VSOLJニュース(365) 藤川さんがいて座に新星を発見 著者:前原裕之(国立天文台) 連絡先:hiroyuki.maehara@nao.ac.jp 天の川の方向に見えるいて座には、これまでも多数の新星が発見されており、 今年に入ってからだけでも2つの新星が発見されています。そのいて座の中に 新たな新星が発見されました。新星を発見したのは香川県観音寺市の藤川繁久 (ふじかわしげひさ)さんです。藤川さんは、7月16.519日(世界時; 以下同様) に焦点距離120mmのレンズとCCDカメラを用いて撮影した画像からいて座の中に 9.9等の新天体を発見しました。この天体は千葉県の清田さんや山口県の吉本 さんらによって確認されたほか、オーストラリアのJ. Seachさんによると、発 見の前日の7月15.381日にはすでに9.5等に増光していたことが報告されました。 確認観測によるとこの天体の詳細な位置は 赤経:17時 58分 08.46秒 赤緯:-30度 05分 35.8秒 (2000.0年分点) です。 7月16.97日にはこの天体の分光観測が口径10mの南アフリカ大型望遠鏡(SALT) で行なわれました。その結果、この天体のスペクトルには幅の広い水素のバル マー系列の輝線の他、中性酸素や1階電離した鉄、中性ナトリウムの輝線がみ られ、Hα輝線の幅は秒速4500kmにも広がっていることが分かりました。このよ うなスペクトルの特徴から、この天体が古典新星であることが判明しました。 vsolj-obsなどに報告された観測結果によると、7月17日には10等台まで暗く なったことが報告されました。分光観測の結果からは、新星爆発による膨張速 度が大きく、急速に減光するタイプの新星であることが示唆されます。今後の 減光の様子が注目されます。 2020年7月18日 参考文献 CBET 4813: NOVA SGR 2020 NO. 3 Aydi, E., et al., 2020, ATel #13872 新星の画像 ・吉本さん撮影 http://orange.zero.jp/k-yoshimoto/PNV_J17580848-3005376.jpg