「小便小僧」

1994.6

 JR浜松町駅3・4番線ホームに小便小僧があるのをご存じですか。この小便小僧が他の小僧と違うのは、たいそう衣装持ちということです。
 みなさん、小便小僧の由来というのを聞いたことがありますか。わたしの聞いている話もあくまで一説でしかありませんが、こういう話です。
 13世紀のはじめ、小便小僧の発祥の地ベルギーのブリュッセルが戦火にみまわれていたときのこと、この町を爆破しようと敵国が町中に爆弾をしかけたそうです。導火線に火がつけられまさに爆発のカウントダウンがされていたとき、勇気ある少年がその火のついた爆弾に近づいて自分のおしっこでその導火線の火を消し、事なきをえた。と、こんな由来なんだそうです。小便小僧は防災のシンボルなのです。
 それだからなのでしょう。昭和61年11月の「冬の火災予防週間」を前に、芝消防署から、「浜松町駅の小便小僧に防火を呼びかけるような衣装を着せてほしい」と、港区社会福祉協議会に依頼がありました。
 登録している「手芸ボランティア」の方々と相談し、「江戸火消し」の衣装を作って着せていただきました。一言で衣装と言っても、3等身ですし、着せるにしても足をあげてくれませんし、おしっこをしているので体は弓なりです。手芸ボランティアの方々も最初はかなり苦労されたそうです。
 1か月の展示期間を過ぎてからも、また裸にするのはかわいそうと、それ以来毎月26日に、消防署やJRの依頼によって、また特に依頼のないときはその季節の衣装をボランティアが着せています。
 火消し、消防士、駅長、サーファー、サッカー選手、はっぴ、サンタクロースなど・・・男の子なのでなかなか題材に苦労しているようですが、浜松町駅で車窓から小便小僧を見つけたときは、「地域のボランティアが着せているのだなあ」とあたたかい目で見てやってください。


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