※本文は、月刊誌「アクションバンド電波」200112月号(171p.126129に紹介されました。

 

シリンダー交換体験記   

 

これからのカギは破壊防止対策を

 

ピッキング被害も、耐ピッキング錠の普及や防犯意識の向上、そして警察官の従来に増した見回りや職務質問の励行などによって、前年に比較して激減したとの報道がありました。

しかしながら、ピッキング技術がここまで広範に普及してしまった以上、これからも対策が必要になってくるのではないでしょうか。

建設関係の業界紙によれば、使ったことのある耐ピッキング錠として、U9シリンダー(美和ロック)を半数以上の設計者・建設従事者が挙げています。V18シリンダー(ゴール)、トライデントシリンダー(堀商店) がこれに続いています。現在販売されている多くの耐ピッキング錠は、5分間のピッキングに耐える試験をパスし、全国防犯協会連合会のCP−C認定を受けています。しかしながら、完全無敵な「カギ」というものは存在しません。U9であっても時間をかければピッキングされたり、電動ドリル等によって破壊されてしまいます。メーカーも被害があることを否定してはいません。ようするに、完全に防ぐことはできないのです。

 

MUL-T-LOCKとは

 

自宅のシリンダーを交換するにあたり、一般的な耐ピッキング錠よりも破壊に強いといわれているMUL-T-LOCK(マルティロック)206ダブルディンプルシリンダーを選んでみました。

これは、耐テロリズム製品を手がけているイスラエル製のカギで、日本では、在日米軍基地、国際関係機関等、アメリカではコロンビア大、マクドナルド、ニュージャージー州警察等、世界で軍事・行政・金融・航空・鉄道関係等世界中で高い信頼を得ています。CP−C認定も申請中とのことです。

今回はシリンダー交換に挑戦してみることにしました。一般的な耐ピッキング錠が3千円ぐらいからあるのに対し、MUL-T-LOCKは1万2〜4千円します。しかし、作業員の派遣費用が浮いていますし、家財を泥棒から守るための保険だと思えば安いものではないでしょうか。

 

購入店の選択

 

いろいろな型番があり、また、スペーサーを入れたり、バネを切るなどの専門的作業も要求されるシリンダーの交換は、簡単とは言い難いものです。仕事としてやっている人をのぞけば、ほとんどの人にとってこの作業は初めてでしょうし、1万円以上も出して購入したのに、失敗してはたいへんです。

そこで、シリンダーの購入店選びが重要となります。商品の金額はもちろんですが、交換作業が完了するまで、問い合わせに応じてくれたり、どうしても作業が自分でできなくなった場合に近所のお店を紹介してくれたり、最終的にはお金がかかっても作業員の派遣の手はずをとってくれることが重要です。

 

インターネットで購入店を検索

 

今はインターネットという便利なものがあります。「MUL-T-LOCK」とか「カギ」「ロック」で検索してみました。いくつかヒットした中で、「キーセンターくわな」を選びました。

ホームページのトップページから、「MUL-T-LOCK」の青いロゴかキーとカードの絵をクリックします。すると見積もりや商品や代金のやりとり、注文フォーム、扉の厚さによるスペーサーの必要性やバネの切断など、詳細のページが用意されています。また、交換作業の手順が型番ごとに画像入りで紹介してあるページもありました。そして何より、質問などをやりとりする掲示板があり、ひとりひとりの質問にていねいに回答されている店主の姿勢に好感がもてました。「通信販売の法規(訪問販売法)に基づく表示」ももちろんあり、信頼できそうです。

早速、カギのフロントカバーの刻印でメーカー名と型番(MIWA社製LDSP)、扉厚(36mm)を確認し、Eメールで発注しました。すぐさま発注確認の返信メールがあり、中1日で代金引換の宅配便が送られてきました。

 

シリンダー交換作業に挑戦

 

送付されてきたのは、シリンダー本体と、カギ、スペーサー等部品、そしてスペアーキー作製に必要となる登録カードです。

交換手順は、ホームページでカギの型番ごとにていねいに掲載されています。

翌週末に挑戦です。電子工作や簡単な日曜大工には慣れていましたが、カギを扱うのははじめてでした。「キーセンターくわな」のページや、ラジオライフ誌2001年5月号の特集を参考にしました。

カギの型番によって、作業に違いがありますので、大まかなところと注意点をご紹介します。

まずは、万一ドアが閉まったときに開かなくなるなどの事故を避けるための措置として、今ついているシリンダーのカギを手元に持っていることを確認し、それからラジオライフ誌2001年5月号P.110やアクションバンド電波誌2001年4月号P.148にあるように、ドアを開けてから、デッドボルト(かんぬき)を出します。

つづいてフロントカバーをとりはずし、さらにその下にあるシリンダーの回転を固定するネジをゆるめました。ここで注意したいのが、+ドライバーだけの作業なのですが、ドライバーがネジに合っていないとネジ山が崩れてしまいます。また、合っていてもネジが固く締まっていると滑ってしまいますので、押し気味にして空転しないようにします。

つぎにシリンダーの取り外しです。ここでは、扉の外側だけを回転させて取り外します。勢いあまって内側まで取る必要はありません。(筆者は両方とってしまい、手間を増やしてしまいました。)

つぎにいよいよMUL-T-LOCKの取り付けです。型番によっては、カギを差し込んで角度を固定したままシリンダーを回転させるものもありますので、手順を確認してください。このとき、扉厚によってはスペーサーを入れます。そして、本体がすべすべで握りにくいのですが、最後までネジ込んでから、定位置までもどして固定します。このときスペーサーやシリンダーの外側がカタカタ動くようではネジ込みが足りないようです。これでは、シリンダーをつままれて破壊されてしまうそうです。(筆者も、最初締めたつもりでしたが、カタカタ動くので、再度回してみたらきつくしまりました)。

慣れないため、いくつかの失敗をしながらの作業でしたが、後からすると、すべて、ホームページの作業手順説明に書いてあることでした。

ただ、ロゴマークの位置が説明と違う取り付けになってしまったので、その旨、Eメールで問い合わせたところ、すぐに店主から、メーカーにも確認した上で、「問題ない」との回答がありました。あわせて、取り付け完了の祝メール(祝電?)もいただき、プロからのお墨付きをもらいました。

 

もっとカギのことを知ろう

 

「キーセンターくわな」からのメールに、「実際、取り付けてしまうまで凄く不安だったと思います。現在発生しているピッキング被害がなければ一般のユーザがこのような経験をすることは無かったでしょうから、不思議な気がいたします。」とありました。

本当にこのとおりです。全財産を守るカギが、どんなしくみで、値段がいくらで、どの程度のセキュリティがあって等々、ラジオライフ誌を読むまでほとんど気にもしていませんでした。

そして、どんなカギをつけても「絶対安全」ということもないということも知りました。種々の対策をほどこすこと、そして何よりも、財産を守るという「危機管理」の意識が大切であると思いました。

 

参考

(1)キーセンターくわな

http://www.niji.or.jp/home/kuwana/lock/lock_top.html

香川県観音寺市観音寺町甲330−6

電話・FAX0875−24−0256

(2)ラジオライフ誌

三才ブックス発行月刊誌

 

(2001年5月15日)




シリンダ交換作業の流れ(BHタイプの場合)

−画像をクリックすると大きく表示されます−



写真01:送付されてきた商品。錠前本体、キー、キー番号カード、登録カード、スペーサー、リーフレット等




写真02:ラジオライフ誌5月号P.110やアクションバンド電波誌4月号P.148のとおりにデッドボルト(かんぬき)を出して、万が一の事故に備えてから作業開始。




写真03:ネジ2本を抜いて、フロントパネルをはずす




写真04:+のネジをゆるめる




写真05:外側のシリンダのみ左回転ではずす




写真06:BHタイプの場合は、カギをさしたままシリンダを回転させて取り付ける。扉厚36mmの場合はスペーサー2mm2枚必要




写真07:+ネジの挿入。うまく入らないときには少しシリンダをゆすってみると位置が定まる




写真08:フロントパネルを取り付けて、内と外からテストすれば完成。ここまで慣れれば10〜20分

(以 上)