VSOLJニュース(338) はえ座とコンパス座に相次いで明るい新星が出現 著者:前原裕之(京都大学) 連絡先:maehara@kwasan.kyoto-u.ac.jp はえ座とコンパス座はどちらも赤緯-55度よりも南にあり、日本の多くの地域か らは見ることができませんが、これらの星座の中に相次いで明るい新星が発見さ れました。 オーストラリアのRob Kaufmanさんは1月14.486日(世界時; 以下同様)に焦点距 離55mmのレンズとデジタルカメラで撮影した画像からはえ座に7等級の明るい新 天体を発見しました。この天体は、発見者自身によって透過型回折格子を装着し た焦点距離200mmのレンズとデジタルカメラを用いて分光が行なわれ、水素のバ ルマー系列と1階電離した鉄の輝線がみられることが分かり、古典新星であるこ とが判明しました。この新星の正確な位置は 赤経:11時 26分 14.95秒 赤緯:-65度 31分 24.1秒 (2000.0年分点) です。 ASAS-SNのアーカイブデータによると、この新星は1月3日に8.8等に増光した後、 11等ほどまで減光していたことが記録されており、新星爆発が起こったのは発見 の10日以上前であると考えられます。また、1月11日にはこの新星の方向に新た なガンマ線を放つ天体がFermi宇宙望遠鏡によって発見されました。可視光での 増光とガンマ線を放つ新天体が出現したタイミングから、この新星がガンマ線で も明るくなったと考えられます。 AAVSOなどに報告された観測データによると、この新星は1月16日ごろには6.5等 ほどまで明るくなった後、ゆっくりと減光しており、25日には7.5等ほどで観測 されました。 オーストラリアのJohn Seachさんは1月19.708日に焦点距離50mmのレンズとデジ タルカメラで撮影した画像から、コンパス座に9等の新天体を発見しました。こ の天体の正確な位置は 赤経:13時 53分 27.60秒 赤緯:-67度 25分 00.7秒 (2000.0年分点) です。 千葉県の清田さんは1月20.5916日にオーストラリアにある望遠鏡を使ってこの 天体のスペクトルを撮影し、この天体が強いHα輝線を示すことを報告しました。 また、21.36日にチリにあるSOAR 4.1m望遠鏡をで行なわれた分光観測でも、この 天体のスペクトルにP Cygプロファイルを持つ水素のバルマー系列や1階電離した 鉄の輝線がみられることが分かり、これらの観測からこの天体が古典新星である と確認されました。 AAVSOなどに報告された観測データによると、この新星は発見後も増光を続けて おり、1月23-25日ごろには7等台まで明るくなったことが観測されました。 2018年1月26日 参考文献 CBET 4473: NOVA MUSCAE 2018 Li, K. L., et al. (2018), ATel #11212 CBAT "Transient Object Followup Reports": PNV J13532700-6725110 Strader, J., et al. (2018) ATel #11209