はじめに

 沖縄は日本本土から見れば国土の西南の端に位置する辺境の地かもしれないが、もっと大きな目で見れば、東アジアの海上における重要な結節点であり、軍事上も通商上も戦略的に非常に重要な場所に位置している。この事実こそ、沖縄が日清戦争以前には独立した貿易立国の国・琉球王国として存続しえた理由であり、また、米軍が戦後一貫して陸海空にわたる統合された巨大基地群を沖縄に配置し続け、また今後も存続を固持するであろう最大の理由である。

 さらに、本土と沖縄、そしてアメリカの間に横たわるこの認識のギャップが、本土の中央政府によって沖縄の米軍基地問題がこれまでほとんど放置されてきた根本理由でもある。

 つまり、アメリカ側が沖縄の基地維持に死活的利益を持っていたのに対し、本土にとっては、その維持のためのコスト(機会費用)がそれほど大きくないと考えられており、その結果として米軍のために巨大な基地施設が維持されてきたということである。

 もし沖縄が経済的な自立をはかり、基地問題を解決していきたいというのなら、それは不可能な問題ではない。現在でこそ沖縄の経済は本土からの財政移転なしには立ち行かないような状況1)だが、その立地条件を子細に見ると、かつての琉球王国時代の様に、東アジアの交易拠点として、経済的自立が十分可能なポジションにあることが分かる。

 さらに、自立が厳しいといわれる財政にしても、本土の中央政府に県民の所得から国税を収めず、全ての税収を県のものとすれば、当初県民所得の平均約5割を税金として収めれば済む計算になる2)。これは一見高い数字で、しかも年金・保険関係の負担が含まれていないが、それでも、現在の全国の国民負担率38.2%3)、そして将来は50%になろうという予想も出ていることから見て、決して非常に高い率ではない。また、独自の経済政策・通商政策を取ることにより(たとえば、船舶保有税や法人税率を思いきって引き下げる、金融・通商に関する規制を撤廃するなど、自由貿易地域としての立場を確立する)、国内外からの投資が促進され、港湾等の施設使用料の増収、法人税の増収等により、徐々に沖縄在住の市民が直接負担する税率は低減していくであろう。それがさらに富裕市民の移住・登録を促進し、投資を促進し、経済がさらに発展し、さらに負担率が低下するという好循環を迎えることが出来る。こうなったときの沖縄は、リゾート地としての良好な住環境と相まって、アジアの中で是非住んでみたい地域の筆頭に挙げられることになるだろう。

 沖縄の経済発展の可能性は、独自の経済政策・通商政策さえ取ることが出来れば、その立地条件の良さから本土の他の地方自治体よりもはるかに大きいのである。反対に、本土と同じ全国一律の法規制は、この地域の持つ潜在的な長所の発現に不利に働く事はあっても、有利に働くことはありえない4)

 経済的自立があってこそ、始めて基地問題も根本的な解決に近づくはずである。なぜなら、経済発展により、基地維持のための機会費用が高騰し、基地はより維持コストの安いところに移転を余儀なくされるからである。また、沖縄政府も財政移転のために本土の中央政府のいいなりになる必要が薄れるからである。

 基地交渉成功の前提は、直接交渉の確保である。自分で痛みを感じることの少ない、遠いところにある本土の中央政府を間に挟んでの間接的な基地交渉は、まさに隔靴掻痒のたとえの通りであり、実りが少ない。基地を我が土地に置かれているものと、置いているものとが直接に交渉するほうが、はるかに実りが大きいのは自然の道理である。そのためには、まず、経済的自立が不可欠の前提であるといえよう。

 このような目標達成のためには、沖縄から提起されている全県FTZ(フリートレードゾーン)構想を支持し、その具体的内容を煮つめ、また、果敢に実行していくといったことが求められよう。しかしながら、今回の論文はその経済的自立への全過程を明らかにするのが直接の目的ではない。それはあまりに包括的になりすぎて、この場の紙面では到底語り尽くせないであろう。

 しかし、近い将来のその姿を念頭に置きつつ、「那覇ー上海航空路開設」という極めて具体的かつ、沖縄の経済発展にとって確かな布石となる重要な施策を検討するなかから、沖縄の立地の重要性を喚起するとともに、将来の経済的自立につなげる道程の一つを示唆することは出来るのではないかと思っている。

 なお、この論文の構成としては、

 第1章で航空路開設のメリットとリスクを台湾、中国、日本、沖縄のそれぞれの立場から検討する。
 第2章で航空路の採算性について具体的データを元に検討する。
 第3章でもっとも効果的な具体的航空路の検討を行なう。
 第4章で航空路開設にあたり克服すべき沖縄の課題を提示する。
 最後に「おわりに」で全体の総括を行なう。

 という形になっている。

 

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