VSOLJニュース(362) 西村さんがへび座に新星を発見 著者:前原裕之(国立天文台) 連絡先:hiroyuki.maehara@nao.ac.jp へび座はへびつかい座によって頭部と尾部に分断された星座で、へび座の尾部 は天の川の方向にあり、これまでにもいくつもの新星が発見されています。そん なへび座の中に新星が発見されました。新星を発見したのは静岡県掛川市の西村 栄男(にしむらひでお)さんです。西村さんは2月22.839日(世界時; 以下同様)に 焦点距離200mmのレンズとデジタルカメラを用いて撮影した画像から、へび座の 中に12.1等の新天体を発見しました。この天体は西村さんが発見2日前の20.860日 に撮影した画像には写っておらず、発見のこの2日ほどの間に明るくなった天体 であることが分かりました。また、群馬県の小嶋さんが22.811日に撮影した画像 にも、この天体が11.8等で写っていたことが分かりました。千葉県の野口さんや 清田さんの観測によると、この天体の正確な位置は 赤経: 18時10分42.32秒 赤緯: -15度34分18.6秒 (2000.0年分点) で、赤い色をした天体であることが分かりました。 この天体の分光観測は、2月23.38日にラスカンパナス天文台の口径2.5mデュポン 望遠鏡で、23.862日には京都大学岡山天文台の口径3.8mせいめい望遠鏡でそれぞ れ行なわれました。この天体スペクトルにはP Cygniプロファイルを示す幅の広い 水素のバルマー系列や1階電離した鉄などの輝線がみられたことから、極大直後の 古典新星であることが判明しました。P Cygniプロファイルの吸収成分は、輝線成 分に対して秒速5000kmほど青方偏移しており、比較的速い減光を示す新星である と考えられます。この新星は23.8日には13等ほど、24.3日には13.8等、25.5日に は14.5等と急速に減光したことが観測されました。今後の明るさの変化が注目さ れます。なお、この新星にはへび座V670(V670 Ser)との変光星名が付けられまし たので、観測報告をされる際にはこの名称をお使い下さい。 2020年02月26日 参考文献 CBET 4726: V670 SERPENTIS Aydi, E., et al., 2020, ATel #13517 Taguchi, K., Maehara, H., 2020, ATel #13519 新星の画像 ・野口さん撮影 http://park8.wakwak.com/~ngc/images/TCPinSer_20200223.jpg ・清田さん撮影 http://meineko.sakura.ne.jp/ccd/TCP_J18104219-1534184.jpg 新星のスペクトル ・せいめい望遠鏡(2月23.628日) https://y.nao.ac.jp/s/mgGlH0ONo7QEqDN