お姉ちゃんと僕

〜日下透ちゃんに捧ぐ〜



三上亮は風邪をひいていた。
たいしたことはないと言えば言える程度だったが、場所が場所だった。実家にいる時に発熱したのだ。
「うーん。学校には連絡しておくから、治してから帰りなさい」
この体調で長時間電車に乗って寮まで帰せば悪化するのは目に見えていると言う事もある。
母親の決定により、数日の滞在が伸びてしまった。
おそらく、崩し気味の体調が、実家にいる事で気が緩んで一気に出てしまったのだろう。
家で熱を出すのは久しぶりだ。
いつもより、ほんの少しワガママになっても許される時。
小さな病気はほんとは少し好き。
ほんの子供の頃は、額に当てられる冷たい手のひらの感触が好きで、たいした熱でもなくてもぐずぐずと寝付いたりした事もあった。
たいてい昼くらいには飽きて布団から出てしまいたくなったりしたものだけれど。
まあ、今回はホントに体調を崩していたのもあって、そうして、数日をボケボケと寝付いたまま過ごしていた。
時々、思い出す顔が無いわけではなかったが、実家好きの三上としては、ま、帰れば毎日会えるんだし、と、あえてこちらを満喫する事を 選んでしまったというところ。
お姉ちゃんも、三上のためにこまめに帰ってきては病気の時用メニューをふるまってくれたので、ずるずると甘えてしまう三上だった。
いろいろ納得したりとかあったとはいえ、やっぱりお姉ちゃんがいてくれるのは三上にとっては嬉しいのだ。



さて、三上はそれはそれでいいとして、なんとなくよくないのがこちら。
3日程度のはずで実家に帰った三上が、風邪のためと言う連絡が家族からあったきりすでに都合1週間も帰ってこない。
自分的にもタメイキが多くなってきて、ちょっとたまりかねた渋沢。
心配になってこっそり土曜日の朝練前に三上家に電話したら、本人は寝ていると言う事で、母親が出てきた。
三者面談で学校に来ていた時、三上に紹介された人だな、と思った。
母親も覚えていたらしい。
思い切って、見舞いに行ってもいいかと言ってみたら、愛想よく、かまわない、と言ってくれた。
「もうほとんどいいのよ。そろそろ帰らそうと思っていたくらいなんだけど。でもよければぜひ遊びに来てやってちょうだい」
というわけで、監督には適当に言いつくろい、部活を早めに切り上げ、少し戸惑いながらも、見舞いと称してコトコトとやってきたわけだ。 (設定がウソくさいのは勘弁してください)
藤代がやたら一緒についてきたがったが、あえて聞こえないフリしておいてきた。
散々ごねていたので、寮に帰ったらうるさいかもしれない。
ま、いいか。(冷たい(笑))
電車、バスなど乗り継いで、教えてもらった目印を数えつつ、似たような棟が並ぶ団地内を指差し確認しながら目指すおうちに到着。
表札にずらりと並ぶ名前に少々ビビりながらも呼び鈴を押す。
はいはーい、とすぐに室内から直接声がして、ドアが開く。
母親というにはかなり若い、三上に良く似た黒髪の女性が顔を出した。
「・・・あ。こんにちわ。渋沢と言いますが、三上くんは・・・」
「あ。ちょっと待ってね。・・・・お母さーん。渋沢くん。もう着いたの」
女性は室内に向かって声を張り上げ、それから渋沢に向かってにっこりと笑いかけた。
「どうぞ、入って。お待ちしてました」
この人は多分先日結婚したお姉さん、だろう。と見当をつけた。


「あのねえ。あき、今まだ寝てるの」
すまなそうに、母親がそう言った。
む。まあそんな気がしなかったわけでもない。
「まだあきに、言ってなかったのよね。渋沢くんが来るわよって。起きてこなかったから」
「あの子、寝起きが凄く悪いの」
「はあ。よく知ってます」
母親と姉が顔を見合わせる。
「・・・・そうよね。確か同室って言ってたものね」
「前にあきが、いつも起こしてもらってるって言ってたわよ」
「あれって、あきが1年の時だったでしょ」
「っていうか、夏休みになる前じゃなかった?」
「ねえ、あきって、寮でもいつも寝起き悪いの?」
「・・・・まあ・・・・よくはないと言うか・・・・」
そんなの、ご家族にばらしていいんだろうか。
毎朝起こすのにどのくらい労力が費やされるかとか。(まあ楽しんでいるんだけど)
「悪いのね」
「あきだもんねえ」
「遅刻してるんじゃないかと思ってたけどね」
「蹴り飛ばしても起きないものねえ」
「たかちゃんなんて、いつも踏んづけてるって言ってるしねえ」
「かなも、ここんとこ毎朝けつまづくからって文句ばっかり言ってて」
どうやら実家での三上は想像以上の事態になっているらしい。
「あのう、寮ではそこまではすごくはないと思うんですが」
恐る恐る、渋沢はフォローらしきものを入れておいた。
姉と母親は似た面差しの顔を同時に渋沢に向けた。
なんだかなんとなく気おされて心持ち引く、渋沢。(←笑)
「そうなの?ゆすったりしたくらいで起きる?」
「いや、ゆする・・・くらいでは」
「蹴飛ばさないとだめ?」
「け、蹴ったりはしません」
「じゃあ、どうして起こしてるの?」
「・・・・無理矢理引っ張り起こしたり、ベッドから引きずり落としたり、ふとんを剥ぎ取ったり・・・・ですかね」
「やっぱりすごいわよねえ」
・・・・そう言われてもしようが無い。
フォローがフォローになっていない渋沢だった。
「それにしても、せっかく来てもらってるんだし、そろそろあき起こそうか」
「そんな話した後で起きるのかわかんないじゃない、お母さん」
まったくだ(笑)
「いいですよ。適当に待ちますから。病気なんだし寝かしといてあげてください」
なんだか一瞬、何かいいたげな顔をして、2人は顔を見合わせた。
「・・・・ま、でもとりあえずいっぺんだけ起こしてはみとくわね」
姉さんが立ち上がって奥に消え、しばらくしてまた出てきた。
「ぜんっぜん、ダメね、あれは」
「いったい何時間寝てるのかしらね、あの子」
「よく目が溶けないものだと思うわ」
2人はふうやれやれとばかりにため息をついて、またしても同時に渋沢を見た。
またしても、なんとなく、気おされる渋沢(笑)
「せっかくだから、学校でのあきの事でもお話してくれない?」
にこっ。
大丈夫かいな、と、ちょっと天井に目を向けてしまう渋沢だった。



紅茶などいれてもらい(ティーバック。リプトン)、寮生活や部活の事など、ぽつぽつと。
当たり障りなさそうな事など話していると、玄関に誰かが来た様子。
「ただいまー。あら。お客さん?」
少し小柄な、やっぱり三上とよく似た黒髪の少女が入ってくる。
「おかえり、夏穂」
「あ、お姉ちゃん、もう来てたの。いらっしゃいませ(にこ)。どなた?」
「渋沢くん。あきのお友達。お見舞いに来てくれたのよ」
「お邪魔してます」
ぺこりと頭を下げる。
「ああ・・・・・お噂はいつも。遠い所わざわざどうも」
噂!?
ちょっとドッキリするのは後ろめたいからだろう、渋沢。
「いつも起こしてくれてるんだってね。よくあきから聞くわ。あの子がお友達の話するのって珍しかったから覚えてるのよ」
「・・・・いえ、別にたいしたことは」
なんとなくうつむいてしまったり。
「で?お友達が来てるのにあきは?」
「ぜんぜんだめなのよ、やっぱり。一応私、がんばってみたんだけど」
「で、ほっといて、渋沢くんとおしゃべりしてたのよ。あんたもお茶入れて座ったら?」
女3人に囲まれて、おーい、ちょっと助けてくれい、の渋沢。いい加減起きて欲しくなってきたぞ。
でもあきちゃんはまだまだ起きないみたいで、渋沢克朗、ちょっぴりピンチ。(←笑)



なんか、背中が痛い。多分寝過ぎだ。
それに頭も痛い。それも多分寝過ぎだ。
具合がよくないのをいいことに、ここんとこ毎日毎日我ながら病気のようによく寝ている。
・・・って、病気だけど。いやいや、そういう意味じゃなくだな。
オレ、ひょっとして眠り病かな。
あー、もう熱はないけど、頭いた。
もそもそと起き上がり、ぼさぼさの頭のままで部屋を出てきたら、やたらリビングがにぎやかだった。
「?」
やたらはずんだお姉ちゃんの声が聞こえている。
「そうそう、コンソメと、あと淡口でね。具はいつも適当にあるものを使ってるの。ベーコンとかあるとなるべく入れるけど」
わーい、今日も来てくれてる♪と思ってドアを開けたら、信じられないものを見た。
「あら、あきったら。やーーーっと起きたの?」
「よ。おはよう。もう夕方だぞ。お前、家でもこんななんだな」
お姉ちゃんと渋沢が、同時に振り返って笑いかけた。
・・・・・混乱。
ここは自分の自宅だったはずだけど。
寝過ぎてまだ夢でも見てるのかな。
「・・・・・なんでお前がここにいるんだよ?」
「見舞い」
「バカじゃねーの!!?」
やっと目が覚めてきた。
「って、そんでこんなとこまでなにしに来てるんだ」
渋沢が椅子を引くのでなんとなくアタリマエみたいに隣に座りながら。
「だから、見舞いだって」
苦笑しながら、それでも律義に答えるその手元には何やらメモがある。
「・・・ナニそれ」
「レシピ。お姉さんに教えてもらった」
「ほら。あんたの好きなあのおかゆよ。なんか、渋沢くん、お料理するからって。食べたことあるの?」
「・・・・・あ、うん。時々作ってもらう」
「病気の時用レシピだってな」
「もう、そんなたいした物じゃないのよ。ありあわせでいいし。でもあきが熱出すと、それ作れってうるさいのよね」
「今度寮で発熱した時には作らせてもらいます」
なんだか笑顔を交わし合い、お姉ちゃんと、渋沢。
・・・・・・ちょっとなんだか頭痛が。
何をそんなに親交を深めてるんだよ。自分をほったらかしに。
「あき、なんか飲む?」
ちいねえちゃんがマグを出しながら聞いてくる。
「あきにはミルクでもあっためてやって」
すかさずお姉ちゃんが口を挟む。
「ネコじゃないんだぞ」
「似たようなモノよ」
「・・・・・・」
なんとなく、微笑ましい様子に、渋沢は小さく笑いをかみ殺す。
「・・・・・なんだよ」
「いや。やっぱり寮に居る時とカンジが違うよな。楽しそうで、ヨカッタな、と思ってさ」
「フーン、だ。ほっとけよ」
つんと、そっぽを向くが、少し耳が赤かったり。
お母さんとお姉ちゃんは、興味深げにその様子を見ている。
あきがいやにリラックスして話すムードに家族としては意外さを隠せない。
っていうか、家に居るせいもあるのかもしれないが、あきにしては「家族以外の人間」が居るとも思えないくらい、和んでいる。
よっぽど、仲がいいんだろうな。
うんうん。
いいことだ。
そして、玄関にまたしても人の気配。
ホントに人数の多い家だ。
渋沢が見ていると、子供が2人、入ってくる。
「ただいまあ」
口々に、言いながらリビングに入ってくるのは、これまたやっぱりサラサラした黒髪の、女の子と男の子。
「おかえり。2人とも、先に手を洗いなさい」
「あー、お姉ちゃん、今日は早いー。・・・・お客さん?誰?」
「渋沢くんよ。あきちゃんのお友達」
またしても、渋沢はちょっと頭を下げる。
「こんにちわ。お邪魔してます」
「渋沢くんもサッカーする人?」
「そうだけど」
「あのねえ、今日初実、かなとサッカーの試合見てきたの。あのねえ、うちのクラスとね、5組とで試合したのよ。先生がね」
「はっち、先に手を洗ってから!」
「はあい。あとでね。渋沢くん」
そして2人が出ていく。
「にぎやかなんだな」
「妹と弟。初実と要。初実はしゃべりだぞ。あと2人とも、サッカーやってるヤツが好きだから、すぐに相手させられっぞ」
自分は今回、風邪ひいてるからぜんぜん相手してやってないけどな、と。
「慣れてるから大丈夫だよ」
なに、学校に居てても同じようなものだ。(例:藤代とか)
そこに、手を洗って2人が帰ってくる。
なんだか変な顔をしている妹ちゃん。
「なに、早く座れば?初実。ミルクでいいでしょ。かなも、ミルク?」
「ボク、ココア入れたミルクがいい」
「はいはい。初実は?ココア入れるの?」
でも初実ちゃんはとことこと渋沢くんの隣に行って、袖を引っ張った。
「ん?何かな」
「・・・・あのねえ。渋沢くんのお席、初実の椅子なの。あきちゃんのお隣なの」
「初実、いいじゃないの。渋沢くんはあきちゃんのお友達なんだし。今日だけ代わってあげなさい」
「あ。そりゃごめん。悪かった」
渋沢はちょっと考えてから、初実ちゃんを抱き上げてひざに乗っけた。
「これでいいかな」
「うん!」
初実ちゃん、ご機嫌。
「初実もココアの入ったヤツ」
あきちゃんはちょっと呆れ顔になる。
「おっ前・・・・見境無しにいい顔すんの、やめろよ」
「席取っちゃったから」
なんか、妙に複雑な気分のあきちゃんだ。
ぷ、と夏穂ちゃんが吹き出す。
「どっかで見たようなカンジ!そうよね。そうすればよかったのにね、誰かさんも」
「うるさいな!」
ちょっと、またしても少し耳を赤くしてあきちゃんが騒ぐ。
「誰かさん?」
ちらっと顔を見ると、めっちゃめちゃ拗ねたカンジで、フン、と鼻を鳴らしていた。
なんかあったらしい(←笑)
お姉ちゃんも、きゃははは、といささかけたたましく笑い崩れた。
「なるほど。それはちゃんと言っとくわ。渋沢くんは、さすがにうまいわねえ」
なにがやねん。(←笑)
どうにも仏頂面になるのはあきちゃんばかりだ。



そうこうする内に、だんだん外が暗くなってきた。
ちょっとばかり、気にしはじめる渋沢。
結構遠かったのだ。ここは。
「今日はどうするの?渋沢くん、泊まっていく?」
頃合いに、言い出そうとした時に、お姉ちゃんが聞いた。
「え?いや、そろそろおいとまを・・・」
「何言ってるの、今からじゃ遅くなっちゃうわ。明日、あきと一緒に帰ればいいじゃない」
これはお母さん。
「え?」
「学校にはうちから連絡しといてあげるから。ねえ。一緒に晩御飯も食べていきなさい。せっかくこんな遠いところまで来てくれたんだしね」
なんだか顔を見合わせる渋沢と三上。
「・・・・いいのかな?」
「・・・・まあ、うち狭いけど。いいんじゃない?お母さんがそう言ってるなら」
「じゃあ・・・・済みませんけど。お言葉に甘えさせていただきます」
ぺこりと行儀よく頭を下げる。
いいのかなあ。
なんだか渋沢的には思いも寄らなかった展開に。
でも、なんだか妙に居心地の良いうちなので、ちょっと嬉しい。
自分の家もちょっと思い出すカンジ。
お母さんは元気かなあ。
「たかはまだかしらね。お買い物に行くのに車出して欲しいのに」
「たかちゃん、今日どこ行ってるの」
「サークルじゃないの?遅くなるっては言ってなかったけど」
「ちょっと、夏穂、あんた、電話かけて聞いて見てよ。今どこに居るのか」
「自分で聞けばいいのに」
「携帯だすのがめんどいのよ。いいじゃないの。ほらほら」
自分だってー、とか言いながらも、夏穂ちゃんは自分の携帯をごそごそと引っ張り出し、電話をかけた。
「たかちゃん?今どこ?お姉ちゃんが待ってるんだよ」
うん、うん、と何やら話し合って、電話を切る。
「渋滞中だって。先出といてくれたら、迎えに行って拾うからって」
「もう」
で、お姉ちゃんは立ち上がった。
「あ、お手伝いしましょうか?荷物持ちくらいしますけど」
すかさず渋沢も立ち上がる。
「ええ?いいわよ。お客様なんだから、ゆっくりしといて」
「いや、ご迷惑おかけしますんで、これくらいはせめて」
しばらくボーッとその様子を見ていた三上だが、ふと思い付いた。
「じゃあ、俺、あれ食べたい」
「は?」
「こないだの。えーと、肉と野菜の薄い味のヤツ」
「ちょっとあき。何リクエストしてんのよ」
「いいよ。渋沢作ってくれるから。美味いし」
「でもあんた」
「いや、いいですよ。ホントに結構好きなんです。こないだの、肉と野菜のうす味の?」
「なんかー、薄切りの肉で。えーと、名前忘れた」
「・・・・・多分治部煮だな。あとはなにか?」
「んー、あんまり食欲ないからそれだけでいい。あとはてきとうになんか作れ」
お姉ちゃんとお母さんが、ちょっと呆れたようにため息をつく。
「何エラソウにしてんの。あんたって子は。ごめんね、渋沢くん。この子、まさか寮でもいつもこんなカンジなの?」
「え・・・・・いや、そんなことは」
ちょっと、顔が笑った風になっちゃっているので、言葉を大いに裏切っている。
「よけーな事、言うなよっ」
「わかった、わかった」
・・・・なあんか、なんかなんか、妙な感じだな、と、家族が思ったかどうだかはあえて誰も口にしなかったけどね。



たかちゃんとお姉ちゃんと、渋沢くんが帰ってきた頃には、お父さんも帰ってきている。
それで、全員集合。(ちなみに早苗ちゃんのオット(三上的天敵(笑))は現在出張中)
大き目のダイニングテーブルに、ものすごい量のお皿が並ぶ。(渋沢も混ぜて、9人だから)
「渋沢くん、ホントにお料理巧いのねえ」
お姉ちゃんがつくづく感心したように、ため息をつく。
一緒にお台所に居て、いろいろ感じるところがあった様子。
「うちが結構、こだわるほうでしたから」
三上のリクエストの治部煮のほかにも、ぶり照り、おひたし胡麻ヨゴシ、イクラのみぞれ和え、などが。
あと、風呂吹き大根と湯葉とがんもどきの炊き合わせが大鉢で真ん中においてある。
「なんか、渋沢くんにつられて、すごく和食になっちゃったわ」
「珍しいよね、うちじゃ。こんなに和食一色って」
「ねえ、ちょっとこれ、よかったら教えてくれないかしら。うちでも作ってみたいわ」
「早苗、聞いといて、うちでもまた作ってよ」
「お母さん、努力の跡くらい、見せてちょうだい」
騒がしい女性群をほっぽっといて、黙々とお箸を口に運ぶ男性陣。
あきちゃんは、なんしか久しぶりの渋沢の手料理に、ちょっと満足な様子で、治部煮と大根をつついている。
なんだかすっかり、三上家の人気者だよなあ、とか思いながら。
ひょっとして、うちってみんな食べ物に弱いんだろうか。
家族中で餌付けられているって言うのもなんだか附に落ちない気がする。
まあ、いいか。
だってホントにおいしいから。
「三上。ほうれん草食っとけ。病み上がりはビタミンとか要るんだぞ」
「食ってるよ」
「・・・・・渋沢くん、マメねえ」
・・・・・・・・・。
なんか一瞬、2人で顔を見合わせる。
「あきも、あんまり甘えてばかりいちゃだめよ?」
「・・・・・・・わかった」
一応、まあ反論はあえてしないでおこう。と思ったり。



ところで三上の部屋は男3人兄弟でいっぱいなので、リビングにおふとんひいてお泊り。
「悪いな。うち、ホントに狭いから。お客さん用の部屋って無いんだ」
「いや、かまわないよ。こっちこそ、お邪魔しちゃって申し訳ないなあと思ってるんだ」
「あきのおふとんも、こっちに一緒に敷く?渋沢くん、1人だと寂しくない?」
「・・・・どっちでもいいけど」
「じゃあおふとん出しちゃうわね。でもあんまり夜更かししてちゃだめよ」
「お姉ちゃんは?」
「今日は帰って来ないから、泊まっていくわ。明日も居るから安心しなさい」
「わかった」
2人分のお布団を並べて。
「あったかくしとくのよ。明日は帰るんだから、夜更かしはだめよ。明日はちゃんと起きなさいよ」
細々と注意を並べて、お姉ちゃんが部屋に帰ったら、しーんとなった。
「じゃあ、寝るか?」
「そうだな。治り際だから、早めによく休んでおいた方が」
「なんか一日中ずっと寝てただけだけど」
「・・・・そう言えばさっき起きてきたんだったな」
ちょっと、笑いを押さえつつ。
「よく寝るよな。実際」
「オレ、眠り病かもしれない」
「明日はちゃんと起こしてやるから、安心しとけ」
「・・・・・ああ・・・うん」
ちょっと、なんだかなんか。
ふわ、と、渋沢が手を伸ばす。
三上の髪に、指を絡めて、それからくしゃっとかき回した。
ほんのりと、目を細める。
「あのさあ」
「ん?」
「帰ったら、コーヒー、入れろよな。オレ、もう1週間飲んでないんだ」
「わかった」
「じゃ、おやすみ」
「おやすみ」
なんか、いつもと違うので、やっぱりなんだか落ち着かない。
なんだかなんだか。なあ。



翌日。ほぼ治った三上と、渋沢が、2人で帰ってから家族(女性陣)は大噂。
「ねえねえ、渋沢くんってお姉ちゃんのだんなにちょっと似てない?」
「昨日、買い物に行った時に、聞かれたわよ。だんなの弟かって」
「あきは早苗と好みが似てるからねえ」
「変な言い方しないでよ」
でも実は、まったくその通りなのである。




=Fin=


  ◇コメント◇

誕生日企画として書いたものです。あの当時、気が狂ったように、なにかにとりつかれたかのように、書きつづけていたのを思い出します。
って、わずか2ヶ月前のことですね。最近サボりすぎです。反省。
本来これもクウネルアソブなんですが、本編からは外れていますのでとりあえず今はここに。 そのうち番外編が万一増えでもしたら、それなりの処置を考えるかもしれませんが、別に今のところ予定はありません。
こちらは、かわいいカエルちゃんこと、日下透ちゃんのリク小説でした。引き換えにぶん取った新婚さんは、いただきモノページで 燦然と光り輝いてます。
またちょうだいね。カエルちゃん。クス♪(いかん。いつのまにか、コメントがただのおねだりに……(笑))




 ⇒もどる。