VSOLJニュース(316) 西山さんと椛島さんがいて座に新星を発見 著者:前原裕之(国立天文台) 連絡先:h.maehara@oao.nao.ac.jp 2月10日にさそり座に新星が発見されたばかりですが、その2日後に今度はいて座 に新星が発見されました。新星を発見したのは福岡県の西山浩一(にしやまこうい ち)さんと佐賀県の椛島冨士夫(かばしまふじお)さんのチームです。 西山さんと椛島さんは2月12.878日(世界時、以下同様)に焦点距離105mmのレンズ とCCDカメラを用いて撮影した画像から、10.9等の新天体を発見しました。さらに、 発見の直後に口径40cmの望遠鏡でこの天体の確認観測を行ない、この天体の位置を 赤経:18時14分25.14秒 赤緯:-25度54分34.3秒 (2000.0年分点) と報告しました。この天体は静岡県の西村栄男(にしむらひでお)さんによっても 12.840日に撮影した画像から11.2等の天体として独立に発見が報告されました。 また、群馬県の小嶋さんによって発見前日の11.841日に撮影された画像には、この 天体が既に増光しており、10.5等で写っていたことも分かりました。清田さん、小 嶋さん、遊佐さんらによる発見後の観測によると、この天体は発見後も増光を続け ていたことがとらえられました。チリのセロ・トロロ天文台の口径1.3m望遠鏡の可 視、近赤外の測光観測によると、可視光では2月16日から17日の間に最も明るくな り、人間の目で見た時の明るさに近いとされるV等級では9.7等になったことが分か りました。 この天体の分光観測は2月16日にセロ・トロロ天文台の口径1.5m望遠鏡を用いて行 なわれ、この天体のスペクトルには水素のバルマー系列の輝線や鉄、窒素、酸素な どの輝線がみられること、それぞれの輝線は"P Cygプロファイル"と呼ばれる輝線 の青側が吸収線となる特徴を示しており、吸収線の波長は速度に換算して秒速100km ほど青方偏移していることなどが分かりました。これらの特徴から、この天体は古 典新星であると考えられます。 この天体は筆者による2月20日の観測ではV等級で10等程度とほとんど極大の頃と 明るさが変化していませんでした。また分光観測によると、新星爆発によるガスの 膨張速度が遅いことから、この天体はゆっくりと暗くなってゆくと考えられます。 今後の明るさやスペクトルの変化の様子が注目されます。 2015年2月23日 参考文献 CBAT "Transient Object Followup Reports" PNV J18142514-2554343 Walter (2015) ATel #7101 ・新星の画像 (西村さん; 独立発見) http://www.oaa.gr.jp/~oaacs/image/PnovaSgr.jpg (小嶋さん; 発見前) http://www.oaa.gr.jp/~oaacs/image/PnovaSgrKojima.jpg (清田さん; 確認観測) http://meineko.sakura.ne.jp/ccd/PNV_J18142514-2554343.jpg (遊佐さん; 確認観測) http://space.geocities.jp/yusastar77/supernova/PNinSgr_150217.htm