VSOLJニュース(368) 小嶋さんと西村さんがさそり座に新星を発見 著者:前原裕之(国立天文台) 連絡先:hiroyuki.maehara@nao.ac.jp 9月8日の夕方に新たな新星がさそり座の中に発見されました。新星を発見した のは群馬県嬬恋村の小嶋正(こじまただし)さんと、静岡県掛川市の西村栄男(に しむらひでお)さんです。小嶋さんは9月8.423日(世界時; 以下同様)に撮影した 画像から、西村さんは8.447日に撮影した画像から、それぞれ独立に12等級の新 天体を発見しました。発見の報告を受けて、千葉県の野口さんや山口県の吉本 さん、千葉県の清田さんらによって観測が行なわれ、この天体が赤い色をして いることや、9月9日には13等級、11日には14等級と急速に暗くなっていること が分かりました。この天体の正確な位置は 赤経: 17時 23分 41.93秒 赤緯: -31度 03分 07.6秒 (2000.0年分点) です。 この天体の分光観測は岡山県の藤井さんによって9月10日に行なわれ、この天 体のスペクトルには幅の広いHα輝線がみられることが分かりました。また、 藤井さんが13日と14日に行なった分光観測や、南アフリカの口径11m望遠鏡SALT によって14日に行なわれた分光観測によると、水素のバルマー輝線の他に、中 性酸素やヘリウム、一階電離した鉄など輝線がみられるようになったことが分 かりました。さらに、天の川の方向に見える重力マイクロレンズ現象や変光星 の探査を行なっているOGLEのデータから、この新天体と同じ位置の16等ほどの 赤い天体が、増光の前には周期140日ほどの変光を示していたことが分かりまし た。このようなスペクトルの特徴や増光前の変光の様子から、この天体は共生 星と呼ばれる白色矮星と赤色巨星から成る連星系で、白色矮星の表面で起こっ た新星爆発によって急激に明るくなったと考えられます。 2020年9月18日 新星の画像 野口さんによる観測 http://park8.wakwak.com/~ngc/images/TCPinSco_20200909.jpg 吉本さんによる観測 http://orange.zero.jp/k-yoshimoto/TCP_J17234205-3103072.jpg 新星のスペクトル 藤井さんによる観測 http://otobs.org/FBO/fko/n/tcp_j17234205-3103072/tcp_j17234205-3103072.htm 参考文献 CBAT "Transient Object Followup Reports": TCP J17234205-3103072 CBET 4848: V1708 SCORPII = NOVA SCORPII 2020 = TCP J17234205-3103072 Aydi, E., et al., 2020, ATel #14015 Mroz, P., et al., 2020, ATel #14017