VSOLJニュース(328) さそり座に11等級の新星が出現 著者:前原裕之(国立天文台) 連絡先:h.maehara@oao.nao.ac.jp 夕方暗くなると晴れていれば南西の空に火星と土星、アンタレスの3つの明る い星を見ることができると思います。アンタレスの属するさそり座は私達の天 の川銀河の中心方向の近くに見える星座のため、これまでに多数の新星が発見 されています。そのさそり座の中に新たな新星が発見されました。新星を発見 したのはチリにある4台の口径14cmの望遠鏡とCCDカメラで超新星のサーベイを 行なっているAll-Sky Automated Survey for Supernovae (ASAS-SN, "Assassin") のグループと、香川県観音寺市の藤川繁久(ふじかわしげひさ)さんです。藤川 さんは9月6.481日(世界時、以下同様)に撮影した画像から11.6等の新天体を、 またASAS-SNのグループは9月7.00日に撮影した画像から11.4等の新天体をそれ ぞれ独立に発見しました。ASAS-SNによって9月6日に撮影された画像にはこの 天体は12.1等で既に写っていましたが、その前日の5日に藤川さんが撮影した 画像には12.9等よりも明るい天体は写っていなかったことが報告されており、 この天体は9月5日と6日の間に明るくなったものと考えられます。ASAS-SNの観 測によると、この天体の位置は 赤経:17時22分51.43秒 赤緯:-31度58分36.3秒 (2000.0年分点) です。 この天体の分光観測はオーストラリアのT. Bohlsenさんや、チリのラスカン パナス天文台の2.5mデュポン望遠鏡、兵庫県立大学西はりま天文台の2mなゆた 望遠鏡によってそれぞれ行なわれ、この天体のスペクトルには水素のバルマー 系列の他、1階電離した鉄やカルシウム、中性の酸素などの輝線がみられるこ とが分かりました。また水素のバルマー系列や鉄、酸素の輝線はP Cygniプロ ファイルを示し、秒速800-900kmほど青方偏移した吸収構造がみられることも 分かりました。これらのスペクトルの特徴から、この天体は古典新星であるこ とが確認されました。 2016年9月10日 参考文献 Stanek et al. 2016, ATel #9469 Bohlsen 2016, ATel #9477 Prieto et al. 2016, ATel #9479 CBET 4320: NOVA SCORPII 2016 No. 2 = PNV J17225112-3158349