VSOLJニュース(383) いて座に新星が出現、中村さんが独立発見 著者:前原裕之(国立天文台) 連絡先:hiroyuki.maehara@nao.ac.jp いて座の中に今年3個目の新星が発見されました。最初にこの新星を発見したの はオーストラリアのAndrew Pearceさんで、7月15.459日にいて座を撮影した画像 から10.3等の新天体を発見しました。さらに、三重県亀山市の中村祐二さんもこ の天体を15.522日に9.6等で独立に発見したことが報告されました。発見者の Pearceさんの観測によると、この天体の位置は 赤経: 17時 52分 49.30秒 赤緯: -20度 24分 15.5秒 (2000.0年分点) です。また、S. Korotkiyさんらのグループによる観測ではこの天体は発見前日 の7月14.8日ごろにはすでに13等台に増光しつつあったことが分かりました。 この天体の分光観測はO. Gardeさんら天体のスペクトル観測を行なっているア マチュア天文家グループ2SPOT (Southern Spectroscopic Observatory Team)に よって15.979日に行われました。その結果によると、この天体のスペクトルに はP Cygniプロファイルをもつ幅の広い水素のバルマー系列の輝線がみられるこ とが分かりました。また、Hα線のP Cygniプロファイルの吸収成分は輝線のピー クに対して秒速4100kmほど青方偏位していることも分かりました。このような スペクトルの特徴から、この天体が古典新星であることが確認されました。 TOCPやvsolj-obsメーリングリストに報告された吉本さんや清田さん、森山さ ん、広沢さん、伊藤さんらによる発見後の観測によると、この新星は発見され た15日夜には10等台でしたが、16日夜には11等台後半まで急速に暗くなりまし た。また、AAVSOに報告された観測データによると18日夜には13等まで減光した ようです。 この新星にはいて座V6598 (V6598 Sgr) との変光星名が付けられましたので、 以後の観測報告にはこの名称をお使い下さい。 2023年 7月19日 参考文献 CBAT "Transient Object Followup Reports" TCP J17525020-2024150 CBET 5278: V6598 SAGITTARII = TCP J17525020-2024150 Garde, O., et al., 2023, ATel #16038 vsolj-obs 83560, 83561, 83563 AAVSO WebObs Search (https://app.aavso.org/webobs/search/)