電子工作 ・ 自作のたのしみ


平成19年6月23日 岐阜長良川会館で「第33回東海2m和文電信愛好者の集い」が開催されました。
この集いで講演の依頼を受け 「自作のたのしみ」 と題して、お話しして来ました。

1年ぶりにお会いした参加者約40人の近況連絡に時間がかかり、私の持ち時間に食い込んだため十分なお話はできませんでした。 ここにその内容を整理してみました。

アマチュア無線と機器の自作
1960年開局当時、送受信機は全て自作でした。当時は誰でも経験したことでした。自分の作った機器で無線電信・電話の送受信が出来ることにアマチュア無線のたのしさを感じました。

私の電子工作はその後、TTLやC−MOSなどを組み合わせてエレキーやRTTY,FAXなどのデモジュレータなどを自作して楽しんだ時代がありました。

PICとの出会い
1999年春、私は64歳を迎えその年の夏、会社勤めから引退することになりました。これからはアマチュア無線を楽しみながら、さらに電子工作を楽しみたいと思っていました。その折り、トランジスタ技術誌5月号でTTLなど論理ICを組み合わせなくてもかなり複雑な電子制御ができるPICというICがあるのを知りました。

それ以前にも6809とかZ80などの8ビット系マイクロコンピュータ・チップ(CPU)があるのは知っていましたが、実際に何か作ろうとするとCPUから外部に出る電線「バスライン」にメモリーや周辺ICの接続が必要で、簡単な電子工作向きでなくマニア向けと言った感じでした。
これらのCPUはフォン・ノイマン型と呼ばれ高度化成長を遂げ、現在ではパソコンとして私達の身辺に置かれる様になりました。

PIC(Peripheral Interface Controller)はハーバードアーキテクチャ型と呼ばれ、IC内部にバスラインがありプログラムメモリやデータメモリが内蔵されています。
したがってデバイス間に配線を張り巡らすことなく、ソフトウエアで自由に設計が可能で、ソフトウエアを作るためのパソコンさえあれば設計の変更など非常に簡単に出来ます。

PICはマイクロチップ社(米)が 1989 年に 8ビットデバイスを製造販売開始し、現在、この種のICの売上数量では現在世界1であるといわれています。 デバイス(PIC製品)は年を追って開発追加され1991年は僅か4種類でしたが、2005年に289種類、2007年末には300種類以上になるそうです。最近は16ビット系デバイスが次第に主力になりつつあります。

PICのプログラムを開発するためのソフトウエアやデータシートの大部分はインターネット上で無償公開されており、アマチュアがPICを使った機器を自作するにはすばらしい環境になっています。

上の写真はマイクロチップ社製インサーキットデバッガ ICD 2 です。
基板上に PIC を組み込んだままでプログラムの書き込みとデバッグができます。
円形のケース全周にコネクタ、ジャック、ハブなどが付けられているのがグッドアイデアですね。
 
下の写真は PIC をソケットに差して直接プログラムを書き込む PICSTART Plus です。8ピンから40ピンまでのPICのプログラム書き込みができます。同じプログラムを書き込むPICを何個も作る際は便利です。
   
  
CW QSO シミュレータ
自作品の1例として赤外線を使ったCW QSO 練習用 トランシーバを製作したのでご紹介します。 モールス符号は完全に習得したけれど、なんとなく不安で電波を出せない人の交信練習に供するものです。 CW のベテランに相手をしてもらい、交信の雰囲気を楽しみながら交信の自信をつけるものです。 練習上の注意事項などは向かい合ったベテランから口頭で指導してもらえます。 電波は出しませんから無線局の免許は不要で、小型軽量ですから持ち運びも容易でパソコンなどの付帯機器は不要です。
 
外観は次の写真のようになっていて、2台1セットになります。  
本機の概要
主要部品はプログラムを書き込んだPIC16F819です。機能の大部分はPICが受持つため、ハードウエアは非常に簡単に作れます。 交信練習には2台が必要となります。 教室や会議室などで使用する場合、2台の通信距離は最大約6mで、間に赤外線を遮断する障害物があってはなりません。内部にはエレキーが内蔵されていて、スイッチ切替でバグキーモードにもなります。バグキーモードにして、線(長点)側に縦振電鍵を接続すればストレートキーイングもできます。

本機の赤外線通信は電鍵操作によるモールス符号に合わせて赤外線信号を断続するのではなく、独自に作ったデータフォーマットによりモールス符号を構成する点(短点)や線(長点)の出始め (ON) と 終わり(OFF) にのみ信号を送っています。

この信号は 600μ秒 x 8 ビットで構成され、ON-OFF信号のほか4つのチャンネル選択信号が含まれます。 本機を各チャンネル4セット(8台)用意すれば同じ部屋でも4組8人が練習することができます。 各チャンネルは送受信ともモニタトーンの周波数を変えていますが、複数のグループで練習するときはイヤーフォンの使用が必要です。

本機は交信練習のほか単独でエレキーとしても使えます。また1台を手元に置いてもう1台を送信機に接続すれば赤外線による遠隔キーイング操作ができます。

本機のもつ別の機能として「呼出符号の自動発信」があります。これはスイッチで自動発信モードに切替えると、ブザーから出てくる呼出符号の受信練習ができます。
ランダムに発生する呼出符号の局数は計算上は1千万を超えます。実在しない呼出符号も出てきますが、あくまで受信練習ですから差し支えないでしょう。
  
ハムフェア2006自作品コンテスト
この作品は2006年開催のハムフェア自作品コンテストの自由部門に出展し優秀賞第1席の賞を受けました。
ハムフェア自作品コンテストは、「50メガトランシーバ」などと課題が決められている 「規定部門」 と任意の作品でよい 「自由部門」 があります。
どちらの部門も毎年5月上旬の締め切りで「第1次審査」があります。これは応募用紙に作品の内容を記入した書類と写真や参考資料などの書類を提出して審査を受けます。
応募資格はアマチュア無線を愛好する個人・団体となっています。
 
第1次審査(書類審査)は次の基準で選考されます。
 ・応募者の応募資格審査
 ・アマチュア無線にふさわしい作品であること
 ・未発表の作品で、本人が製作したものであること
 ・机上に展示できるものであること
 
書類審査とはいえ、この時点で作品は完成していることが望ましいと思います。後日、製作上の都合で大幅に仕様が変っては第1次審査を受けた意味がなくなります。
第1次審査に合格すると、合格通知書類が来て、6月中旬頃の指定された日までに作品と説明書などの提出をします。
 
第2次審査は作品について次のような基準で審査が行われます。
 ・アマチュア無線の特徴が生かされているか
 ・アマチュア無線にふさわしい作品か
 ・製作技術が優れているか、製作上適切な配慮がなされているか
 ・実用性はどうか(うまく動作するか)
 ・動作特性はどうか(送信機は電波の質を重視)
 ・仕様書と取扱説明書は適切なデータとわかりやすい説明があるか
 ・提出された時点で不具合などを生じていないか
 ・梱包も評価の対象になり、運送時の破損は減点
 
作品に関する製作上の配慮
自作の電子工作機器が自分の机の上に置くだけならどんな作り方でも構わないのですがコンテストに出展するからには細かな配慮が必要です。この配慮を「めんどうくさい」のひと言でかたずけてしまうなら、自作のたのしみは湧いてこないでしょう。いろいろ考えながら作ることで自分の製作技術も進歩向上し、完成後の満足感、達成感は大きなものとなります。
 
私の作品「QSOしミュレータ」は次のような点に配慮して製作しました。
 ・電源(乾電池)内蔵として即時、起動できるようにした
 ・作品上にパドルの代わりになるスイッチを設けて動作テストを容易にした
 ・1台では送受の動作テストが出来ないので2台製作した
 ・2台中1台は透明プラスチックでケースカバーを作り内面が透視できるようにした
 ・イヤフォンを使う場合は鼓膜が破れんばかりの大音響が出ないようにした
 ・銘板はインクジェット印刷した紙にクリヤラッカを塗り両面接着テープで貼付け
 ・ケースの穴あけは実寸図面を貼って先端の鋭いポンチで軽くマークした
 ・穴あけは卓上ボール盤を使って 0.8mm のキリから順に拡大した
 ・プリント基板はパターン図面から現像、焼付け、穴あけまで全て自作(下記写真)
 ・スイッチや可変抵抗器の廻り止めは内板を使いケース面に廻り止め穴は出さない
 ・マイクロコントローラに書き込んだプログラムは全てアッセンブリ言語で自作
 
下の写真は基板にパーツを取り付けたものと裏面の写真です。まだ赤外線受光素子と赤外線LEDは取り付けていません。蛇の目基板でなく、自前のエッチングした基板をつくると配線ミスや配線の手間が掛からず、すっきりした仕上がりになります。基板のパターンはできる限り交差しないように何度か繰り返してCADで描きあげます。どうしてもパターンが交叉する部分は表面からジャンパで配線します。基板は感光乳剤塗布済みの市販品で、パターンの作成から感光、現像などを行い、エッチングを経て穴あけを行います。基板作成だけで約20の工程があり、これらも「自作のたのしみ」の1ステップです。
 
自作の満足感

ハムフェア2001で自作品コンテストに「和文電信練習器(愛称:ホレホレマン)」を出展、優秀賞第1席を受賞しました。 5年ぶり2006年度の自作品コンテストに出展した「CW QSOシミュレータ(愛称:ノクターン)」も同じ賞を受け満足しています。
 
自作のすすめ
「無線機器は買った方が簡単だ」では「自作のたのしみ」は体験できません。自作すれば安く出来るかというとそうでもなく、費やす時間をコストに入れると、かなりの出費になるでしょう。でも自作をたのしむにはコスト計算をしてはいけません。自作に当たっては市販されていないモノをテーマにすると、完成したとき「世間には無いものを自分は持っている」楽しさが増します。
 
皆さん、ハムライフを楽しむ中、電子工作だけでなく、料理、園芸、絵画、書道、写真、日曜大工など身近な「つくる」体験から、より高度の技術を身に付け、自作のたのしみを味わってください。「うまくできた」作品の達成感と満足感は脳へのよい刺激になって、日常生活の活力になります。
 
詳しい機能
本機の詳しい機能についてはPICによるエレキーの頁のCW QSOシミュレータをご覧ください。
 
 
2007.7.4
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