VSOLJニュース(381) さそり座に明るい新星が出現、西村さんが独立発見 著者:前原裕之(国立天文台) 連絡先:hiroyuki.maehara@nao.ac.jp 4月20日にさそり座の中に8等級の明るい新星が発見されました。この新星を発見 したのはオーストラリアのAndrew Pearceさんで、4月18.693日と19.690日(世界時; 以下同様)にさそり座を撮影した画像から新天体を発見しました。20.705日の観測 によると、この新天体の明るさは8.0等でした。さらに、静岡県掛川市の西村栄男 (にしむらひでお)さんも、20.801日にこの新天体を独立に発見しました。発見者 のPearceさんの観測によると、この天体の位置は 赤経: 17時 22分 45.02秒 赤緯: -41度 37分 16.5秒 (2000.0年分点) です。発見後の観測によると、この天体は21日に7.3等、22日には7.0等まで明る くなり、その後は23日に8.0等、24日に8.3等と暗くなりました。 この天体の分光観測は4月22日にCTIOのSMARTS 1.5m望遠鏡やSouthern Spectroscopic Observatory Project Team (2SPOT)など複数のグループによって行われました。 その結果によると、この天体のスペクトルには水素のバルマー系列や一階電離し た鉄の輝線がみられ、水素のバルマー系列の輝線は秒速1800kmと3000km、鉄輝線 は秒速1800km青方偏位した吸収線が伴っていることが分かりました。このような スペクトルの特徴から、この天体が古典新星であることが確認されました。 また、フェルミガンマ線宇宙望遠鏡が4月21から22日の間に取得したデータから、 この天体の位置に新たなガンマ線を放つ天体が出現したことが分かりました。 同様の新星爆発に伴ってガンマ線が検出された例ははくちょう座V407をはじめと して複数報告されており、今後の可視光やX線の明るさの変化とともに注目され ます。4月29日までの観測によると、この新星は9等台半まで暗くなっていること が報告されました。日本からは南中時でも高度15度程度にしかならない位置の天 体ですが、5月初め頃はまだ口径10-20cm程度の望遠鏡でも見ることができると思 われます。 2023年 4月30日 参考文献 CBAT "Transient Object Followup Reports" PNV J17224490-4137160 CBET 5245: V1716 Sco = Nova Scorpii 2023 Cheung, C.C., et al., 2023, ATel #16002 Walter, F.M., and Pearce, A., 2023, ATel #16003 Shore, S., et al., 2023, ATel #16004, 16006 Izzo, L., et al., 2023, ATel #16007