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   バ ラ ン

バランの語源は BALance to UNbalance トランスフォーマから来たそうですがバルンと書く博士先生も居ます。 ここではバランにしておきます。

3.5MHz 用逆V形ワイヤーアンテナに使っていたバラン(購入品)を焼損させてしまいました。 うっかり 7MHzの波を乗せたのが悪かったようです。 7MHz では1波長アンテナになり、給電点に電圧の腹が来たためそのバランは腹を立てたのでしょう。

波長に対して十分空高く揚げたダイポールアンテナの給電点インピーダンスはほぼ 73Ωですが波長に対して設置高さがかなり低いときは約 50Ω程度になります。 

この場合直接 50Ωの同軸ケーブルで給電すればうまくインピーダンスマッチングが取れそうですが、同軸ケーブルの不平衡型回路とダイポールアンテナの平衡型回路に加え大地(アース)による「第3の回路」ができ、同相電流が同軸の外皮からアースを通って送信機に戻ります。 この同相電流により同軸ケーブルから輻射される電波は電波障害の原因を作ります。バランを付ければその「第3の回路」を抑え同軸ケーブルからの不要輻射(無駄になる電波)が防げます。

手元にあった部品で下図のようなバランを自作することにしました。


今回使った当局在庫のトロイダルコアはアミドン社製 T-200-2 で透磁率の小さいカーボニール鉄ダスト材のコアのため巻数が多くなりました。 このコアは同調コイルやフイルタなどを作るとき、巻数の微調整でかなり精度の高いインダクタンスを得ることができますがバランのような単に不平衡平衡変換器に使うのはもったいない気がしました。

使用するワイヤアンテナは 3.5MHz帯ですが、将来エレメントの先端にローディングコイルやワイヤを継ぎ足して 1.9MHz帯でも使えるものにしたいと考えました。

バランのコイルのインダクタンス (L2)のときコイルのインピーダンス(リアクタンス)2πf・L2 は線路のインピーダンス Z の5倍以上が好ましいようです。

Z = 50Ωの5倍で計算すると、コイルのインダクタンス L2 は
   1.9MHz のとき 20.9μH
   3.5MHz のとき 11.4μH   となります。

コア T-200-2 は巻数(N1) 100の時、インダクタンス(L1)は 120μHなので
コイルの巻数は上図の中の式で求めると
   1.9MHz 用のとき 42回巻
   3.5MHz 用のとき 34回巻  になります。

T-200-2 のトロイダルコアは外径 50.8mmで内径 31.8mm、高さ 14.0mmと割合大型です。 このコアはバランとして使うなら 1KWの耐電力があるそうです。

巻線は 1mm径のエナメル線を使用しました。
3っのコイルは3本のエナメル線を撚って(トライファイラ巻)コアに巻けばよいのですが、巻数がかなり多いので3本のエナメル線を別々に隣合うように巻きました。 3本目は内径部分が先に巻いたコイルと重なる部分ができました。コアは鉄粉粒子を絶縁物で包んで固めてあるので絶縁テープは巻かず、直接コアにエナメル線を巻きました。

巻数は 43回巻 x 3コイルとなりました。 コイル1個あたり 22.19μH になりました。
純抵抗値を無視したコイルのインピーダンス(2πf・L2)とラインのインピーダンス(Z=50Ω)との比率は
  1.9MHz のとき 5.3倍
  3.5MHz のとき 9.7倍になりました。

今回は手元にあったカーボニール鉄粉コアを使いましたがバランを作る際は透磁率の高いフェライト系コアを使うと所望インダクタンス当りのコイルの巻数が少なく済みます。



          写真はひと揃えしたパーツです
          上から順に
            碍子兼バラン支持用塩ビパイプ
             (庭の散水配管残材 18mm径)

            タカチ プラケース SS-125型
            4mmネジ取付けターミナル
            トロイダルコイル取付け板固定ビス
            ケース合体用締付ビス(ケースに付属)

            トロイダルコイル(3線巻き)
            コイル取付用 2mm厚アクリル樹脂板
            同軸ケーブル用M型接栓



実寸図面をケースにセロテープで止め、先端の鋭いハンダ鏝を温めて穴芯を軽く突いてケガキます。最初は1.2mm位の細いドリルで穴あけしました。

端子と同軸ケーブル接栓は組立配線しやすいよう片側のケースに揃えて取付けました。

塩ビパイプが貫通する穴の位置はケースの合わせ目になるのでケースをしっかりビス止めして加工します。 組立図はこちらにあります。

端子はオネジとナット部が外に出るよう取付けます。
色つきプラスチックネジは使いません。
コイルからの電線は端子、M型接栓ともケースが溶けることを恐れ、取付け前にハンダ付け作業を行いました。

トロイダルコイルはアクリル樹脂板にインシュロックで固定し、ケースの中のボスにタッピングネジで取付けました。

写真の塩ビパイプはまだ仮置きです。
部品配置はCADで各パーツが干渉しないことを確認しました。

接着剤はエポキシ系2液性接着剤を使いました。使用するときに A, B液を同量混合します。 この接着剤の匂いを嗅いでいると気分が悪くなるので手早く作業を終えます。

上の写真はほぼ完成した状態です。まだ塩ビパイプは接着前です。
ケースを合体する前にケース内側から端子部分とM型接栓部分に接着剤を塗りました。 タカチのプラケース合わせ目は凹凸になっていますが、接着剤を塗布してから合わせてネジ゙止めしました。 ネジの頭は錆びないようにエナメルを塗りました。

ケースに差し込んだ塩ビパイプはワイヤ取付け穴や左右の位置確認をしてから接着剤で止めます。

このバランは密閉式になるわけですが、万一内側に水滴が付いた時のことを考えケース下部に水抜き穴を設けました。

このバランの取付けは塩ビパイプに園芸用ビニル被覆の太めの鉄線で吊手を付け、タワー上部のアームの穴にシャックルで取付けました。 吊手ワイヤ用穴は別の細めの針金で吊手ワイヤを固定するものです。 アンテナエレメントワイヤは塩ビパイプの両端の穴を通しインシュロックで縛り、ワイヤの末端は圧着端子を使ってバランの端子に配線しました。

          上の写真はメーカ製バランです。

電波が乗らなくなったバランはどこがどんな風に壊れたのか知りたくなり分解してみることにしました。

30年ほど前に同様な形のバランを分解したところ平たい棒状のコアを使っていました。 さて、今回のバランはいかに?


本体ケースの合せ面から分割するのは困難でした。 一度はあきらめたのですが出っ張り部分に塩ビ管用ノコギリで溝を入れて割るようにして開きました。

なんと、中は充填材で完全にモールドされていました。 どこが故障の原因か調べはつきませんでした。 骨折り損のくたびれ儲け!でした。

コイルは線径 1mm位のエナメル線が3本撚りで8回巻いてありました。
巻線から推定すると トロイダルコアの外形は 30mmほどです。