VSOLJニュース(322) 板垣さんがわし座に新星を発見 著者:前原裕之(国立天文台) 連絡先:h.maehara@oao.nao.ac.jp 山形県の板垣公一さんはこれまでにも100個を越える数の超新星のほか、新星 や彗星を発見しています。板垣さんは9月27日にもいて座の中に新星を発見した ばかりですが、このほど別な新星をわし座の中に発見しました。 板垣さんは10月5.548日(世界時、以下同様)に口径21cmの反射望遠鏡とCCDカメ ラを用いて撮影した画像から12.4等の新天体を発見しました。この天体は板垣 さんによる発見の4日前、ハワイとチリでそれぞれ4台の口径14cmの望遠鏡とCCD カメラを使って超新星のサーベイを行なっているAll-Sky Automated Survey for Supernovae (ASAS-SN or "Assassin")によって10月1.29日にV等級で15.2等の新 天体(ASASSN-15qd)として発見された天体と同一のもので、ASAS-SNの9月29日に 撮影された画像にも14.7等で写っていたことが分かりました。板垣さんが発見 直後に口径50cmの望遠鏡で行なった観測によると、この天体の位置は 赤経:19時21分50.12秒 赤緯:+15度09分24.8秒 (2000.0年分点) です。この天体は板垣さんとASAS-SNによる発見よりも前の9月27日に群馬県の 小嶋さんが撮影した画像に既に写っていたことが分かりました。また、筆者の 行なっている広視野サーベイのデータでも9月21日には写っていなかったものの、 9月29日にはIc等級で10.2等で写っていたことが分かりました。肉眼で見た時の 星の明るさに近い波長550nm付近のV等級と比べて、波長の長い800nm付近のIc等 級ではこの天体は明るいことから、この天体の色が極めて赤いことが分かりま した。この他、愛知県の広沢さんや千葉県の野口さんからもこの天体の観測が 報告されました。 この天体の分光観測は岡山県の藤井貢さんによって行なわれ、強いHα輝線の 他、一階電離した鉄やカルシウム、中性酸素などの輝線を示すことが分かり、 これらの特徴からこの天体が古典新星であることが判明しました。分光や多色 測光の結果から、この新星は強い星間吸収を受けていると考えられます。 参考文献 Shappee et al. (2015) ATel #8126 Maehara et al. (2015) ATel #8127 CBET 4147: NOVA AQUILAE 2015 = PNV J19215012+1509248 (2015 October 8) ・新星の画像 (板垣さん; 発見) http://www.k-itagaki.jp/images/ASASSN-15qd.jpg (野口さん; 確認観測) http://park8.wakwak.com/~ngc/images/ASASSN-15qd.jpg ・新星のスペクトル (藤井さん) http://otobs.org/FBO/etc/asassn-15qd.htm 2015年10月8日