制御部分にはマイクロチップ社製のマイクロ・コントローラ PIC16F628 を使用しました。

放電完了時期の制御は PIC内蔵のコンパレータを使い,放電中の電池の電圧があらかじめ設定した基準電圧に対して下回った電圧に低下したところで放電を終らせます。

放電器のソフトウエアを作るにあたり、上の写真のようなテスト用基板をつくりました。 プログラム開発中、電池の放電を待つのでは時間がかかりすぎます。

この基板では電池の代りに可変電源を電池の数だけ用意し、可変抵抗器で電圧を下げて電池が放電したと同じ状況を作り出すようにしています。
上の写真は部品配置とハンダ付け面の透視図です。この基板を市販のプラスチックケース (タカチSS-125A)に組込み込み電池ケースはプラスチックケース上面に取付けました。
 
コンパレータ

PIC16F628 には2個のコンパレータが内蔵されています。このコンパレータの使い方は6種類の動作モードがあります。使用したモードは上の図に示す4入力方式を使いました。

コンパレータ用CMCON レジスタを図の下に示します。 プログラムで bit 3 の CIS の値を 1 にするか 0 にするかで、同時に 2入力 の切替をおこないます。

入力切替はCELL1とCELL2およびCELL3とCELL4のふたつのグループに分け、交互に各電池の電圧と基準電圧とを比較監視します。 4系統の放電回路は1個の PICで制御することができます。放電回路が独立しているため放電する電池は4本に限らず1本でも2本でも使用できます。

基準電圧の設定
PIC内のハードウエアで作られる基準電圧 Vref は2種類のレンジがあります。本器ではPIC内の基準電圧設定用レジスタ VRCON をローレンジに設定します。

ローレンジに設定したとき、基準電圧 Vref は次のようになります。
        Vref = ( Vr/24 ) x Vdd
              Vr :設定値
              Vdd :制御電源電圧
設定値 Vr とは VRCON レジスタの bit3--0 にプログラムする値で'0000'から'1111'までを入れることができます。 この放電器では Vr='0101'=5 としました。

制御電源電圧 Vdd は 5V にしたので上式から算出される基準電圧は
Vref = ( 5/24 ) x 5 = 1.04Vとなります。

放電完了電圧とする基準電圧が PIC内で作られるため外部に基準電圧設定用の定電圧回路や可変抵抗器などは不要で制御回路は非常に簡単になります。

基準電圧について補足しますが実際には5Vの定電源アダプタでも完全に 5.00Vとはならない場合が多いでしょう。 購入した5V用定電圧スイッチング型ACアダプタの出力電圧を測定したところ 5.12Vありました。 このときの基準電圧は先に示したVrefの式で計算すると約1.07V になります。

放電を終らせる電圧は 1.02V〜1.08V の間であればよいでしょう。 なんら制御をおこなわず放電しっぱなしにしておくと電池は 0.95V程度まで電圧低下してしまいます。これでは電池のためによくありません。 

PIC16F628 の使用可能電圧は 3.0V〜5.5V ですがこの放電器では前記の基準電圧を作り出すために電源電圧は 5V が必須です。

主な部品
放電抵抗器は抵抗値を小さくすれば放電時間が短くなりますが発熱の問題が出てきます。
事前テストの結果 5W2Ωの固定抵抗器を使いました。
この抵抗値でフル充電した容量 2,000mAh の単三形Ni−MH電池は約3.5 時間ほどで放電を完了します。 放電中の固定抵抗器の表面温度は室内温度 26℃のとき 48℃になりました。

放電スイッチは低電圧で動作するシリコンNチャンネル MOS FET 2SK2956を採用しました。
メーカのデータシートに依れば 2SK2956 は低オン抵抗(0.007Ω)、低電圧駆動(4V)、高速スイッチングなどの特徴が示されています。テスト回路を組んで実験したところゲート電圧が 2.5V以上あれば 1.2V 電池の放電回路開閉に使えることを確認しました。 テスト回路の電流・電圧値から計算したドレイン−ソース間の抵抗はゲート電圧 3.5Vのとき約0.022Ωでした。 放電器に組込んだ 2SK2956はオン抵抗(RDS)が小さいため発熱が無く放熱板は不要です。

電池ケースは上の写真に示す金属製のものを採用しました。これは両極間や電池を保持する部分の当たりが強すぎるので間隔を調整しました。頑丈にできていていますが電池着脱時に被覆を痛めることがありました。

放電中,電池の温度上昇は「やや暖かくなった」程度なのでプラスチック製の電池ケースでもよかったと思っています。

「放電中」表示灯
電池の放電状態表示灯は発光ダイオード(LED)1個で「放電中」を表示させます。
まず 5Vの電源を接続し、放電開始の押釦スイッチを押すと、始動の合図として LEDが5回点滅し放電が開始されます。 放電中は電池ケースの番号に対応した点滅がおこなわれます。
1番目の電池は1回、2番目の電池は2回、3番目の電池は3回そして4番目の電池は4回点滅をおこない放電中はこれを繰返します.どれか放電を終えた電池があるとその電池の番号を示す点滅はなくなります。

すべての電池が放電完了すると LEDは5回点滅して消灯します。

今回は使用しませんでしたが「放電中」を示す表示灯を電池ごとに設けられるようにするため PICの出力ピンE〜H番へ電池1〜4に対応した表示灯用出力ポートを設けてあります。 ここに4個の LEDを接続すれば放電中点灯を続け、放電を終えた電池があると相当したLEDは消灯します。 4個のLEDを使用した場合ピンNのLED0は不要です。さらにピンOには起動時と全ての電池が放電終了したとき5Vで動作する発振子内臓ブザー吹鳴用出力を設けてあります。

ブザー出力は就寝時の使用を考慮して「ピィ」が5回鳴るだけにしてあります。 ブザーの消費電流が10mAを超える場合はトランジスタを介して接続した方がよいでしょう。

ダウンロード
  ソースプログラム   F628_19.asm(14KB)
  HEXプログラム    F628_19.hex(2KB)
  図面、フローチャート HODENKI.pdf(137KB)

このプログラムのコンパイルはマイクロチップ社の MPLAB V.5.70.40を使用し、同社製プログラマ PICSTART PlusV.3.11で書込み、動作確認をしました。 なおプログラムは末尾が「A」のPIC16F628Aには対応していません。

参考事項
この放電器の消費電流は電源投入時0.12mA放電中は0.12mA(LED消灯)4.70mA(LED点灯)となりました。

全電池放電完了後は85μAでした。電源の消費電流を抑えるためクロック発振周波数を 37KHz にしたり表示用 LED を1個とし、全電池放電完了後はスリープ命令でプログラムを停止させるなど省エネに配慮しました。
低消費電流型の 5V用 S-813型3端子レギュレータ(消費電流16μA)と9V電池を組込んだ使い方も可能でしょう。

電流と電圧の測定はデジタルマルチメータを使いました。 アナログメータ式のテスタでは細かな計測はできません。

データシートは下記のウエブサイトから入手できます。
 PIC16F628のデータシート
      http://www.microchip.com
 FET 2SK2956のデータシート
      http://www.renesas.com/jpn/

電池ケースと FET 2SK2956 は秋月電子通商から購入しました。

2003.10.1
2004.10.19修正