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   TS-770 トランシーバーの修理
  平成22年12月、数台の無線機が我家に引き取られました。
持ち主は、もう不用になったとのことでしたが、我家でも嬉しいプレゼントではありませんでした。

  平成23年8月中旬から、このホームページで「どなたか引き取って」と言うお願いを出しましたが、1ヶ月すぎても、 「ヨシ、貰い受けるぞ」 との連絡は全くありませんでした。

  それらの中に、TS−770 トランシーバーがありました。 
この無線機は144MHz帯と430MHz帯成2バンドのオールモード機で、製造年月日は57.10.28の銘板が付いていて 1982年生まれということになります。

  その年代頃の無線機は、まだマイクロコントローラは使われていなかったのですね。
  TS−770 の上面と裏面の基盤の間に、もう一枚きばんがあり、ロジック ICをちりばめた基盤があります。 マイコンがないから「設定」と言う面倒な操作は不要ですね。

修理したTS−770

不具合の状況

  修理前のTS−770は計器のバックライトが点灯し、デジタル表示のダイヤルはきちんと働きました。 アンテナを接続してみて、144MHzや430MHz帯ともアンテナを接続して、ダイヤルを回してみても、全く受信信号は有りませんでした。

  ダミーアンテナを付けて、FMモードで送信しても出力メーターは全く振れず、近傍にハンデイ機を置いて、受信してみても、全く電波は出ていない状態でした。


サービスマニュアル

  この無線機のサービスマニュアルは海外版が有るらしいのです。無線機に付属している文書は「取扱説明書」だけです。どこをなおしたらいいのか、見当がつきません。

  ネット上で修理の先輩が書いている修理記録を見ることにしました。どうやら、この無線機に使われているトランジスタの2SC460が歳を取って死に体になっているらしいことがわかりました。

 
 
トランジスタの入手

  通販でトランジスタ 2SC460 (日立)を探しましたが、見つかりませんでした。 やむなく、同等品を探すことにしました。 
CQ出版社の「トランジスタ互換表」によれば、6社の製品に該当するものがあるようでした。 それらの中で、2SC2839(三洋)をサトー電気から通販、購入しました。

 注意:トランジスタ の E(エミッタ)、C(コレクタ)、B(ベース)の配置について
     2SC460 は型名表示文字を見て、ピンの右から左に E C B
     2SC2839 は型名表示文字を見て、ピンの左から右へ E C B

  したがって 2SC460 を 2SC2839 に交換するとき、トランジスタ の型名の文字が反対向きになるように取り付けます。
 
 
トランジスタ の交換

1.RFユニット
無線機上部にあるRFユニット基板(X44-1270-00)

 RFユニット基板には 2SC460 が1個だけあります。基板にはラグ板が別の基板にハンダ付けされている部分がありますので、丁寧に取外し、再取り付けします。


  2.IFユニット
無線機の底側にある IFユニット基板(X48-1270-00)

  続いて、無線機底側 の 「IFユニット基盤」 のトランジスタ 2SC460 を 2SC2839に交換しました。    この基盤は合計17個の交換になります。上の写真に交換するトランジスタの位置を示す黄色の□と番号Qxxを表示してあります。 取扱説明書では Q35 も 2SC460とありますが、この無線機では 2SC1345 になっていました。 故障修理がおこなわれたのでしょう。

  私は1個外しては、1個取り付けるという、のんびり工法で作業をおこないました。
やってみれば判りますが、スケールで、交換するトランジスタの位置を測りながら場所の狙いを定める必要があります。

3.CARユニット
CARユニット基板(X50-1510-00)

  無線機底面にある、SSB用発振器の基盤に 2SC460 が2個使用されています。これらも2SC2839に交換しました。 取外した2SC460のロット番号は IFユニット基盤の 2SC460とは異なっていました。

  トランジスタ交換後、発振周波数を測定、調整しました。
    水晶発振器 X1: USB 8.8315 MHz TC1
                CW  8.8310 MHz TC2
    水晶発振器X2:  LSB 8.8285 MHz TC4

4.PLL ASSY
 PLL ASSY ユニット(X60−1050−00)は無線機パネルから見て、右側面にあります。 カバーを外すと内部は次の写真のように X50−1540−00 と X50−1530−00 の2つの基板から構成されています。合計5個の 2SC460 があり、それらを取り替えました。
PLL ASSY 基板 (X60-1050-00)

  X50−1540 基板はテープ(フラットケーブル)状の配線で外部と接続されていました。
トラブルを避けるため、上の写真のような状態で、トランジスタの交換を行いました。このテープの相手方は末尾の写真でお判りいただけます。後で分ったことですがこのテープの行き先はロジック・コントロール基板(下方に写真があります)に接続されていました。

試運転


トランジスタの交換で、この無線機は使えるようになりました。
IF UNIT の Q1 Q51 の発振周波数が少し高いようです。送受信周波数に対してデジタル表示が 5KHz 程度低く出ます。

発信回路のコイルのコアをLが増えるように一杯に廻してもダメです。

新しいトランジスタ 2SC2839 の内部容量が 元の 2SC460 より小さいためと思われます。後日、別のトランジスタに変えてみるつもりです。
 
 
追加作業


試運転で問題となった、受信周波数とデジタルダイヤル表示が違うのは、やはり取り替えたトランジスタ 2SC2839 の内部容量が小さいため、発振周波数を設定するコイル(IF UNIT 基板)L1と L64 を調整しても所定周波数を発振できないことが分りました。

  このため微小容量のコンデンサを基板裏面に付加することを検討しましたが、何度かカットアンドトライを試みるのは IF UNIT 基板を取り外したり、付けたりを繰返すのが面倒なので、発振部のトランジスタ Q1 Q51 を元の 2SC460 に戻してみることにしました。

  しかし、この無線機から取り外した20個余りの 2SC460 は hFE が 5〜10程度しかないので、別の無線機 TS−180から外した 2SC460 を2個使いました。 その2個のトランジスタの hFE は 75〜79 ほどありました。

  発振周波数はコイル L1 と L64 のコアを廻して調整します。
    水晶47.66MHz L1+ Q1で発振→Q2で2逓倍出力 = @
    水晶48.50MHz L64+Q51で発振→Q52で2逓倍出力=A

2逓倍した周波数は
 ダイヤル表示 430〜435未満の時 @= 95.33333MHz および
 ダイヤル表示 440〜450未満の時 A= 97.00000MHz に設定します。

この作業で、受信周波数とダイヤル表示は一致するようになりました。
 
 
ロジック・コントロール基板


  TS−770の中には、調整など必要の無い、というか全く手の付けようがない基板がありました。下の写真がそれです。本体上面のRFユニット基板と底部のIFユニット基板の間に位置するロジック・コントロール基板です。 取扱説明書にはその存在は一切書かれていない謎の基板です。これにより、プッシュスイッチで周波数の切替や430MHz帯の1MHz単位切替、スイープ受信ができるのですね。

昔の無線機って、凄いですねエ。「スイッチAを押しながら、スイッチBを押します」なんて設定操作は無かったのです。


2011.12.1
追記 2011.12.6