VSOLJニュース(355) さそり座に新星が出現 著者:前原裕之(国立天文台) 連絡先:hiroyuki.maehara@nao.ac.jp 銀河系内の新星は銀河中心方向に多く発見される傾向があるため、さそり座や いて座が見える季節になると新星の発見が多くなります。そのような星座の1つ のさそり座の中に、新たな新星が発見されました。新星を発見したのは、オハイ オ州立大学を中心とするAll-Sky Automated Survey forSupernovae (ASAS-SN, "Assassin")のグループで、5月13.34日(世界時; 以下同様)に撮影された画像か らgバンドで16等の新天体ASASSN-19moを発見しました。この天体は14.19日には 14.9等、15.18日には13.8等とその後もゆっくりと増光を続け、17日以降は13等 ほどでほぼ一定の明るさで観測されました。vsolj-obs MLなどに報告された多色 測光のデータによると、この天体はV-Icの色指数が2.0等ほどと赤い色をしてお り、Vバンドでは12等台で観測されました。この天体の位置は 赤経 17時07分34.17秒 赤緯 -36度08分23.2秒 (2000.0年分点) です(※Gaia DR2の対応天体の位置)。 この天体の分光観測は5月22.12日に南アフリカのSALTによって行なわれ、 P Cygniプロファイルを持つ水素のバルマー系列や1階電離した鉄、中性酸素や ナトリウムの輝線がみられることが分かりました。このようなスペクトルの特 徴から、この天体が古典新星であると判明しました。 これまでのところ、この天体は眼視やVバンドでは12等台半ばの明るさで観測 されており、17日以降は大きな光度変化を示していません。今後もこの傾向が 続くのか、それともさらに明るくなるのか、今後の明るさの変化が注目されま す。 2019年5月25日 参考文献 Aydi, E., et al., 2019, ATel #12795 http://www.astronomy.ohio-state.edu/asassn/transients.html https://asas-sn.osu.edu/light_curves/b6303ff3-64f0-4810-975c-b185c98c326c ASAS-SN: Shappee, B.J., et al. 2014, ApJ, 788, 48 Kochanek, C.S., et al. 2017, PASP, 129, 104502