CW QSO シミュレータ

CW QSO シミュレータの用途と機能

モールス符号によるアマチュア無線交信を楽しみたい!
モールス符号はほぼ完全に憶えた!
でもなんとなく不安で電波がだせない!

CW通信のベテランに相手をしてもらい電波は出さなくても実際の交信を楽しみつつ練習したい人のために赤外線によるCW通信練習機をつくりました。
通信方式は赤外線通信によるため無線従事者の免許や無線局の免許を持たない人でも自由に無線通信の練習ができます。
CW QSO シミュレータ(以下本機と書きます)製作例の外観を写真1に示します。


                   写真1 製作例の外観


本機の系統図を図1に示します。
マイクロコントローラ(PIC16F819)にほとんどの制御をまかせまていますからハードウエアは非常に簡単です。



本機は2台1セットで QSO (交信)の練習をします。赤外線通信なので電波による通信と違い遠距離の交信はできませんが練習中他の人に聞かれたりチャチャを入れられたりせず、気楽に練習できます。

アンテナは不要でビルの中でも無線通信の体験をすることができます。CWのベテランに相手をしてもらえば口頭で「おいオイそこはこうするんだよー」などとアドバイスしてもらいながら練習ができます。
通信距離は最大6〜7m程度です。


コールサインのランダム生成モード

無線交信の練習のほか、コールサイン(呼出符号)がランダムに発信されるモードがあり一人で受信練習することもできます。
送り出されるコールサインは電源スイッチを入れるたびに同じコールから開始されないよう配慮しています。 プリフイックス(頭の1または2文字)のあとに続く数字は1〜8、9、0まであり現実には存在しない嘘っぽいものも飛び出してきます。でもサフィックス(数字の後の文字)が3文字以外に1文字や2文字あるいは/QRPや移動局の/Mが付いたものも出てくるので楽しく受信練習できます。

本機はゲーム機ではありませんからコールサイン受信練習中、勝手にトーン(音色)や速度が変わる意地悪はありません。キーヤと共用の可変抵抗器で任意の速度に設定できます。
コールサインのランダム発生モードではトーンが800Hzに固定されています。 なお、このモードでは送信機へのキーイング出力は出ません。

ランダムに発生させるコールサインは PIC(マイクロコントローラ)の中で乱数を発生させてその数値に対応させたプリフィックスや数値、アルファベットが飛び出してきます。ここで使用した乱数の発生については別頁に説明があります。


トーン発生

本機は2台1組を複数のグループで使用するために4チャンネルの設定ができます。つまり8台4組までの練習ができます。複数のグループで使用する場合はブザー出力でなくイヤフォンを使うとよいでしょう。
チャンネルは本機の中の2個のジャンパで図2のように設定します。


ジャンパ設定によりチャンネルごとに送受のトーンも設定されます。
トーン周波数は PIC 内のタイマ TMR2 と PWM によって発生させているため 外部 CR式発振器などと違ってかなり正確な周波数が得られます。 トーン発生の説明はこちらにあります。


エレキー

本機にはエレクトロニック・キーヤが内蔵されています。複式パドルを接続するとアイアンピックモードのキーイング操作ができます。キーイング符号の点(DOT)とスペース、線(DASH)の長さはほぼ 1:1:3 になります。

セミオート・モードのスイッチを ON にするとバグキーモードになります。このとき線(DASH)側のパドルを押している間中断続しない信号が出続けます。点(DOT)側のパドルを押しているときは連続して点が出続けます。
縦振り電鍵を使用したい場合はセミオート・モードにして線側のパドルを接続する部分と GND 間に接続します。

本機はQSO練習のほかエレクトロニック・キーヤとして一般の送信機のキーイング操作をおこなうことができます。2台使用すれば送信機のキーイングを赤外線で遠隔キーイングできます。


作品の説明

製作例(写真1)内部の部品配置と配線は写真2 のとおりです。


                  写真2 製作例の内部写真

右側のケースから飛び出ている2個の赤外線LED はこのあとケース内に引っ込めて前面に赤色アクリル樹脂板を貼り付けました。(写真3参照)
2個の赤外線LEDの間にあるのが赤外線受光素子です。
可変抵抗器やスナップスイッチはサブ基板を作って取り付け、回り止めのピン穴がケースに出ないよう配慮しました。部品配置はCADで平面図、側面図を描いて検討しました。ケースには描いた図面をセロテープで止めて穴あけ部分をポンチを軽く打ってマークしたのでケースには全くケガキ線は出ていません。
本機、つまり赤外線トランシーバでは相手が居ないものですから2台製作する羽目になりました。
1台はアルミケースの蓋を外しアクリル樹脂版でカバーを作りなおしました。

このペアはアマチュア無線フェステバル ハムフェア 2006 の自作品コンテスト自由部門に出品し「優秀賞第1席」の賞をもらいました。

愛称はノクターンにしました。当初、赤外線トランシーバとか赤外線キーヤなどを考えたのですが赤外線暗視装置にノクトビジョンがあるので赤外線トンツー機からノクトーンにしようとほぼ決めました。
しかし、音楽関係でノクトーンと言う商標?みたいなものがあるので商標にはできない一般の辞書にある普通名詞のノクターンにしました。 いい名前でしょう? でも、東京発千葉方面ゆき夜間急行バスにノクターン号というのがあることを後で知りました。


         写真3 ハムフェア 2006コンテストに出品したペア

写真3 の各ケース表面右下側にある2個のスイッチはパドルの代わりをするものです。
コンテストでは 「作動確認ができること!」 という条件があったので重いパドルは添付せずこのスイッチで作動確認ができるようにしました。

次の写真4は赤外線 LED を1個とし、パドル代用のスイッチやイヤフォン出力などを省いた基板です。


                     写真4 簡略化した回路の基板


回路図と HEX プログラム

製作例(写真1)の回路図(JOB06032701.pdf)39KB
簡略化した回路参考図(JOB06043005.pdf)44KB
同上の基板製作参考図(JOB06043004B.pdf)55KB
PIC16F819用HEXプログラム(IR81917.HEX)9KB

PIC 書込み用 HEXプログラムはマイクロチップ社製プログラマ PICSTART Plus で書込み、基板上で作動を確認しています。 書込み時、購入した新品の筈の PIC16F819 が書込み済み!と表示される場合はこちらをご参考ください。


PIC I/O について

プログラムを書込んだ PIC の入出力は図3のとおりです。 IR信号入力とは赤外線受光素子の出力信号を受けるポートになります。

送信機キーイング用出力は TX-Key1, TX-Key2 の2点ありますが使用しないものは開放のままにしておきます。

スナップスイッチ SW1と SW2の動作はつぎのとおりです。
 SW1 OFF のときエレキーモード、ON のときセミオート(バグキー)モード
 SW2 OFF のとき赤外線通信モード、ON のときコールサイン送信モード

ジャンパ JP1、JP2 は図2に示すとおりです。

PIC のクロック周波数は10MHzで設計しています。他の周波数では赤外線送受信などがうまく作動しません。

電源は赤外線受光素子が4.5V以上必要なので1.5Vx3個の乾電池を使います。
PIC自体の使用電圧上限は 5.5V です。不用意に高い電圧を加えると PICは壊れてしまいます。

トーン出力に接続するブザーは固定されたトーンのブザーでなく各低周波に対応できるブザー(サウンダ)が必要です。 入手できない場合は超小型スピーカや圧電ブザーなどを使用します。

 サウンダの例
   型式 OMB-6D  STAR社製 (最近市場でほとんど見かけない)
   型式 BEP-1   同上 発音体形ブザー (市販されている)


外部からの入力 SW1および SW2, ジャンパ1, ジャンパ2, Dash パドル, Dot パドルなどのポートは PIC 内でソフトウエアによるプルアップをしていますから外部にプルアップ抵抗を付ける必要はありません。


赤外線 LEDと赤外線受光素子

市販されている赤外線 LED や赤外線受光素子はテレビなどの電化製品コントロール用の余剰品と思われます。
赤外線 LED はメーカ:PARA 型式:OSIR5113A
赤外線受光素子は同じメーカの型式:PL-1PM0208 を購入、使用しました。

赤外線 LED は通電時、光の具合を目視確認できません。テスト時は基板上に赤色 LED を仮に付けて点灯具合を見ました。LEDはリードの長いほうがアノードで短いほうがカソードになっています。リードを切断する前にマジックペンで根元に赤、黒のマークを付けておきます。

受光素子は 37.9KHz (通称 38KHz)で変調された LED からの信号を1ビット 600μSec 単位の入力に反応するように作られています。受光素子は電源(Vcc)および接地(GND)、出力(Out)の3つの端子があります。 電源を接続して赤外線入射光有りのとき出力端子(Out)の論理出力は "0" で、入射光無しのときは "1"になります。単純に赤外線 LED を ON-OFF させる信号を受信しても受光素子は反応しません。


赤外線エレキーデータフォーマット

赤外線 LEDはパドルなどの電鍵操作によるモールス符号で直接点滅させるのでなくモールス符号の点(Dot)や線(Dash)の最初と最後のそれぞれ約 12mSec だけ 37.9KHzで変調した信号で点滅させます。この信号を赤外線受光素子で受信して受け側の方でモールス符号に変換します。
モールス符号「K(−・−)」を送信したときの説明を図4に示します。


図4の送信開始信号A と送信停止信号B は1ビット当たり600μSecの信号を合計8ビット送信します。この8ビットの信号を組み合わせてチャンネルの信号、送信開始か停止かの信号を構成させます。
実際には8ビットの信号の前に5mSec程度の遅延時間(フレームリーダ)を設けてキーのチャッタリングなどからの影響を避けています。信号フォーマットは図5 のようになっています。


各ビットの信号”1”は 37.9KHzで変調された600μSecの長さで、信号”0”は無信号の600μSecとなります。 テレビジョン受像機用赤外線リモコンの信号は1回のスイッチ操作で7種のデバイスコードと32種のスイッチコードを送信するため8ビットのフレームリーダ(空白)に続く16ビットの信号を2度繰り返し合計40ビットの信号を送信しているようです。

本機はモールス符号を出すためのONかOFFの信号と4組のチャンネル信号のみでよいため8ビットで構成しました。 ペアの本機は机上に置いて使用するため2度送信を繰り返す必要もないと判断しました。実際に問題なく送受信できています。 信号フォーマットの違いからテレビジョン受像機用赤外線リモコンとの相互干渉は全くありません。


追記事項

本機を使っていて送信側が符号を送っている最中に赤外線LEDの光軸をそっぽに向けたりわざと障害物を置いたりすると受信側は図4に示す停止信号(B)を待っているのにそれが来ないためトーンが出っ放しになってしまいます。 本機では送信信号(A)を受信してから3秒間待っても停止信号(B)が来ない場合は自動的にトーンを停めて受信待受け状態に戻るようプログラムを組んであります。 したがってバグキーモードで3秒以上の線(Dash)は送信できません。

内蔵のエレキーの可変速度は欧文毎分約30〜120文字です。可変抵抗器の両端についている固定抵抗器を変えれば多少の変更は可能です。

写真1に示した作品は乾電池を内蔵した状態で 約280g でした。パソコンを併用しないで済むため持ち運びに便利です。

本機ではマイクロコントローラを使っていますがリセットスイッチは省略しています。何らかの作動不具合でリセットさせる場合は電源スイッチを OFF して再度 ON にします。

2006.11.9

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