VSOLJニュース(340)           坪井さん11等台の明るい超新星発見                         著者:山中雅之(広島大学)                  連絡先:masyamanaka@hiroshima-u.ac.jp  冬から春にかけては地球から程良く近い距離にある銀河の観測シーズンです。日本 のアマチュア天文家による明るい超新星の発見が相次いでいます。広島県の坪井正紀 さんによって、世界時2月8日15時(日本時間では2月9日午前0時)に地球からの距離 約 3900万光年の近傍銀河NGC 3941に明るい超新星SN 2018pvが発見されました。 この超新星の位置は、 赤経:11時52分55.7秒  赤緯:+36度59分11.60秒 (2000.0年分点) です。超新星は銀河の明るいバルジに発見されています。 広島大学1.5mかなた望遠鏡による即応的な追観測の結果、測定誤差が大きいものの 11等台程度に達していることが明らかになりました。なお、このデータはRバンドと呼ば れる赤い色の光を通すフィルターで取得されています。また、Bバンドと呼ばれる青い フィルターにおいては、13等程度と測定されています。 広島大学かなた望遠鏡においては同晩に分光観測も実施しており、極大光度に到達 する数日前のIa型超新星と同定されています。スペクトルには初期のIa型超新星由来 であるケイ素やカルシウム、酸素といった吸収線が見られています。特に、Ia型超新星 の中でもやや暗いサブグループのものと合致します。また、銀河内に分布する固体微 粒子由来と考えられる吸収線も見られ、強い散乱を受けていると考えられます。この ため、この超新星は赤い色を示しています。  先日、板垣公一さんによって発見されたIa型超新星SN 2018gvが12等台に到達する 見込みというニュースが流れたばかりですが、SN 2018pvはそれを上回る明るさです。 残念なことに、銀河の明るいバルジによる影響が大きいため、小口径の望遠鏡では 銀河と超新星の分離が難しいかもしれません。大気の揺らぎが比較的落ち着いている 晩での観察がより良いでしょう。                              2018年2月10日 参考文献 坪井, TNS #16800 山中, 川端, 中岡, Huang, ATEL #11278