VSOLJニュース(356) 藤川さんがオリオン座に新星を発見 著者:前原裕之(国立天文台) 連絡先:hiroyuki.maehara@nao.ac.jp 8月の明け方には、早くも冬の星座として有名なオリオン座が、東の低い空に姿 を見せ始めます。そんなオリオン座の中に新星が発見されました。新星を発見し たのは、香川県観音寺市の藤川繁久(ふじかわしげひさ)さんです。藤川さんは、 8月7.7984日(世界時; 以下同様)に焦点距離120mmのレンズとCCDカメラを用いて 撮影した画像から、9.4等の新天体を発見しました。藤川さんの観測によると、 この天体の位置は 赤経:06時 09分 57.40秒 赤緯:+12度 12分 25.5秒 (2000.0年分点) です。この天体は、発見翌日の8月8.8日に山口県の吉本さんや愛知県の広沢さん、 千葉県の清田さん他の方々によって確認され、10.5等級ほどに減光した様子が観 測されました。 8月14.44日には、この天体の分光観測がチリのセロ・トロロ天文台の口径4.1m SOAR望遠鏡を用いて行なわれました。この天体のスペクトルには、幅の広い水素 のバルマー系列の輝線の他ヘリウムや窒素、酸素の輝線がみられ、Hα輝線の幅は 速度にして秒速4000km程度になることが分かりました。このようなスペクトルの 特徴から、この天体が極大を過ぎた古典新星であることが判明しました。 vsolj-obsなどに報告された観測結果によると、この天体は発見以降減光を続け ており、8月13日には11.8等ほどまで暗くなったことが報告されました。分光観 測の結果からは、新星爆発によって膨張する物質の速度が大きく、速く減光する タイプの新星であることが示唆されます。今後の減光の様子のほか、X線やガン マ線などでの観測結果が注目されます。 2019年8月16日 参考文献 CBAT "Transient Object Followup Reports" PNV J06095740+1212255 vsolj-obs 62229, 62230, 62245, 62259, 62284, 62297, 62305 Aydi, E., et al. 2019, ATel #13027 Sokolovsky, K., et al. 2019, ATel #13029 新星の画像 ・吉本さん撮影 http://orange.zero.jp/k-yoshimoto/PNV-J06095740+1212255_20190808.jpg ・清田さん撮影 http://meineko.sakura.ne.jp/ccd/PNV_J06095740+1212255.jpg ・板垣さん撮影 http://www.k-itagaki.jp/images/PN-Ori.jpg 新星の光度曲線 (VSOLJ Light Curve Generator) http://kws.cetus-net.org/~maehara/LCGmc.py?object=PNVJ06095740%2B1212255&obs_code=&sdate=&edate=&plot_all=y&plot_vis=y&plot_U=y&plot_B=y&plot_V=y&plot_Rc=y&plot_Ic=y&plot_y=y&plot_Rj=y&plot_Ij=y&plot_C=y&plot_cG=y&plot_c=y&plot_p=y&grid=y