_____________________________________________________________________    国立天文台 メールニュース No.199 (2018年12月27日発行) _____________________________________________________________________  国立天文台のイベントや研究成果、注目したい天文現象などを、メールで  お届けする不定期発行のニュースです。  どなたでも無料でニュースを受け取ることができます。 --------------------------------------------------------------- ■超巨大ブラックホールを取り巻くドーナツ構造の正体 ■小嶋氏が若手研究者賞を受賞、高性能電波受信機の開発が評価 ■2019年1月6日は部分日食 ■岩本さんが新彗星を発見 --------------------------------------------------------------- ■超巨大ブラックホールを取り巻くドーナツ構造の正体  多くの銀河の中心には、太陽の数十万倍から数億倍もの質量を持つ超巨大ブ ラックホールが存在しています。中でも、ブラックホールの周囲にある大量の ガスや塵 (ちり) が吸い込まれて、明るく輝いている銀河の中心を活動銀河核 と呼んでいます。  これまでの観測から、活動銀河核の超巨大ブラックホールの周囲には、ガス と塵が集まった分厚いドーナツ状の構造が存在すると考えられてきましたが、 どうやってこのような形が作られるのかは明らかになっていませんでした。  国立天文台、鹿児島大学の研究者らによる研究チームは、活動銀河核を持つ コンパス座銀河の中心をアルマ望遠鏡を用いて観測しました。そして、中心に ある超巨大ブラックホール周囲のガスの分布と動きを、これまでになく詳細に 明らかにすることに成功しました。また、スーパーコンピュータ「アテルイ」 を用いたシミュレーションからも、超巨大ブラックホールの周囲にあるガスの 詳細な動きを予測しました。これらの観測とシミュレーションの結果から、ブ ラックホール周囲の円盤の中で回転しながらブラックホールに落下していくガ ス、ブラックホール周囲から噴き上げられるガスとそこから円盤に落下する一 部のガス、という一連のガスの流れが、自然にドーナツ状の構造を作り出すこ とが確かめられたのです。  この研究は、活動銀河核のドーナツ状構造の起源に迫る注目すべき成果です。  ▽超巨大ブラックホールを取り巻くドーナツ構造の正体を暴く   https://alma-telescope.jp/news/press/agn-201811 ■小嶋氏が若手研究者賞を受賞、高性能電波受信機の開発が評価  国立天文台先端技術センターの小嶋崇文 (こじまたかふみ) 助教が、このた び2018年の「IEEE Microwave Theory and Techniques Society Japan Young Engineer Award」を受賞しました。この賞は、マイクロ波の理論および技術の 分野に貢献する論文を発表した若手研究者を毎年表彰するものです。  小嶋氏を始めとする開発チームは、将来アルマ望遠鏡への搭載を目指す新し い受信機の開発を進めています。この受信機では、現在のアルマ望遠鏡よりも 広いおよそ20ギガヘルツの周波数帯域にわたって、天体からの電波を高い感度 で一度に受信できることが実証されています。この受信機を使用することで、 例えば、星が生まれるガス雲に含まれるさまざまな分子や非常に遠方の銀河か らの電波を、たいへん高い効率で検出できるようになることが期待されていま す。加えて、小嶋氏らは、さらに幅広い100ギガヘルツ以上の周波数帯域の電 波を一度に観測できる新しい受信機システムの設計と開発も進めています。こ れらが実用化されれば、従来の電波望遠鏡観測の常識を打ち破るような多彩な 観測が可能になるのです。  この賞の授与式は、横浜市で開催された「マイクロウェーブ展2018」会期中 の2018年11月29日に執り行われました。  これらの研究の一部は、情報通信研究機構、電気通信大学との共同研究とし て実施されました。  ▽小嶋氏が若手研究者賞を受賞、高性能電波受信機の開発が評価   https://www.nao.ac.jp/news/topics/2018/20181219-award.html ■2019年1月6日は部分日食  2019年1月6日、日本では全国で部分日食を見ることができます。  日食は太陽が月によって隠されて欠けたように見える現象です。日本国内 (人が居住している場所) で見られる日食としては、2016年3月9日の部分日食 以来およそ3年ぶりとなります。  日本国内では、月に隠される太陽のおおよその面積は、食の最大時で、那覇 で6パーセント、東京で30パーセント、札幌で42パーセントとなり、北の地方 ほど太陽が隠される割合が大きくなります。  日食が見られる時間帯は、東京では、月が太陽を隠し始める部分食の始まり が8時43分、食が最大となるのが10時6分、部分食の終わりが11時36分となりま す。各地の日食の予報の詳細は、国立天文台 暦計算室の「日食各地予報」を ご覧ください。  今回見られる部分日食は、全国で日食の始まりから終わりまで観察すること ができます。また、日曜日の午前中ということもあり、多くの人が観察しやす い時間帯で起こる現象と言えるでしょう。観察の際には太陽観察専用の器具を 使い、決して肉眼で直接太陽を見ることがないように、安全な方法で観察を行 うようにしてください。遮光グラスを使用して観察する場合も、必ず取扱説明 書に従い、長時間におよぶ観察を避けるようにしてください。  次回日本国内で見られる日食は、2019年12月26日の部分日食です。インドネ シアなどの東南アジア方面で金環日食となり、日本では全国で部分食を見るこ とができますが、関東地方以北では食が終わる前に日の入りを迎えます (注)。  注:日入帯食 (にちにゅうたいしょく) と呼びます  ▽ほしぞら情報 (2019年1月)   部分日食   https://www.nao.ac.jp/astro/sky/2019/01-topics03.html  ▽国立天文台 暦計算室   https://eco.mtk.nao.ac.jp/koyomi/ ■岩本さんが新彗星を発見  徳島県阿波市の岩本雅之 (いわもとまさゆき) さんが、12月18日 (世界時、 以下同じ) の観測で、うみへび座方向に新彗 (すい) 星を発見しました。  この発見は、通報を受けた国立天文台から国際天文学連合小惑星センター に報告され、「C/2018 Y1」という認識符号が付けられました。また、通称は 「岩本 (Iwamoto) 彗星」となりました。  岩本さんによるこの天体の発見日時と発見等級は次のとおりです。   2018年12月18.8410日 = 12月18日20時11分 14.5等  この彗星は、2019年2月中旬に地球に接近し、ほぼ一晩中観測可能な位置で 見られ、明るさは8等級台になると予報されています。  岩本さんは、2013年3月に「岩本彗星 (C/2013 E2)」を発見しています。ま た、2018年11月にも「マックホルツ・藤川・岩本彗星 (C/2018 V1)」を独立発 見したばかりです。  ▽新彗星を日本の天体捜索者が発見   https://www.nao.ac.jp/news/topics/2018/20181221-comet.html  ▽日本人が発見した彗星一覧   https://www.nao.ac.jp/new-info/comet.html  ▽CBET No. 4588 : COMET C/2018 Y1 (IWAMOTO) (2018 Dec 20)  ▽MPEC 2018-Y52 : COMET C/2018 Y1 (Iwamoto) (2018 Dec 20)   https://minorplanetcenter.net/mpec/K18/K18Y52.html _____________________________________________________________________ 発 行:国立天文台 天文情報センター 広報室 発行日:2018年12月27日