ハニーな毎日



 最近小さいままで過ごすことにも慣れてきた三上と渋沢。
っていうか、渋沢ときたら、小さい三上にボンノウしすぎて、なんだかちょっとアブナイ人になりつつある。
っていうかっていうか、通常サイズの三上という人は、とてもじゃないがボンノウさせてくれるような人ではなく、うっかりかわいがったりすると 激しく返り討ちにあうことになったりする。
したがってこんな時でもないと、とばかりに渋沢を押しとどめる枷が外れてしまったとでも言うか。
どちらにしろ、ここぞとばかりに世話を焼きたくる渋沢に、ちょっと(というかかなり)うっとおしいと思いつつ、しかし世話を焼いていただかなければ 通常生活さえおぼつかない身の上なので、あえてその状態に甘んじている三上なわけなのである。
今日も今日とて渋沢手作り(作るな、そんなもの)のベッドで目覚め、ペットボトルのキャップの洗面器などで洗顔をし、渋沢お手製の服(縫うな、そんなもの)に着替え、 渋沢の心づくしの食事(は、作ってくれてもかまわない)を食う。
まあ小さいとはいえもちろん味覚はそのままではあるが、必要量といえばほんのぽっちりですむのに(なにしろ小さい)、 それでも渋沢はちゃんと三上のために一人分作る。
(これは実は、渋沢は「一人分だけ」の調理が苦手だったため。料理に手を染めて以来「二人分以上」しか調理したことがないから勝手がつかめないらしい)
だから結果、残った自分の一食分をも、渋沢が食さねばならない。(残して捨てることが出来ない性格)
どうやらなんだか最近渋沢はちょっと太ったんじゃないか、などというウワサがあるらしいが、そんなことは小さい三上の知ったこっちゃないのだ。
さて、それはともかく小さい三上の毎日は割と波乱万丈だ。
松葉寮にはいろいろな困難が渦巻いている。
まずは当然のごとく、こういうときには災厄となりうる問題児、藤代誠二。
「先パイ先パイ先パーイ!!!」
バターン!!とドアが蹴破られる勢いで開き、今日も元気に飛び込んでくる。
「ど、どうした?朝っぱらから元気だな」
さすがの渋沢キャプテンといえど、びっくりしたりすることだってあるのだ。
後ろから一応ついてきていた保護者笠井が、ドアのところですみませんと頭を下げた。
「三上先輩は!?あ、キャプテンおはようございマース。ねえねえ、三上先輩!どうしてるんですカー?」
「・・・・・俺はついでっぽいな、藤代・・・」
呟くキャプには目もくれず、きょろきょろとあたりを見回す。
うわやだ。またきやがった。
三上は露骨にヤーな顔になって、さっさと渋沢の腕によじ登る。
しかし、もちろん目ざとい藤代の目から逃れられるわけではない。
「あっ、めーっけ。おはようございます、三上先パイv今日もかわいいですねえ♪」
思わずつかまれそうになって渋沢の袖につかまって身を隠す。
「うるせーな。毎朝毎朝人をオモチャにしに来やがるなっ」
「ねえねえ先パイ、新しいお洋服ですねっ。すごく似合ってますよ」
三上の苦情なんか聞いちゃいねえ藤代は渋沢の腕を持ち上げて三上を追いかけて手をのばしている。
「服のことなんか知るか。渋沢に言いやがれ。っていうか、追いかけんな、うっとおしい!!」
しばし、渋沢の身体の周りをぐるぐると鬼ごっこを続け、抜群のバランス感覚で持って腕を伝って肩に駆け上がり、胸ポケットに飛び降りる。
そこまで逃げ込めば、さすがに藤代も手出しはしなくなる。
ポケットから顔だけ出して、ベーと舌を出してさっさと隠れる三上を、残念そうに、しかしとろけるような目付きで見つめて藤代はため息をついた。
「三上先パイの服、やっぱりキャプテンが作ったんですか?」
ぼーっと三上の走り回るさまに見とれていたキャプテンはあわてて帰ってくる。
「・・・・・・・・あ?あ、ああ。着替えが無いままってのもかわいそうだからな」
そのさまを見て、笠井はひそかにため息をついた。
似たもの同士。
なんか胡散臭げにポケットから見上げる三上だ。
「器用なんですねえ。三上先パイにすごく似合ってます」
「だろ?だろ?いや、こないだからバービーの服の売り場でいろいろと研究を重ね、店員に・・・」
「・・・・おもちゃ屋にでもいったんですか?」
「渋さわぁっ!!いいかげん黙りやがれ!!!」
とくとくと語りだそうとする渋沢を怒鳴り声でいさめて、三上はまたしてもポッケに沈む。
何があったのやら、なんとなく察してみた藤代と笠井だった。





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